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シールの魔女は婚約破棄されたので、魔女業に専念することにしました!  作者: 江本マシメサ
第三章 ユベール卿の課題

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ユベール卿の報告

「ユベール卿、どうかなさったのですか?」

「手紙にあった魔法使いが気になったゆえ」

「そうだったのですね。レディ・ヴィオレッタから詳しい話を聞きますか?」


 なんて聞いたものの、お店を継ぐまで話してくれなかったレディ・ヴィオレッタがユベール卿相手に話してくれるものか。

  考えていたら、ユベール卿が驚くべきことを口にする。


くだんの魔法使いを街で発見したのだが、取り逃がしてしまった」


 なんでもユベール卿は私の手紙が届いてすぐに、街に探しに行ってくれたらしい。

 鑑定魔法の審検サーチ能力を使い、姿消しの魔法を常時展開させている存在を探したという。

 見事、引っかかったものの、相手の魔法使いも鑑定魔法にかけられていることに気付いたという。


「追跡したものの、人が多く、撒かれてしまった」


 人混みでの行動に慣れていなかったため、追跡は失敗に終わってしまったという。


「相手は相当な魔法の遣い手だろう。いったいどこの誰だったのか」


 ユベール卿もマケールの手の内の者ではないだろう、と言い切った。


「人の少ない夜ならば、成功していたのだが」

「それはそうと、まさか、そのような行動にでていらっしゃったとは……」


 警戒を促すために知らせただけなのに、調査しに行っていたなんて。

 そんなつもりはなかったので、申し訳なく思ってしまう。


「申し訳ありません。まさか魔法使いを探しに行かれていたとは思わず」

「いいや、別にいい。知らせてくれて感謝する。これからも気になることがあれば、なんでも言ってほしい」


 そこまでユベール卿を頼っていいものなのか、なんて考えていたら反応が遅れてしまった。

 ユベール卿は腕組みし、ジッとこちらを睨むように見つめながら言う。


「どうして返事をしない?」

「いえ、その、ご迷惑ではないのか、と思ってしまいまして」

「迷惑なものか。私は婚約者だろう」


 その婚約者という立場も、アデール嬢に会うための一時的なもの。

 双方の親の許可なんてない、かりそめの関係なのだ。

 まるで本当の婚約者のように言ってくれた。その気持ちだけでも嬉しい。

 マケールなんて何もしていないのに、迷惑をかけるな!! なんて言っていたのだ。

 ユベール卿が本当の婚約者だったらどんなに頼もしかったか。

 なんて考え、いやいやいやと心の中でかぶりを振る。

 ユベール卿は未来のオーベルジュ大公で、私はしがない魔女。

 釣り合いが取れるわけがない。

 ユベール卿のお相手は国内の大貴族の娘に留まらず、他国の王女様くらいではないと成り立たないだろう。きっとオーベルジュ大公も認めないはず。


 ぐるぐる考え事をしていたら、ユベール卿から盛大なため息を吐かれてしまった。


「そんな態度で、アデールに婚約者同士だと信じてもらえると思っているのか?」

「急ごしらえの関係ですので、なかなか難しく」

「どうすれば私を信用する?」


 尋問するように聞かれましても……と言いたいのをぐっと堪える。


「ユベール卿のことは信用しております。頼りにできたらいいな、とも考えております」


 そんな素直な気持ちを伝えると、やっと納得してくれたのか。深く刻まれていた眉間の皺が解れた。


「今後も、私のことは大いに頼れ。何かあったら、些細なことでもいいから知らせてほしい」

「些細なこと、ですか?」

「ああ。工房に虫が出たとか、店の魔石灯が切れたとか、まあ、いろいろだ」


 そんな用事でユベール卿を呼んだら、オーベルジュ大公から「うちの息子をしょーもない用事で呼びだすな!!」と怒られてしまいそうだが……。


「わかったか?」


 ここは「はい」と言わないと、またご機嫌を損ねてしまいそうだったので頷いておく。

 すると、ユベール卿は満足げな表情を浮かべた。


「よし。では明日、〝シャ・ノワール〟で会おう」


 明日はドレスを着るために、ユベール卿が〝シャ・ノワール〟でのドレスアップを予約してくれていたのだ。

 準備が整い次第、迎えにきてくれるという。


「ユベール卿、また明日」

「ああ」


 ユベール卿は転移魔法を展開させ、いなくなる。

 静かになった店で、ふーーーとため息を吐いた。


『あの男は帰ったか?』


 暗がりからレディ・ヴィオレッタが登場した。

 すると、これまでシュシュの中で大人しくしていたコゼットが飛びだしてくる。


『きゅう!!』


 この前のお留守番で、コゼットはすっかりレディ・ヴィオレッタに懐いたようだ。

 転がるようにして接近し、頬ずりする。

 レディ・ヴィオレッタもまんざらではない様子だった。


『それにしてもあの男、マチルドがいたときはめったにこの店に近寄らなかったくせに、いなくなった途端、ほいほいやってきてからに』

「まあ、お師匠様がいたときは、跡取りにならないか迫られていたようですので」

『どうだか!』


 明日はとうとうアデール嬢との面会が叶う。

 ただ、手ぶらで行くのもどうかと思った。

 何か手土産を持って行ったほうがいいのだが、今の時間から探すのは難しいだろう。

 私はシール魔女だ。

 だからお土産もシールでいいだろう。

 そう思って、作ってみることにした。 

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