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第二十五話 ゾンビ注意報

何か最近グループ接続障害で大変ですね。

 朝起きてまずはテレビをつける。


「今日はとても良いお天気になるでしょう……」


 そんなお天気お姉さんの声を聞きながらカーテンを開ける。


 うん、本当に良い天気だ。


 そして私のいつもと変わりばえのない、だけれども決して同じではない新しい一日が始まる。





 はずだった。


 少し前までは。




 今は朝起きてテレビをつけても、「ザー」という音声と砂嵐画像しか映らない。


 まるで、来るよ来るよ、あいつら来るよーっていう警報に聞こえてくる。


 まあ気のせいだけどね。


 カーテンを開けてみると、そこはとても良い天気。


 しかし、そのまま視線を下にずらしてみれば、何やらうごめく者たちが……。


 一言で言ってしまえば、ゾンビ、である。


 以前は映画や漫画の中だけの架空の存在だったそれらが、今はあちらこちらに溢れかえっている。


 ゾンビだらけである。


 今どれくらいの人間が生きているのかわからない。


 だってテレビもラジオも情報何にもくれなくなってしまったし。


 全世界のことなのか、日本だけのことなのか、もしくは見捨てられただけで以外と狭い範囲のことなのか、さっぱりわからない。


 家の中に籠城している人はもしかしたらいるかもしれないけど、きっと長くはもたないと思う。


 まだ何とか電気屋ガス、水道のライフラインは生きてるけど、保守維持する人間がいなくなったらやっぱりいつかは駄目になると思うし。


 当座の食料だっていつまで持つか。


 普通そんなにたくさんの保存食抱え込んでる人ってそんないないと思うし。


 それを求めて外に出れば、たちまちうじゃうじゃいるゾンビ達の餌食だし。


 ……なんてこと考えてたら、おなかすいてきたなー。


 食料ももう尽きかけてきたし。


 うーん、気は進まないけど補充に出かけるか。


 今日はどこ行こっか。


 ……今や廃墟と化した近所のスーパーでいいか。


 もう新鮮な生な食材はとっくにアウトな状態になってるから、缶詰とか乾物を頂いてこよう。


 もちろん料金を払わずにだけどね。


 最初は少し良心が咎めたけど、今は何とも思わない。


 だって、そのままにしておいてもいつか朽ちるの待つだけの状態だし。


 元も持ち主もことごとくゾンビ化しちゃってて無用の長物になっちゃってるもんだしね。




 私はちゃちゃっと身支度を終えると、リュックサックを背負って家を出た。


 少し進むと出くわすゾンビにゾンビに、またゾンビ。


 多少慣れがでたといっても、やっぱキモッ、とかきたなっ、とか思うわけですよ。


 しかしゾンビって腐ってるわけだよね。


 だったらもうとっくに腐りきって土に還ってもおかしくないと思うんだけど、ずっとこの状態キープなんだよね。


 どういう仕組みなんだろ、本当。


 普通生きてる人間がこれらの前に立てば、あっという間に襲われてゾンビの仲間入りなのですよ。


 何度か見ちゃったけど、あれはグロかった。


 だけど、私だけは平気。


 ゾンビ達、私の存在まるでいないかのようにスルーだから。


 何故かって?


 それは私にもわからないけどさ。


 だけど、もしかしたら私が原因かもね。


 かもだけど、かも。


 鳥のカモじゃないよ。


 確証はないんだけどね。


 あの日、あんなもの見つけなければこんなことにはならなかったのかなあって思うことがあるのよ。 


 道端でさ、何か超ボロ汚い本拾ったの。


 何書いてあんのかってちょっとした好奇心でなか開いてみたら、不老不死の薬の作り方ってあってさ。


 こんなんあり得なーい、と思いつつも材料用意できるものばっかだったからついやってみよっかなって。


 で、出来た薬口に入れる度胸なんかもう全然なかったからそのまま捨てちゃおうとしたのよ。


 一通り作ってみて気もすんだしさ。


 だけどその時、飼っていた放し飼いのピーちゃん(あ、インコねインコ)がそれ舐めちゃって。


 途端に苦しみ始めたから慌てて手を伸ばしたら噛みつかれちゃって。


 手を引いた反動で後ろによろけて窓にぶつかっちゃったのよ。


 そしたら窓開いちゃって、ピーちゃんそのまま外に逃げちゃった。


 しばらくは帰ってこないかなって窓開けてたんだけど、戻ってこなかった。


 探しに行こうにも、私その後、高熱出して寝込んじゃって。


 一週間ベッドから出れずにうめいていて、やっと起き上がれるようになったと思ったら、世の中ゾンビだらけになっちゃってたわけ。


 え? これでどうして私が原因かって?


 確定じゃないよ、かもだよかも。


 だけどさー。


 やっぱりあの薬が原因だと思うわけ。


 あの薬、不老不死の薬じゃなくてゾンビ製造薬だったんじゃないかっって思うのよ。


 ゾンビの状態で死ななきゃある意味不死? かもしれないしー。


 薬を飲んだピーちゃんはゾンビになって外に出て、そこからネズミ算式に感染拡大していったんじゃないかってね。


 どうしてそう思うかって?


 だって、私、今体温死人並みなんだもん。


 まるで氷のようって言うの?


 生きてる人間の体温じゃないんだよね、明らかに。


 こんな状況で医者にも行けないから、確定したことは言えないけどねー。


 たぶん、ゾンビなりかけのピーちゃんに噛まれて、私も感染したと思うのよ。


 ゾンビ菌(笑)に。


 でもピーちゃん自身まだゾンビになりきってなかったから、その感染も中途半端なものになったんじゃないかなって、予想。


 本当、中途半端なのよねー。


 体温ないし、暑さ寒さ感じないけど、何かおなかはすくし。


 ゾンビ達は私を仲間として認識してるのか、それとも仲間とも生き物とも認識できないでスルーなのかの状態だし。


 思考は出来るけど、何か感情凍結しちゃったっぽいし。


 だってそうでしょ。


 普通こんな環境発狂もんだわ。


 でもしょうがないよねー。


 生きてるからには生きてかないといけないし。


 あ、生物的な意味で生きてるかはわかんないけど?


 おなかすいたら食べないといけないし。


 だから、私は今日も食料を探しに出かけるのですよ。


 ああー、なんでこうなっちゃったかなあ。


 あれ?


 今真っ青な青空の上空横切って飛んでいったの……。


 あれピーちゃんじゃないかな?


 まあわかんなけど。


 でも、まあ。


 本当に、いい天気だなあ。

  

タイトルのゾンビ注意報、何が注意報なのかさっぱりですが、この話もとがタイトルから出来たものなのでそのままにしてみました。

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