52話 結晶石の首飾り
今回はちょっと早めに更新です!
ああ、よかったー。足りない部分などがあれば後で加筆するつもりでいます。
…眠くて少々どころか結構な勢いで脳みそが働いていないんで。寝ろって話ですね、はい。
あ、ブックマークがアップするたびに増えていて驚いています。
なんでだ、うれしすぎる。ブックマークに嬉死にさせられる!!
別の連載の方もじわーっとブックマークが増えて、やっぱりうれしい。ありがとうございますー!
私が自由の身になったのはベルとオリバさんのお蔭だ。
盾になる様に私の前に立ってくれているベルとオリバさんの背中を見ながら、ほっと息を吐いているとぐっと腕を引っ張られて、体勢を崩した。
何事かと驚いて後ろを振り返るとリアンが眉間にがっつり皺を寄せて前方を睨んでいる。
「え、なに…?」
「念の為だ。僕の後ろに立っていてくれ」
断ろうかとも思ったけど醸し出す雰囲気が戦闘前みたいにピリピリしてるので、大人しく言うことを聞くことにした。
リアンの後ろに隠れるように移動してみると改めて感じるちょっとした不満。
チラッと首の後ろで結われた髪を半目で見つめる。
(今更だけどリアンもベルも背が高いんだよねぇ…なんか悔しい。魚のメニュー増やそうかな)
すらっとした2人とがっしりとしたオリバさんの後姿を観察しているとあまり耳になじみのない声が聞こえてくる。
「―――…何をする」
「何をする、ですって?それはこちらのセリフですわ!貴方、初対面の女性に抱き着くなんて一体何を考えていますの?!マナー以前の問題ですわよっ」
「ライム…もしかして怒ったのか?」
「あああ、もうッ!あんたね、怒る怒らないの問題じゃないでしょ?!強制強姦罪か何かでっち上げて騎士団に突き出すわよッ」
「あのー…ベル?お嬢様の仮面綺麗に剥げてんだけど大丈夫…?」
髪を振り乱して全力で噛みついているベルには悪いけど、大分話について行けてない。
もしもーし、と声を掛けるとベルは気を取り直したように咳払いをして腕を組んだ。
「っ…と、とにかく説明してもらいますわよ!名門貴族フォゲット・ミーノット家の跡継ぎと名高い貴方が何故ライムを名指しで護衛をしようとしていましたの?あなたほどの家柄があればお抱えの錬金術師の一人や二人いるでしょうに」
「そうだな、ソレは学院の方でも個人的にも確認しておきたいところだ。とりあえず、お前さん達席についてくれ―――…この状態じゃ、まともに会話も出来やしねぇからな」
ほれ、とオリバさんに誘導されて私たちは席に着いたんだけど、ドアから一番近い席に私、部屋の奥に問題の貴族が座ることになった。
ちなみに私の横にはベルが座っていてベルの横にリアンという並び順だ。
リアンの目の前には、例の貴族様がいて彼の横にはオリバさんが座っている。
ここまではいいんだけど…重苦しい空気に私はだんだんと居た堪れなくなってきた。
(どうしよう、今すぐにでも帰って調合に明け暮れたい。この際、帰るまではいかなくてもいいから部屋の外に出て新鮮な空気を…!)
遠い目をしてドアと目の前の空席を交互に眺めていると固い、それでいてどこか緊張しているオリバさんが咳払いをしてから話し始めた。
「まぁ…そうだな、まずはいろいろ言いたいことはあると思うが…俺からの質問に答えてくれるか。流石に初対面で抱き着くのは不味いだろ」
厳しい口調で指摘を受けた貴族の彼は納得したらしく小さく頷いた。
今初めてまともに顔を見たんだけど、珍しい髪の色と目の色だなぁと感心する。
実際、白銀色の髪と紫の瞳はあまりない組み合わせだと思う。
同系色の髪と瞳は結構あるんだけど、髪と瞳の色が違う場合は大体、茶色の髪だし。
一番多い髪の色が茶色系の色なんだよ。次に金髪かな?
こっそり様子を盗み見ながら話に耳を傾けているとオリバさんは私達も気になっていたことを開口一番に問いかけた。
「で、ライム・シトラールとは知り合いか?まさか初対面とかいわねぇよな?」
「ド直球に聞くんですね、オリバさん」
「遠回しに聞いても意味ねぇだろ。時間も無駄になるしな。ライム嬢ちゃんに覚えはないようだが」
考えたことを思わず口に出した私にはもっともな言葉が返される。
私も考えてみたけどやっぱり見覚えはないんだよね…ちょっと引っ掛かる感じはあるんだけど。
(そもそも同じくらいの年代の知り合いって殆どいないんだよね)
住んでいる場所が場所だから、来るのは冒険者やよほどの事情を抱えた人、後は物好きと弟子志願者位だったし。
記憶を辿って抱き着かれるくらいに親しかった依頼者の子っていうのは記憶にはない。
ホントに誰だろう、と思いながら彼が口を開くのを待っていると目があった。
「――――…髪の色が変わったからわからないのか…?」
戸惑ったような、悲しそうな、声に思わず首を傾げる。
「髪の色って変わるの?リアン」
「僕に聞くのか。…まあいい。魔力の増減や魔力色の変化によって髪の色や目の色は変わることはあるがそういった例は少ない。髪の色や目の色が変わるのは10歳までの間で、魔力の質量が急激かつ大幅に変化しなければこの現象は起こらないそうだからな」
「その眼鏡の言う通り、俺の髪の色が変わったのは11歳になる目前だった。髪色が変わった理由は魔力色の変化と魔力量の急激な増加らしい―――元の髪色は茶色、ありふれた色だった」
「茶色に紫の目…?」
ふっと脳裏によぎったのは“彼”の顔。
まさか、と立ち上がってきちんと顔が見える位置へ移動してみる。
リアンの後ろに立って改めて観察していると徐々に記憶と目の前の人物が重なって見えてきた。
「もしかして…ディル…?」
ぽつりと唇から零れ落ちたのは、私が小さくて、まだおばーちゃんが生きていた時に出会った“友達”の名前だ。
(よく見てみると…確かにディルを大きくしたらこんな感じになる、のかも?)
髪の色が違うのでイマイチ実感がわかないけれど、顔立ちはディルにしか見えなくなってきた。
改めてマジマジと顔を観察していると目元を赤くして嬉しそうに笑った。
「ああ、ライムが思い浮かべてる“ディル”だ」
そういって笑う彼は、自然な動作で椅子から立ち上がって私の目の前に立っている。
リアンと同じかそれ以上に高い位置にある顔を見上げると、嬉しそうに細められた紫の瞳に自分が映っているのが見える。
記憶の中の“ディル”は私と同じくらいの目線だったからなんというか落ち着かない気分になった。
「――…どうやら知り合いみたいだな」
やれやれ、と息を吐いたオリバさんに頷いて肯定の意を込め頷けば目の前のディルが笑みを浮かべる。
「本当に知り合いですの?」
酷く疑わしそうな顔をしているベルに頷きかけて、少し迷う。
結構な年数会ってなかったし声も違う上に髪の色も違うから断言するまでの自信がないんだよね。
「俺がライムが知っている“ディル”であることを示す物はコレだけだ」
ゴソゴソと首元からあるものを取り出して見せられたものに私は思わず息を飲んだ。
彼の手には珍しくはない“手作りのペンダント”が握られている。
革ひもの中央で揺れるペンダントトップは結晶石を簡単に加工したもので、子供の小指ほどある透明度の高い結晶石には見覚えがあった。
“結晶石の首飾り”と呼ばれるこの首飾りは比較的簡単に作ることができるので冒険者やそれ以外の人間が持っていても何ら不思議はない。
「私が初めて調合した“結晶石の首飾り”…っ!」
「ああ。これには“蒼の導き”という効果がついている特別製だ。なんなら鑑定してもらっても構わないし、オランジェ様が魔力認証を付けてくれているから持ち主が俺であることも証明できる」
淡々とベルとリアンを見ながら説明をするディルは記憶にある彼の雰囲気とはちょっと結びつかなかったけど、おばーちゃんが“歳月は人を変えるのよ”って言ってたし、変身したと思えば気にもならない。
ベルもリアンも顔を見合わせて、リアンが小さくため息をついたので私は慌てて口を開いた。
別に鑑定してもらってもいいんだけど、初めて作ったアイテムが詳しく鑑定されるのってなんだか恥ずかしいような居た堪れないような…変な感じがする。
「鑑定しなくても分かるよ。ちゃんと覚えてるし!一緒に遊んでて、雨宿りに潜り込んだ小さい洞窟で見つけたヤツだよね?色つきの結晶石もあったけど、一番最初に見つけたのがこの結晶石で一緒に掘って、家で私が初めて1人で調合したやつでしょ?効果がついた透明な結晶石は珍しいっておばーちゃんが褒めてくれたっけ」
「―――…ああ。もう一度、あんな風にいろんなところを見て回れたら楽しいだろうな」
懐かしいな、と思いながらどんな遊びをしたか思い出していると今まで黙って成り行きを見守っていてくれたらしいオリバさんがパンパンと軽く手を叩いた。
はっと我に返った私たちが彼を見ると何だかほほえましい者でも見る様な笑顔で私たちを見ている。
「まぁ、アレだ。2人が知り合いだってのは十分わかったし、出会いがしらの行動もなんとなく理解はできた。ただ、ディルクス・フォゲット・ミーノットは今後十分気を付けるように。もし人違いだったら“間違いだった”じゃ済まないこともある」
「あのような行動は魅了を掛けられてもライム以外にはしないので問題ありません」
「それも問題ですわよ、十分すぎるほどに」
少しは本音を隠しなさい、と素早く口を挟んだベルにディルは真顔で首を傾げて腕を組んだ。
2人がそこから何か楽しそうに話をし始めたので手持無沙汰になった私は気になったことがあったのでリアンに話しかけてみた。
いや、基本的にこういうことの決定権ってリアンにあるし。
「で、どうする?護衛の事…一応本当にタダで良いのか聞いてみようとは思うけど」
知り合い割引みたいなのがあればいいけどあったとしても貴重らしくて身分でいえば貴族の召喚師って高いよね、と耳打ちすればリアンに呆れたような目で見られた。
「……護衛を頼むつもりなのか、君は」
「え。駄目なの?中~遠距離の攻撃できるって言ってるし、リアンと同じ男の子だから仲良くなれるかもしれないじゃない。野営っていうのも人数多ければ多い程楽だってエルとイオに聞いたことあるし」
「へぇ、よく知ってるな。確かに野営をするなら最低でも3人は欲しい所だ。あと、常識と言えば常識だが男女比は少し考えた方がいいぞ。で、楽しそうなとこ悪いんだが俺もまだ仕事があるんでな…そろそろ話をまとめたいんだが、ディルクス、お前さんは元々の条件で構わないんだな?変更することも出来るが」
「ライムがいるなら護衛料は貰わない。学科の方も問題ないから何日でも護衛をしよう」
きっぱりと言い切ったのを見て頷いたオリバさんは続いてリアンに視線を向けた。
リアンは相変わらず、眉間に皺を寄せて何やら考え込んでいたが視線が集まっているのに気付いたらしく口を開いた。
「―――…彼を護衛として雇います。ただし、かなり少額ですが一日銀貨1枚は支払わせてもらいますよ」
「いらないと言っているだろう。ライムから金は受け取らない」
「後で何か要求されても困るので。あと、今回の採取で使った回復アイテムや消耗品についても請求しないものとします。それでもよければ契約を」
頑として譲らないと言わんばかりのリアンにディルは面倒そうに一瞬眉を顰めたけれど、数秒考え込んだ後ため息をついて了承すると宣言した。
その後は契約書に依頼主であるリアンと依頼を受けたディルが署名して終了。
部屋を出ると授業が始まっているらしく生徒の姿はまばらだった。
「じゃあ、明後日からよろしくね!っていうか、授業は大丈夫なの?」
「問題ない。一学年で習うことは全て家で教えてもらったからな。出る必要もない位だ―――ライムはどうするんだ、これから」
「え?私?私は…」
「私たちと買い出しをして採取の為にアイテムを調合する予定ですわ。詳しい日時は手紙で知らせますから、貴方はどうぞ召喚科に御帰りになってくださいませ!行きますわよ、ライム」
ぐいぐい、と腕を引っ張られて転ばないよう足を動かした私が首だけで振り返るとリアンが一言二言ディルに何か告げて、私たちを追ってくる。
遠く、小さくなっていくディルに手を振ると笑顔で振り返してくれたのが嬉しかった。
◆◆◆
帰りは元々予定していた通りに買い物をして、ついでに何か依頼があればってことで冒険者ギルドに寄った。
一番街とウォード商会に立ち寄ってした買い物は十分なものを仕入れることができたし、冒険者ギルドでは調和薬の割がいい依頼が出ていたのでそのまま現物を納品した。
あと“忘れられし砦”に関する情報も手に入ってほくほくしながら工房に戻ったんだけど…ベルもリアンも何故かむっすりしている。
「なんか2人ともディルに会ってから変だけど、何かあった?結果的に探し回る時間手間も短縮できたし私としては大満足なんだけど」
「なんでもありませんわ。取り敢えず、色々と片づけなければならないモノや調合してしまわなければいけないモノもありますわよ!」
「そういえばそうだよね。じゃあ、色々地下に持っていこうかな」
よいしょ、ととうに届いていた空き瓶を抱えて地下室に向かった私は後ろからベルが木箱を2つも運んできたので一瞬驚いてしまった。
リアンは真面目な顔で手紙らしきものを書いていたのでそのまま放っておいた。
何か作業中に声掛けられると集中力が切れちゃうからねー。
誤字脱字変換ミス怪文章などがありましたら、即行で治しますのでお知らせください!
あと、自分で気づいた場合はこっそり直します…はい。
読んでくださって本当にありがとうございました!続きも頑張りますー!




