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左手で吸収したものを強化して右手で出す物語  作者: へたまろ
第3章:高等科編

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第29話:接触

「シッ!」

「まずい!」

「落ちろ!」

「なんの!」

「これで、終わりだ!」


 地面を陥没させて落とされそうになったカブトが羽を開いた瞬間に、粘糸を使って羽の付け根をグルグル巻きにしてそれを防ぐ。

 と同時に、落下したカブトの頭上に凄い速さで粘糸のネットを作り出す。

 飛ぶことを封じられたカブトには、この糸に突っ込むしか道はないわけだが。

 そこまでの度胸は無かったらしい。

 穴から少し角と目をだして、こっちを見つめてくる。


「参りました」


 こうしてみると、仕草はとても可愛らしいんだけどな。

 穴から角と目を出してこっちを見てくる姿。

 目がクリッとしてるから、余計に可愛く見えるが。

 こう見えて武人肌というか。

 割と、武闘派だからな。



「巨体故に動きが単調になるのは仕方ないとして、遠距離系の魔法をもう少し鍛えた方がいいかもしれないな。せっかく、魔法で盾が作り出せるんだから、その辺りを改良して色々と防御から攻撃へと繋ぐ方法はあると思うぞ?」

「そうですね……ただ、マサキ様の場合、こちらの対処をことごとく潰してこられるので。一体、何手先まで読まれているのかと不安になってきます」

「そんなに先読みしているわけじゃなくて、多種多様な攻撃に対する対処法を多く知っているのと、搦め手が得意だからな俺は。都度都度の対処でも、色々とレパートリーもあるし経験だな」


 なんだかんだで、カブトもラダマンティスも土蜘蛛も若いからな。

 俺よりは遥かに。

 ここまで強くなったからこそというのはあるが、経験値でいったら俺の方が上だし。


「そろそろ切り上げて、ゆっくりするか」

「ありがとうございました」

「いや、こっちこそ付き合ってくれてありがとうな」


 カブトに礼を言って、神殿へと戻る。

 単純にジッとしていられないから、訓練に付き合ってもらったというか。

 カブトの訓練に付き合ったというか。

 時間がなかなか経たないのがもどかしい。

 放課後に呼びだしが掛かっているが、一体何の話だというのか。

 

***

「今日の放課後、ちょっと付き合ってくれないかな?」

「え?」

「君たち2人に話があるんだ」

 

 マルコが教室に入ると同時に声を掛けてきたアザーズの言葉に、話しかけられた当人であるマルコも俺も思わず固まった。


「2人?」

「ああ、君と……君の中にいるもう一人の君。いや、いまは別の場所からこっちを見ているのかな?」


 疑惑が確信に変わった瞬間だ。

 どう考えてもノーフェイスの関係者か、本人だろう。

 この誘いにノーという答えは、まず無理だな。


***

 ということがあって、俺も落ち着かないんだよな。

 それに放課後が待ち遠しいからか、時間の進みがやけに遅く感じる。

 それでカブトの訓練に付き合ったわけだが。

 

 カブト相手に全力で勝ちにいくくらいには、気持ちに余裕がない。

 早いところ放課後になって欲しい。

 そんなことを考えつつ、色々なことをして時間を潰した。

 意味もなく、フリーランニングをしてみたり。

 山をオーガの子供たちと駆けまわったりと。

 無駄に身体を動かし過ぎた気がしないでもないが。

 それでも、だいぶ気は紛れたかな。

 

 マルコに声を掛けられてアザーズのことを思い出すまで、完全に放課後の約束を忘れるくらいには。

 うん、管理者の空間の者たちと遊ぶのに夢中になり過ぎて、今度はあっという間だった。


 タブレット越しに、マルコとアザーズの様子を盗み見る。


「まあ、君というか、もう一人の君が疑っていると思うんだけど、半分正解と言っておこうか」

「半分?」


 半分?

 というか、ここはマルコと入れ替わった方が良いか?

 

「直接もう一人の君とも話したいんだけど、目の前の君にも理解してもらいたいしね」

「どういうこと?」


 なんだろう。

 いきなり変な宣言をされるよりはマシだが、不気味に思えてくる。

 どういう思惑があるのか全く見えてこない。 

 こっちを混乱させる意味もなければ、わざわざ会話をする意味も。

 そもそもが学園に通って、何がしたいのかも気になる。

 問答無用で、街や人に害を及ぼすことだってできる癖に。


「僕は……いや、僕たちはどちらかというと、君たち2人には好意的な方だよ。なんというか、説明が難しいんだけどさ……ノーフェイスの一部だったといえば、分かってもらえるかな?」

「全然、言ってる意味が分からないんだけど」


 ここでの問答をマルコに任せるのは不安だったから、とりあえず入れ替わる。

 アザーズが話している間に、マルコの同意は取り付けたし。

 というかマルコの方が、若干変わって欲しそうなオーラを出してたし。

 まあ、分からなくはないが。


「ああ、もう一人の君か」

「すぐに見破るとか、流石だな」

「似たような者だしね。ただ、君たちは勘違いしているようだけど、僕はノーフェイスとは別の存在だよ」

「は?」


 アザーズがこれまた困ったことを言い出した。

 いやいや、こんな奴が何人もいてたまるかというのが、こっちの実情なんだけど?


「確かにちょっと前までノーフェイスだった子もいるけどね」

「ちょっと待て、理解が追い付かん……やはり、お前は……いや、お前たちは複数の人格の集合体なのか?」

「主人格はあるけど、概ねそういうことかな?」


 なるほど、ノーフェイスの中にも俺を気に入ってるやつもいるって話だったしな。

 そして、目の前のこいつは?


「といっても、僕自身がノーフェイスから派生した存在でもあるんだけどね」


 結局、どういうことなんだ?

 敵なのか、味方なのか。

 そもそも、ノーフェイスから派生したといっているが、奴の部下なのか?

 それとも、何か違う存在なのか。

 こいつの話だけだと、何も理解できん。


「かってノーフェイスがそうしたように、僕たちも彼に完全に従うのは違うと感じたからね。魔族をどうしても排除したいわけでもなかったし、この世界を滅ぼすほど嫌いってわけでもないからね」


そういうとアザーズが一度顔を伏せる。


「私たちも一枚岩じゃなかったってことよ」


 次に顔を上げた時には、前に一度だけ見たことのあるノーフェイスの女性バージョンの顔だった。

 なんだろう、余計に混乱する。

 騙されているような気がしてきた。

 ノーフェイス本人だと思った方が、良いかもしれない。


「さて、その辺りの詳しい話をこれからさせてもらおうと思ってね」

「なんだか、あまり信用できんな」


 またアザーズに戻って会話の続きを始めたが、どうにもかき乱されている感がぬぐえない。

 それが出来るってことは、本体がノーフェイスということもあり得るから?


「そのためにも、貴方の立ち位置を改めて教えてもらえるかしら?」


 また女性バージョン。

 そして、コロコロと顔が変わり始める。 

 だんだんイライラしてきた。

 

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