70話 採取旅6日目 3
結構早く書きあがりました。
書いてて食べたくなったもの:焼き鳥(特にネギま)、べっ甲飴(多分水晶石の所為)、黒飴(鉄鉱石の所為)
さくっとです、はい。
採掘を一足先に終えた所で、昼食の準備をすることにした。
ベルやミント達が寝てはいるけど全員揃ってるし、簡単にパスタでいいかなーと大量のマトマソースを作るべくトランクを開ける。
多分、というかパスタだけじゃ足りないだろうという事でパンとお肉を焼くことにした。
お肉は下味がついているのでじっくり焼くだけだから簡単だ。
まぁ、焼く作業が一番時間かかるんだけどね。
「この肉を焼けばいいの?それなら俺も手伝うよ」
「野営でもこういう風に肉を焼くことがあると聞いた。俺も今のうちに慣れておきたい」
ラダットとムルの提案に私は飛びついた。
自分を含めて九人分の食事の準備って結構量が多いから大変なんだよね。
パスタも二回に分けて茹でる予定だし。
「(もうちょっと大きな鍋があればもっと楽なんだけど、そうなると完全に炊き出しだよなぁ、これって)じゃあ、今串を作っちゃうから焼いてもらってもいい?味付けはしておくから」
「わかった。焼くときの注意とかある?」
「表面の色が変わったらひっくり返して、全体に焼き色がついたら今度はじっくりしっかり中まで火を通して欲しいんだ。表面に血が滲んだらひっくり返す、っていうのを繰り返して、うっすら肉汁が浮いてきたら食べごろだよ。割と脂身が少ないお肉だからこの焼き方でいいけど、鳥系の肉とか油が多いお肉の焼き方はまたちょっと違うんだよね」
試しに一本焼いてみるからちょっと見てて、と完成していた一本だけの焼き方を見せると二人ともわかってくれたみたいだった。
ひっくり返すタイミングさえわかればあとは難しい事が無い筈だ。
二人に手を洗う様に伝えると、少し離れた場所にある水瓶へ向かっていく。
ディルが見張る様にその後ろをついていくのを見届けてから調理台に戻る。
「さてと、先ずは肉串の下処理しちゃわないと」
昨日ベル達が狩ってきた動物の肉をマタネギやリークの白い部分を一口大にして肉と一緒に刺していく。
マタネギもリークも生のままだとちょっと辛みがあるんだけど、熱を通すと甘くなるんだよね。
不思議だけど、マタネギは浅く火を通したらシャクシャク、しっかり若しくはじっくり火を通すとトロッとなる。
リークは薄い皮が重なって一本になった感じの野菜だからか、火を通すとマタネギとは違った食感になるから面白い。
トロトロ具合で言えばリークの方が強いけど、焼き方によっては残念な感じになっちゃうから付きっ切りでお肉は焼きたい。
タイミングズレると焦げたり微妙に生だったりして辛かったり、ってこともあるし。
結構な数の肉串を作って、塩と香草を混ぜた香草塩を振りかける。
ちょっぴり贅沢に胡椒を混ぜてるから味も締まるし、香りも香草と相性がいい。
(高いけどね、胡椒。モルダスで見てびっくりしたっけ。私の家で栽培してたの沢山ストックしておいてよかった)
ポーチの中には何種類かのブレンド塩を入れてある。
魚用、肉用、野菜用、シンプルに塩と胡椒だけのヤツ。
普段使ってるヤツを持ってきただけなんだけど役には立つ。
胡椒入りの調味料が盗まれることもあるってリアンに言われたから持ってきたんだけど、調味料盗むってどうなんだろ?
都会ってやっぱりわからない。
出来上がった肉串の山は戻ってきたラダットとムルに渡し、続いて必要な材料をトランクから持ち出す。
使うのは食感がしっかりした肉厚のキノコ、マタネギ、マトマ、香草、肉。
まず、肉は細かく切り刻んで小さなサイコロ状にする。
マタネギ、キノコはみじん切りにしてマトマも同様に細かく切って置く。
皮を取るべきかどうか迷ったけれど、面倒だからそのままだ。
豚の油を少し大きめの鍋に敷いてからマタネギとキノコを投下。
ササッと作りたかったのでちょっとだけ裏技を使うことに決める。
(リアンはベル達を起こしに行ってるし今のうちっと)
少し炒めたマタネギとキノコの他の材料を入れ、適度な大きさに切った香草を最後に入れたら魔力を注ぎながら鍋の中身を混ぜていく。
塩、胡椒、あと隠し味にショーユを入れ、果汁もちょこっとだけ。
(やっぱり魔力を加えながら混ぜるとソースになるの早いなぁ)
あっという間に食材たちが溶けて混ざり合うので少し食感を残す程度で魔力を切る。
煮詰めながら味見をして、程よい所で火が弱い所へ鍋を移動させておく。
屋外で弱火って難しいんだよね。
火が焚火だからどうしても火力にむらが出るし、火加減を見誤ると焦げたり生だったり悲惨なことになる。
置いた時は火が小さくても、風で知らない間に火力増強してることも結構あるんだよね。
「今になって思うけど採取しに行って帰れなくなっておいてよかったのかも。焚火でご飯作る方法とか知ってるのと知らないのとじゃ随分違うだろうし」
呟いた言葉は作業中のラダットやムルに聞こえたらしい。
ギョッとした顔で私を上から下まで見た後に二人が顔を見合わせた。
何となく言いたいことはわかったし、リアンやベルなら怒るだろうけどこの二人は大丈夫だろうとパスタ用の鍋に塩を入れる。
「私の家って結構な田舎っていうか辺境っていうのかな、山の頂上に近い場所に家があるんだ。家があるのは大きい山だったから森や林、あと湧き水が染み出る所もあったし、小さい川もあったよ。半日歩けば温泉がある場所とか鉱石が取れる場所もあるんだよね」
「山に家を建てるというのがまず普通は考えないものだが、錬金術師というのはすごいな」
「おばーちゃんの友達も最初は止めたみたいだけど、結構な広範囲に魔物除けの結界張って、周辺の山を支配していた主ってやつを手懐けて契約したみたいだよ。時々ばーちゃん、ちょっと餌やってくるわーって出かけてたし。あ、でも山の麓の村にも魔物出ないようになったからか村の人には喜ばれたみたい」
絶句する二人に首を傾げていると、ラダットが取り繕う様に笑顔を浮かべた。
お肉の焼き具合は順調だった。上手く焼けてて美味しそう。
「山の中で二、三日って護衛の人がいても結構危ないよね。俺も父さんの仕事覚えるのに同行したことあるけど」
「確かに森の中は知っている森でも昼や夜では顔が変わるからな。モンスターや魔物が行動するのは主に夜で、鉱山にたどり着くまでの山道でも冒険者を雇ったりするのは一般的だ」
「実はさ、俺が冒険者になりたいって思ったの家で雇ってる冒険者の人達が凄くいい人でカッコよかったからなんだ」
ありがちだけどね、と照れたように笑うラダットを見てふと疑問を抱いた。
ラダットは木材関係でムルは鉱山、チコは狩人って結構恵まれた自然環境っていうかそういう場所にある村や町ってかなり裕福なんじゃ?
首都モルダスに向かう途中に御者のタイナーさんから聞いた話の中に、山の麓にあった村はまだいい方だっていう話を思い出したのだ。
トライグル王国には色々な村や町があるけれど、作物が良く育つ場所や鉱石や木材が取れる場所、野生の動物が多くいる森の近くっていうのはかなり恵まれているんだとか。
恵まれている場所があればその逆もあって、そういう町村は滅ぶか細々とやっているかの二択。
ひとたび感染症や病気が流行ると村や町ごと全滅するから、外部との接触は歓迎されず、病気をした場合は治療もせずに追放……というのも珍しくないっていうのを聞いた。
聞いた話をそのまま二人に話すと二人もそういう話は聞いたことがあるらしい。
「俺たちが育った町はそこそこ大きかったよ。近くに山もあったし川もあった。魔物が時々出てくる場所だったから自警団もあったし、引退した冒険者が比較的多かったから色々揃ってたんだ。俺の家は町の材木店に木材を卸したり、山の幸を採って食材屋とか料理店に買い取ってもらってたからそこそこ裕福ではあったかな。五人兄弟だけど誰も奴隷にはならなかったし」
「俺の家もラダットの家に似ているな。俺やラダット、チコの親は幼馴染だったこともあって俺たちも自然に幼馴染になった。親戚が鍛冶屋をやっているから家で採れた鉱石のいい奴はそっちに卸してたし、親父の鉱石屋には定期的に行商人が買い付けに来ていたから割と余裕はあったぞ。チコの所も似たようなもんだ。チコの両親は弓の名手で、季節を問わず獲物を狩れたから自警団の弓隊隊長も兼任していた」
へぇ、と相槌を打ちながらパスタの茹で具合を確認。
テントの方からリアンがベル達を連れてこちらに歩いてきているのが見えた。
パスタの茹で具合も丁度良かったので、ディルに手伝いをお願いして大きなざるにパスタを上げ、大鍋に茹でたパスタを投下する。
「あのピンク頭と剣士の二人は?」
「ラギは町長の息子で、マリンは服屋の娘だ。町長はまともなんだが町長夫人が息子に甘く、マリンも両親はまともなんだが、漸くできた女の子ってことで大事にされていたらしい」
焼けたぞ、とムルに肉を指さされたので、焼けた串を大皿に乗せるようにディルに頼んだ。
ディルと言えばムルの言葉を聞いて納得したように
「なるほどな。道理で言葉が通じないわけだ。ああいった人種は自分に都合の悪いことは意図的に聞き流すか無かったことにすることが多い。ギルドに到着したら縁を切るといい。『縁切り証明書』というものがあった筈だ、同じパーティーに属していた記録がある場合に使用できる。これを出せば後々どんな問題が起こったとしても届け出を出した方とは“何の関係もない”ことを証明してくれる」
「そんなものがあるんですか?!」
「有益な情報に感謝する。チコにも話しておいた方がいいな。相手の承諾はいるのか?」
「不要だ。まぁ、いくつか条件もあるがリアンが苦情を出すことを決めているから問題なく受理されるだろう」
ディルによると『縁切り証明書』っていうのは割と古くからある制度らしい。
問題を起こす者が一定数いて、その人たちと一時的にでもパーティーを組んでいた事で足を引っ張られたり前評判が悪くなり仕事が貰えなかったっていう事が続いたから作られた制度らしい。
今でも現役の制度ってことを考えると冒険者も大変だよね。人間関係とかさ。
「所でディルはなんでそんな制度知ってるの?」
「使ったことがあるからな。魔術を使うとこちらが有責になるし、召喚獣の餌にしても有責判定が出るから仕方なく……貴族の力で暗殺することも考えたが面倒になった」
「た、大変だったんだね」
これ以上深入りしない方がいいと思ったのは私だけじゃなかったらしく、ラダットもムルも同じように視線を逸らして黙々と手を動かしていた。
あ、パスタだけどもうお皿に盛り終わってテーブルにセッティングしたよ。
パンも軽く炙ってパン用のバスケットに入れて、その横にジャムの瓶は数本セッティング済み。
最後の串が焼けた所でベル達が来たのでそのまま食事をする流れになった。
鉱石の発掘状況とか、午後の作業についてを話した後に『縁切り証明書』の話もしたんだけど、満場一致で賛成し提出することに。
奴隷の子の分も席を用意したんだけど、結局地面に座って食べていたのが妙に印象に残った。
椅子に座るのが嫌いって訳じゃなくてやっぱり奴隷っていうのが気になってるのかな。
主人がいないんだから気にしなくていいのに。
◆◆◇
食事と後片付けを終えて、採掘場所近くに設けた作業場へ移動する。
作業場って言っても人数分の木箱を置いただけなんだけどね。
中央には掘り出した石や岩なんかがまとめて山積みにされていて、中々時間がかかりそうだった。
まぁ、人数いるから大丈夫だろうけど。
ディルには例の二人の監視を頼んだんだけど、こちらの作業が終わったら不要な石や岩は魔術で処理してくれるらしい。
思わず、おやつ持たせちゃったよね。オーツバーだけど。
「そういえば君はどうする?午前中はずっと重たい岩石運んで疲れたと思うから休んでてもいいよ」
トランクから人数分のハンマーとタガネを取り出しつつ、静かに私の後ろに控えている奴隷の子に話しかけると、びくっと小さく肩を震わせて例のポーズ。
流石にもう慣れてきたけど旅の間くらいは止めてくれないかなぁ、頼んでも駄目だったけどさ。
畏れ多いとか言って。
「どうぞお好きにご命令ください」
「いや、あの、命令っていうか……えーとじゃあ、好きにしてていいよ。休んでてもいいし、作業見ててもいいし。ハンマーとタガネ持たせるのはベル達に怒られそうだからさせてあげられないけど。あ、水袋に水は補給しておいたから好きな時に飲んでね。ミカンもあるから、夕飯までに食べて」
私が座る木箱の少し後ろに古布を敷いて座りやすくした後、水袋とミカン2つを置いておく。
あとは勝手に座るだろうと判断して、各木箱の上にミカン2つと道具を置く。
今回は量が多いってことで、人数が凄いことになっている。
私とベル、リアンの三人に護衛のミント。
四人に加えて新人冒険者のラダット、ムル、チコの三人が追加。
全員で七人だから結構な量が捌けるはずだ。
私の横にはベルとミントが腰かけた。
二人ともミカンを嬉しそうに触ってるけど、持つのハンマーとタガネだからね。
ミカンは気分転換用のおまけ。
「ムル、これから行う選別作業について説明を」
リアンの声でムルが中央にある岩石の山から、こぶし大の石を一つ手に取った。
薄い灰色をしているけれど、形はごつごつして岩のようだ。
皆に見えるように肩くらいまで石を持ち上げて説明を始める。
「まず、石の選別についてだ。これは一見しただけでは鉄鉱石なのかただの石なのか分からない。そういう場合は半分に割って、中を確かめる」
そういうと持って居た石を地面に置いてタガネを少しくぼんだ場所に当てた。
ハンマーでタガネを叩くと面白いくらいにパカッと石が割れる。
割れた石の断面には黒い小石のようなものが入っていて干しブドウだらけのパンみたいに見えた。
「この黒い小石のようなものが鉄鉱石だ。ここで採れるのは大体このような大きさで、石の中に含まれていることが多いだろう。砕いた場所によっては、砕かなくてもわかるものもあるかもしれないが数は少ないと思っておいた方がいい」
なるほど、感心したように頷けばベルが近くに落ちていた黒い小石を摘まんだ。
「でしたら、この小石は鉄鉱石ですの?」
「それはただの石だな。そういった色味の石は割と多い。鉄鉱石はこっちだ。比べてみると違いが分かりやすい。見本として渡しておいた方がいいか?」
ムルの提案に頷いたのは私以外の全員。
ギョッとする私をムルが見て
「ライムは椅子に座って作業をするより、こっちでひたすら砕く方が早いだろう。それ以外は椅子の前に中程度の採取袋に入る岩石を置いておく。そこから少しずつやってくれ。慣れたらこちらで合流して砕いてくれると助かる」
量が量だ、と呟かれた言葉に視線が岩石の山に集まる。
ベルが腕を組んで岩石を見ながら一言ぼやいた。
「にしても、どうしてこんなに掘りましたの?流石に多すぎではなくって?」
「あ、あははは」
「やっぱりライムの仕業だったのね。貴女、採取となると見境なくなるんだから気をつけなさいよ。これ、終わらなかったら持って帰って作業しなきゃならないじゃない」
「だ、だって掘るの楽しかったんだもん。こう、掘り進めていくうちに感覚がさ」
「お黙りなさい、採取中毒者」
「うぐ。ご、ごめんってば。次は出来るだけ気を付けるから」
「持ち帰る羽目にならないように頑張って頂戴」
調子に乗って掘りすぎたことがバレてる、と妙な冷や汗をかきながら岩石の山に手を伸ばして、素敵なものを見つけてしまった。
手にしたのは、石からにょっきり顔を出している水晶石。
まるで石の部分が土で水晶石がそこからニョキニョキと芽を生やしたみたいだ。
目を輝かせている私に気づいたらしいミントが隣にしゃがんで、手元にある石を見た。
「わぁ、綺麗ですね!コレが水晶石ですか」
「水晶石見たことないの?結構、というか時々川とかにも転がってるって聞いたけど」
「私たちシスターはあまり教会から出ることがありませんし、装飾品の類を買うお金があったら子供たちに美味しいものをって考えてしまうので」
恥ずかしそうにはにかむミントを見て、帰ったらまず結晶石の首飾りを作ろうと決めた。
確か緑っぽい綺麗な結晶石があった筈。
よく見ると時々結晶石がついた石や、結晶石自体もいくつか混じっているみたいだったのでちょっと宝探しみたいで面白いかも。
「ああ、中には結晶石もある。結晶石は別に避けておいた方がいいだろうな。精製の時に混じると脆くなるんだ」
「そうなの?」
「ああ。精製時は同じ鉱石を使うのが基本だ。精製し、インゴットにしてから他の金属と混ぜ合わせた方が品質も上がるし特性なども出やすい―――…もし、判断に迷う場合は声をかけてくれ」
ムルの言葉でそれぞれが持ち場に戻る。
その時に、奴隷の子がおずおずと近づいてきて、岩石の補充をさせて欲しいとお願いされた。
驚いたけど、私たちとしては助かるのでお願いすることに。
なんかホッとしていたのが印象的だった。
暫く石を砕く音が響いていたのは言うまでもない。
最後の方なんか皆職人みたいになってたもん。すごいよねー、単純作業って。
(そういえばここに到着した時に変わった石をこっそり拾ったけど報告した方がいいのかなー……素材になりそうだと思って適当に拾ったんだけど)
誤字脱字チェックが毎回後回しでほんとすいません……気になったら早めに直します。
変換ミスを誘発する妖か幽霊がついてるんだ、きっとそうだ。
……毎度毎度、すいません orz
=素材=
【リーク】
円筒状の野菜。土に埋まった部分は白く火にあたる部分は緑色に。
どちらも食用可能で、火を通すとねっとりとした触感と独特の香味、そして歯触りがある。
臭み消しなどにも利用される万能野菜。
現代で言うネギ。




