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第57話 いざ敵陣へ!そして、獅子の顎(あぎと)

アクアティア公国 に、

しばしの、しかし、

確かな平穏が戻ってから、

数日が過ぎた。


テオン王子 と、その部下たちは、

今は、城の一室に軟禁されている。

彼らの処遇は、

ネプトゥーリア王国 との、

今後の交渉次第だ。


そして、その、

国の運命を左右する交渉のため、

私たちは、旅立ちの準備を進めていた。

目指すは、敵国の本拠地、

ネプトゥーリア王国 の王都。


「アリア様 、こちらのドレスになさいませ。

威厳と、そして、

優雅さも兼ね備えておりますわ」

セーラ が、深海の青を思わせる、

美しいドレスを、私にあてがう。

もう、彼女は、私の侍女というより、

公私にわたる、最高のパートナーだ。


「ありがとう、セーラ 。

あなたがいるから、

私は、前を向けるわ」


フィンレイ様 は、

連日、書庫に籠りきりだ。

テオン王子 が犯した罪の証拠と、

そして、ネプトゥーリア に突きつける、

新たな友好条約の草案を、

不眠不休で、練り上げてくれている。


カイ様 は、

私に同行する、

最小限の、しかし、

最強の護衛騎士団の選抜を、

終えたところだった。

その表情は、相変わらず硬いけれど、

以前のような、悲壮感はない。


そして……。

「アリア様 、準備はできました。

いつでも、出発できます」

ケンタ殿 と、

その背後に控える、巨大な竜、リュウガ 。

彼らが、この旅の、

最大の切り札であり、抑止力だ。


出発の前夜。

私は、一人、

自分の部屋で、

かつての、私の分身だったものを

見つめていた。

桐箱の中に、静かに収められた、

あの、『領主の仮面』 を。


(……ありがとう、仮面様)

(あなたがいてくれたから、

今の私が、ここにいる)

(でも、もう、大丈夫)

(私は、もう、あなたに隠れたりしない)


私は、そっと、桐箱の蓋を閉じた。


翌朝。

私たちの船は、

民の、割れんばかりの歓声と、

希望に満ちた祈りに送られて、

アクアティア の港を、出航した。

それは、決して、

悲しい船出ではなかった。


数日後。

私たちは、ついに、

ネプトゥーリア王国 の王都、

『アクア・インペリウム』へと到着した。


その光景は、圧巻、の一言だった。

空を突くような、黒鉄の塔。

海を埋め尽くす、巨大な軍艦。

そして、道行く人々の顔には、

誇りと、そして、

他国を見下すような、

傲慢な光が宿っている。


豊かさの種類が、

アクアティア とは、全く違う。

ここは、力によって、

全てを支配し、築き上げられた、

巨大な、軍事帝国なのだ。


(……すごい……)

(こんな国を、私たちは、

敵に回していたのね……)

私の背筋を、冷たい汗が伝う。


港では、ネプトゥーリア の、

冷たい、能面のような顔をした

文官たちが出迎えた。

歓迎の言葉は、一言もない。

ただ、私たちを、

値踏みするように、じろじろと見つめるだけ。


私たちは、彼らに案内され、

巨大な、王城の、

どこまでも続くような、長い廊下を歩く。

そして、ついに、

一つの、巨大な扉の前で、足を止めた。

謁見の間。

この先に、この国の王が、

そして、全ての元凶が、待っている。


私は、一度、深く、息を吸い込んだ。

そして、隣に立つ、

カイ様 と、ケンタ殿 の顔を見る。

二人は、力強く、頷いてくれた。


(大丈夫。私は、一人じゃない)


私は、顔を上げ、

目の前の、巨大な扉を、

まっすぐに見据えた。

私の、最後の戦いが、

今、始まろうとしていた。

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