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第8章ー6

 実際、ルーズベルト大統領と米内首相が予期したように、物事は進んだ。


 表向きは、ミュンヘン会談の結果に満足したように振る舞ったヒトラー総統は、ズデーデン地方が、我が独が求める最後の領土要求である、とミュンヘン会談直後には言ったが、すぐにその言葉を弊履のように捨て去った。


 ミュンヘン会談によって、チェコスロバキアの領土で、各国の係争地になっている部分については、住民投票によって、帰属が決められることになっていた。

 これについて、ポーランドは、即座に受け入れを表明し、独も(表面上は)即座に受け入れた。

 そして、チェコスロバキアも、米英仏日に捨てられた以上、これを受け入れるしかなかった。


 だが、ハンガリーが不満を示した。

 ハンガリーが求めている領土は、歴史的経緯からは、ハンガリー領土なのは間違いなかったが、現在の住民はチェコスロバキア系が多く、住民投票では、ハンガリー領になる可能性は絶無といってよかったのである。

(現在、フォークランド諸島の住民の多くが英国系であり、住民投票では、アルゼンチン領になる可能性が無いようなものである。)


 ヒトラーは、ハンガリー政府に対して、住民投票では、ハンガリー政府が求める領土が手に入らない可能性が高い、と秘かに唆した。

 ハンガリー政府は、軍を動員して、チェコスロバキア政府に圧力をかけた。

 ミュンヘン会談の結果、今や米英仏日政府に見捨てられた、と考えていたチェコスロバキア政府は、ヒトラー率いる独政府の仲裁に一縷の望みを託すしかなかった。


 1938年11月2日、ヒトラーの仲裁、いわゆるウィーン裁定が行われ、南部スロバキア等は、ハンガリーの領土になることになった。

 これに対し、日米両国政府は、ウィーン裁定は、住民投票の結果を尊重するというミュンヘン会談の結論を踏みにじるものである、と即座に抗議したが、ヒトラーは公然と無視した。

 ヒトラーは、ミュンヘン会談の結果、日米両国政府の抗議は口先だけで、戦争には決してならない、と信じ込むようになっていたのである。


 更に、11月9日には、いわゆる「水晶の夜」事件が、独国内で発生した。

 これによって、独国内のユダヤ人迫害が、公然化することになった。

 このことは、米国内のユダヤ系の住民感情を、大幅に刺激することになった。


 こういったことが相まって、日米両国の世論は、大幅に独に対して悪化することになった。

 日米両国の新聞の多くは、対独警戒論を叫び、自国の軍拡を肯定して支持するようになったのである。


 また、ソ連政府、スターリンも、ミュンヘン会談の結果から、米英仏日政府は弱腰であり、脅しても戦争の決意まですることはあるまい、と考えるようになった。

 少し話が先走るが、1939年2月に、独ソ友好不可侵条約が締結される。

 その際、バルト三国、及びルーマニアのベッサラビア地方、フィンランドのカレリア地峡、ポーランド東部については、ソ連領となることを、ソ連政府は、秘密協定によって、独政府に認めさせている。

 これは、明らかにソ連が、欧州方面の隣国への侵略を意図していたことの表れであった。


 また、張鼓峰事件について、ミュンヘン会談により、一段落したかのように見えた、極東地域におけるソ連と満州国、韓国との国境紛争は、ミュンヘン会談から一月もしないうちに、徐々に深刻化する一方という事態となった。

 更に、ソ連の後押しを受けた、いわゆる外蒙古政府、モンゴル政府も、自国の国境線の主張を、満州国に対して強めることになった。

 満州国は、建前上、外蒙古政府を認めていないので(歴史的経緯から、外蒙古は自国領という立場を、満州国は取っているためである。)、更に紛争は激化した。 

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