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第7章ー10

 相前後して、東京でも、首相官邸で米内光政首相と吉田茂外相が会話していた。


「ルーズベルト大統領は、ズデーデン問題等で、仲介の労を取ることを、談話で出しました。この際に併せて張鼓峰事件の処理もする、とのことで、各国の首脳会談で話をしようとのことです」

 吉田外相は、米内首相に説明していた。

「それで、どこで話し合うことになりそうだ」

「欧州のどこかでしょう。一番、公算が高いのは、ドイツ国内のどこかでしょうか。スターリンも呼ぶとのことですし」

 米内首相の問いかけに、吉田外相は答えた。


「それで、我が国にも、首脳会談への招待状が送られてきているわけか」

「ええ、米のみならず、英仏からもね。余程、手助けしてほしいのでしょう」

 米内首相の言葉に、吉田外相は偽悪的な表情を浮かべて答えた。


 米内首相は、想いを巡らせた。

(第一次)世界大戦において、日本は、西部戦線に派兵している。

 実際の派遣兵力は大したものではなかったが、そこで、日本は海兵隊を始めとして、多大な戦果を挙げ、大いに名を売りまくった。


 我が日本は、戦国時代末期、武田家滅亡後の真田家みたいなものだな。

 織田、徳川、北条、上杉を手玉に取って勝利を収め、最終的に豊臣家の傘下に入ることで、武田家滅亡後、武田家の元家臣としては、ほぼ唯一の大名家として、真田家は名を遺した。

 勿論、保科家等、真田家以外にも武田家の元家臣出身の大名家がないことはないが、真田家程、名を売りまくった家はない。


 米英仏独ソ伊日、世界の七大国の一つとはいえ、我が日本の国力は、伊以外の五大国から見れば、明らかに見劣りする。

 だが、日本の軍事力は、名を売りまくった結果、量はともかく、質においては屈指、と世界が認めている。

 陸軍は、ロシア陸軍を日露戦争で下し、海兵隊は、第一次世界大戦の結果、ドイツ陸軍からは好敵手、フランス陸軍からは我が最良の弟子、と呼ばれる存在だ。

 つい最近も、スペイン内戦での(表向き)義勇兵として、日本兵は名を売った。

 英仏にしてみれば、世界大戦が起きた際には、日本を何としても味方に引き込みたいのだろう。

 我が日本を、できる限り、高く売らせてもらおうか。


 米内首相は、自らが首脳会談に臨むことを決断した。


 日米両首脳も参加することから、この首脳会談について、日時、場所の調整には手間取る羽目になった。

 ヒトラーが、自国に各国首脳を呼びつけた、という形に拘って、ドイツ国内での開催を主張したことから、最終的に9月29日に、ミュンヘンで首脳会談が行われることになった。

 その間にも、チェコスロバキア国内では、チェコスロバキア系民族とドイツ系民族間の衝突が相次ぎ、プラハを始めとする各地で非常事態宣言が出され、ズデーデン地方には戒厳令が敷かれる有様となった。

 米内首相は、吉田外相と共に、ミュンヘンへ航空機で向かうことにした。


 ミュンヘンへ向かう航空機に選ばれたのは、96式飛行艇を輸送機に改造した政府専用機だった。

 ちなみに、本来からすれば、政府専用機は、空軍が運用してもおかしくないが、飛行艇改造という事情から、海軍本体が政府専用機を運用していた。

 故障等に備え、更に整備用の部品等を運ぶ必要から、3機編隊で日本から仏印へ、更にインドを経由して中東へ、更に、ベイルートで地中海に着水し、イタリアを経由してマルセイユまで、日本の政府専用機は飛行した。

 政府専用機の整備等の必要もあり、最終的に1週間が、この移動には掛かる羽目になった。

 マルセイユからミュンヘンまでは、仏政府が手配した航空機で、米内首相達は移動することになった。

「やれやれだな」

 米内首相は、ミュンヘンに到着するまでに疲れ果てる羽目になった。

 第7章の終わりです。

 細かいことを言えば、第8章は、ミュンヘン会談とその後のチェコスロバキア解体の話が主になるので、第7章と第8章を一まとめにしても、問題ないのですが、色々と考えた末に、一区切りを入れることにしました。


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