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お、終わった~ (^o^)丿
長らく中断していたにも関わらず、最後まで読んでくだったみなさま、ありがとうございました。
また、ずっと待っていてくださったみなさま、心よりお礼申し上げます。
みなさまの応援が支えとなり、なんとか完結することができました。
本当にありがとうございました!
「想定より長引いてしまって、申しわけない」
退出を見届けたラインハルトは、穏やかな表情でヒルダをかえりみた。
「いえ……」
「ところで、ひと月後の卒業パーティだが、あなたのエスコートはクラウスが務める。そのつもりでいてくれ」
「クラウスが?」
同じ学園生同士とはいえ、相手は従者。
しかも、ヒルダには歴とした婚約者がいる。
「お待ちください。それでは、十九年前のあの事件と同じになってしまいます!」
「いや、大丈夫だ。卒業パーティでは、俺たちの婚約解消とクラウスとの婚約が発表される。これは陛下がお決めになったことだ。そういうわけで、当日のことはふたりで話し合ってくれ」
「解消!? 婚約!?」
意外すぎる話に、ヒルダの思考は完全に吹っ飛んだ。
ラインハルトは、そんな婚約者のようすを訝しそうに眺めながら、
「もともと俺は当て馬だ。クラウスは母国の事情でずっと命を狙われていたから、その恐れがなくなるまで、俺が仮の婚約者になっていただけだ。もちろん知っていただろう?」
「当て馬? 命? 仮?」
パニックにおちいる婚約者♀(仮)と、あきれ顔の婚約者♂(仮)。
「まさか知らなかったのか? そもそも、五大侯爵家令嬢であるあなたが、王位継承権どころか爵位すら持たない男の婚約者になっている時点で、普通は何か察しないか?」
「えっ!?」
「俺は、当然あなたがわかっていると思って、今まで婚約者らしいマネはしてこなかったのだが……もしかすると、悪いことをしたか?」
(じゃあ、会っても素っ気ないし、プレゼントも手紙もくれなかったのは……?)
ラインハルトは、目を泳がせるヒルダを憐憫のまなざしで見つめた。
「ならば、週三の王宮通いを義務づけられ、王妃じきじきにお妃教育をほどこされていることに、一度も疑問を持たなかったと?」
「っ……最初に、王妃さまの無聊を慰めるための話し相手とお聞きしたものですから……」
「……ウソだろう?」
ガックリとうなだれる青年。
「あれはあなたにお妃教育をすると同時に、付き添ってきたクラウスに陛下が密かに帝王学を授けるための口実だ。そうでも言わなければ、周囲に怪しまれずにクラウスを王宮に呼ぶ方法がなかったからな」
「帝王学っ!?」
愕然とするヒルダを前に、深々とため息をついたラインハルトは、傍らの従者に視線を転じた。
「頭は悪くなさそうなのに、なんでこんなに鈍いんだ? 従弟殿も苦労するな」
「ご心配には及びません。お嬢さまの扱い方は十分心得ておりますから」
「そうか。では、後は頼む。めまいがしてきたので、失礼する」
ボソボソ言葉を交わすと、生徒会長はサロンを出て行った。
「ク、クラウス……」
脳内は情報過多で絶賛混乱中だったが、ヒルダはあることに気づいた。
―― 従弟殿 ――
「……ではないのね。本当の名前は、別にあるのね?」
「はい。長らく騙すような形になってしまい、申しわけありませんでした。おじいさまが、『そなたの国はいまだ内乱状態ゆえ、しばらくはグリュスバイク侯爵家の従者として世を忍び、名も真名ではなく、侯爵家でつけられた『クラウス』を使って、身元を隠せ』と仰せになられたものですから」
(おじいさま――とは、聞くまでもなく、この国の頂点に立つあの方でしょうね)と、ヒルダは思わず遠い目になる。
「陛下とはいつお会いになられたのですか?」
彼の正体が知れた以上、今までのような口は利けない。
相手の立場に合わせた態度を取ったつもりだったが、クラウスはなぜか傷ついたような眼をする。
「侯爵家に保護されてほどなく、宰相閣下に王宮に連れて行っていただきました」
となると、両親はかなり早い段階で彼の素性に気づいていたことになる。
ロートリンゲの王族は、体のどこかに特徴的な痣があらわれるという。
おそらく、汚物まみれで衰弱していたクラウスを屋敷の者が清めた時、その痣を見つけて母に報告したのだろう。
「そうでしたか。知らぬこととはいえ、これまでご無礼をいたしました。お許しください」
ヒルダが頭を下げると、クラウスは慌ててそれを止め、
「お嬢さま、お止めください! パーティまでは、ぼくは従者のクラウスです!」
その美しい顔をゆがめ、懸命に懇願する。
「そうとわかった以上は……。でも、なぜ今すぐに立太子礼を行わないのですか? 陛下もお歳ですので、二十年近く不在だったお世継ぎが決まりましたら、みな安心するでしょうに」
「兄が大叔父を斃したのは、つい先月のこと。ですから、今はまだ国内も混乱しているので、おじいさまも宰相閣下も、事を性急に運んでは、ぼくの身が危うくなると判断されたのです。でも、おじいさまと皇帝陛下が援軍を出してくださっているので、たぶん、あと一ヶ月もすれば落ち着くでしょう」
たしか、スヴェン王子が婿入りした国は、男女問わず長子相続が基本。
クラウスの大叔父は、姪の王位継承を不服に思い決起したものの、王権の証である国璽が見つからず、正式に即位できなかったため、周辺諸国からは僭王と見なされていた。
それに対し、簒奪された側の女王は、父王の時代からずっと善政をしいていたこともあり、女王を支持する民衆が、国内各地で反乱を起こしたのだ。
その内乱が終息したら……。
「あなたの……本当の名前を教えてくれる?」
最前まで自分の従者だった青年を見上げて、おそるおそるねだれば、
「****」
久しく公にできなかった名がくちびるからこぼれ落ちた瞬間、彼の主だった少女は花がほころぶように笑い、
「とてもいい名前ね」
それを、大事そうに何度もかみしめた。
未完イクナイ!
次は、放置しまくりのアレを完結させるぞー! 応ー!
(決意表明 = 背水の陣ともいう)




