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戦姫アリシア物語  作者: mery/長門圭祐
女王アリシア
64/116

兵糧攻めとわたし

私たちは、今、王国軍と戦争をしている。


王国軍は弱い。

とても弱い。

にも関わらず、私はここカゼッセルでお茶を楽しんでいて、王都の玉座には、ジョンが座ったままである。

弱い軍しか持たないはずの王国は、強い領主連合と、それよりもっと強い帝国を敵に回しながら、未だに滅んでいないのだ。


これはなぜか。

領主連合のアリシアや帝国のジークハルトが色恋沙汰に忙しいから、というわけではもちろん無い。


いや、ほんとだよ。


流石の私も、デートを戦争に優先させたりはしないよ。

失礼しちゃうなぁ、もう!


理由は、王都という都市にあった。

王都を力づくで攻め落とすのが、とてつもなく難しいのである。

攻める側からすると、王都を守る城壁が、非常に厄介なのだ。


あの城壁には、王都から逃げ出すときにも、苦労させられた。

けれど、外から攻めるときは、それ以上の困難を覚悟しなければならないのである。


王都の城壁は、高くて分厚い。

アリシアが体当りしても、びくともしない強度がある。

しかも高さは、低いところでも20アリシア、高いところは30アリシアを軽く超える。


例えば、うちの実家のランズデール領都は、一部は石壁すら作れず、木の柵で囲っている。

それと比べれば、まったく、ひどい格差であった。


しかもあの王都の城壁、全部、私達から絞りとった税金で作ってるんだよ。

ほんと腹が立つ。


そんな、厄介な城壁を正面から突破するのは、さすがの帝国軍といえど、骨が折れる作業になる。

無理攻めするには、大きくて重い攻城兵器を、えっちらおっちら運んでいくか、現地で組み立てて、日夜、延々と攻め立てなければならないのだ。


城攻めは守る側が有利だ。

力押しでかかれば、私たちの犠牲だって増えるだろう。

私は領軍であれ、帝国軍であれ、自軍兵士の皆さんには、無駄に死んで欲しくないのだ。

よって、できればこの手は避けたかった。


最終決戦兵器アリシアに、壁登りをさせて強行突破する手もないではない。

しかし、実は私は、高所恐怖症なのだ。

十階建てより高い建物には、できれば登りたくないのである。

だって落ちたら、絶対に怪我するもん。

やれと言われたら登るけど、多分ジークも止めるだろう。


ではどうするか。

お城を攻める時、力攻めが無理な場合は、もう一ついい方法があるのだ。


それが兵糧攻めである。

補給を断って、城の中の食料が尽きるのを待つのである。

安全で確実だが、時間がかかる気長な戦術だ。


やることは待つだけ。


お気づき頂けただろうか。


うふふ、その通りである。

アリシアはここ最近、のんべんだらりと過ごしている。

これは、無為に時を過ごしているのでは無い。

私たちは、今まさに、王都を兵糧攻めにしている真っ最中なのである。


「メアリ、王国軍の兵糧の残りは、あとどのくらいなのかしら。貴女の所見を聞かせてくれる?」


「城にこもれば、秋の収穫まで、ぎりぎりというところかと思われます。あとは、闇市場に出回る麦の量次第ですけれど」


「そうね。そんなところでしょうね」


私は、頷いた。


普通の兵糧攻めは、お城を兵隊で囲む。

王都を囲むなら、最低でも数万人は、動員する必要があるだろう。

その分の兵糧も武器も必要であるし、人件費だって当然かかる。


その点、帝国はすごかった。


なにしろ王国を、国ごと兵糧攻めにできるのだ。


帝国は、ジョンの失言に対する反撃として、経済制裁を発動していた。

結果、今の王国は、満足に食料を調達できていない。


これ、すなわち、兵糧攻めである。


おかげで、私たちは、王都の周りを軍隊で囲んだりしなくとも、王都の補給を断つことができるのだ。


あとは、じっくり真綿で首を締めるように、王都に篭もる王国軍を締め上げて、向こうが音を上げるのを待つだけだ。


時間は私達の味方だ。

どっしりと腰を据えて待っていれば、勝利は向こうから転がり込んでくるのである。


やることがこすっ辛いって?

ふふん、なら良いことを教えてあげる。


私は、戦うのが好きなんじゃない。

勝つのが好きなんだよ!

できるだけ確実に、そして楽に勝つために、私は今こうやって、午後の紅茶を楽しんでいるのである。


王都を監視する領軍からの報告に目を通しながら、私は思案にくれていた。

そろそろ、待つだけではなく、状況に手を加える必要があるかもしれない。


「王都の騎士団は、兵糧が尽きるまで、王都に篭ったままでいるかしら」


「そうしてもらえると、私たちとしては、ありがたい限りですけれど、それを期待するのは、虫が良すぎる気がいたしますね」


「やっぱり、最後の悪あがきは、警戒すべきよねぇ……」


メアリも、私と懸念を同じくしていた。


今の王国に脅威となる相手はいない。

僭主ジョンも、エドワードも、近衛騎士団長の……、えーと名前は忘れてしまったけれど、騎士団長のなにがしも、皆、恐れるような相手ではない。


しかし、王国の騎士団が、未だ万を超える兵力を有するのもまた事実。

彼らが、無秩序な行動、つまり蛮族のするような略奪に走った場合、局地的な戦闘で、被害が出る危険性はおおいにあった。


王都から、武装した暴徒がばらばらに散らばって、郊外を荒らして回るのだ。

たとえ戦争に勝てたとしても、その前に王国が荒廃してしまう。

その後始末をするのは私達だ。

とんでもない大迷惑である。


それに、私は、戦争で泣かされる人は、もう見たくなかった。


なんとかできないかな。

こう、うまいこと王都の兵糧を消費させつつ、彼らが二度と外に出たくなくなるような、おいしい作戦がないものかしら。


私はぐるぐる考え込み、そしてピコンと閃いた。

頭の上で電球が輝く。


乱れ雪月花!


何だろう、変な単語が浮かんだ。

いや、それはいい。

北方遠征で、ジークが蛮族を誘い出してやっつけた作戦、あれを応用してみてはどうだろうか。


しばし自分の頭で検討してから、私は、にんまりと笑みを浮かべた。


いけるかもしれない。


準備に少し手間がかかるけれど、上手く行けば、敵軍に、兵糧を無駄遣いさせたうえで、王都に釘付けにできるはずだ。


「クラリッサ、私達の食料備蓄に、どの程度の余剰がある確認して頂戴」


「はっ」


「それと荷駄についても、動員数を確認して。使う荷馬車に、細工ができると最高ね」


クラリッサが嬉しそうに笑う。

クラリッサは、仕事を任せると喜んでくれるのだ。

ありがたいけど、変わってる娘だと思う。


頼りになる側近に、お仕事を割り振った私は、メアリと作戦の立案に取り掛かった。



そして作戦案が出来上がった。


私は、それをジークに提出する。

その場で、二言三言、言葉を交わし、彼は、検討してみようと言ってから、唇の端をつり上げた。

そして翌日、私達は彼の執務室に、呼び出されたのである。


呼び出しは、おそらく作戦会議の招集だ。

私は、メアリと連れだって、執務室へと足を運んだ。

部屋には、ジーク、コンラートの他に、なぜか主治医のヘルマン先生までもが待機していた。


やばい。


ヘルマン先生がいる時点で、嫌な予感しかしない。

ジークが口を開く。


「今回の王国への出征だが、アリシアには留守居を任せたい」


やっぱりだ!

私は反駁した。


「承服いたしかねます。ジークハルト殿下」


「これが、俺の命令であってもか」


「おそらく、殿下はそうはされないであろうと、私は確信しております」


ジークとしばし見つめ合う。

私から兵権を取り上げると、犠牲が増える可能性が高いのだ。

わかっておくれ、ジーク。


私に折れる気配が無いのを、見て取ったのだろう、諦めたようにジークが肩を落とす。


彼は、苦笑を浮かべてから、短く嘆息した。


「まぁ、しかたないな。領主連合との連携もある。実際問題、アリシアをこの戦いから外すのは難しい。わかってはいるんだ」

彼はここで、一つ区切った。


「だが、妃としての役割もある貴女を、戦場に連れ出すのは、俺個人としては気が進まない」


「今更でございましょう。北方遠征でも私は指揮をとりました」


「当時と今とでは、状況が違うだろう、アリシア」


私は、ヘルマン先生をちらりと伺う。


私の視線を受けたヘルマン先生は、ゴホンと一つ咳払いをした。

いつ見ても、威厳がある。


「止むをえますまい。しかし今回の遠征には、私も同道させていただきますぞ」


「ヘルマン先生、それは、危険ですわ!」


「その言葉、そっくりそのままお返ししますぞ!」


ヘルマン先生は大喝した。


そしてここから、不毛な言い争いの始まりである。

私とヘルマン先生恒例の、年の差漫才だ。

時々、どつき漫才に発展する。

私は、当然、たたかれ役である。


私がヘルマン先生に、年寄りの冷や水だと言えば、皇妃が陣頭指揮など、聞いたことが無いと言い返される。


私は先生のことを心配してるのに!

なお、ヘルマン先生は私のことを心配している模様。


完全に水掛け論であった。

私とヘルマン先生は、至極、真面目であるのだが、私たちを見守る、周りの視線は暖かった。


「どっちもどっちですわね」


とはメアリの言だ。

ぐうの音も出ません。


さんざん言い合ったが、出撃に関しては、既にわがままを通している私のほうが、非常に分が悪かった。


結局、馬車を手配してヘルマン先生も同道することになった。


「もう、怪我などしたら絶対に許しませんからね!」


私が捨て台詞のように吼えれば、ヘルマン先生も他の皆も大笑いだ。


「アリシア様にだけは言われたくありませんぞ」


とは彼の言葉だ。


もう! 私は本気で心配してるのに!

さて、気を取り直して作戦会議である。

ジークが紙片を片手に、地図の一カ所を指し示した。


彼が示した場所は、ランズデール領都と、カゼッセルのちょうど中間辺りの盆地だった。


「アリシアの作戦案だが、面白いと思う。成算も高そうだ。戦場をこちらで指定できるのも良い」


「加えて、空振りしたところで、こちらの補給物資が、無事前線に届くだけです。どうころんでも無駄にはならない」


「ああ、そうなるな」


その場にいる全員が頷く。


もとより、危険の少ない作戦である。

作戦の実施はすんなり決まった。

そのまま私たちは、細部の詰めに入る。


そして完成した今回の作戦計画は、以下のとおりであった。


最初に、王国の宰相経由で、帝国の物資輸送計画を、王国上層部に流す。

当然、これは囮である。

この囮計画に従って、帝国国境から、我が故郷ランズデールまで、大量の兵糧を運ぶ。


兵糧不足の王国軍にとっては、この大量の糧食は格好の獲物に見えるだろう。

これを王国の騎士団に襲撃させるのである。


輸送部隊の総員は、一千ほどを予定する。

彼らは、王国軍に襲撃を受けた際、兵糧を満載した荷車を置き去りに、逃げ出す手はずになっている。


そして、この置き去りにする荷車に、仕掛けをしておくのである。


この時兵糧を運んでいる兵隊は、荷車が、荷物の荷重で壊れるように、細工をしてから遁走する。

王国軍は、強奪した物資を運ぶ途中で、動かなくなった荷車を抱え、立ち往生することになるはずだ。


敵が身動きとれなくなった敵を、私たちの攻撃部隊で、後ろから襲うのだ。


名付けて送り狼戦術。

行きはよいよい、帰しはしない。


攻撃部隊には、当然、ランズデールの部隊を投入する。

足の早い騎兵隊で、追いかけて、囮作戦で引きずり出した王国軍を、ぺしゃんこにしてしまう算段である。


今回の作戦の肝は、敵の兵糧を無駄遣いさせることにある。

城に篭もるより、外で戦うほうが、ずっと沢山の兵糧を消費するのだ。


腹ペコの兵士は、拠点の中でへばっていることはできても、出撃することはできない。

だから出て来る部隊は、兵糧を消費しているし、進撃に際しても十分な糧秣を携行することになる。


よって、のこのこ出てきた敵軍は、沢山の食料を、無駄遣いすることだろう。


もし、敵の司令官が優秀なら、なけなしの兵糧を、こんな博打で消費したりはしない。

また司令官が無能でも、部隊の指揮官が優秀なら、荷車が故障した時点で、罠を察知して逃走する。


だが、司令官も、前線指揮官も、無能な場合どうなるか。


その場合は、略奪した物資を抱えたまま、私たちに襲撃されることになるわけだ。


さて、王国の騎士団には、有能な司令官や指揮官がいるのかな? 私たちは、顔を見合わせてから、意地悪く笑った。


この作戦は、安全で、かつ確実に戦果もあげられるものだ。

だが、問題も無いではなかった。

懸念は、やっぱりお金のことだ。


「囮に使う荷車を含めて、かなりの物資を消費することになります。この点については検討が必要でしょう」


「この程度の浪費など、どうということはない。


それに荷駄についてはちょうどいいあてがある」

私の懸念を、ジークは、問題なしとして一蹴した。

そして彼は、一枚の仕様書を見せたのである。


皆でその紙を覗き込む。


それは、なんと荷車の仕様書であった。

大きな攻城兵器とかじゃ無い。

ただの荷車の仕様書だ。


これでも私は、そこそこ長いこと、軍人をしてきた。

でも、荷車の性能諸元を見るのは、初めてである。


荷車の製品名は、「メタセコイアVTX3」と言った。


すごい、なんだこれ。

私とメアリは、思わず唸った。


重ねていうが、これ、単なる荷車である。

大八車と大差ないビジュアルしてるのに、なんてかっこいい名前を、もらってやがるんだ。


私は、荷車にこの名を授けた開発者のセンスに、戦慄した。


ジークは、この名前負けそうな荷車について、説明をしてくれた。


「こいつは、精密兵器の輸送を念頭に開発された代物でな」


なんでも、この荷車、サスペンションに工夫がしてあって、振動が少ないのだそうである。

ふんわりした振動吸収性能を誇るのだと、仕様書には記されていた。

投石機とか運ぶ台車なのに、お姫様の馬車みたいな仕様である。


しかし、このメタセコイアVTX3には、欠点もある。


素敵な乗り心地を実現させた結果、部品が多くなり、車体重量が大幅に増えてしまったのだ。


つまり重い。

運ぶのがとても大変なのだそうだ。

荷車なのに。


しかも機構が複雑化したせいで、故障も起こりやすい。

さらに、一部の部品を取り外すと、ちょっと動かすだけで、車軸が歪んで動かなくなってしまうのだとか。


なんというか、致命的な欠陥のオンパレードであった。

どうして、こんなもの納入しちゃったの、帝国軍?

私の疑問は尽きなかったが、とにかく今回の囮作戦にうってつけの、不良品であった。


「在庫処分ですわね」


「ああ、そうなる。いい加減、処分先に困っていたのだ。囮として使い潰すには、ちょうどよかろう」


メアリの言葉に、ジークは重々しく頷いた。


ちなみにこの欠陥品、生分解される素材しか使っていないそうで、環境に優しい新時代の荷車であるそうだ。

戦場で遺棄されても、土壌を汚染したりせず、安心だとか。


拘るところが間違ってる。

私は、首まで出かかった突っ込みの言葉を、頑張って飲み込んだのだった。



会議を終えた私達は、私室に戻った。

休憩である。


一仕事終えた後の解放感は、格別だった。

今回は、私、メインの作戦案を立案したしね。

私、頑張った。


自分へのご褒美を用意せねばならない。


私にとってのご褒美と言えば、やっぱり、甘くて美味しいおやつである。

私はいそいそと、備え付けのお菓子箱を取り出して、その蓋を空けた。


仕事終わりに口にする、甘くて美味しいお菓子の味は、とにかく最高なのである。

今日はどれにしようかしらん。


ぱかり。


私は蓋を開けた。

やけに容れ物が軽いな、と訝しく思っていた私を迎えたのは、空っぽの木箱の底だった。


中身がない!


私は、大いに狼狽えた。

どこに行ったの、私のお菓子ちゃん!

私は腹心を呼んだ。

一大事だよ、メアリ!


「メアリ、私のお菓子がないわ!」


「ええ、私が、別の場所に移しましたから」


「どういうこと!? すぐに出して」


「では、その前に、この前の健康診断の結果をお見せ下さい。もう、出たのでしょう?」


メアリがすっと右手を出して、私のプライバシー情報を督促した。

私は、さーっと青くなる。


確かに私は、診断結果が記された帳票を、ヘルマン先生から受け取っていた。

そこには、私の怠惰なお姫様生活のつけが、ばっちり定量化されて記されていた。


ぐっと伸びた身長はともかく、激増した体重を見咎められるのはまずい。


いやしかし、痩過ぎ半歩手前だった私の体重が、標準になっただけである。

なにを恐れることがある。

大丈夫、大丈夫、私の体重は標準なのだ。


私はおそるおそる、メアリに、その紙片を提出した。


メアリは、診断結果を一瞥した。

ちらりと私の顔を見て、もう一度、書面に視線を戻す。

それから彼女は、私に向かい、厳かに食事制限を言い渡した。


「はい、おやつ禁止ですね」


「どうして!? 私の体重は平均よ。食事制限なんて必要ないわ!」


「ええ、がりがりだったアリシア様の体重は、沢山のお菓子を食べて、標準にまで増えました。ところで、このまま同じ食生活を続けると、アリシア様の体重はどうなるでしょう?」


「豚になります」


「はい、左様でございます」


正直者のアリシアは、つい口を滑らせてしまった。

言質をバッチリ取られた私は、おやつの制限を課されることになる。


ぶー。


私は鳴いた。

いや、泣いた。


生きがいを、失うわけにはいかぬ。

私は、メアリに、お菓子をおくれ、お菓子をおくれとねだってみたが、「ジークハルト様に笑われてしまいますよ」と返されて、何も言えなくなってしまった。


もう裸も見られる仲だ。


ぶくぶく肥えては、振られてしまう。


私は、周囲を見回した。

メアリ以外の側近に、助けを求めたのである。

しかし、彼女らは、悲しげに俯いて、首を横にふるばかりであった。


なんと、辣腕メアリは、とっくの昔に根回しを済ませ、対アリシア包囲網を敷いていた。

この鉄壁の布陣に、お菓子を求めるアリシアは、突破口を見つけることができなかったのである。


「そんなぁ!」


私の叫びが、カゼッセル洋裁にこだまする。

かくしてメアリの指揮による、アリシア・ランズデール兵糧攻め作戦が開始されたのだ。


今までも何度か、お菓子を制限されることはあった。

だが、おねだりすれば、お目こぼししてもらえたのだ。

だが、今回の包囲は、そんな生ぬるいものではなかったのだ。


媚びても、癇癪を起こしても、「駄目です」の一点張り。


情けも容赦も存在しない。

完全なる経済封鎖だ。


そして、甘いものが大好きなアリシアは、あっという間に干上がった。


辛い。

辛いよ。


クッキー、フィナンシェ、おまんじゅう。

私の脳裏をお菓子がよぎる。

甘いものを知らなければ、私は苦しまずに済んだのに。


でも、私は贅沢の味を知ってしまった。

甘くて美味しいお菓子を口にする、甘美な甘美な瞬間を、忘れることなどできないのである。


本当に辛い。


お砂糖の補給を絶たれたアリシアは、その日より、王都陥落までの間、辛く苦しい戦いを強いられることになる。

そして私は、補給線確保の重要性を、改めて実感したのだった。


アリシア「ラウンドスライサー!」

メアリ「分身剣!」

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