第二十一話 大魔法使いの三人の弟子
三人の弟子とありつつ、一人しか出張ってません。
この国には偉大な偉大な大魔法使い様がいる。
ある時、偉大な大魔法使い様が三人の弟子をとった。
一人目はクルシュルガー。
闇より深い漆黒の髪と瞳を持つ魔族の男の子。
二人目はルルランジェ。
燃える炎のような鮮やかな赤い髪と瞳を持つエルフの女の子。
三人目は僕、エンドルジュ。
七色に変化する色彩の髪と瞳。ちなみに性別はまだ未定。大人に孵化する際男か女かに分かれる種族なんだって。
大魔法使い様は人間だとあっという間に年をとって死んじゃうから、長寿の種族である僕達を後継に選んだんだってさ。
大魔法使い様のすべてを伝授するにはすっごくたっくさんの時間がかかるんだって。
教えてる最中に死んじゃったら何の意味もないからって。
そう言ってる大魔法使い様は人間なのにね。
大魔法使い様は誰かに教わったんじゃなくて、自分で魔法を極めて不老長寿になったんだって。さすがに不死とまではいかなかったらしいけど、それに近いんだってさ。化け物だね、あはっ!
と、思ってたら大魔法使い様に殴られました。てへ。
僕、口に出してないのに、やっぱり大魔法使い様ってば、ば……、おっといけないいけない、また殴られちゃう。
修行漬けの毎日は単調だよ。
朝早く起きて、家の朝仕事して、朝食を食べる。午前中は基礎体力アップの鍛錬をこなし、たまに死にかける。死にかけた場合は大魔法使い様の魔法でハイ、元通り。で、午後は昼食を食べた後魔法の訓練と実験、大魔法使い様が出す課題をこなし、たまに死にかける。死にかけた場合は以下略。夜は夕ご飯を食べた後、家の夜仕事をして入浴してお休みなさい、な感じだね。
夜は夢もみないよ、爆睡で。
因みに朝仕事とか夜仕事ってのは家事のことだよ。
みーんな、魔法でちゃちゃっとすればいいと思うのに、こういうのは人力のがいいもんなんだってさ。ぷぷっ、イマドキ時代錯誤じゃない? おっくれってるうー……っと言ったら大魔法使い様ったら本気で攻撃魔法ぶち込んできたよっ。大人気なっ!
腹立ったんで塵も残らない覚悟で大魔法使い様に挑もうとしたら、クルシュルガーとルルランジェが必至な形相で止めてきたんでやめといたよ、むう。
ま、やるにしても真正面はないわ。
闇討ちしないと可能性もないね、うん。
いやはや、うっかり頭に血がのぼりすぎて失念したよ。
いやはやありがとー、二人とも。
二人は本当に可愛いよね、どっかの大魔法使い様と比べたらさ。
クルシュルガーってば、誰が後継に選ばれても三人の絆は永遠だって言うんだもんよ。
ルルランジェだって、ずっと一緒に三人でいようねってさ。
ホント、ちょーかーわーいーいー、ぞっ!
あんまり可愛いんで、花吹雪の魔法でファンタジックラブリー空間つくってみました、ってへ。
二人ともすっごく喜んでくれて、僕満足。
だけど大魔法使い様ったらため息ついてさー、この魔法力からするとお前が一番自分の後継に近いが一番どころか極力選びたくないってさ。
は? 失礼じゃない、ソレ?
だってじゃあ何でそもそも候補者にしたのって話じゃない?
そしたら、僕のこの性格さえなければ僕で完全に本決まりだけど、この性格で完全に候補者から外すには魔法の力が桁外れ過ぎて惜しかったんだって。
ひどいっ!
僕の力だけが目的だったのね!?
と、捨てられ寸前の女性の真似をしたら本気で殴られたよ、いたた。
ジョークなのにー、ぷう。
それに大魔法使い様だって、人のこと言える性格!? あ、嘘です嘘。だからそんなデス魔法しかけてこようとしないでくださいよー。それヤバいから。本気でアウトだから、ソレ。
んー、でも。
ま、いーか。
先のことはよくわからないけどさ。
今は大魔法使い様の三人の弟子、ってことで楽しく毎日過ごしてるし。
クルシュルガーもルルランジェもいい奴らだし。
しばらくはこのまんま、みんなで仲良く修行に励むとするよ。
ね?
偉大な偉大な大魔法使い様?
続きはありません、念の為。




