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戦姫アリシア物語  作者: mery/長門圭祐
アリシア・ランズデール帝国軍元帥
47/116

滅びゆく王国とわたし

バタバタして申し訳ありません。題名などこちらで進めたいと思います。

おさわがせして、大変申し訳無い。

王国が滅びかけていた。


王国は君主が二重になっているせいで、呼び方が非常にややこしいが、今私が言った"王国"は、ジョンを主とする古い王国のことだ。

以後、私の女王戴冠までは、"王国"はジョンの古い王国、私たちの陣営は、"領主連合"と呼称する。


で、この王国が死に体となっていた。

私はこの事態をカゼッセルで知ることになる。



カゼッセルでは、北部遠征と観光旅行から戻った私を、またしても手紙の山が待ち受けていた。

今度は三ヶ月分だ。

多い。山盛りだ。

でかいお盆の上に小山になったお手紙が、私の部屋まで運ばれてくる。

運搬中に一枚こぼれ落ちた手紙を、クラリッサは邪魔だとばかりに横に蹴っ飛ばした。


私の身内や、仲が良い友人の手紙は、私が長めのバカンスを楽しんでいる最中も私の手元まで転送してもらっていた。


だから、今ある手紙の山のほとんどは、私と仲が良くない人たち、つまり王都の宮廷にいる人達からのものなのだ。

クラリッサが蹴っ飛ばしたくなる気持ちもわかる。

私も既にげんなり気分である。


いちいち中身なんて読んでられないので送り主を確認しながら、重要そうな手紙だけを取り分けていく。

その中でも一番豪華で、私好みのかわいい封筒に入った手紙を手に取った。

封を切ってざっと目を通す。

意訳すると内容はとても簡潔だった。


「ゆるしてください」


手紙の送り主は王国の宰相殿だ。


後ろで手紙を覗き見していたメアリとクラリッサが、にやーっとした嫌らしい笑顔を浮かべた。

気持ちはわかるけど、もうちょっと感情を隠そ?メアリ。

コンラートに嫌われちゃうよ。


あとクラリッサは腹黒笑顔が似合いすぎるから、少し自重して。


実は、私もちょっと悪人っぽい面構えなのだ。

クラリッサの笑い方が、自分にも伝染りそうで少し心配している。


残りの手紙も見てみたが、ほとんどが謝罪と許しを請う嘆願であった。


王国は滅びかけていた。

まだ本格的な戦争が始まっていないにも関わらず、だ。



原因は、王国のジョンと、帝国の皇帝であるフリードリヒ陛下にあった。


発端は、私の公的な立場が王女となったことであった。


私は、王国の元王太子エドワードを殴打し、重症を負わせたことで、王国で叛逆罪に問われていた。

しかし、帝国は私を王女と認めると共に、当時の事件は二代目の馬鹿エドワードの愚行が原因であると声明を出した。

帝国なら、たとえ皇子であろうと決闘沙汰になるような事案である。当然であろう。


この帝国の声明を受けて、王国の国王を名乗る僭主ジョンは混乱した、のだと思う。

多分、混乱したんじゃないかなぁ。

実は、私にも彼の思考回路はよくわからないのだ。

一ヶ月も期間を置いてから、ジョンは謎の声明を出した。


「アリシアがこれまでの非を謝罪し、その生涯をもってエドワードに償うというのであれば、これを赦す」


これを聞いた時、私は、へーと言って流した。

私は、その時、お取り寄せしたばかりのチョコチップ入りクッキーを食べるのに夢中であったのだ。

なにしろチョコとクッキーの組み合わせだ。

贅沢二重奏である。美味しいに決まっていた。


この世に、ジークのお嫁さんより良い立場があるわけないじゃないか。

この馬鹿殿は、相変わらず頭の中があったかいな。

そして私はそれっきり、手紙のことなど忘れてしまった。

ジョンの謎発言など、おいしいお菓子の前には、些細な事であった。


王国人であれば、ジョンの妄言はよく耳にしている。

私は立場的にも、王家の意味不明発言に付き合わされることが多く、かなりの耐性がついているのだ。

王家馬鹿発言スルー力検定一級のアリシアにしてみれば、むしろ可愛いレベルの発言であった。

ジークもここ三年は、王家に付き合っているので、彼らのことはよく知っている。

ムッとしつつも、いつものことかと蓋をしていた。


だが、耐性がない人がいた。

ジークのお父上にして私の未来のお義父さま、帝国皇帝フリードリヒ三世陛下その人である。

陛下は、怒った。とても静かに、しかし深く怒った。

背筋が凍る様な、底冷えするような怒りを見せたと、当時の側付きの方が語っていた。


これは皇帝陛下が、短気だというわけではもちろんない。

たとえ家臣であっても、跡継ぎの婚約者を自分の息子の愛人によこせなどといわれたら内乱案件である。

まして今回の相手は、帝国の第一皇子の婚約者だ。

ジョンの声明は、宣戦布告なんて目じゃないほどの侮辱だった。


皇帝陛下はこの侮辱を侮辱として額面通り受け取った。

即座に王国との断交を宣言。

現在の王都にいる勢力を賊軍として認定し、討伐令を発した。

そして帝国軍にも動員令が出され、直轄軍20万が動き出す。


この報に、大慌てになったものがいる。

私アリシアだ。

そりゃそうだ。

放っておけば勝手に潰れそうな相手に対し、農繁期をおして戦争しかけるなんて冗談じゃなかった。

補給の問題だってある。戦争は人数集めりゃ良いってもんじゃないのだ。人数も要るけど。


「宰相はジョンを止めなさいよ!」

自分のことを棚に上げて、私は王国の宰相に悪態をついた。

宰相も感覚が麻痺してるのだとは思う。

でもこんなところで私の休暇を邪魔しなくても!


嘆きつつも、私は光の速さで陛下に手紙をしたためた。


王国の領主連合は、帝国と同盟関係にあり、陸も海も交易路は私達がおさえている。

食料生産も、領主連合の支配地域である西部と南部に依るところが大きい王国は、既に兵糧や物資が不足しつつある状態である。

王都の抱える戦力は、ランズデール家単独でも対抗可能なほど劣弱である。帝国軍の力に頼るまでもない。

ここに帝国本土から軍を動員したところで、国力を浪費するだけで益など無い。


以上のような内容をつらつら述べ立てて、「どうかお怒りをお鎮め下さい、陛下」と私はお願いした。


それから程なくして、陛下からのお手紙が私の元に届く。

緊急であるとして、外務経由で送られてきた。

最重要文書指定だ。

機密、最優先、一種指定などという仰々しい印が、とても愛らしい封筒にベタベタと押されていた。

そう、封筒が超かわいかった。

私は、訝しく思いつつ封を切った。

手紙は、王国語で書かれていた。


「うん、わかった。教えてくれてありがとう、アリシア」


意訳ではなく原文ままである。

お手紙はこれまた可愛いハート型であった。


封蝋は、私が見る限り皇帝陛下ご自身のものであるように見受けられた。

私は、このお手紙をジークのところに持って行き、間違いなく、第34代帝国皇帝フリードリヒ三世直筆のものであるという確証を得た。

可愛い皇女殿下が、陛下のふりをして書いたわけでは無いそうだ。

私は、部屋に戻って、頭を抱えた。


なんてお返事したら良いのかしら…


「『お役に立てて嬉しいです、お義父さま。大好き!』あたりでよろしいのではないかと」


両陛下と一番関係深いステイシーからのアドバイスだ。

これを聞いた時の私の目は、死んでいたと思う。


私は、社交の経験に乏しい。

自覚もある。

だから礼儀作法や儀礼的な事柄については、周囲の助言に従うつもりであった。

故に、今回の件も言われたとおりに返書をしたためた。


陛下からおしかりを頂いたら、ステイシーを盾に逃げ切ってやる。

絶対に謝らないぞ、と覚悟を決めた私の元に、またも緊急便で陛下からのお返事が届いた。

今度の封筒もとても可愛い。

私はペラリと手紙を開いた。


「かわいいアリシアへ。ありがとう。とてもうれしい。それと欲しいものがあったら言いなさい。なんでもお義父さまが買ってあげるよ」


そう。

どういたしまして、お義父さま。



ああああああああ!!!!!!


あまりの文化的ギャップに耐えきれなくなった私が、奇声をあげながら椅子をがたがた揺らして暴れると、近衛騎士が血相を変えてすっ飛んできた。


「アリシア様がおかしくなられた!」


いや違うでしょ!

おかしいのは私じゃなくて、帝国でしょ!

こんなの絶対おかしいよ!


帝国皇室の謎に混乱した私は、獣のように吠えた。

吠えるだけ吠えて謎の憤りを発散した私は、精神の安定を得るために、ジークのところに遊びに行った。

癒やしを貰いに行くのだ。

最近はジークにやる気を充電してもらうのが習慣であった。

楽しい。

ジークの周りにはなんとかイオンが豊富なのかもしれない。



一方その頃、王国は帝国からの制裁に悲鳴をあげていた。

帝国による経済封鎖が始まったのだ。

私の手紙を見たフリードリヒ陛下が手を打っていた。


「王国、および王国と取引する全ての国家と勢力は、帝国に敵対する意思あるものとみなしこれを討伐する」


西隣りの帝国から断交を宣言された王国は、東の隣国から必要な食料や物資を輸入して急場を凌いでいた。

王国の東には、都市国家連合である協商国があり、こことの貿易で王都の膨大な消費を賄っていたのだ。

しかし、帝国の声明に恐れをなした協商が、表立っての取引を停止してしまった。

ライフラインが完全に切れたのである。


あっという間に王国は干上がった。


ここからはダイジェストでお送りしよう。


王国の穀倉地帯は、私の実家がある南部とウェルズリー候一党が治める西部だ。

父を筆頭とする南部諸侯は、防御のために自領を固めた。


一方で西部のウェルズリー候は、王家直轄領や宮廷貴族の荘園地へ侵攻を開始した。

ややフライング気味の候の動きを、帝国と領主連合は黙認。

防衛にあたる衛兵隊を撃破し、代官を追い出し、微弱な増援を蹴散らして、あっという間に王都から半日の距離まで進撃してしまった。

兵糧不足で王都の騎士団は、動けないと見越してのことだ。

実際動けず、帝国から王都までのルートはウェルズリー候が押さえてしまう。


王都の騎士団は、防衛備蓄のためと称して、自らの支配地域から物資を徴発した。

この場合の徴発って略奪のことだ。

王都内部でも物資が接収されて、市民の生活は一気に苦しくなった。

結果大量の難民が発生した。

王都では、王家と宮廷の失策に対する不満が膨れ上がっていた。

暴動が起こり、王宮前で騎士団と押し合いへし合いしているらしい。

王家の人たちも、宮廷貴族の人たちも、市民の怒りと帝国の脅威に震えて過ごしているそうだ。


亡国だなぁ。


私は敵手の末期に諸行無常を感じて、快哉を叫ぶよりも少しさみしく思った。

帝国がこんなふうにならないよう、私はジークを支えていかねばならぬ。

気をつけねばなるまい。



私に関連した出来事もいくつかあった。


一つは王都周辺の難民問題である。

王国の難民問題は、実は数年前にも発生していた。

発生源は王国北部、蛮族の侵攻で危険に晒された人々が、安全を求めて南方へと避難したのだ。


王都と王都周辺のに住む人たちは、彼らを見捨てた。

「ここは俺達の土地であるから、お前たちは出て行け、汚くて臭い田舎者」と、衛兵で脅しつけて追い払ったのだ。


露頭に迷った人々は、あっというまに犯罪者へ転職してしまう。

彼らがナイスな暴徒と化す前に、手をうたなくてはならない。

私の父、ランズデール公は、これを防ぐために領地内へ定住許可を出して受け入れた。

着の身着のまま逃げてきた人々も多く、かれらの生活支援のために、ランズデール家は結構な支出を強いられた。

私の貧乏の一因でもある。


で、今回の事態だ。


今度は王都の人たちが難民になったのであるが、領主諸侯は北部の人たちが受けた扱いを知っている。

今まで王都は外敵から攻撃されることもなく、彼らはずっと豊かな暮らしを楽しんでいたのだ。

南部出身の私でさえ思うところがあった。

ましてや直接の戦場となった、北部や西部の人たちの怒りは深い。

激おこぷんぷん丸である。


一部の難民の人たちが、「自分たちは王都に済む良民であるから、お前たち田舎領主は俺達を丁重に保護しろ」などと言ったせいで、関係はさらに悪くなった。

なぜこの状況で、自ら火に油を注ぎに行くのか。

私には理解できない。

これを言った人達の一団は、怒った北部諸侯のバールモンド辺境伯が領内の村へ連行していった。

蛮族から一番の被害を受けた地域だ。

彼らがその後どうなったのかは、報告を受けていない。


ウェルズリー候からは、季節のお便りにそえる一文みたいな気軽さで、難民は槍で突き返して追っ払いました、と報告があった。

うちの実家のランズデール領は、北部からの移民でもうパンパンだ。

この移民の人達は王都の人たちが大っ嫌いなので、近づいてきても追い返してしまうそうだ。


うーん、と唸った結果、私が彼ら難民の面倒をみることにした。

私、というか私の婚約者のジークがお金持ちなので、一番自由に動けるのが私だった。

根本的な問題として、領主諸侯はお金がないのだ。

私たちは、ずっと戦争に苦しめられていたから。


まずバールモンド辺境伯から、北部国境線沿いの領地を彼への借金と相殺して譲ってもらった。


北部国境近く、すなわち蛮族が侵攻してきたら真っ先に襲われる地域だ。

今はもう無人に近い状態で荒れ果てている。

みんな「ぜってぇいらねぇ…」って思ってる地域で、不人気物件のバーゲンセールだ。

実入りが少ないのに、危険ばかりいっぱいな地域なのだから当然である。

私もぶっちゃけ欲しくない。


ただ、どちらにしても蛮族の侵攻を受けたら、防衛に出るのは私なのだ。

ゆえにこの際、直轄地にしてしまうことにした。

砦とか作るには良い地域なのだ。


難民の人たちの選択肢は二つだ。

私達、領主連合には与せずに東部から東の隣国の協商国へ亡命するか、北部へ入植して対蛮族戦の盾となるかだ。

逃散した場合は一族郎党絶対に許さぬと厳命した上で、私は選択を迫った。

私としても、お金を使うなら、北部の故郷を荒らされた人たちのために使ってあげたいのだ。

王都でぬくぬくしてた人たちには、やはり好意的にはなれなかった。


「平和になったら王都に戻りたいのですが…」的な事を言っていた人たちは、全員王都に突き返した。

彼らには王都の食い扶持を削っておいてもらおう。


残った多くの人達は、北部への移住を希望した。

バールモンド辺境伯らも自領の盾となってくれる人たちには無体なことはするまい。

移住者が頑張ってくれれば、北部地域の皆はより安全になる。

Win-Winの関係だ。


もちろん私も策源地として機能するように、移住者の支援はさせてもらう。

と、こんな感じで私は難民問題を収めた。


そう。

収まってしまった。


「では、そのように手配しておきますね!」


考えても見て欲しい。

いままでろくに内政などしたことがない小娘が、ああしたいこうしたいと言ってもなんとかなるはずが無いのだ。

しかし今回はなんとかなった。

なっててしまった。

なぜか。


クラリッサだ。

クラリッサがすべて通した。

なんでもかんでも、クラリッサが一晩でやってくれるのだ。

もう全部ヤツ一人で良いんじゃないかなってレベルの万能っぷりだ。


私が希望を述べるとクラリッサが必要な手続きを全部まとめて教えてくれる。

私は彼女の指示に従って、手紙を書き、書類を書き、印を押すだけで良かった。


私は最近、近衛騎士という職業がよくわからなくなってきた。

どういう教育を施したら、こんな完璧超人が生まれてくるのだろうか。


私はもうひとりの近衛騎士を見た。


「すごいですねぇ」


まったくだよ。

君も少しは見習って。

私の後ろでにこにこしてるだけのステイシーと同じ試験で採用されたとはとても思えぬ。

私は世の不思議に首を傾げた。



もう一つは、私の実家、ランズデール家の動きである。


この騒動の間、我が父ランズデール公は、まったく兵を動かさなかった。

かわりに王都へ穀物を売りさばく闇ルートを開拓し、ウェルズリー候も誘って、都会人に高く穀物を売る商売をはじめた。

王都の人たちはみなお金持ちだ。

貧乏な田舎民であるランズデールへ富の再分配を促す意味でも、できるだけ高く売らせてもらっている、と父の手紙に書いてあった。

こんなビッグチャンスは滅多にない。

私は、頑張って売りまくってね!と父に励ましのお手紙を書いた。


私も少しお小遣いを増やしてもらえるかもしれない。

楽しみである。


ジークがなんでも買ってくれるじゃないかって?

わかってないなぁ。

自分のお小遣いで買いものをするのもまた、楽しいものなのだよ。


ただ、糧食を敵方に提供する行為でもある。

領主諸侯への根回しは父に任せられるが、帝国への報告は私が行ったほうがいいだろう。


そして私がジークに報告したところ、「金が要るなら、俺に言ってくれればいいのに」と私が予想したのとは違う返答が返ってきた。

一応皇帝陛下にもご報告申し上げたところ、「欲しいものがあるなら、私に言ってくれればいいのに」と息子と似たような返事が返ってきた。


よくわからない。

帝国には、息子の嫁を甘やかなさないといけない風習でもあるのだろうか。

本当によくわからない。



こんな状況で、いま王国は大ピンチなのであった。

ゆえに許してメールがたくさん来たのだが、私に言われても困ってしまうというのが本音だった。


私がたとえば、復讐のために、うーん、復讐したくなるほど彼らに思い入れはないのだが、こう仕返し的なサムシングのために帝国や領主諸侯の皆さんを焚き付けているのならストップをかけることも可能だろう。

だが今の王国と王都の危機は、彼ら自身が昔に撒いた因果の種が、芽吹いただけなのである。


自分で刈り取ってくださいね。としか、私は言い様がなかった。


「この辺は、全部処分しておいてちょうだい」

「了解です。アリシア様」


人間死ぬ気になればできるもんだ。

現に私はできたのだから。


これでおしまいだった。



私は、残った手紙の送り主を見渡した。

その中に一枚、気になる名前を見つけた。


エドワード・プレストウィック


私が、はるか昔に殴りつけた二代目の馬鹿、僭主ジョンの第一子にして私の元婚約者だ。

私に殴られたせいで顔が少し変形したが、ほかは目立った後遺症もなく回復したと聞いている。

でも特に興味はないなぁ。


「これも処分してもらえるかしら」


彼から建設的な話が出てくるとはとても思えなかった私は、この手紙も読まずに捨てることにした。


メアリは私から手紙を受け取ると、封蝋を切った。


中身が気になるのかしら。

どうせろくなことは書いてないと思うよ?


「ぶっ」


私の予想に反してメアリが吹き出した。


「えっ、笑える内容なの?」

「ええ、傑作ですわ」


まじかよ。


手紙を受け取って、文面を確認する。

そして、もれなく私も吹き出すことになる。

そこにはこうあったのだ。



「エドワード・プレストウィックは、ここに、アリシア・ランズデールに対し、決闘を申し込む!」

コンラート「おいおいおい」

ジークハルト「死ぬわあいつ」

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