第二十九話 幼馴染
だいぶ暑くなってきましたね。
世の中には腐れ縁という関係性が存在する。
俺はこの横にいる幼馴染こそ、まさにそんな存在だと思う。
生まれた時から隣同士で、保育園、小学校、中学校、何の因果か高校まで一緒ときた。
別に事前に打ち合わせしたわけでも約束したわけでもなく。
まあ成績が近いというのはあるが。
幼馴染は、一言でいうと優等生だ。
勉強も運動もそこそこではあるが、生活態度はまじめ、クラス委員や委員会の役員などもそつなくこなすので先生のウケも良い。
かと言ってガチガチで融通が利かないわけでもなく、冗談も言うし、クラスメイトとじゃれあってる姿もよく見る。
面もフツメンよりちょい上の為、女子にもそれなりに好感をもたれてるのも知ってる。
ちなみに俺は、勉強も運動もそこそこ。先生俺のこと覚えてる? クラスでちょい埋没気味?(いてもいなくてもあんまり……な状態)
そんでもって女子にはスルーされる。
このスルーが嫌われてるんじゃなくて目にも入ってないってとこが微妙にツラい……。
いや、俺のことはどうでもいいさ。
問題は幼馴染。
この幼馴染、呼んでもないのに、よく俺の部屋へ遊びにくる。
一度、「何でくんの?」って聞いてみたら、「一人になる時間が欲しくて。ここ楽なんだよな」と回答が返ってきた。
一人って……、俺もいるんだけど。
そこまで存在感ないってか。
そんな俺って何? 透明人間? そうなの!?
…………いや、これは特に問題じゃない。
いや、ある意味問題かもしれないが俺が問題にしたい問題ではない。
問題は、時たま幼馴染がまったくの無表情、抑揚のない声でぼそりと呟くその言葉…………。
「…………何もなかったことにするってのは、何をどこまでしたら、なかったことになんのかな…………」
お前、何したの?
これから何する気なの?
なかったことってなかったことって……一体何!?
怖くて聞くに聞けない俺は、今日も幼馴染の謎の言動にびくついているのであった……。
次回もお願い致します。




