表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦鬼と呼ばれた男、王家に暗殺されたら娘を拾い、一緒にスローライフをはじめる(書籍化&コミカライズ作)  作者: ハーーナ殿下
【第3章】王都編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

75/130

第75話:公爵家の事情

【これまでのあらすじ】


娘マリアの学業のために、王都に引っ越してきたオードル一家。

オードルの旧友である老人ダジルに家を借りて、王都ので生活がスタートする。


そんな中でオードルは、マリアと同じ顔の謎の少女ニースを助けて拾う。

怪しげな母に捨てられた可哀想なリリィを、末娘として迎えることにした。


一家の大黒柱オードル(職業:ダジル商店従業員)

長女の女騎士エリザベス(職業:ダジル商店 事務手伝い)

次女の聖女リリィ(近所のパン屋で修行中)

三女の可愛いマリア(王都の上位学園の特待生)

新しい末っ子のニース(家事手伝い)

ペットで食いしん坊な白魔狼族の子どもフェン(みんなの警護)


オードル一家は6人となり、王都でドタバタしながらも順調に暮らしていく。


そんなある日、自分の傭兵時代の愛剣の確認にいったオードルと付き添いのエリザベス。

二人の前に危険な男〝剣聖”ガラハッドが現れる。


愛剣を取り戻して完璧な状態となったオードル、との再戦を臨み画策していたガラハッド。

オードルはサラリと受け流しスルーする。


だがガラハッドは立ち去り際に不敵な笑みで言い残す。

『エリザベスの実弟のチャールズに危機が迫っている』と・・・


家出中のエリザベスはどうすればいい悩む。

そんな中、オードルが作戦が立てる。


くよくよ悩む必要はない。

真っ正面から公爵家の屋敷に戻ればいいと。


不安なエリザベスを補佐するために、オードルは仮面の護衛として一緒に公爵家屋敷に向かう。

公爵から話を聞いていくと、チャールズは国王に養子に取られてしまったという。


驚きを隠せないエリザベスと共に、正体を隠しながらオードルは公爵との食事会に参加するのであった。

 王都にあるレイモンド公爵家の屋敷に来ていた。

 目的はエリザベスの弟チャールズの情報を仕入れるため。オレは傭兵スタイルで顔を兜で隠しながら、エリザベスの護衛として付き添っていた。


 今はレイモンド家のダイニングで夕食の時間。

 広い夕食会場のテーブルに、エリザベスと父親の二人が食事していた。


 客人であるオレも食事の席に着いているが、兜をつけたままにしている。口元のパーツを外せば、飲食も可能なので問題はない。


 他にもレイモンド公爵の背後には、護衛の騎士と執事たちが控えている。


「なるほど……この一年余り、エリザベスはそのような旅を続けていたのか」

「はい、お父様。王国各地や帝国を見て回っていました……」


 食事しながらエリザベスは自分のことを話していた。

 余り大きな嘘はすぐにバレてしまう。


 だからエリザベスが実際に旅していた実話と、小さな嘘を入り交じらせている。これなら父親にもバレないであろう。


「あと先日までルーダに滞在。郊外の遺跡で魔獣に襲われていた時、このルーオド殿に助けて頂きました、お父様」


「ほほう、そうだったのか。それは苦難の旅だったな、エリザベス」


 ルーオドはオレの偽名。それにしてもエリザベスは意外と演技が上手い。時おり誇張を加えながら、自分の話をしていた。


 父親に対して口調が丁寧なのは、猫を被っているからであろう。王族の血を引く公爵令嬢も大変そうだ。


「改めまして、ルーオド殿。娘を助けていただき感謝します」

「彼女を助けたのは偶然だ。だから気にするな」


 公爵の話の話題がオレに向けられてきた。

 今のところ正体はバレていないので、当たり障りのない返事で答えておく。


「それにしても魔獣すらも単騎で狩れるとは、ルーオド殿はかなりの武人。どこかの国の騎士団にでも属していたのですか?」


「いや、無所属だ。剣一本で大陸を旅している流れ者だ」


「なるほど、剣一本で……私も若い時は、兄と修行という名目で、王都を離れたことはあります。まぁ、当時は護衛付きだったので、オードル殿のように自由ではありませんでしたが」


 兄ということは国王のことか。あの男にも若き修行の身の時代があったとは意外だ。


「ところでレイモンド王弟殿下」

「レイモンド公で構いませんぞ、オードル殿」

「では、レイモンド公。一つ聞いてもいいか?」


 会話の中で質問をしていく。オレはこの家には遊びにきたのではない。


「ルーオド殿は愛娘の命の恩人、何でも聞いてくだされ?」

「単刀直入に聞く。息子のチャールズはどうするつもりだ? 貴殿にとって大事な愛息子なんだろう?」


 訊ねたのはエリザベスの弟に件について。実の兄である国王に養子に出したことだ。


「なんだと、貴様⁉ 公爵様に無礼だぞ!」

「いくらエリザベス様の恩人とはいえ、度々の無礼、許すまじ!」


 オレの質問に対して、警護の騎士たちが声を荒げてきた。剣の柄に手をかけ殺気だっている。

 その反応からチャールズの件は、レイモンド家の中でもかなりデリケートな問題なのであろう。


「お前たち待て。質問を許可したのは私だ」


 公爵は荒ぶる部下を制する。


「エリザベスもいるので、この件に関してはちゃんと説明しなければいけないな」

「お父様……?」


「ルーオド殿、実は今この王国はあまり良くない状況に陥っています」

「帝国軍に引き続き、共和国軍にも大敗したことか?」


 オレが出国した後、王国軍が連敗。王都に引っ越してきてから、自然と耳にする情報だ。


「そうです。それに加えて、王国の人材の質は下がり、また経済状況も良くありません」

「そのようだな。王都に来て肌に感じている」


 敗戦国は莫大な賠償金を、相手に支払う必要がある。そのしわ寄せは一番弱い市民に押し寄せてくる。

 かつては大陸一の繁栄を誇っていた王都も、だんだんと暗い影が差してきたのだ。


「それに加えて、先日のルーダの件……あれで兄の立場は危ういことになってまいりました」

「ルーダの件だと?」

「ええ、まあ内密な身内のゴタゴタの話です」


 公爵は言葉を濁している。


「ねぇ、オードル……ルーダの件って……」

「ああ、そうだな」


 小声で隣のエリザベスが言って通り。

 ルーダの件とは先日の近衛騎士団の退却の件であろう。


(やはり、かなりの悪影響があったのか)


 何しろ国王のわがままで千人規模の近衛騎士団を出陣。

 かと思えばルーダを直前にして、今度は帰還の命令。

 どんな忠臣であって、国王に愛想をつかしてしまうであろう。


「そこで国王は弟の貴殿から、チャールズを人質として取った訳か?」


「ええ、その通りです、ルーオド殿。恥ずかしながら今の兄は猜疑心さいぎしんの塊……誰も信じられなくなってしまったのです……」


 国王からは人材が離れていっている。このままでは国王の暗殺を考える輩も出てくる。だから国王は部下たちから人質を、実の弟からさえも人質を取ったのであろう。


「レイモンド公、最後にもう一つ聞いてもいいか?」


 話の流れで、追加の質問をすることにした。


「どうぞ、オードル殿」

「貴殿は王位に着く意思はないのか? 市民の暮らしを守るために? レイモンド公の方が国王に相応しいでのはないか?」


 この質問は爆弾に近い内容。だから敢えて口にして訊ねる。


「ぐっ、貴様、不謹慎な!」

「貴様などに言われずとも!」

「ああ……」


 先ほどと同じように騎士たちが荒ぶる。

 だが同時に違う変化もある。何か秘めたる想いを口にさせずにいるのだ。


「私がですか、ルーオド殿?」


 公爵はポーカーフェイスで訪ねてきた。


「ああ、そうだ。オレの見たところ貴殿の部下の中にも、同じような想いを秘めている者もいる。おそらく彼らはこう思っているのであろう、『この混乱した王国に必要なのは、今の愚王ではない。才能あり覇気に満ちた我らが主レイモンド公爵なのだ!』とな?」


 公爵に話かけながら、後ろの騎士たちに言葉を投げかける。試しに少しだけ闘気を込めておく。


「そうです、レイモンド様! このルーオド殿の仰る通りです!」

「以前、我々が進言したよう、この腐敗した王国を立て直すためには、レイモンド様が王位に就くべきです!」

「そのためなら我々は家臣団、命を賭けて付いてまいります!」


 騎士たちは一気に感情を吐き出す。口々に公爵のことを持ち上げていく。

 話の内容から、この件に関しては以前もやり取りがあったのであろう。


「お前たち落ち着くのだ。今は客人が食事しているところだ」


 公爵は怒ることもなく、家臣を落ち着かせる。


「家臣が失礼いたしましたな、ルーオド殿」


「いや、こちらこそナイーブな質問をして悪かった。だが実際のところ野心はないのか?」


「この国の行く先をうれていているのは、この私も同じ。ですが王弟と生を受けた私は、兄を支えていく義務があります。それが例え愚王と家臣から見放されていても……」


 なるほど、そういうことか。

 レイモンド公爵は本心を明らかに隠している。だが国王である兄を案じているのは本心なのであろう。だから一歩引いて愛息子のチャールズを人質に出したのだ。


「そうか、貴殿の心意気に感服する。今まで非礼な質問をして失礼した」

「気になさらず、ルーオド殿。では食事の続きを楽しみましょう。先ほどのエリザベスの旅の話の続きを聞きながらでも」

「そ、そうね、お父様。次の話は……」


 エリザベスの弟の状況は確認できた。これ以上は場を荒すことはない。オレは質問を止めて食事を続けることにした。


(国王と公爵……兄と弟。それにエリザベスと弟チャールズか……)


 食事をしながら次の一手を考えていくのであった。


 ◇


 夕食会が終わり、解散の時間となる。

 エリザベスは自室に移動。オレは客室に案内されることになる。


「ねぇ、オードル。これからどうすればいいの?」


 自室に戻る前、エリザベスが不安そうに相談してきた。周りには他に気配がないが、念のために小声だ。


「とりあえず情報を仕入れるために明日、チャールズのいる場所に行くぞ」

「なるほど、チャールズに会いに行くのね。……って、チャールズのいる場所って⁉」


「ああ、王城に正面から会いに行く」

「えっ⁉ 王城って、そんな……」


「何とかなる。とりあえず今日は寝るぞ。明日だ」


 こうしてオレは王城……国王の居城に潜入する策を考えるのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] ここの会話がおかしい、名前がごちゃごちゃです ルードオなのかオードルなのか レイモンド公が普通にオードルって言ってます(名前がばれてるような印象に見えます)
[一言] 門の前では「ルードォ」と名乗ったのに、公爵には(エリザベスが)「ルーオド」と紹介してそれ以降はその名前でいくのかと思ったら、公爵は「オードル」と所々で呼んでくる 流石に戸惑います
[気になる点] 75話で、公爵が普通に本名言ってるせいで、読んでて混乱する。 コレ早急に直した方がよいわ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ