第十一話 お嬢様にはかなわない
別タイトル・まわりの奴らは俺を好きすぎる、の原型の短編です。
皆様はお嬢様、という呼び名を耳にした時、どういったイメージを抱くのでしょうか。
楚々としたおしとやかな大和撫子なお嬢様。……現代日本にまだ生息しているか、甚だ疑問ではありますが。
縦巻きロールがよくお似合いの高飛車お嬢様。……漫画とかで見かけるあの縦巻きロール、ロールパンにしか見えなかったのは決して自分だけではなかったはず。
まあ、お嬢様といっても何を持ってお嬢様と呼ぶか、はそれぞれですよね。
お金持ちや高い身分の家の娘さんをそう呼ぶ場合。
仕事上の関係で顧客の娘さん相手やお客様に対してそう呼ぶ場合。
趣味。
まあ、それぞれですよね。
だけど、ボクは「お嬢様」と呼ぶに相応しいお嬢様を知っています。
知っているというか、ボクがお仕えしているお嬢様なんですが。
流れる艶やかな長い黒髪・透けるように白い肌・星の煌めきのような瞳・桜貝のような唇・モデルのような抜群のスタイル・カモシカのような長い脚、要は絶世の美少女。
勿論容姿だけではありません。優秀な頭脳・スポーツ万能・・生前分与された莫大な財産。それだけではなく詳しくは何をやってるか知りませんが、自身でも資産運用で着実に残高を増やしていく才覚。
まさに神様に愛された人間、という言葉が相応しい、の限りです。
……おえ。そろそろ、砂を吐きそうなんですが。
まあ、それはそうとして、お嬢様の中のお嬢様、ベストオブザお嬢様、それがボクのお嬢様なのです。
「何一人でぶつぶつ呟いているのよ執事、気持ち悪い」
いえ、たまにはこうやって反芻しないとモチベーションが保てないもので。
いけないいけない。つい声に出してしまっていたようです。
お嬢様が不審そうな眼差しでこちらを見ています。
まあ、お嬢様にどう思われようと、ボクはちっとも構いませんが。
「だから聞えているのよ執事!」
おっといけない。うっかりうっかり。
では再度ご紹介、腕を組み仁王立ちしてこちらを睨んでいるパーフェクト美少女・スーパーお嬢様、ボクの仕える大事なお嬢様です。
ボクの敬愛するお嬢様。
ちょっと胸が絶壁なところがご愛嬌、豊かな財力と何者にも屈しないごうじょ…意志の強い性格が巻き起こす突飛もない行動力は周りを巻き込む威力も半端なく。……ちょっとは人の迷惑も考えて欲しいものです。
「執事、命は惜しくないようね?」
おおっとこれは失態失態。
結局何が言いたいかと申しますと、執事のボクは詰まる所お嬢様にはかなわない、ということなのです。
お嬢様=御加賀見千草、執事=???、です。




