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左手で吸収したものを強化して右手で出す物語  作者: へたまろ
第2章:王都学園生活編

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第52話:ハベレストの森の異変

「へえ、綺麗にしてるね。そういえば、前住んでいた家も割と綺麗だったし」

「ええ、自分が住むところですから、汚れていたら色々と気持ち悪いですし」


 それから2日後、マルコはジャッカスの家に来ている。

 一応、ジャッカスとローズであれば問題無いということで、今日はファーマは休みだ。


 早速、意気揚々と冒険者ギルドに向かっていたが。


「じゃあ、早速」

「いってらっしゃいませ」


 ジャッカスの家から、そのまま管理者の空間に転移。


「ああ、マルコおにいだ!」

「マルコ兄!」


 すぐにクコとマコが駆け寄ってくる。

 神殿でマサキと一緒に居たらしい。


「この間は散々だったな」

「もっと良い所までいけると思ったんだけど」


 冒険者ギルドでは、諸先生方に良いようにあしらわれていたが、ちょっと気にしている様子。

 とはいえあと数年もすれば、マルコの方が確実に強くなると思うが。


「取りあえず、ハベレストの森に向かうか」

「うん」


 そういって、地図を使ってマルコをハベレストの森の中ほどに送り込む。

 森についたマルコがカブトと土蜘蛛、それから蜂を数匹、蟻を数匹呼び出す。


「取りあえず、魔物を狩ろうか」

「はい」


 カブトの背に跨ったまま、森の中をゆっくりと進む。

 周囲の警戒は、管理者の空間から俺がしているが。


 森の中心に向かって、方向を見失わないように指示を出す。

 本当にこのタブレット便利だ。

 いや、小さい虫とか蜂までは分からないけど、大きな生物であれば簡単に発見できるし、道に迷う事も無い。


 まあ、迷ったところで転移でここに戻れば良いだけだから、なんの問題も無いけど。


「主」

「うん」


 しばらく進んだところで、大型の地竜が近くに潜んでいるのを感じる。

 普通であればすぐに襲い掛かってきそうなものだが、どうやらカブトを警戒している様子。


 ゆっくりと地竜の居る方に視線を向ける。

 緑色の鱗が茂みと同化しているが、すぐに分かるくらいにはデカい。

 相手も、マルコが気付いた事に気が付いたらしい。


 隠れる事をやめて、身体を起こして歩き出す。

 次の瞬間。


「グアアアア!」

「あっ」


 木の上から網が降って来て、地竜を絡みとって宙吊りにした。

 見ると、いつの間にか土蜘蛛が木の上に登って、網を投げたらしい。

 というか、放出したというか。


 3m近い蜥蜴を引っ張り上げる土蜘蛛の力は、やっぱり凄いな。

 その地竜はというと、すぐに土蜘蛛に毒を打ち込まれて痙攣を始める。

 持って帰って、蟻達に解体させよう。

 こっちの地竜に見られない場所で。


 取りあえず、マルコに地竜を吸収させて管理者の空間に送り込んでもらう。

 なるほど、こうして目の前で見るとやっぱりデカい。


「うわあ、おおきなとかげさん!」

「今日の晩御飯ですか?」

「食えるのか? これ」


 クコとマコが目を輝かせている。

 取りあえず、肉も切り分けて土蜘蛛に渡しておくか。


 それからどんどん森の奥に進んでいくが、どこか様子がおかしい。

 まず魔物が少なすぎる。


 見かけるのは本当に大型の地竜だけで、中型や小型の地竜はあまり見かけない。

 それに角兎や、小さな蛇の魔物も。


 マルコは森の木々に四苦八苦していたが、途中から蜂達が前を飛んで小枝や草を噛み切って道を切り開く。

 そしてそこをカブトが、腹を擦りながら進んで道をならしていく。

 獣道というか、虫道か?

 にしては、とても広くて歩きやすそうだけど。


 タブレットに映る範囲を広げてみると、小さな集落が目に入る。

 少し気になったので、中を覗いてみるが人が住んでいる気配があまりしない。


 居るのは居るが、建物の数に対して集落の通りを歩いている人が少なすぎる。

 そして、その歩いている人たちは武装して何かに警戒している様子。


 試しに木で簡単に組まれた建物の中を覗いてみるが、中にも人が居ない。

 中央にある大きな建物も覗いてみたら、そこに老人や子供、女性が集まっていた。


 もしかしたら、何か問題でもあったのかな?

 野盗……がこんなとこまで来るとは思えない。

 来たところで得る物がない。


 仮にこの集落を襲うのが目的だとしても、次のターゲットまでの距離が遠すぎるし、まずここまで来るのが大変だろう。

 となると、魔物関連か……

 それ以外の理由としては、特に無いな。

 地震とか災害だったら、男共が武装して警戒する意味が。

 まあ、仮に地震で柵が壊れたりしていたら分かるが、そんな様子も見られない。


「もうちょっと範囲を広げて見ないと分からないな」


 取りあえずマルコに危険が迫らないように、蜂達に周囲の警戒を強めるように伝える。

 当の本人は、ハイキング気分だけど。

 マルコにも、森の様子がおかしい事を伝え気を引き締めさせる。


「何が出て来ても、カブトや土蜘蛛が居るから大丈夫だよ」

『ああ、それに何かあってもすぐに戻って来られるから問題無いけどな』


 森をどんどん進んでいくと、木々の隙間から差し込む光が減って来て薄ら暗い雰囲気になっていく。

 若干、気温も下がっているようだ。

 マルコが鞄からマントを取り出して、羽織っている。


「マサキおにい、あれなに?」

「うん? なんだろうな」

 

 クコがタブレットの端を指さす。

 そこには赤黒い何かが、蠢いているのが分かる。


「ゴブリン? ってみどりいろだとおもってた」

「ああ、あれはハイゴブリンだな。ゴブリンの上位種だ」


 赤黒い何かが居る場所をズームすると、凄い速さで20匹くらいのゴブリンが移動しているのが見えた。

 普通に二足歩行の生物が出せる速度では無い。


「森の住人って訳か、でも進化してるのはなんでだろう。それに、あれはフォレストウルフ? フォレストウルフに乗っているのか?」

「ゴブリンって、おおかみさんにのるの?」

「いや、そんな事はあまり聞いた事無い」


 あのまま進むと、先の集落に辿り着くな。

 そのとき、森の中を笛の音が木霊する。


「なになに?」

「いや、分からん」


 ゴブリンが居る場所とは、違う方向から聞こえて来た。

 すぐに集落の外から数人の戦士が出てきて、音のなった方を警戒している。

 どうやら、斥候を出していたようだ。

 ゴブリンの群れに気付いた戦士の1人が、笛を鳴らして集落に危険を知らせた様子。


「ゴブリンの群れが、その先の集落を襲おうとしている。危険かもしれないから、そっちに近づくなよ」

「えっ? 助けなくても大丈夫?」

「ああ、見た感じこれが初めてじゃなさそうだし、今までも防いできたんじゃないか?」


 すぐにゴブリンの群れが、集落の外を警戒する戦士の視界に捉えられていた。

 即座に先頭に立つ2人の戦士から魔法が放たれる。

 ゴブリンは二手に分かれてその攻撃を避けるが、着弾した岩石が弾いた礫にフォレストウルフが鬱陶しそうに顔を背ける。


 フォレストウルフが身体をよじらせたことで、数匹の上に乗っていたゴブリンがバランスを崩す。

 そこにさらに放たれる魔法。

 今度は風の魔法のようだ。


 背に乗せたゴブリンがバランスを崩したことで、動きに支障をきたしたのか数匹のフォレストウルフと、ゴブリンが切り傷を負う。


「グアアアア!」

「「「ギャアアアアア!」」」


 仲間が地面に叩きつけられて、錐もみ状態で転がっていくのを見て、無事だったすぐそばに居たゴブリンの1匹が怒りの咆哮をあげている。

 そして、それに追従するように群れから雄叫びがあがる。


「ちっ、6匹程度しか間引けなかったか」

「あいつら、日増しに動きが洗練されていってるな」


 魔法を放った2人が槍を手に持ち、忌々しそうに突っ込んでくる群れを睨み付ける。


「充分だ。あれだけなら、今回もしのげそうだな。取りあえず助かる」


 そこに、後ろで見守っていた他の戦士達も近づいて来る。

 それぞれが剣や槍、斧を手に持ってゴブリンを睨んでいる。


「マサキ兄」

「ああ、大丈夫だろう。集落の中にはまだ戦士が残っているみたいだし」


 マコが指刺した場所は、集落の側面。

 そこに向かって徒歩で静かに移動する、ゴブリンの集団も見えた。

 数は5匹。

 これまた、森の木の上で警戒していた斥候に見つかったようだ。

 森の中を、笛の音が鳴り響く。

 

「やっぱり分けて来たか……とはいえ前回もそれで失敗したのに、流石にそこまで急に学習はしないか」


 先頭の男、どこかで見た顔だと思ったら馬鹿でかい地竜に掴まっていた戦士か。

 なんつったっけ?

 あ、名前聞いてなかったわ。


 確かこの2人兄弟だったよな。

 まあ、良いか。


 村に入り込もうとしたゴブリン達は、村の中にいる戦士達に矢を射かけられて一瞬で片付けられたようだ。


「ああ、マジか……」


 村の入り口で守っていた戦士達も、確実にゴブリンを倒していっている。

 こちらが片付くのも時間の問題だろう。

 が、さらに新手のゴブリンの群れが集落に向かっている。

 そのうち数匹は地竜の背に乗っている。

 

 これは、流石にことかもしれないな。

 地竜の背に乗っているのは、黒い鎧を身にまとったゴブリン。

 肌の色は黄色い。

 

 ゴブリンナイト。

 周囲を走っているのは、ゴブリンウォーリアか。


「マルコでも、無理かもしれないか……」


 取りあえず、集落まではまだ距離がある。

 でも、折角の実戦訓練にもってこいの相手だしな


「マルコ、やってみるか?」

「うん、任せて」


 マルコに状況だけ伝えると、カブトの背に乗って集落に向かっているゴブリンの群れに向かって飛び立つ。


「行っくよー!」

「グアッ?」


 思わず頭を押さえる。

 折角上空から奇襲をかけるのに、声を出してどうする。


 上から聞こえた声に、不思議そうに顔を見上げたゴブリンナイトに槍を持って突っ込むが、案の定盾で防がれている。


「っとと」


 そのまま弾かれて、地面に着すると少しバランスを崩してよろける。


「うわあ、怖い」


 目の前には地竜に跨ったゴブリンナイトが4匹。

 フォレストウルフに跨ったゴブリンウォーリアが8匹。


 さて、どうやって戦うかお手並み拝見だな。


「取りあえず、これでっと」


 右手を翳して【水球(ウォーターショット)】を飛ばすと、狼が濡れるのを嫌がって大袈裟に躱す。

 さらに、左手で【火球(ファイアーショット)】を放って地竜を牽制。


 なるほど、魔法を使って足を止めるか。

 そのままの速度で突っ込まれたら、一飲みにされそうだしな。


「まずは、君から」

「グアッ?」


 群れから大きく離れたゴブリンウォーリアに向かって突っ込むと、フォレストウルフの顔面を蹴飛ばしてゴブリンウォーリアに剣で斬りつける。

 足元のバランスが崩れたゴブリンウォーリアが、ふんばりが利かず剣で強引に地面に叩きつけられる。

 

「まずは、1匹」


 そこに向かって、左手で【土槍(アースランス)】を放って地面に縫い付ける。

 直後、マルコの背後でガキンという鉄のぶつかるような音が聞こえる。

 マルコもすぐに振り返って、飛び退る。

 

 マルコの居た場所を見ると蜂が矢を咥えて、ホバリングしていた。


「ごめん、助かったよ」


 マルコの言葉に、蜂が嬉しそうにその場で弧を描くと矢を献上してきた。

 そのまま吸収して、管理者の空間に。

 まあ、矢だし……

 武器だし。

 鉄も使ってあるし。

 有効活用する方法はたくさんある。

 だけど、わざわざたかが矢まで回収しなくても。

 

 いや、まあ確かに金を払って買うものだから良いけどさ。


 ちなみに矢を放ったゴブリンウォーリアは、すでに土蜘蛛に捉えられている。

 いまの1合の間に、土蜘蛛と蜂達がゴブリンウォーリアをあらかた片付けてくれたお陰で、残ったのは地竜に乗ったゴブリンナイトだけ。


 俺なら開始直後に土蜘蛛の【鋼鉄の網(アイアンプリズン)】を広範囲に放って、動きを封じたうえで【斬鉄鎌(サムライ・サイズ)】で網ごと文字通り一網打尽かな?


 まあ、集団戦の経験なんて無かったし、最初はこんなものか。

 

「あとは、大物だ……け? あれれ?」


 ゴブリンウォーリアが全て倒されたことで、分が悪いと踏んだのかゴブリンナイト達が踵を返して森の奥に帰っていく。


 なるほど……意外と賢いかも?

 でも、まあ……良いけどね。


 無音で蜂達がその後を追って行ったから。


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ゴブリンの管理の仕事に出向する話

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