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戦姫アリシア物語  作者: mery/長門圭祐
女王アリシア
75/116

父の再婚話とわたし

アデルは苦笑を浮かべた。


「……やっぱり何も聞いてなかったみたいね」


「……うん」


「じゃあ、少し時間を開けようか。私、その間に、いろいろ見て回ってくるから」


おう、そうしてくれ。


彼女は、しばらく散歩に出るそうだ。

私は、アデルに案内の人間を手配して送り出す。


「日が落ちる前には戻るわ」


彼女はそう言って、屋敷を後にした。


綺麗に奇襲を決められてしまった私は、日傘を持って出かけたアデルの背中を見送ると、すぐさま屋敷に取って返す。


男やもめを満喫する父の結婚話が、こんなところで火を噴くとは、完全に想定の範囲外であった。



父の再婚問題は、今に始まった話ではない。

それはそうだ。


母が亡くなった時、父の子供は女児のアリシア一人であり、養子を取れるような親類もいなかった。

当時、父は二十一歳。

跡継ぎのことを考えるなら、次のお相手を探して、しかるべきであった。


だが、父は後妻をとらなかった。

父が二人目の妻を、拒んだのではない。

彼が掲げた条件と、ランズデール家を取り巻く環境が、厳しすぎたのだ。


父が、伴侶にもとめたものは、魔力だ。

子供の魔力が強くても、体を壊さない女性。

父の心情を思えば、ある意味当然の条件であるが、これが著しく、お相手となる女性の候補を減らした。


単純に、私と同程度の魔力を持つ子を想定した場合、およそ百人に一人しか条件に合致する女性がいないのだ。

当時の王国の社交界で、これを満たす結婚適齢期の女性は、両手の指の数よりも少なかったはずだ。


加えて、父には、醜聞があった。

どこの馬の骨ともしれぬ、流れの女を妻に迎えた男だ。

後妻に行けば、その女が産んだ娘の世話をさせられる。

皆、ランズデール家と関わりを持つのをはばかった。


当然、名乗り出る家も女性もいない。


父も、伴侶を失ったばかりの時期だ。

当時の父に、次の相手を考える余裕などなかった。


しかも、この後も立て続けに不幸が続く。

父の両親、私の祖父母にあたる二人が、馬車の事故で、亡くなってしまったのである。


準備もなく家督を継ぐことになった父は、相続に、領地経営にと忙殺された。

そして、それが一段落すれば、今度は戦争だ。

戦争は十年以上に渡る激戦となる。


父は、宮廷との関係も最悪だった。

縁などあろうはずもなく、結果、四十近くに至るまで、寡夫のまま過ごすことになったのである。


アデルから、頭をガツンとやられた私は、若干覚束ない足取りで自室へと戻った。

さっきまでアデルと二人囲んでいた、テーブルの席に腰を下ろす。


うーん、まだぼんやりするよ。


若干グロッキー気味の私を見かねて、メアリが、冷たいお茶を淹れてくれる。

地場の葉っぱだ。

ちょっとくさいが体にいい。

ドクダミというらしい。

近所のおばちゃんが差し入れてくれたそうだ。


メアリは、私一人分のカップを用意してから、すっと後ろに控えた。


「メアリ」


「はい、なんでしょう。アリシア様」


「……ううん、なんでもない」


私は、メアリを眺めた。

メアリは、魔力が強い。


父と比べても遜色がないほどの魔法使いだ。

当然、父との間に子供を授かったとしても、その魔力で、体を壊すこともないだろう。


そうです。

多分、皆さんの想像のとおりだと思う。

私は、ここ五年ぐらい、ずっと考えていたのだ。

メアリが、私のお義母さんになってくれたらいいな、と。


メアリは、私が小さい頃から一緒にいて、散々甘えてきた相手だった。

彼女のことはよく知っていたし、彼女も私の事をよく知っている。


父とメアリの関係については、わからない。

だが、少なくとも悪くはなかったはずだ。

メアリが時々、胸や美脚を放り出しながら酔っ払うのを、父はよく、苦笑交じりにとがめていた。


私はかつて一度だけ、メアリに、父のことを聞いてみたことがある。

もちろん冗談めかして。

メアリは、「身分が違いすぎますわ」と笑っていた。

嫌なわけでは無さそうだった。


一方の父だ。

彼は、メアリのことを、私の姉のように見ていたと思う。


メアリは、使用人の立場だ。

父が、関係を望めば、拒むことはできない。

そして父は、そういう行いが大嫌いなのだ。


だからメアリが私に仕えている間は、二人の関係は絶対に変わらなかった。


でも、対等な相手なら、そんな気兼ねをする必要もない。

私は、この戦争で武勲赫々たるメアリに、相応の地位と爵位を与えるつもりであった。


父は男で、メアリは女だ。

そして二人の血は、つながっていないのである。

年齢差はあるかもしれない。

でも、そういう夫婦だって別に少なくもない。


戦争が終わって、平和になったなら、そういう未来もいいかもしれないな。

そう、私は考えていたのである。


私はメアリを見る。

メアリとまた目が合った。


「メアリ……」


「申し訳ありません、アリシア様」


メアリはにっこり笑顔で、いつもの読心術を発揮した。

私はがっくりと頭を垂れる。


もうね、なんていうかね、こういうことを言うんだろうね。


とらぬ狸の皮算用。


いや、ほんと、予想外だったのだ。

なんと、あの鉄壁メアリに、恋人ができてしまったのである!

流石にお相手がいては、再婚相手としては対象外であった。

まさかこんなことになろうとは、このアリシアの目をもってしても見抜けなんだわ。


コンラート。


私の未来の家族計画を、ひっくり返しやがった男の名だ。

最初、メアリから話を聞いたときは、目が点になったよ。

しかも結構、強引に迫られたっていうじゃない。


私はブチ切れそうになった。

いや、魔法で瞬間沸騰させても、ここまではなるまいって勢いで、頭に血がのぼった。


素で「ぶち殺す」って言葉が口から出たのは、私の生涯でも、あれが初めてのことだったと思う。


でもメアリに止められたのだ。

メアリは、もじもじしながら言いやがった。


「実は、私も、憎くは思っているわけでは、ないのです」


この時の私の心境を一言で言い表すならなば。


ファッッッッ○ク!

これ以外にありえない。

映像作品基準だと、一回までは使えるらしいね、この単語。

一回使ったからもう言わないよ。


なんとメアリとコンラートは、相思相愛だったのである。

メアリは感情表現が、本当に控えめだ。

「憎くはない」なんて、大好きって言ってるのと同じなのだ。

私は本当に驚いてしまった。


おい!メアリ!

そういう急な裏切りは止めてくれないかね!


ちなみに、このメアリ告白事件は、私のトラウマになっている。

あの時の事を思い出すと、未だに動悸が止まらないのだ。

もうね、胸の音がね、ドゥンクドゥンクっていうの。

強心臓をもってならす私の、心拍数が跳ね上がるのである。


とんでもない事態だ。

私は、今もって「メアリとコンラートはお似合い、メアリとコンラートはお似合い」と必死に言い聞かせている最中なのだ。


万が一、コンラートがメアリを捨てやがったら、その日が、奴の命日だと思ってもらいたい。

私は、その日のことを思うに、未だに平静ではいられないのである。


以上のような事情で、父の新たな奥さんとして、メアリの線は消えてしまった。


ちなみにだが、エリスには魔力がない。

クラリッサは、結婚も子供を作るのも気乗りしないみたいだ。

私も、彼女が義母というのは、想像できない。

ステイシーは旦那さんとラブラブな既婚者。


これで、私の手持ちの札は打ち止めである。



私は父のところに相談に行った。

思えば、父のもとには先に、アデルから話が来ていたはずだ。

彼がこの縁談について、どう思っているかを、聞いておかねばならない。


「困っている」


父の第一声だ。

父は頭を抱えていた。


そうだろうね。


部屋には、ジークもいた。

未来の義息子とも話をしていたみたいだ。

ジークは、意地の悪い笑顔を浮かべている。


父とジークは、すっかり仲良しであるなぁ。

私はジークの袖を引っ張った。


「帝国としてはどうなのかしら。ランズデール家が、王国で大領を得てしまうことになるけれど、問題はないの? 」


「あぁ、問題ないな。好きにしてくれ」


私の懸念に、余裕綽々なお言葉が返ってきた。


理由はたくさんあった。

ランズデール家は、私の実家であるため、如何に大きくなろうとも、政治的に不安がないこと。

王国の王家から見れば大領であっても、帝国からしてみればたいした規模ではないこと。

集権化をすすめる上では、むしろ望ましい動きであること。


そもそも、でかいだけの領主貴族などより、アリシアのほうが、よっぽど怖いこと。

などなど、要するに自由にして良いとのことだ。



「強いて言うなら、土地を相続させるときは、子供に細かく分配したほうが良いぞ。でなければ、相続税で相当もっていかれるはずだ」


最後に、ジークは、私の想定とは違うアドバイスをくれた。

なんでも帝国では、大きな土地を所有していると、相続税が跳ね上がるらしい。

領主貴族を狙った税制度ではなく、不在地主化した金持ちのせいで、国土の開発が遅れるのが嫌らしい。


大変に合理的だ。

そして、帝国に大きな領地を持つ貴族がいない理由もよくわかった。

不動産は、現金なり証券なりにしておかないと、税金ばかりとられてしまうのだろう。


「その話は、あまり、私の状況とは関係なさそうだな、ジークハルト君! 」


「ああ、そうだろうな、ラベル」


含み笑いのジークハルトである。


父の様子を見る限り、アデルとの婚約は気乗りしないようだ。

私は、少し安心した。

これで、父がノリノリだったら、私としては、感情の置き場に困ってしまう。


「お父様の希望としてはどうなのかしら」


「再婚自体は考えている。ただ、できれば年齢的に釣り合う相手が望ましい」


父の感覚としては、二十代後半から三十代後半、要は年回りの合う相手が良いとのことだ。

これに魔力の問題が加わり、アリシアを煩わせたりせず、慎みがあり、父の仕事に理解があって、気立てが良い女性が最低条件だ。


「……以上の条件を満たす女性を、私に紹介してくれないか、アリシア」


私は白目を向いた。

父が言っていることは、至極まっとうな内容だ。

容姿にも身分にも一切触れていない。

父の個人的な希望は、「気立てが良い」のただ一点のみ。

それで、この難易度である。


「もう、この際、年齢については妥協して、アデル嬢でいいのではないか、ラベル殿? 」


「まだ、諦めるには早かろう! アリシア、お前の伝手でなんとかならないか」


うーん。

私の伝手となると、残るは皇后陛下だけである。

父のこの無理難題を、陛下にお伝えした時にどうなるだろうか。

私は想像し、そしてカックリと頭を垂れる。


「皇后陛下なら、あるいはとも思うのですけれど、とてもお願いできません……」


「ああ、やめてやってくれ」


ジークもしみじみと同意する。


カートレーゼ皇后陛下は、大変お優しい方だ。

そして、大変な頑張り屋であらせられる。

私が頼めば、まず間違いなく、二つ返事で引き受けてくれるだろう。

だが依頼の内容がひどい。


目印など無い、広ーい砂浜で、本当にあるのかさえわからない、小さな真珠の粒を探すようなものなのだ。


これで陛下が、なにかしらの実務経験がある人間であったなら、まだ気楽に頼めただろう。

例えば私なら、「無理!」って言って、途中で諦める。


お仕事を通じて、人間は、世の中どうしようもない事があるのだと、学ぶのである。

でも私が知る限り、陛下はそういうことが、できない人であるように思う。


だから、おそらく陛下は永遠に頑張ってしまう。

砂浜にうずくまって、涙目になりながら、それでもお義母さまは、私のお願いを叶えようと、ありもしない真珠を探すのだ。


見つかるまで、ずっとずっとずっと。


そんな酷いお願いをするなんて、私には、無理です。

ジークも同じ結論のようであった。


「そもそも、ラベル殿と近しい年回りというのがありえない。候補が少なすぎる」


父ラベルと同年代の女性で、なおかつ独身となると、もう寡婦の方がほとんどである。


また魔力とは、ある種の才能だ。

そのうえで、独身ともなると、帝国でも珍しい、お仕事でバリバリ頑張るキャリアウーマンが多くなる。

その人に仕事を辞めて、慣れもしない公爵夫人の仕事をしてくれと頼むわけだ。


「私なら、絶対に嫌」


「そうであろうなぁ」


父は嘆息する。

そんな父にジークは肩を竦めた。


「親子ほどの年齢差と言うが、前例としては腐るほどあるだろう。気にするほどのことか? 」


「私の考えは違うな、ジークハルト。私はこう考える。『人は、自分に似通った者を伴侶とすべきである』と。そうは思わないかね」


「それは、貴方の結婚哲学か? 」


「いや、一般論だ。前例の多さが、そのまま結果を保障しないことは、君もよく知っているだろう。年の差夫婦の前例が多いのは確かだが、彼らは上手くいっているか? 」


ジークは額を押さえた。

私としても、心当たりがある。

ありすぎるぐらいだ。


上手く行かない例が多いのである。


軍人、というか騎士家では、年齢差がある婚姻は、珍しい話ではなかった。


特に騎士団の男は、嫁を迎えるのが遅い。

一番の理由は、武勲をあげ、出世してからのほうが、良い嫁を迎えられるからだ。


それなりに出世してからとなると、男は、三十も半ばを過ぎてからの結婚になる。

四十を超えることも、しばしばだ。

一方の嫁であるが、こちらは、成人も迎えたばかりの少女であることも珍しくない。


二十以上の年の差夫婦だ。

政略結婚として、至極ありふれたこの関係は、しかし頻繁に家庭内の問題を引き起こした。


まずは、妻の側の問題だ。

婚姻が、家の利益で結ばれた関係である以上、妻は夫に対して恋愛感情を抱いていない。

ある意味、生物しての本能であるが、異性としてみるなら年の近しい相手を意識する。


年の近しい相手。

それは当然、夫ではありえない。


結果問題が発生する。

浮気だ。


同じ年頃の自分が言うのも何だが、十代も終わり頃なんて、遊びたい盛りだ。

いや、私については、ここ数年、勤労少女で頑張ってきたのである。

遊ぶ相手はジークだけであるし、それについては見逃してもらいたい。


だが、有閑夫人となった女の子たちは違う。

夫が留守にする間に、遊びの延長で、不貞が働かれることが多かった。

王都で暮らしていれば、その手の醜聞には事欠かない。

私も、噂でよく耳にしたものだ。


当時の私は、王都の連中は平和でいいなぁ、などと、羨ましく思ったものである。


そして夫は夫で問題を抱えていた。

年齢差も引け目としてあるのだろう。

妻となった娘を束縛したり、それがこうじて暴力につながることもある。

妻に落ち度がないにも関わらず、虐待されるような事例もしばしばだった。

貞操帯なんて冗談みたいな器具が、発明されるわけである。


父は机の上で、手を組み、指を遊ばせる。


「私がアデル嬢の申し出を、ためらう理由も分かるだろう? 」


「今回は、アデル側からの申し出でしょう? 彼女は誠実よ。その点については、心配いらないわ。お父様が浮気をした日には、どうなるかはわからないけど」


知らぬ間にアデルの肩を持っていた。

いや、たしかに、この手の醜聞に関してであれば、アデルは大丈夫なはずだ。

あの小さな女帝は、夫以外の男には、指一本触れさせないだろう。

なにせ、指に触れようとした王太子の手すら、払い除けた女なのだ。


父も、妻となった女性に無体を働くような人間ではない。

むしろ、父が無体を働かれないように、気をつけねばならないかもしれぬ。


いや、流石にそれはないか。


父の悩みは根深かかった。


「だが、後妻を迎えないという選択肢も、もう難しいのだ。既に相当な数の申込みが来ている」


それから、父は、机の上に、どん、と木箱を置いた。

箱の中には紙の山だ。

綺麗な便箋がぎっしりと詰まっている。

一枚を手に取れば、婚約申し込みのお手紙だった。

当然送り主はアデルではない。


百、いや二百以上か。

私の想像以上の量だった。


「半分以上、お前のせいだぞ、アリシア」


「えぇ!? 」


父にじとりと睨めつけられて、私は一歩後ずさった。


私のせい。


言われて、私はようやく合点した。

やばい、そりゃそうである。

政略結婚を考えるなら、父はとんでもない優良物件だった。


次期女王アリシアは、既に婚約済みだ。

しかし、彼女と縁を結ぶ道が、まだ一つだけ残っている。

アリシアの父、ラベルと縁付けばいいのだ。


ラベルは、未だに独身であった。

彼は、伴侶を亡くして以来、独り身を貫いているが、残る生涯を亡妻に捧げたわけではない。


単に縁が無かっただけである。


周囲から見れば、狙い目であった。


そして、つい最近まで、非モテ街道を突っ走っていた父に、唐突なモテ期が到来する。

父娘そろってモテ期である。

私とお父様は、仲、いいからね。

こと、これに関しては、これっぽっちも嬉しくない。


単に婚約話が増えただけなら、選り取りみどりの状況を喜んでいればいい。

娘の私としては、正直、心中複雑であるが、お相手の候補が多ければ、良いめぐりあわせがあるかもしれぬ。


しかし、だ。

父ラベルの婚姻に関して言えば、得られる余録が大きすぎた。

ラベル自身は、富強をもってならすランズデール家当主。

加えて義娘になるアリシアは王国の女王であり、とどめに義息子ジークハルトが、帝国の次期皇帝なのだ。


もし、万が一、身内の娘がラベルに見初められたなら、ドリームでジャンボな未来をゲットできるのである。


故に、本来分別ある者たちでさえ、この結婚話には目の色を変えた。

多少の無理を通してでも、狙う価値がある、いい話だったのだ。


そう、多少の無理なら、利得に対して釣り合ってしまう。


まず、婚約申し込みの数が異常に多かった。

貴族家のみならず、一部の富豪までもが、こぞって釣書を、ランズデールに送りつけた。

どこから嗅ぎつけたのか、帝国からも何通か、話が来ているらしい。


父は、魔力があることを、最低条件として提示した。

百人に一人しかいない条件だ。

逆に言えば、、百人の女性がいれば、一人は該当するということでもある。

これが混乱に拍車をかけた。


容姿の優れた魔力持ちの娘を、市井から探してきて、養子にするぐらいなら可愛いほうだ。

中には、夫もいる女性を無理やり別れさせ、こちらに送りつけようとした輩までいた。


父は当然、その非常識な申し出を叩き返した。


「私が相手を決めるまでは、騒ぎが続きそうなのだ。なにもしないわけにもいかぬ」


話を聞く限り、現状一番良さそうな一手が、アデルとの婚約なのだそうだ。

年齢以外は、問題ない。

年の差婚から来る弊害も、父とアデルに関しては、大きな問題にならないだろう。


アデルの同級生だった私には、ちょっと抵抗がある。

だが、真剣に考えるべき縁談であるということは間違いなかった。


「おおよその話はわかったわ。アデルからの話を受けるのが一番良さそうではある。で、他に懸念があるのかしら? もちろん年齢以外で」


父が、盛大に眉をしかめた。


「おうとも」


父は絞り出すように声を出す。


あるのか、問題が。

父は頭痛をこらえるように、眉間に太い指をあてた。


「アリシアと同い年の娘から、いきなり『ずっとお慕い申し上げておりました』とか言われてみろ。しかもこれみよがしに胡散臭い笑顔で、だ。娘の学友だろうが警戒するわ! 」


「それを聞くだけだと、結婚詐欺の香りがするな 」


これにはジークも苦笑い。


Oh……。


ここで話が繋がった。

当然のことであるが、父とアデルは世代が違う。

ゆえに彼女のひととなりを、父が知る機会は無かったのである。


政略結婚なら話はわかるが、それ以外の意図があるとなれば話は別だ。

いきなり「好きだ」と求婚してきたアデルのことを、父は警戒しているらしい。


ちなみにアデルちゃんは、緊張すると所作が演技っぽくなり、胡散臭さが爆発する。


やっちまった感があるなぁ。


うーむ。


私は内心で唸ってしまう。

これはアデルに事情を聞くべきだろう。


「わかりました。私が事情をアデルに聞いてみます」


「そうだな、それが良さそうだ。頼むぞ、アリシア」


こうして、アデルが持ってきた話を、アデルに返すことが決まった。

なんだか、振り出しに戻った感があるね。


私はあまり気にしないことにした。

アリシア「メアリは、私の母になってくれるかもしれなかった女性だ!」

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