護身用
翌日。俺は静かに火を湛える火床の前で腕を組み、首をひねっていた。
「うーむ。良いサイズのものかぁ」
ショートソードではいかにも武器然としすぎているし、今手元にあるナイフではリーチが心許ない。その中間、扱いやすく、いざという時に頼りになる刃が欲しい。
30センチより少し短いくらい――刀で言えば短刀に近いか。脇差しと呼ぶには短すぎ、匕首にしては長い。
だが、明確な呼称や規格があるわけではないし、自分の手に馴染む長さで作ってしまえばいいか。
「……20センチ前後、だな」
普段使いのナイフが刃渡り十センチ前後だから、その倍と少し。長すぎれば携帯に不便だし、短ければ護身にも使えない。その中間こそが、俺の欲しかった「実用品」だ。
衣服の下に忍ばせても邪魔にならず、必要な時にはすぐ抜ける。用途を考えれば、この辺りがちょうどいい。
「よし」
決まれば動くのは早い。板金を積んであるところへ向かい、素材を吟味する。
この板金は今ではリディやヘレン、ディアナ、アンネたちが作ってくれるものだ。鍛錬の成果か、どれを手に取っても厚みもほぼ均一だし、品質のバラツキもほとんど無い。
「これと……これを使うか」
声に出して確認するのは、もう癖のようなものだ。
以前、板金チームに使う時は一声かけたら、「使われるために作ってるんだから、報告なんかいらない」と言われてしまった。
以来、俺は何も言わずに必要な分だけ取ることにしている。
火床に板金を入れると、すぐに赤みを帯び、ゆっくりと熱が全体に回っていく。やがて、鋼は赤みを帯び、やがて表面が柔らかく光を放ちはじめた。
俺はそれをヤットコで掴み、金床の上に置く。鎚を振り下ろすと、耳に馴染んだ金属音が鍛冶場に響き渡る。
ガン、ガンと叩くたびに鉄が延び、重ねた板が一つになっていく。再び折りたたみ、火に戻して熱し、また叩く。
その単純な繰り返しに、どこか心が落ち着く。
今でもチートの補助がなければ、この精度で叩いていくことは難しい。
それでも、少しずつ感覚が掴めてきた。
いつかはこの手だけで、ある程度できるようにならないといけないな。
炎の熱気と金属の匂いに包まれていると、時間への意識はあっという間になくなる。
何度も折り返して叩き、純度が上がってくるのが肌で分かる頃、ふと窓を見ると、太陽が中天にさしかかろうかとしている。
昼前か。悪くないペースだ。午後には形に取りかかれる。
見ると、サーミャとリケのペースも良かったようで、完成したナイフや剣が転がっている。
1本を手に取って見てみると、なかなかの品質だ。高級モデルに比肩するところに近づいているようにも思う。
「ようし、昼飯にするか」
俺が皆にそう声をかけると、手を止め、昼食を取る準備に向かって行った。




