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【書籍化中!】アルケミスト・アカデミー(旧:双色の錬金術師)  作者: ちゅるぎ
イメージする段階。

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75話 採取旅9日目 『緑の大市場』ケルトス 冒険者ギルド 2

書きあがったので例の如く、ぱぱっと更新。


毎回チェックはしているんですが、その度に誤字脱字怪文章が見つかるという……何故だ。





 リアンに続いて足を踏み入れた部屋は丸いテーブルとイスが置かれたシンプルな部屋だった。



こういう感じの部屋は何回か来ていたので大人しく椅子に腰かけた。

待っていると、直ぐに私たちが使っていない別のドアが開く。


 のっそりと頭を掻きながら現れたのは、副ギルド長と呼ばれた男だ。

空いているいくつかの席の中でドアに一番近い場所に腰かけてから口を開いた。



「待たせてすまなかったな。改めて名乗るが、俺は冒険者ギルドケルトス支部副ギルド長のロマティ・ニクスってもんだ―――……そこにいる眼鏡坊主の親父と俺は元パーティーメンバーでな。リアンのことは産まれた頃からよく知ってるんだ」



依怙贔屓する気はないが相談くらいは乗ってやらんこともない、と何処か愉しそうな笑み。

それを見て一瞬不快そうに眉を顰めているリアンだったけど、本気で嫌がっている訳じゃないみたい。

ウンザリしてるって感じだしね。



「で、別室に呼んだのは買い取りに関することだけじゃないのでしょう。さっさと話しを進めていただけませんか」



リアンが私にメモ書きを渡しながらロマティさんの言葉を遮った。


 メモ書きには討伐部位の準備、声を掛けたらハクレイ茸を2つ出してほしいと書かれている。

私が頷いたのを見てリアンは視線をロマティさんへ戻した。



「妙にせっかちな所も父親に似てんなぁ。まぁいい、とりあえず今回の件だが、記述通りならお前の訴えは通ることになる。最近、マナーと常識を弁えない質の悪い連中がファストリア経由でケルトスにも流れ込んできていてなぁ……チラホラとではあるが苦情も出てきている。依頼者とのもめ事はまだ起きていないが、同業者同士で揉めるような輩は近いうち必ず“何かやらかす”からギルドもピリピリしてんだ」



はぁと深い溜息と共に真剣な声色で語られるギルド側の事情に私とミントが顔を見合わせ、ラダットが項垂れる。

リアンは涼しい顔だ。



「あの、すいませんでした……本当に」


「賠償金は指名者二人のみに課せられるだろうが、迷惑料の一部は連帯責任という形で問題を起こした二人以外にも負担してもらう。金額で言えば銀貨3枚といった所だろう。駆け出しのお前さんたちにゃ安い金額とは言えないだろうけどな、ルールはルールだ。持ち金がないなら、ギルドが代替えすることも出来る。代わりに報酬から差し引かせてもらうことになるから自分で考えて選ぶといい―――…なぁに、素直に指摘や忠告なんかを聞き入れて謝罪できるなら問題ない」


「質の悪い冒険者が増えた理由はわかっているのですか?」



ミントが尋ねると彼は少し驚いた顔をして小さく頷いた。

 シスターが冒険者登録をするのはやっぱり珍しいみたい。




「要因は色々あるんだが、一般的に優秀とされる素質があるとわかって“勘違い”する奴が増えてるのがデカい。出身が小さな村や田舎、集落出身者が多くてな」



やれやれとウンザリしたような顔をしながら教えて貰った内容に私は妙な納得をした。


 副ギルド長のロマティさん曰く、貧しい村や人口の少ない集落などでは素質が重視される傾向が強いらしい。


 生活に必要な能力、魔物やモンスターを倒す素質があれば優遇される。

冒険者になりたいと出ていく子供は多いそうだ。

大人たちは子供が一人いなくなれば負担が減るので喜んで送り出す。



「素質が分かって大人や周囲に“特別扱い”されることで勘違いするんだ。元々持っていた筈の常識も驕りで忘れ、傲慢に振舞う。恐らくあの二人もその類なんじゃないか」



自然とラダットに視線が集まる。

 椅子に座っていたラダットは体を小さくしながらも、きちんとした声で答えた。



「はい、そうです。二人とも親がいい素質を持って居て元々優遇されていたので、元々人の話を聞かないところがあったんですけど……剣士が一人も出なかったことと、魔術師なんてここ十年出てなかったのもあって、余計に」


「なるほどな、大体事情は分かった。念のために言っておくが、魔術師も剣士もあくまで冒険者向きであるというだけだ。実力も人望もない、冒険者になりたてのヤツは大概直ぐに死ぬ。運よく生き残っても仕事にあぶれて盗賊に落ちるか、奴隷になるかの二択が殆どだ。肝に銘じて置けよ」



はい、とラダットが神妙な顔で頷き私もミントも頷いた。


 リアンだけはわかっていると言う様に目を閉じて黙り込んでいる。

静まり返った室内の空気を変えたのは、やっぱりロマティさんだった。



「さてと、本題だが……あの奴隷は戦利品か?」



てっきり取引の話になると思っていた私が思わずどういう事だろうと会話を進める二人を交互に見る。

 二人の表情に緊張はなく、雰囲気も明るい。



「ええ、そうです。使えるかどうかはわかりませんが」


「封印病にかかった奴隷は売れねぇからな。特効薬もこっちで安いとはいえ銀貨2枚と来てる。銀貨二枚あれば普通の奴隷を借りることもできるし、購入も出来る。ついでに言えば、戦利品といっても食費やら生活費やらが必要になるからそう嬉しい類のもんでもないだろ」


「ええ、ですが特効薬を作って試すには丁度いいと思いまして。治った後使えなければ売ればいいですし、使えそうなら使いますよ。店も始めなければいけませんしどの道、人手ひとでは必要です」


「なるほどな。ほれ、申請書類だ。感謝しろよ」



差し出された書類を受け取ったリアンは少し考えて、自分の名前を書いた。

てっきりこれで終わりだと思ったのに、その用紙は私の前に。



「拾ったのは君だろう」


「それはそうだけど、この書類って何?」


「見ての通り『奴隷所有証書』だが。奴隷を所有する者は皆これに記入し、奴隷の血を垂らすことで主従関係が正式に結ばれる。記入者は奴隷が起こしたこと全てに対する責任を負う代わりに、奴隷は主人に隷属することになる」


「と、とりあえず名前書けばいいんだよね?」


「とりあえずで契約書に名前を書くな。君が書かないなら書かないで構わないが、奴隷をどう扱うかは記入者に全て委ねられる。つまり、僕がアレをどう扱おうと君がどうこうできる権利が無くなるという事だ」



理解出来たら決めろ、と一言。


 私は書類にサインをした。

それを見届けたリアンが書類を渡しながらベルにも聞いてくれと告げる。



「三人の主人か。珍しいがそれでいいのか?」


「工房も卒業まで共同経営ですし、三人の所有にしておけば都合がいいんですよ。軌道に乗ってから奴隷の購入は考えていましたから都合が良いと言えば良かったので」


「卒業後はどうするつもりだ?」


「今はまだ決めていませんがその時にならないと決められないこともあるでしょう。次に、ですが……討伐部位を確認してください」


「え?あ、うん。討伐部位、ね。んっと……これかな」



リアンの声で慌ててトランクから討伐部位が入った袋をテーブルの上に乗せる。

 血や液体が染み出ないように加工された袋の口を開けて中身を見たロマティさんが、酷く驚いた表情を浮かべた。



「ッ……ゴブリンリーダーを狩ったのか?!」


「その様ですね。僕とライムは関与していませんが、シスターミントと別室で事情を聞かれているベルが狩ったようです。ゴブリンリーダー以外の報酬は二等分し、ラダットに片方を渡してください。リーダーの報酬はこちらのみです」


「それでいいのか? お前たちも戦ったなら……」



淡々と話すリアンを訝しげに見たかと思えばラダットへ問いかける。

 問われたラダットはギョッとしていたものの、首を激しく横に振った。



「ぼ、僕らは戦ってないんです! ゴブリンも倒せたのは10に満たなくて」



小声になるラダットを見てミントが口を開いた。

 どうやらゴブリンの分け前は二等分、リーダーに関しては倒したベルとミントの二人の取り分と話はついているそうだ。



「ゴブリンの報酬については以上です。肝心の素材はこちらですね。ライム」


「はいはい」



ごそごそとポーチから指示されたハクレイ茸を取り出してテーブルに乗せる。


 年季の入った木製のテーブルに乗る純白のキノコをみて、突然鈍い音が響いた。

何事かと視線を向けると目を輝かせたロマティさんが身を乗り出してキノコを凝視している。

正直、怖い。



「ご存知かと思いますがハクレイ茸です。保存状態は最高ですし採取方法も文句なし。最高品質ですよ。ライム、クイーンキノコとオウサマタケはどれだけ出せる?」


「へ?あ、あー……うーん、いっぱい食べたいから1つずつで。串焼きにしてもいいし炊き込みご飯もいいでしょ、あとパスタとかスープにも使いたい。リアンもベルも気に入ったって言ってたし」



僕が言った物を出してくれと言われたので、言われた通り形と香りのいい物を一つずつ出して並べる。

一番上質な奴だから存在感が凄い。

 高級キノコがテーブルに4つ並んだところで他に何かつけられるかといわれ、考えてオヤツにと取って置いたカパルを二つ出した。



「わかった。じゃあハクレイ茸2つ、オウサマタケクイーンキノコを各一個ずつ、おまけに完熟カパル二つ、錬金術で作ったオーツバー1つと簡易スープ一回分を特別価格で」



流れる様に、歌う様に紡がれる内容に慌てつつ、言われた通りオーツバーと簡易スープもテーブルの上に並べる。


 なんというか、不思議なラインナップだなーと思って見ている私とミント、そしてラダットを尻目に口の端をにやりと持ち上げて悪徳商人の笑みを浮かべた。

思わず身構えた私とミントの横で首を傾げるラダット。

食い入るようにテーブルの上の商品を見つめる副ギルド長のロマティさん。


 数秒の沈黙の後、低めの低音が空気を震わせた。



「―――……金貨二枚で如何でしょう」



悪徳商人の顔で笑うリアンがピッと指を二本立てて首を傾げた。

発言内容を私たちが理解するより早く鋭い応答。



「ッ…買ったぁあぁ!! ほらよ、金貨だ! 早く寄越せっ」



ロマティさんの目が血走ってた。



「うぇええ、買っちゃうんですか?! 金貨二枚なのに?! っていうかこれで金貨二枚?! 嘘でしょっ!?」


「金貨二枚、ですか……金貨…」


「騙されてる! 絶対騙されてる!!」



私とミント、ラダットの反応は決して間違いじゃない筈だ。


 軽い恐慌状態になっている私たちを尻目にリアンはテーブルに叩きつけられた金貨をひょいッと受け取って、購入者の前に布を広げ買い上げられた商品を並べていく。



「商品はこちらで間違いありませんね? 錬金術で作られた“簡易スープ”ですが、同量の熱湯を注ぎスプーンでとろみがつくまで混ぜてからお召し上がりください。粉末ですので長期保存が可能です。オーツバーと簡易スープは、今後工房で売り出す予定ですが早々の売り切れが考えられますので、お買い求めの際はご注意くださいませ。毎度ありがとうございました」


「悪魔だ……悪徳悪魔商人だ」



思わず呟いた私にリアンは満足そうににっこり笑った。


 リアン曰く、適切な料金かつ良心的な価格らしい。

購入者であるロマティさんはそそくさと購入した物を布でくるんで、自分の横の椅子へ移動させた。



「こいつの言う通り、適正どころか良心的な値段だぞ。去年はキノコの収穫量が少なくてな……今年は回復するだろうとのことだったが、基本的に収穫量が落ちた翌年はオウサマタケやクイーンキノコは高値になる。一つ銀貨30枚ほどになるのが通例なんだ、貴族が買い占めるからな。なによりこのハクレイ茸! 希少なんだが物凄く旨いキノコで一部の愛好家からは金貨を叩いてでも買えと言われているくらいだ。それが金貨二枚で二つも……!」



(あ、これいっぱいありますって言わない方がいいパターンだ)



視線を彷徨わせる私にロマティさんの熱弁は続く。

 あとで知ったんだけど複数ある彼の二つ名の一つに『元祖美食冒険者』なるものがあるらしい。


 その後も浮かれてご機嫌なロマティさんに何度も礼を言われた。

私たちは色々と複雑な気持ちのまま、会議室を後にした。


 再び、賑やかなギルド内ではベルとディルが優雅にお茶を飲み、その後ろで落ち着きない様子でムルとチコが気配を消す様に立っていた。

奴隷の子は、目立たないように体を小さくしながら視線だけで周囲の様子を窺っている。



「あら、終わりましたのね。私たちも終わりましたわよ」


「ついでに宿を紹介してもらって、全員個室とは言わないが三人部屋を二つ押さえた。食事は朝食のみという事だから何処かで適当に済ませることになる」


「そういう訳ですから、さっさと移動しますわよ」



紅茶を飲み終えたらしいベルがさっさと立ち上がって、チコやムル、ラダットに笑顔を向けた。



「不愉快な思いもしたけれど、あなた方三人はまぁ悪くなかったわ。特にチコ、貴女中々の腕前ね。怠けずに極めれば一流と呼ばれるようになるはずよ」


「! は、はいっ。ありがとうございましたっ! あの、お店開いたら絶対に伺いますっ」


「ええ、そうして頂戴。ムル、ラダット。貴方達にも有益な情報を貰ったわね、感謝するわ」



そう言い残してさっさと出口へ向かったので私も慌てて後を追いかけた。

バタバタしたけど、それでもラダット達は笑顔で私たちを見送りにギルドの外へ移動する。

それを見越していたのかベルの足取りも心なしかゆっくりだった。


 鮮やかな茜色を白く輝く星を散りばめた濃紺が押しつぶしていく。

商店の軒先には魔石ランプがぶら下げられ、露店と食べ物の屋台が場所を入れ替えている。

美味しそうな匂いが漂い、足を止める人の手には何かしらの食べ物が握られていた。



「本当に迷惑をかけてごめん。お店が開店したら会いに行ってもいいかな」


「うん、是非来てね。いっぱい買って固定客になってくれると私たちのお店も安泰だし。それと機会があったら今度はちゃんと護衛として雇うから、一緒に採取しに行こう」



ラダットに手を差し出すと少し驚いていたけれど直ぐに笑顔で手を握り返してくれた。



「ありがとう。俺、不謹慎だっていうのはわかってるんだけど、実はあの二人には感謝してるんだ。普通に生活してたら錬金術師の君たちには会えなかっただろうし、こうやって話をすることも出来なかった筈だしね」



ごめん、と言いながらも嬉しそうに笑うラダットに釣られて確かに、と頷いてしまった。

 隣ではリアンとベルも納得したように苦笑いを浮かべている。



「面倒ではあったが、確かにムルに鉱脈や鉱石の話を聞けたのは僥倖だった」


「そう言ってもらえると助かる。もし鉱脈や鉱石関連でわからないことがあったら手紙を出してくれ。俺でわからなければ親父に聞く」


「チコも気軽に会いに来なさい。貴女との狩りは面白かったもの」


「はいッ! また色々と教えて下さい、私頑張りますっ」



握手を交わして、彼らは私たちとは反対側へ足を進めていった。

 三人の後姿が人ごみに紛れて見えなくなってから誰ともなく、小さな息を吐いた。



「これから私たちも宿に行って、荷物を置いてからご飯食べるんだよね」


「ああ。露店で済ませてもいいし、夜は夜で商品が変わったりもする。蝋燭の類が割と安くなるからミント、買うなら今夜買い揃えた方がいいぞ」


「は、はい! ありがとうございます。蝋燭代って結構馬鹿にならなくって……」


「魔石ランプにはしないんですの? あちらの方が明るいですわよ」


「夜間のお祈りでは蝋燭なんです。生活するには魔石ランプでいいんですけど、ランプを買う余裕が」


「……予算は」


「ええと、今出せるのは銀貨三枚くらい、でしょうか。でも安くても銀貨五枚はするんですよね?」


「―――……銀貨三枚か、それなら何とかなる。使えれば問題ないのだろう」



 ちらっとベルを見ると半目でリアンを眺めていて、ディルは屋台で売っている食べ物を吟味しているようだ。

時々小さく「肉か」とか「もう少し量が」とか言っているのを見るとお腹が空いているらしい。


 宿は一階の入り口付近にある受付の奥が大きな食堂になっていて二階が宿泊スペースになっていた。

若い夫婦がやっているこの宿は、部屋数はあまりないものの手入れが行き届いていて何だかホッとできる雰囲気だ。


 男女に分かれた私たちは、部屋に荷物を置いて宿を出る。

まぁ、荷物って言ってもトランクだけだから時間はほとんどかからなかったんだけどさ。


 先に待っていたリアンが懐から懐中時計を取り出して時間を確認しつつ、口を開く。

懐中時計も高級品なんだけど、商家の息子として持っていろと幼いころに渡されたらしい。



「明日は朝市で必要な物を買ってから特急馬車を貸し切ってモルダスまで帰るぞ。トラブルがあっても夜には帰れる」


「………え。ちょっと待った! 貸し切りって絶対高いよね?!」


「ん? ああ、帰りの馬車代もあの二人に支払わせることになっているから問題ない。本来なら僕らはここに寄る必要がなかったんだから、当然だろう?」


「お前、性格悪いってよく言われるだろ」



ディルのツッコミに私たちは無言で頷く。

 やり手の商人を敵に回すと破滅が待ってるんだなってこの時思った。



「確か乗合馬車だと三日かかる筈ですわよね。どうして一日で到着できるんですの?」


「乗合馬車の速度は徒歩より早い。だが歩行者を見かけると速度を落として交渉して客を乗せるんだ。一回で多くの客を運んだ方が儲かるからな。あとは、子供や女性も多く利用している関係もあって、休憩時間は多くとることになっている。必ず決められた場所で夜を明かす決まりになっているから、どれだけ早く着いても進まないそうだ」



 下手をすれば徒歩より遅くなることもある、という解説で私たちは納得した。

特急馬車は止まる事が無いし貸し切りにしてしまえば文字通りモルダスまで特急で進むそうだ。


 休憩の回数も貸し切りだと貸し切った方が決められるとのことだったので、午前午後に一度ずつ十分程度止まってもらうことにした。

トイレとかもあるし、特急馬車って揺れるから長時間乗ってるのって結構きついんだよね。



「でも、そうですね……長時間特急馬車に乗るならクッションか何かを買った方がいいかもしれません」


「ああ、揺れ凄かったもんねー。そうしようか! 奴隷の子の服とか靴も買わなきゃだし、多少大きくてもトランクに入れれば運べるからパパッと買っちゃおうよ」


「それなら、食事を終えたら調合に必要な保存瓶なども購入しておくか。個人的に本もいくつか見たい」


「私は鉱石加工に関する本とアクセサリーの土台なんかが欲しいですわね。ああ、宝石加工の道具ってあるのかしら」


「俺も召喚に使う媒介をいくつか見たい。あとは飯だな」



今後の方針が決まった所で私たちはまずお腹を満たしつつ、必要なものを買う為に大通りをぶらついた。


 屋台のお店は珍しい他国の料理もあって、色々食べたんだけどどれも美味しかった。

食材が安いからか、一つの値段もお手頃でついつい食べ過ぎちゃったくらい。

ディルなんか初めに夕食代として渡された分を早々に使い切って自腹で色々な物を食べていた。

まぁ、私たちもリアンも予算に少し自腹を切ったんだけどね。



「……リアン、よく出入り禁止にならないね」


「あの程度の交渉は良くあることだ、出入り禁止になんてなるものか。それはそうと、他に必要なものがあれば揃えるぞ。生鮮食品は朝市で購入した方が安いから、ここで買うのは価格が下がりにくい物にしておけよ。必要なら僕が交渉する」


「ええ、お願いしますリアンさんっ」


「やった! じゃあさ、私も珍しい物が欲しい! できれば調合に使えそうなやつ!」


「私は原石が欲しいですわね。ディル、貴方は何かないの」


「良さそうなのがあったら声をかける。それより甘い物食べないか」



キラキラ目を輝かせたディルが指さしたのは冷えた果物の盛り合わせ。


 結構な量があったそれをディルは私たちに一口ずつくれた後、あっさり一人で食べ切った。

その後も似たようなやりとりが五回ほど続いたんだけど、流石に入らなかったな。



「ディル、貴方よくそれで太らないわね」


「召喚師というか俺の体質だ。生命維持に必要な分以外は魔力に変換されるようになっている。これは生まれつきだが、召喚師の中には特殊な方法や魔装具なんかで似たようなことをしている連中も多い。いざというときに魔力回復の手段をいくつか用意しておかないと召喚師は使い物にならないからな」


「へー……食費大変なことになりそうだね」


「それをカバーできるだけの収入が得られるから問題ない。生活を共にしても貧しい思いをさせるつもりはないから安心してくれ」


「収入かぁ。私も早く稼げるようになりたいなぁ。いっぱいアイテム作らなきゃだね」


「……そうだな、待ってる」



私とディルが会話をしている後ろでベルとリアン、そしてミントが苦笑していた。



「話がかみ合っている様で妙にズレてるような気が……」


「私ちょっと不憫になってきましたわ」


「僕は滑稽すぎて笑えて来るが」



奴隷の子は無言で目を輝かせて私が買った食べ物を次々に口運びながら私たちを窺うように付いて来る。

 静か過ぎて付いて来てるかどうか不安になって振り向くと、奴隷の子がびくっとするのがちょっと面白いと思った。



(ただ採取する為に来たのに、色々あったような無かったような)



賑やかで普段よりちょっと浮かれている皆の顔を見ながら、緩んだ顔をそのままに私もいつもはきっちり締めている財布の紐を少しだけ緩めることにした。



ここまで目を通してくださってありがとうございました。


次回更新少し時間がかかるかもしれませんが出来るだけ頑張ります。

あと、ブックマークや評価ありがとうございます!


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 何周目か読ませてもらってます。面白いです! ちょっと気になるのですが、この辺から銀貨と金貨の価値が微妙におかしくなっている気がします。副ギルド長の、「一つ銀貨30枚ほどになるのが通例な…
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