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日雇い救世主の見聞録 ~36歳、《すばやさⅩ》の力で異世界攻略RTA~  作者: 蒼蟲夕也
六章 WORLD1944 『とある少女の恋文』
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174話 アザミの日記②

基督皇歴1612年 花月 17の日(続き)

 キョータローさん、何でも、


・この世界を滅ぼそうとしているヤツがいる。

・自分は、そいつをやっつけにきた。

・そのために、しばしきみの家でご厄介になりたい。

・仕事は手伝う。


 だ、そーです。


 つまり、そういうこと。

 ちょっとこう……頭おかしい人だった、っていうか。

 まあ、お気持ちはわかります。

 誰だってみんな、自分を英雄のように思いたいですもの。

 世界にとって自分は特別な存在であるって、そんな風に思いたいですもの。


 とはいえ、とりあえず害意はなさそう。

 もともと私たちの村は、追放者、変わり者、どんとこい! ってスタンスです。

 人を疑って苦しむくらいなら、人を信じて傷ついた方が、よっぽどいい。


 ってかそもそも、男手が足りないのは事実ですしー。



基督皇歴1612年 花月 18の日

 昨日から、村を手伝ってくれてるキョータローさん、――ヤバい。

 何がヤバいって、その……。なんか、たった一人で百人分くらいの仕事、してくれるんですケド……。

 一晩明けたら、屋敷に希少な資材が山ほど集まってきています。

 しかも、もの凄く精巧な地図の写しまでプレゼントしていただいて。

 なんでも、この近所に山ほど金塊が出るエリアがあるんですって。


「これでとりあえず、エンディングまで金に困ることはないはずだ」


 ……えんでぃんぐ?



基督皇歴1612年 花月 19の日

 キョータローさんのなぞ。


「部屋に籠もっている間は、絶対に誰も入らないでほしい」


 ですって。

 なんか、こーいう童話、聞いたことがあるなあ。

 助けた鶴が、人間に化けて居候するやつ。

 『鶴の復讐譚リベンジ・オブ・クレイン』、だっけ?



基督皇歴1612年 花月 20の日

 キョータローさんが来てからというもの、やれることがたくさん増えて、大忙し。スローライフとはほど遠い日々です。

 でも、生活が改善されていくのはやっぱり、気持ちが良いもの。

 今度手に入れるお茶は、ちょっぴり良いものにしようかしら。



基督皇歴1612年 花月 21の日

 今日は、キョータローさんを囲んで晩ごはん。

 なーんかいつも、部屋で一人でご飯食べてるから、ずっと気になってたんです。

 だから「今晩だけは一緒に食事しましょ」って、頼んでみましたの。


「えー。ぼく、異世界の食べ物、好きじゃないんだけど……」


 ってなんか、この世の終わりみたいな顔、されましたけど。


 それで、キョータローさんがいつも食べてるものが気になりまして。彼が作ってくれた”カップ麺”なるシロモノをぱくり。

 味はと言うと、……スープ・パスタを、すこししょっぱくした感じ?

 私の好みからすると、ちょっと塩辛い気がしますけど。


 キョータローさんの故郷では、濃い味のものが好まれるみたい。



基督皇歴1612年 花月 22の日

「なんかここ、あちこちから馬糞みたいな臭いがする。……きらい……」


 と、自称”救世主”さまに大好評の我が村です。

 農業を始めた時のために、肥料を取っておいてるだけですのにー。

 やはり、長期的に村を発展させるには、確固とした農業基盤が必要なのです。


「食いもんなんて、金塊で買えばいいじゃないか」


 と、彼はのたまうので私、とうとうと語ってさしあげました。

 あんまり金払いの良いところ他人に見せると、――ろくなことにならない、って。

 だってそうでしょ? 人は、金貨に群がる生き物です。

 金は格差を生む。格差は争いを生む。

 そうやって人は、血みどろの争いを繰り返してきたのですよ。

 ってわけで私あんまり、金にものを言わせて村を発展させるつもりはありません。


「めんどくさい”主人公”役だな……」


 って、しかめ面で言われちゃいましたけど。



基督皇歴1612年 花月 22の日

 朝からキョータローさんが肥料を集めていたから、何してるのかなーって思っている、と……、


「人間は、年間50キロもの糞を排泄する」


 ドヤ顔で謎のクソ知識を披露されました。


「これを肥料として使う発想自体は間違ってはいない」

「だが、未処理の汚物は、病原菌の温床なんだ。実際、産業革命以前の中国では、胃腸疾患が風土病とされていたという」

「これからこの村では、便所と水源を20メートルは離しておくべきだな」

「なお、病原菌と寄生虫は、65℃以上で低温殺菌することで死滅する」

「これは、糞便におがくずと藁を混ぜて、数ヶ月放置することによって可能だ」

「ちなみに、尿は無菌であるので、薄めれば直に畑を巻いても大丈夫だよ」


 この知識量。まさかこの人、ウンコ博士なのでは?


 その後、我が村は、丸一日かけてトイレの改良計画を実行。

 うう……。服にまだ、匂いがついてる気がします……。



基督皇歴1612年 花月 23の日

 今日はちょっぴり、厭なことがありました。

 ”冒険者ギルド”の人たちが、村に派遣されてきたみたい。

 しかも、なんの巡り合わせか、……私を追い出したパーティのメンバーだったり。

 それもこれも、この辺りに魔物退治のクエストが出されてるんですって。

 ううむ。さすがに関わりたくないなあ。

 うまいことキョータローさんが対応してくれたからなんとかなったけど、他のみんなだったらどうなっていたことやら。



基督皇歴1612年 花月 25の日

 近所の村まで出向いていって、これまでちまちまと作ってきた”爆発瓶(パウダー・ボトル)”を納品。

 みんな、すっごく喜んでくれました!

 爆発物さえあれば、魔物退治に冒険者なんていらんのですよ!

 ……でも、身内同士の喧嘩には使わないでね?


 何はともあれ、都会を出てから初めての収入です。

 このお金でとりあえず、小麦とジャガイモの種、それに、スコップと鍬、大きめの鎌、ついでにちょっと良いお茶っ葉をゲット。


 小麦とジャガイモの種はさっそく、事前に耕しておいた畑に植えておきましたよ。

 収穫の季節が楽しみ!



基督皇歴1612年 花月 27の日

「きみのペースに付き合ってると、爺になる。マジで」


 とのことでキョータローさん、家畜を手に入れてきてくださいました。

 えー? 勝手にぃー? あんまりこの辺りで、目立つような買い物、して欲しくないんですけれど。


 ……と、思ったけど彼、身分を隠して、こっそり買い物してくれたみたい。

 気が利くじゃないですか。意外と。


 そうしてやってきたのは、”ゴールデンドラゴン”っていう小型の竜種と、”クダン”っていう、頭の良い牛さんです。

 ”ゴルドラ”はペットみたいで可愛らしいけど、”クダン”は顔が人間っぽくて、ちょっとキモいです。

 ……鶏とか、山羊とか、豚とか、もっと普通の家畜は手に入らなかったんでしょうか。


「ありがたく思ってくれ。本当はもっと、ゲーム後半じゃないと手に入らないレア家畜なんだぞ」


 うーん。

 まあいいや! ようこそ、私たちの村へ!



基督皇歴1612年 花月 28の日

 それにしても、キョータローさんの貢ぎっぷりがすごい。

 なんかこうなってくるともう、ちょっと怖いくらいです。


 昨日に引き続き、今日はなんと、”夢と夜の杖”なる”マジック・アイテム”をプレゼントしてくださいました。

 こちら、――えいやっと杖を振るうだけで、暴力的な魔法エネルギーが飛び出す仕組みみたい。


「毎日”金竜の卵”を食べて、”クダンのミルク”を飲むんだ。そうすればきみの最大HPとMPがてきめんに上昇し、”杖”とのシナジー効果が発動して、――これは詳細を省くが、結論から言うと敵は死ぬ」


 ですって。

 あとで調べたところこの杖、かなり高いものだったみたい。



基督皇歴1612年 花月 30の日

 ところでさっき、ふと思ったんですけど。

 キョータローさん、……ひょっとして、私に惚れてる?

 私と結婚したい感じ? だからこんなに尽くしてくれるんでしょうか?


 となると、ちょっぴり困ってしまいます。

 あの方、気の良い性格ではあるんですけれど、顔がちょっぴり、――怖いんですもの。

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