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第十五話 その授業の片隅に

またしょうもない話です。

 もしも世界が滅ぶのなら、どんなことを最後にしようか。


 というか、そもそも何かをしている余裕なんかあるのだろうか。


 みっともなく取り乱すのでは?


 それとも呆然自失になって何をする気力もなくなるのでは?


 少しでも情報を得たくてニュースサイトにかじりつくのか?


 そもそもそんな状況でニュースサイトは正常に放送されるのか。


 世界滅亡の最期まで、メディアの人はその仕事を全うするのか。


 そこまで仕事に全うする意義はあるのか。 


 最期に家族に会いたいと願うのはまっとうなことなのでは?


 それを阻止する権利は誰にもないのでは。


 では何にも情報がない状態で最期の時を迎えるのか。


 そもそも本当に己の命が絶たれる情報を最後まで聞いていられるのか。


 どこにも逃げ場がないとしたら、その瞬間を目の当たりにしないように寝てしまうのではないだろうか。


 そもそも世界滅亡とはどんな状況下なのか。


 それによってもとる行動は違ってくるだろう。


 最後の晩餐ってあったよな。


 そんな時に食事なんかしてる余裕はあるのか。


 あるとしたら何を食べたくなるもんか。


 ……腹、へったな。




 キーンコーンカーンコーン……。



「これで今日の授業は終了する」


「おー、やたー、飯の時間だー!」


「おっしゃ、メシ食うべ」


「おいおいお前ら、さっきまで生気なかったくせに現金な奴らだな。委員長を見習えよ。授業中も真剣な表情で聞いててくれてたぞ」


「ふーんだ、委員長が特別なんですー」


「委員長、授業楽しいー?」


「うん、有意義な時間だったよ」


「はー、優等生は違うねー」


「つかもうメシ食うべ。俺腹減った。委員長も学食? 一緒に行かん?」


「ああ、行くよ」


「何食う?」


「うーん、日替わり定食かな」


「あー、俺も行く。待って待って」




 僕はぞろぞろとクラスメイトと連れだって学食に向かいながら思った。


 午前の授業中の妄想テーマは「もしも世界が滅亡したら」だったから、午後は軽く「もしも幼馴染のお隣さんが猛烈に可愛い同級生の女の子だったら」にしよう。現実にはお隣さんはごつくていかつい部活馬鹿のど阿呆だからな。


 ああ、それにしても腹減った。


 とりあえず日課である授業中の妄想はおいておいて飯食おう。


 そう思い、僕は食堂へと向かう足取りを速めたのだった。


タイトル:正式には「その授業の片隅にしょうもない妄想をする優等生に擬態した男子高校生」になります。


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