表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
118/120

第9章ー7

 米英仏の要請、陸海軍の思惑を受け、海兵隊上層部は、困惑する羽目になっていた。

 堀悌吉海相が進めた人事改革により、海兵隊上層部も若返っている。

 住山徳太郎中将が、海兵本部長に就任し、片桐英吉中将が、軍令部次長(海兵隊担当)に就任している。


(ちなみに、この人事、海兵隊内部では、実は、余り評判が良くなかった。

 特に、住山中将は、女学校の校長が、本当はお似合いだ、という陰口が海兵隊内部である程、武骨な海兵隊員らしからぬ人物だった。

 長谷川清海兵本部長と、多田駿軍令部次長の続投を、希望する海兵隊幹部が多かったのだ。

 だが、堀海相としては、第二次世界大戦を前に、人事の若返りを優先するという主張を行い、米内光政首相まで動かして、この人事を行った。

 確かに、海兵本部長が、海相の海軍兵学校での先輩というのは、上司としてやりにくい、というのも事実ではあるが、この一件は、後々まで、海軍本体と海兵隊の関係に、微妙に響くことになる。)


 そして、住山本部長と片桐次長は、頭を痛める羽目になっていた。

「第二次世界大戦勃発の際には、欧州に海兵隊6個師団を派遣されたいですか」

 片桐次長は、続けて、私なら、即座に断ります、と言い出しそうな口ぶりだった。

「前任の長谷川大将なら、即座に断っていたかもしれんな」

 住山本部長は、溜息を吐き、俯きながら言った。


 こういった態度だから、部内で陰口が絶えないのだ、と片桐次長は、住山本部長に対して、突き放した見方をしたくなったが、とはいえ、実際に、住山本部長の立場に、自分がなったとして、欧州への海兵隊派遣を断れるのか、と言われると、自分でも断りがたかった。

 何しろ、米英仏からの要請であり、吉田茂外相の働きかけにより、米内首相も賛成しており、陸海軍も、海兵隊6個師団を欧州に派遣する引き換えに、米陸軍12個師団に加え、様々な軍事的援助を米英仏から得られるとあって、基本的には賛成する、という立場を取っている。

 海兵隊だけ、反対論を唱えたとして、どこまで抵抗できるか、というと。

 自分でも無理だな。

 片桐次長は、更に考えた末、そう考えざるを得なかった。


「とはいえ、海兵隊6個師団を派遣するとして、かつてのように兵器等は、英仏の援助に、ほぼ頼るという訳には行かないでしょう。兵器等も輸送せねばならないでしょうし」

 片桐次長は、とりあえず、問題点を洗い出すことにした。

「航空支援も必要不可欠だな。海軍本体の保有する艦上機を、陸上基地に転用して、航空支援を行ってもらう必要があるだろう」

 住山本部長も口を挟んだ。


「それに、最大の問題は、誰を欧州派遣軍総司令官にするか、だ」

「確かに難しいですね」

 住山本部長の問いかけに、片桐次長も首を捻った。


 かつての林忠崇元帥や、土方勇志大将のような周囲に有無を言わせない指揮官を、海兵隊としては、欧州派遣軍総司令官に任命したかった。

 そうしないと、6個師団という、精々が軍規模に過ぎない日本海兵隊は、周囲の諸外国の軍人から軽んじられる恐れがあった。


「北白川宮成久王殿下を大将に特進させ、欧州派遣軍総司令官に任命するのが、相当だろうな」

 暫く考えた末、住山本部長は決断した。

 ちなみに、北白川宮殿下は、現在、軍事参議官という閑職を務めている。

 皇族なので、実権のある職に付けられるべきではない、という長谷川前海兵本部長の考えから、軍事参議官に任ぜられていたのだった。

 とはいえ、北白川宮殿下の実戦経験に不安は全くない。

 第一次世界大戦以来の戦歴を誇り、海兵隊でも有数の実戦経験を持っていた。


「確かに妥当でしょうな」

 片桐次長は答え、それ以外の問題点を洗い出し、解決する方策を住山本部長と話し合った。

 第9章の終わりです。

 後、エピローグを2話、投稿して完結します。


 ご意見、ご感想をお待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ