アデルとわたし
楽しいお祭りが終わった。
終わりよければ全て良し。
飲んで食べて踊って、良いお祭りにできたと思う。
最後に、極めて不本意な結末が待っていたような気がしないでもないけれど、そのことはいい。
忘れた。
「もう! 夜中に大声を出さないでくださいまし。吃驚してしまいましたわ」
「はぁい」
なんでもはっきり口にするエリスに、苦情を言われながら、身支度をする。今日から、お仕事再開である。
平日か。
ちょっとアンニュイなアリシアである。
「休み明けは、少しだけ憂鬱になるわよね」
「いえ、別に」
「普段通りですね」
顔を見合わせたメアリとクラリッサは、私の言葉を、ためらいもなく否定する。
そうですか。
日頃からいい空気吸ってますもんね、あなた達。
果たして日常が楽しいのか、お休みの日も、私の手がかかって大変なのか。
それを知るすべが無い私は、気にせず執務に取り掛かった。
今の私のお仕事であるが、もっぱら王都を攻略する準備と、戦後の体制に関する話し合いだ。
名目上、王国の女王は私であるが、ゆくゆくは帝国の皇后としてのお仕事も待っている。
思い返してみても、おそろしいまでの出世ぶりだ。
一年前にこの状況を予想できた人間など、だれもおるまい。
今日は、ジークと父と私で、三者首脳会談である。
ジークが帝国側、父が王国側の代表で、私は間を取り持つべくウロウロする係である。
私の存在意義が問われる。
「王国の状況が落ち着き次第、アリシアには、帝都に来てもらう予定だ」
「王国の女王が、常に不在というのも困るのだがな」
「私、体は一つなんですけれど」
なかなか、ややこしい事になっていた。
実際の王国の統治は、父と先王の旧臣、それに帝国から来た官僚団によって進められる予定だ。
ただ、統治者が長期不在というのも、望ましい状態ではない。
このままだと私は、遊牧民のように、夏は帝都で、冬は王都みたいな巡業生活になってしまう。
いや、それも楽しいかもしれない。
半年ごとの移動が大変なら、一年ごとにしても良いのだ。
かなり、お金がかかりそうだけど。
王国の王位は、私一代限りで終わりの予定だ。
その後、王国は、帝国に組み込まれる予定である。
ジークと私の間にできた子供は、帝位継承権も王位継承権も第一位になるので、とてもおさまりが良いのである。
女王アリシアの統治とは、王国が帝国に吸収合併されるまでの移行期間と同義である。
「私とジークの間にできた二人目の子供を、お父様の養子にするという案も、ありますけれど」
「……うぅむ、そうだな。それについても少し考えさせてくれ。母親の手から、子供を取り上げるのは忍びない」
一応、代替案を出してはみたが、父は気乗りしないようだ。
私としても、採りたい手段ではない。
目先を変えるかのように、父は別の話を切り出した。
「未来の話ばかりして、足元をすくわれるわけにもいかんな。王都攻略の準備はどうなっている?」
「王都に駐留する騎士団の誘引については、概ね計画通りに進行中だ。作戦予定位置で、王国側の偵察兵を確認している。じきに連中も、穴蔵から出てくるだろう」
計画通りに事が運べば、盆地の底で身動きがとれくなった王国軍を捕捉できるはずだ。
飢えて士気がどん底にまで落ちた敵軍を、上から一方的に攻撃するのである。
いかに敵を倒すかよりも、被害をどう減らすかが重要になるだろう。
「ランズデール騎兵隊は、弓は使えるのか? 」
「使える者もいますね。私は使えないですけれど」
「私は使えるぞ! それに古参の者たちも、ほとんどの人間が使えるはずだ」
「他の者達はともかく、お父様の出撃はだめです」
私はピシャリと言い放つ。
ジークは訝しげに目を細める。
「ラベル殿は、脚を負傷されているはずでは?」
「もうほとんど治っとるわ。遠征は無理でも、この程度の戦なら何ほどのこともない」
「でも、だめです。そういう約束でしょう」
父は言い張ったが、私も一歩も譲らない。
出る出ないの押し問答が始まった。
父と私が睨み合う。
目線と目線がぶつかってバチバチ火花が飛び交った。
困惑したジークが、手を挙げる。
「すまない、状況が読めないんだが」
「ジークはご存知ありませんものね。経緯を説明いたしますわ」
説明しよう。
父ラベルの出撃禁止問題、略して父の出禁の発端は、四年前に遡る。
北方戦線で父が負傷したことが始まりだ。
負傷した父の陣代として、私アリシアは初陣を果たす。
この時、私はそれなりに戦果をあげ、手応えをつかんだ。
私、いけるじゃん! と思ったのだ。
私は、すっかりその気になり、自分の進路として軍人を志望したのであるが、これに、父ラベルが猛反対したのである。
危険であると。
無論、危険は、承知の上だった。
私だっていくさは怖いが、負傷中の父を戦地に送るのはもっと怖い。
ただ待つ身も辛いのである。
ゆえに、私は、彼の出陣を頑として認めなかった。
当時の父は、たしかに動ける状態になく、父は一つの条件を付けたうえで、私の戦争参加を容認した。
アリシアが、一度でも負けたなら、兵権を父に返す、と。
これが私が軍人になる条件だった。
私はそれを飲む代わりに、父にも一つ約束をさせた。
だったら、私が負けるまで、父は絶対に出撃してはならない、と。
以来足掛け四年間、わたしはただの一度も負けていない。
故に、その約束は今も生きている。
父の出禁は続いていた。
父が叫ぶ。
「まさか四年間、本当に一度も負けないとは思わなんだわ! 」
これにジークは苦笑いだ。
私と戦った相手には、帝国軍も含まれる。
みんな、負け続けたってことだからね。
四年前、父が負った傷は深刻なものだった。
だが、それ以上に、王国の状況は極めて逼迫していたのである。
父は、怪我をおしてでも戦うつもりであった。
当然、療養の時間など、とれるはずもない。
医者は、父を止めたけれど、彼はそれを突っぱねた。
「この状態で出撃すれば、怪我は悪化するばかりですぞ」
「止むを得んわ。足が、動かなくなるまでは戦わせてもらう。いざとなれば切り落とすだけのことよ」
当時の父はそう言って憚らず、出撃を強行しようとした。
それを、私が押しとどめた恰好だ。
ドクターストップに、娘の嘆願が加わって、父はようやく諦めたのである。
もっともアリシアの出征は、一度か二度に限った話だと、父は考えていたようだ。
しかし、私はそんなつもりは毛頭なかった。
父の脚が完治するまで、自宅療養を続けさせる心づもりであった。
父は、自分のため、そして娘のため、怪我の治療に励んだ。
四年間かけてのリハビリである。
専業の運動選手でも、ここまで長期間のリハビリは珍しい。
ついでに、人生歴十八年の私から言わせてもらおう。
四年間は長い。
結果的に、十分過ぎるほどの療養期間を手に入れてしまった父は、当初の見立てよりも贅沢な環境で、治療に専念できた。
全盛期のように、何ヶ月にもわたる遠征を指揮するのは難しいかもしれない。
しかし、歩いたり、騎馬で行動するぐらいは、何の問題も無いところまで回復したのである。
私も、頑張った甲斐があったというものだ。
得意げな私アリシアは、鼻息も荒い。
一方の父は、旗色が悪い。
「疲労や負荷がかかれば、古傷に響く。だがそれだけだ。何の問題もない」
「その疲労とやらは、どの程度のお話なのですか。激戦で、不覚をとる恐れがある以上、出撃など認められません」
「身体強化を使うお前なら、大した問題ではないことぐらいわかるだろう、アリシア! 」
身体強化に関して言えば、父の言も、もっともである。
怪我をかばうのにも、体を保護するのにも魔法は役立つ。
それに父なら、多少脚がゆがんでも、一定時間は戦えるだろう。
しかし、その後、脚が動く保証はない。
やっぱり父の出撃はだめだ。
私は、お父様、絶対に守り隊、隊長のアリシアなのだ。
激しく意見を戦わせる、父と私。
それを、「なんだこれ」、という顔で眺めるジーク。
議論は平行線をたどった。
そこに、来客を告げる伝令が入る。
何事かね。
肩をいからせ息を荒げながら、殺気混じりの視線を向ければ、伝令がびくっとしながら敬礼する。
「バールモンド辺境伯家陣代として、アデル・バールモンド様が、お見えになりました」
アデル・バールモンド辺境伯令嬢。
北部を守るバールモンド家の一人娘で、私のお友達である。
予期せぬ来客に、ジークは面白そうに片眉を動かし、父はなぜか気まずそうに顔をしかめた。
父の表情がちょっと気になるな。
なにか、あちらさんとあったのかしら。
まぁ、アデルと個人的に親交があるのは私だ。
私が挨拶するべきであろう。
「私が迎えに出ます」
伝令に従って、私は部屋を出た。
なにはともあれ、一年ぶりになる学友との再会である。
何事かと思う気持ちもあったが、久々に会うのが楽しみだったのだ。
私は、領館の前でアデルを出迎えた。
彼女は、馬車ではなく騎馬で来たようだ。
既に乗馬を預けたらしいアデルは、門前で二十名ほどの兵を引き連れて、待機していた。
アデル自身も、鎖帷子に、胸甲と関節部を守るだけの軽装備ではあったが、きちんと武装している。
小柄な体に、きれいな栗毛をおかっぱに切りそろえて、なかなか凛々しい武者振りであった。
彼らの雰囲気は、皆、一様に明るい。
悪い知らせでは無さそうだ。
玄関に姿を見せた私に目を止めて、アデルが破顔して手を振った。
それから、一歩進み出て敬礼する。
「お久しぶりです。アリシア様」
「前みたいに、呼び捨てでいいよ、アデル。それで何か御用? 辺境伯家に関わることかしら」
「半分はね。残りの半分は、個人的なこと」
アデルの物言いは穏やかだ。
「いきなり来ちゃってごめんなさい、でも、なるべく早く、話したいことがあったのよ」
小首を傾げながらに謝罪する。
可愛こぶってるんじゃないぞ! 私に効くんだからな!
いきなりのお宅訪問は、私も何度かさせてもらったことがある。
今回は立場が逆になった格好だ。
うちとバールモンド家との仲でもある。
気にすることなど、なにもない。
私は快く彼女を迎え入れた。
でも個人的なことってなんだろう。
家の者に言いつけて、バールモンド家の兵士達を、仮の宿泊所に案内させる。
私はアデルと連れ立って屋敷へと戻った。
今は夏、暑い季節だ。
アデルは、しとど流れる汗を拭いながら、手であおいで胸元に風を入れていた。
「服を持ってこなかったのよ。何着か貸してもらえない? 」
「いいよ。これで前に、私が借りた分はちゃらね」
「ええ、それでよろしくってよ」
彼女は笑う。
北方遠征のとき、私はアデルにお世話になったのだ。
戦争中、女の私とメアリを心配して、彼女は居室や服を、なにくれとなく世話してくれた。
おかげで厳しい戦闘も、戦い抜けたのである。
ガールズトークもした仲だ。
料理の話など特に盛り上がった。
蛮族の調理法だ。
どうやったら、蛮族を追い出せるかとか、効果的な防衛戦の方法とか、もっと物騒な話とかを、私とアデルとメアリ、三人で、夜通し語り合ったものである。
アデルは強硬派で、私は穏健派、メアリはちょうど間ぐらいの考え方だ。
人生哲学がもろに出る。
一言で言うなら、アデルはおっかない娘であった。
彼女の見た目は可愛い。
小柄でちんまりした仕草もあいまって、リスのような雰囲気の女の子だ。
けれど、長らく北部の辺土を守ってきた、彼女のバールモンド家は、ぬくぬくした南部の私達ランズデールよりも、ずっと厳しいものの見方をしている。
彼女の家は、蛮族の脅威と、常に向かいあってきたのだ。
その分、考え方が、とてもシビアなのである。
でも、アデルはすごく情が深くて、一度懐に入れた相手にはとても優しい一面もある。
私も大変良くしてもらった。
私は彼女のことが、大好きなのだ。
汗を流せるよう、お湯を用意してもらい、アデルを案内する。
着替えは、私の服だと寸法が合わなかったので、メアリから借りることになった。
「相変わらず、同性から殺意を浴びそうなスタイルしてますのね」
とは、アデルの言だ胸元が涼しそう。
若干目がすわり気味のアデルを、私室に招いて、私はお茶会の準備を整えた。
テーブルをアデルと私で囲む。
「それで話って何かしら」
「一つは、バールモンド家で保護することになった、王都の貴族のことですわ」
「王都の貴族を保護? 」
ええ、保護です。
アデルは、苦笑気味に首肯した。
ちょっと意外な感じだ。
「クローディアから頼まれてね」
「ほほう」
私は顎を撫でた。
クローディアは、王都の貴族のご令嬢だ。
実家は伯爵家。
学園時代、私とアデルの同級生で、実家の立場を越えて、かなり親しくしていた間柄である。
一応、私にも同級生とかいたのである。
友達は多くなかった、というかほぼぼっち気味だったけどね。
クローディアは、見た目こそ、豪勢なお嬢様であったのだが、中身は大変に素直な子であった。
楽しい性格の女の子であったはずだ。
彼女の実家は宮廷貴族だ。
王都の宮廷貴族も、汚職ばかりしているわけではない。
クローディアの家は、まっとうな手段で功績を挙げて、現在の地位を手に入れていた。
ただ、宮廷貴族の常として、私達のランズデール家とは仲が悪かった。
故に、当初は、彼ら、クローディアの実家も、ジョンに与する予定であったそうだ。
だが、状況が日を追って悪化するに従い、彼らは焦った。
まともに状況を俯瞰すれば、どう考えても王都に残るのは危うい。
最悪でも降伏すれば、ある程度の地位は保証されるだろうという楽観論が、宮廷では多数派だった。
だが、クローディア達は、そうは考えなかった。
領主連合に、なんとか取り成しを頼もう。
彼らは決断した。
その中で、唯一、領主諸侯に伝手があったのが、クローディアというわけである。
中々の根性娘であるクローディアは、一番近いバールモンド辺境伯の陣地へ、直談判に出発する。
彼女の家に伝手がある商会に頼み込んで、馬車を手配してもらったそうだ。
王都の郊外は、今、かなり治安が悪い。
王都の騎士団が暴れているせいだ。
そこを護衛も付けない馬車に乗って、女の身一つで突っ切るのだ。
相当な覚悟が必要だっただろう。
なんとかバールモンド辺境伯の元にたどり着いたクローディアは、必死の思いで、アデルに面会を取り付けた。
しかしアデルは、最初、クローディアの嘆願をはねつけた。
「貴女個人の身柄と身分は保証するけれど、それ以外の処遇については、領主連合の決定次第よ」
当然の対応だ。
私でも、そう言わざるを得ない。
個別の事案に逐一、例外を作っていては、対処が追いつかなくなってしまう。
拒絶されたクローディアは、だが諦めなかった。
迷いない動きで膝をつく。
それから、額を地面に擦り付けて頼み込んだ。
現在の地位も財産も差し出します。
身柄と、できれば最低限の生活についてだけでも、保障してもらえないでしょうか、と。
涙と土に綺麗な顔を濡らしながら、クローディアは懇願したそうだ。
彼女は、目立たぬよう平民と同じ服を着ていた。
不自由な旅で、ほこりにまみれて、満足に食事も睡眠も取れずにやつれた彼女を、アデルは突き放すことができなかった。
アデルは折れた。
地位と財産まで放棄すると言っているのだ。
これを容れないようでは、連合の評判にも関わる。
身柄の保護については、約束させてもらいたい。
父を説得し、クローディアの伝書を、王都の内通者経由で、彼女の実家まで届けさせた。
これを見た彼女の家の者たちは、家僕に暇を出し、すぐさま脱出の準備に取り掛かる。
そして、一族郎党に親類縁者、合わせて二十人余りが、混乱する王都を抜け出したそうだ。
彼らは、そのままバールモンド家の預かりになっているとのこと。
「クローディア達は、王国での地位を、放棄すると言っているわ。でも何もなしでは、困窮してしまうでしょう? 閑職でもいいから、戦後、役に就く機会をあげたいのよ」
「なるほどね」
もちろん、能力を鑑みてのことよ。
アデルは、そう付け加えるのを忘れなかった。
戦後のお話である。
まぁ出てくるよね、こういう利益分配の話は。
私は、目をつむり、腕を組み、首を捻り、足をとんとんと鳴らす。
アデルは私の親友だ。
なぜ親友かと言えば、彼女とは話ができるからだ。
私は、彼女に一つ聞いておきたいことがあった。
「アデルちゃん、この戦争の大義って、なんだと思う? 私達が戦う目的といってもいいけれど」
「国防よ。私たちは、国を守らない王家を倒す」
彼女自身も、考えていたのだろう。
淀みない言葉が唇から紡がれる。
まっとうな答えだった。
皆が納得するだろう。
でも私の意見はちょっと違う。
「そうね。でも究極的なところを言うなら、これはただの権力争いだと私は思う。王都のやり方だと、私たちは生きることができない。だから戦って彼らを倒す。その上で、彼らよりましな国防体制や、公平な税制を導入する。でも、それは、簒奪を正当化するための方便だと私は思う」
「アリシアちゃんは、相変わらず、頭でっかちで頑固だね」
アデルが苦笑する。
私もつられて苦笑いだ。
私アリシアをして、思慮深いとか、頭でっかちとか評してくれるのは、王国中探しても彼女だけだ。
まぁ、得難い友人であろう。
頭でっかちなアリシアは厳かに宣言した。
「戦後の利益分配に関しては、私アリシアからは、一切申し上げることはできません。でも前向きに考えておきます」
「なによそれ。宮廷の答弁みたい」
「そうよ、私が宮廷のトップに立つのだもの。当然でしょ」
にやりと口の端を釣り上げれば、アデルが私のほっぺをつつく。
どっかの従者の悪い真似だ。
やめたまえアデル君、そこは私の弱点なのだよ。
私達が笑い合えば、側近の四人も苦笑をこぼした。
もちろん、悪いようにはしないつもりだ。
でも、ここでは何も言えないな。
「私がこう言っても、アデルちゃんは、別に腹案があるんでしょう? 」
「まぁね。北は、上も下も人が足りないから、どこにも行くところがないなら、うちで働いてもらうつもり。直臣じゃなくて、陪臣になっちゃうから、それもどうかなって思ったの」
アデルが舌を出す。
新王朝は、帝国から人材の供給を受けられるけど、領主諸侯はそうもいかない。
場合によっては、アデルに預かってもらうほうが良いかもしれないな、と私は思った。
「家としての話はそれだけ? 」
「そうね。他の案件については、ラベル様と、ジークハルト様を交えてお話したほうがよさそう。それじゃ、本題の、私個人の話について聞いてもらえるかしら」
「ええ、いいわよ。聞かせて頂戴 」
「家も関わってくることなのだけど、まぁ私の個人的な想いかな」
アデルは和やかムードだ。
ほうほう、それで。
私は何の心構えもなく、アデルに先を促した。
「私、ラベル様に婚約を申し込んだのよ。そのお返事をもらいたくって」
アデルがはにかむ。
アリシアは、頭の中が白くなる。
耳から入った情報を、私のクレバーな脳みそが受取拒否したようだった。
ラベル「一応言っておく。私は、まだうんと言ってないからな」




