兵糧攻めとわたし
私たちは、今、王国軍と戦争をしている。
王国軍は弱い。
とても弱い。
にも関わらず、私はここカゼッセルでお茶を楽しんでいて、王都の玉座には、ジョンが座ったままである。
弱い軍しか持たないはずの王国は、強い領主連合と、それよりもっと強い帝国を敵に回しながら、未だに滅んでいないのだ。
これはなぜか。
領主連合のアリシアや帝国のジークハルトが色恋沙汰に忙しいから、というわけではもちろん無い。
いや、ほんとだよ。
流石の私も、デートを戦争に優先させたりはしないよ。
失礼しちゃうなぁ、もう!
理由は、王都という都市にあった。
王都を力づくで攻め落とすのが、とてつもなく難しいのである。
攻める側からすると、王都を守る城壁が、非常に厄介なのだ。
あの城壁には、王都から逃げ出すときにも、苦労させられた。
けれど、外から攻めるときは、それ以上の困難を覚悟しなければならないのである。
王都の城壁は、高くて分厚い。
アリシアが体当りしても、びくともしない強度がある。
しかも高さは、低いところでも20アリシア、高いところは30アリシアを軽く超える。
例えば、うちの実家のランズデール領都は、一部は石壁すら作れず、木の柵で囲っている。
それと比べれば、まったく、ひどい格差であった。
しかもあの王都の城壁、全部、私達から絞りとった税金で作ってるんだよ。
ほんと腹が立つ。
そんな、厄介な城壁を正面から突破するのは、さすがの帝国軍といえど、骨が折れる作業になる。
無理攻めするには、大きくて重い攻城兵器を、えっちらおっちら運んでいくか、現地で組み立てて、日夜、延々と攻め立てなければならないのだ。
城攻めは守る側が有利だ。
力押しでかかれば、私たちの犠牲だって増えるだろう。
私は領軍であれ、帝国軍であれ、自軍兵士の皆さんには、無駄に死んで欲しくないのだ。
よって、できればこの手は避けたかった。
最終決戦兵器アリシアに、壁登りをさせて強行突破する手もないではない。
しかし、実は私は、高所恐怖症なのだ。
十階建てより高い建物には、できれば登りたくないのである。
だって落ちたら、絶対に怪我するもん。
やれと言われたら登るけど、多分ジークも止めるだろう。
ではどうするか。
お城を攻める時、力攻めが無理な場合は、もう一ついい方法があるのだ。
それが兵糧攻めである。
補給を断って、城の中の食料が尽きるのを待つのである。
安全で確実だが、時間がかかる気長な戦術だ。
やることは待つだけ。
お気づき頂けただろうか。
うふふ、その通りである。
アリシアはここ最近、のんべんだらりと過ごしている。
これは、無為に時を過ごしているのでは無い。
私たちは、今まさに、王都を兵糧攻めにしている真っ最中なのである。
「メアリ、王国軍の兵糧の残りは、あとどのくらいなのかしら。貴女の所見を聞かせてくれる?」
「城にこもれば、秋の収穫まで、ぎりぎりというところかと思われます。あとは、闇市場に出回る麦の量次第ですけれど」
「そうね。そんなところでしょうね」
私は、頷いた。
普通の兵糧攻めは、お城を兵隊で囲む。
王都を囲むなら、最低でも数万人は、動員する必要があるだろう。
その分の兵糧も武器も必要であるし、人件費だって当然かかる。
その点、帝国はすごかった。
なにしろ王国を、国ごと兵糧攻めにできるのだ。
帝国は、ジョンの失言に対する反撃として、経済制裁を発動していた。
結果、今の王国は、満足に食料を調達できていない。
これ、すなわち、兵糧攻めである。
おかげで、私たちは、王都の周りを軍隊で囲んだりしなくとも、王都の補給を断つことができるのだ。
あとは、じっくり真綿で首を締めるように、王都に篭もる王国軍を締め上げて、向こうが音を上げるのを待つだけだ。
時間は私達の味方だ。
どっしりと腰を据えて待っていれば、勝利は向こうから転がり込んでくるのである。
やることがこすっ辛いって?
ふふん、なら良いことを教えてあげる。
私は、戦うのが好きなんじゃない。
勝つのが好きなんだよ!
できるだけ確実に、そして楽に勝つために、私は今こうやって、午後の紅茶を楽しんでいるのである。
王都を監視する領軍からの報告に目を通しながら、私は思案にくれていた。
そろそろ、待つだけではなく、状況に手を加える必要があるかもしれない。
「王都の騎士団は、兵糧が尽きるまで、王都に篭ったままでいるかしら」
「そうしてもらえると、私たちとしては、ありがたい限りですけれど、それを期待するのは、虫が良すぎる気がいたしますね」
「やっぱり、最後の悪あがきは、警戒すべきよねぇ……」
メアリも、私と懸念を同じくしていた。
今の王国に脅威となる相手はいない。
僭主ジョンも、エドワードも、近衛騎士団長の……、えーと名前は忘れてしまったけれど、騎士団長のなにがしも、皆、恐れるような相手ではない。
しかし、王国の騎士団が、未だ万を超える兵力を有するのもまた事実。
彼らが、無秩序な行動、つまり蛮族のするような略奪に走った場合、局地的な戦闘で、被害が出る危険性はおおいにあった。
王都から、武装した暴徒がばらばらに散らばって、郊外を荒らして回るのだ。
たとえ戦争に勝てたとしても、その前に王国が荒廃してしまう。
その後始末をするのは私達だ。
とんでもない大迷惑である。
それに、私は、戦争で泣かされる人は、もう見たくなかった。
なんとかできないかな。
こう、うまいこと王都の兵糧を消費させつつ、彼らが二度と外に出たくなくなるような、おいしい作戦がないものかしら。
私はぐるぐる考え込み、そしてピコンと閃いた。
頭の上で電球が輝く。
乱れ雪月花!
何だろう、変な単語が浮かんだ。
いや、それはいい。
北方遠征で、ジークが蛮族を誘い出してやっつけた作戦、あれを応用してみてはどうだろうか。
しばし自分の頭で検討してから、私は、にんまりと笑みを浮かべた。
いけるかもしれない。
準備に少し手間がかかるけれど、上手く行けば、敵軍に、兵糧を無駄遣いさせたうえで、王都に釘付けにできるはずだ。
「クラリッサ、私達の食料備蓄に、どの程度の余剰がある確認して頂戴」
「はっ」
「それと荷駄についても、動員数を確認して。使う荷馬車に、細工ができると最高ね」
クラリッサが嬉しそうに笑う。
クラリッサは、仕事を任せると喜んでくれるのだ。
ありがたいけど、変わってる娘だと思う。
頼りになる側近に、お仕事を割り振った私は、メアリと作戦の立案に取り掛かった。
そして作戦案が出来上がった。
私は、それをジークに提出する。
その場で、二言三言、言葉を交わし、彼は、検討してみようと言ってから、唇の端をつり上げた。
そして翌日、私達は彼の執務室に、呼び出されたのである。
呼び出しは、おそらく作戦会議の招集だ。
私は、メアリと連れだって、執務室へと足を運んだ。
部屋には、ジーク、コンラートの他に、なぜか主治医のヘルマン先生までもが待機していた。
やばい。
ヘルマン先生がいる時点で、嫌な予感しかしない。
ジークが口を開く。
「今回の王国への出征だが、アリシアには留守居を任せたい」
やっぱりだ!
私は反駁した。
「承服いたしかねます。ジークハルト殿下」
「これが、俺の命令であってもか」
「おそらく、殿下はそうはされないであろうと、私は確信しております」
ジークとしばし見つめ合う。
私から兵権を取り上げると、犠牲が増える可能性が高いのだ。
わかっておくれ、ジーク。
私に折れる気配が無いのを、見て取ったのだろう、諦めたようにジークが肩を落とす。
彼は、苦笑を浮かべてから、短く嘆息した。
「まぁ、しかたないな。領主連合との連携もある。実際問題、アリシアをこの戦いから外すのは難しい。わかってはいるんだ」
彼はここで、一つ区切った。
「だが、妃としての役割もある貴女を、戦場に連れ出すのは、俺個人としては気が進まない」
「今更でございましょう。北方遠征でも私は指揮をとりました」
「当時と今とでは、状況が違うだろう、アリシア」
私は、ヘルマン先生をちらりと伺う。
私の視線を受けたヘルマン先生は、ゴホンと一つ咳払いをした。
いつ見ても、威厳がある。
「止むをえますまい。しかし今回の遠征には、私も同道させていただきますぞ」
「ヘルマン先生、それは、危険ですわ!」
「その言葉、そっくりそのままお返ししますぞ!」
ヘルマン先生は大喝した。
そしてここから、不毛な言い争いの始まりである。
私とヘルマン先生恒例の、年の差漫才だ。
時々、どつき漫才に発展する。
私は、当然、たたかれ役である。
私がヘルマン先生に、年寄りの冷や水だと言えば、皇妃が陣頭指揮など、聞いたことが無いと言い返される。
私は先生のことを心配してるのに!
なお、ヘルマン先生は私のことを心配している模様。
完全に水掛け論であった。
私とヘルマン先生は、至極、真面目であるのだが、私たちを見守る、周りの視線は暖かった。
「どっちもどっちですわね」
とはメアリの言だ。
ぐうの音も出ません。
さんざん言い合ったが、出撃に関しては、既にわがままを通している私のほうが、非常に分が悪かった。
結局、馬車を手配してヘルマン先生も同道することになった。
「もう、怪我などしたら絶対に許しませんからね!」
私が捨て台詞のように吼えれば、ヘルマン先生も他の皆も大笑いだ。
「アリシア様にだけは言われたくありませんぞ」
とは彼の言葉だ。
もう! 私は本気で心配してるのに!
さて、気を取り直して作戦会議である。
ジークが紙片を片手に、地図の一カ所を指し示した。
。
彼が示した場所は、ランズデール領都と、カゼッセルのちょうど中間辺りの盆地だった。
「アリシアの作戦案だが、面白いと思う。成算も高そうだ。戦場をこちらで指定できるのも良い」
「加えて、空振りしたところで、こちらの補給物資が、無事前線に届くだけです。どうころんでも無駄にはならない」
「ああ、そうなるな」
その場にいる全員が頷く。
もとより、危険の少ない作戦である。
作戦の実施はすんなり決まった。
そのまま私たちは、細部の詰めに入る。
そして完成した今回の作戦計画は、以下のとおりであった。
最初に、王国の宰相経由で、帝国の物資輸送計画を、王国上層部に流す。
当然、これは囮である。
この囮計画に従って、帝国国境から、我が故郷ランズデールまで、大量の兵糧を運ぶ。
兵糧不足の王国軍にとっては、この大量の糧食は格好の獲物に見えるだろう。
これを王国の騎士団に襲撃させるのである。
輸送部隊の総員は、一千ほどを予定する。
彼らは、王国軍に襲撃を受けた際、兵糧を満載した荷車を置き去りに、逃げ出す手はずになっている。
そして、この置き去りにする荷車に、仕掛けをしておくのである。
この時兵糧を運んでいる兵隊は、荷車が、荷物の荷重で壊れるように、細工をしてから遁走する。
王国軍は、強奪した物資を運ぶ途中で、動かなくなった荷車を抱え、立ち往生することになるはずだ。
敵が身動きとれなくなった敵を、私たちの攻撃部隊で、後ろから襲うのだ。
名付けて送り狼戦術。
行きはよいよい、帰しはしない。
攻撃部隊には、当然、ランズデールの部隊を投入する。
足の早い騎兵隊で、追いかけて、囮作戦で引きずり出した王国軍を、ぺしゃんこにしてしまう算段である。
今回の作戦の肝は、敵の兵糧を無駄遣いさせることにある。
城に篭もるより、外で戦うほうが、ずっと沢山の兵糧を消費するのだ。
腹ペコの兵士は、拠点の中でへばっていることはできても、出撃することはできない。
だから出て来る部隊は、兵糧を消費しているし、進撃に際しても十分な糧秣を携行することになる。
よって、のこのこ出てきた敵軍は、沢山の食料を、無駄遣いすることだろう。
もし、敵の司令官が優秀なら、なけなしの兵糧を、こんな博打で消費したりはしない。
また司令官が無能でも、部隊の指揮官が優秀なら、荷車が故障した時点で、罠を察知して逃走する。
だが、司令官も、前線指揮官も、無能な場合どうなるか。
その場合は、略奪した物資を抱えたまま、私たちに襲撃されることになるわけだ。
さて、王国の騎士団には、有能な司令官や指揮官がいるのかな? 私たちは、顔を見合わせてから、意地悪く笑った。
この作戦は、安全で、かつ確実に戦果もあげられるものだ。
だが、問題も無いではなかった。
懸念は、やっぱりお金のことだ。
「囮に使う荷車を含めて、かなりの物資を消費することになります。この点については検討が必要でしょう」
「この程度の浪費など、どうということはない。
それに荷駄についてはちょうどいいあてがある」
私の懸念を、ジークは、問題なしとして一蹴した。
そして彼は、一枚の仕様書を見せたのである。
皆でその紙を覗き込む。
それは、なんと荷車の仕様書であった。
大きな攻城兵器とかじゃ無い。
ただの荷車の仕様書だ。
これでも私は、そこそこ長いこと、軍人をしてきた。
でも、荷車の性能諸元を見るのは、初めてである。
荷車の製品名は、「メタセコイアVTX3」と言った。
すごい、なんだこれ。
私とメアリは、思わず唸った。
重ねていうが、これ、単なる荷車である。
大八車と大差ないビジュアルしてるのに、なんてかっこいい名前を、もらってやがるんだ。
私は、荷車にこの名を授けた開発者のセンスに、戦慄した。
ジークは、この名前負けそうな荷車について、説明をしてくれた。
「こいつは、精密兵器の輸送を念頭に開発された代物でな」
なんでも、この荷車、サスペンションに工夫がしてあって、振動が少ないのだそうである。
ふんわりした振動吸収性能を誇るのだと、仕様書には記されていた。
投石機とか運ぶ台車なのに、お姫様の馬車みたいな仕様である。
しかし、このメタセコイアVTX3には、欠点もある。
素敵な乗り心地を実現させた結果、部品が多くなり、車体重量が大幅に増えてしまったのだ。
つまり重い。
運ぶのがとても大変なのだそうだ。
荷車なのに。
しかも機構が複雑化したせいで、故障も起こりやすい。
さらに、一部の部品を取り外すと、ちょっと動かすだけで、車軸が歪んで動かなくなってしまうのだとか。
なんというか、致命的な欠陥のオンパレードであった。
どうして、こんなもの納入しちゃったの、帝国軍?
私の疑問は尽きなかったが、とにかく今回の囮作戦にうってつけの、不良品であった。
「在庫処分ですわね」
「ああ、そうなる。いい加減、処分先に困っていたのだ。囮として使い潰すには、ちょうどよかろう」
メアリの言葉に、ジークは重々しく頷いた。
ちなみにこの欠陥品、生分解される素材しか使っていないそうで、環境に優しい新時代の荷車であるそうだ。
戦場で遺棄されても、土壌を汚染したりせず、安心だとか。
拘るところが間違ってる。
私は、首まで出かかった突っ込みの言葉を、頑張って飲み込んだのだった。
会議を終えた私達は、私室に戻った。
休憩である。
一仕事終えた後の解放感は、格別だった。
今回は、私、メインの作戦案を立案したしね。
私、頑張った。
自分へのご褒美を用意せねばならない。
私にとってのご褒美と言えば、やっぱり、甘くて美味しいおやつである。
私はいそいそと、備え付けのお菓子箱を取り出して、その蓋を空けた。
仕事終わりに口にする、甘くて美味しいお菓子の味は、とにかく最高なのである。
今日はどれにしようかしらん。
ぱかり。
私は蓋を開けた。
やけに容れ物が軽いな、と訝しく思っていた私を迎えたのは、空っぽの木箱の底だった。
中身がない!
私は、大いに狼狽えた。
どこに行ったの、私のお菓子ちゃん!
私は腹心を呼んだ。
一大事だよ、メアリ!
「メアリ、私のお菓子がないわ!」
「ええ、私が、別の場所に移しましたから」
「どういうこと!? すぐに出して」
「では、その前に、この前の健康診断の結果をお見せ下さい。もう、出たのでしょう?」
メアリがすっと右手を出して、私のプライバシー情報を督促した。
私は、さーっと青くなる。
確かに私は、診断結果が記された帳票を、ヘルマン先生から受け取っていた。
そこには、私の怠惰なお姫様生活のつけが、ばっちり定量化されて記されていた。
ぐっと伸びた身長はともかく、激増した体重を見咎められるのはまずい。
いやしかし、痩過ぎ半歩手前だった私の体重が、標準になっただけである。
なにを恐れることがある。
大丈夫、大丈夫、私の体重は標準なのだ。
私はおそるおそる、メアリに、その紙片を提出した。
メアリは、診断結果を一瞥した。
ちらりと私の顔を見て、もう一度、書面に視線を戻す。
それから彼女は、私に向かい、厳かに食事制限を言い渡した。
「はい、おやつ禁止ですね」
「どうして!? 私の体重は平均よ。食事制限なんて必要ないわ!」
「ええ、がりがりだったアリシア様の体重は、沢山のお菓子を食べて、標準にまで増えました。ところで、このまま同じ食生活を続けると、アリシア様の体重はどうなるでしょう?」
「豚になります」
「はい、左様でございます」
正直者のアリシアは、つい口を滑らせてしまった。
言質をバッチリ取られた私は、おやつの制限を課されることになる。
ぶー。
私は鳴いた。
いや、泣いた。
生きがいを、失うわけにはいかぬ。
私は、メアリに、お菓子をおくれ、お菓子をおくれとねだってみたが、「ジークハルト様に笑われてしまいますよ」と返されて、何も言えなくなってしまった。
もう裸も見られる仲だ。
ぶくぶく肥えては、振られてしまう。
私は、周囲を見回した。
メアリ以外の側近に、助けを求めたのである。
しかし、彼女らは、悲しげに俯いて、首を横にふるばかりであった。
なんと、辣腕メアリは、とっくの昔に根回しを済ませ、対アリシア包囲網を敷いていた。
この鉄壁の布陣に、お菓子を求めるアリシアは、突破口を見つけることができなかったのである。
「そんなぁ!」
私の叫びが、カゼッセル洋裁にこだまする。
かくしてメアリの指揮による、アリシア・ランズデール兵糧攻め作戦が開始されたのだ。
今までも何度か、お菓子を制限されることはあった。
だが、おねだりすれば、お目こぼししてもらえたのだ。
だが、今回の包囲は、そんな生ぬるいものではなかったのだ。
媚びても、癇癪を起こしても、「駄目です」の一点張り。
情けも容赦も存在しない。
完全なる経済封鎖だ。
そして、甘いものが大好きなアリシアは、あっという間に干上がった。
辛い。
辛いよ。
クッキー、フィナンシェ、おまんじゅう。
私の脳裏をお菓子がよぎる。
甘いものを知らなければ、私は苦しまずに済んだのに。
でも、私は贅沢の味を知ってしまった。
甘くて美味しいお菓子を口にする、甘美な甘美な瞬間を、忘れることなどできないのである。
本当に辛い。
お砂糖の補給を絶たれたアリシアは、その日より、王都陥落までの間、辛く苦しい戦いを強いられることになる。
そして私は、補給線確保の重要性を、改めて実感したのだった。
アリシア「ラウンドスライサー!」
メアリ「分身剣!」




