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【書籍化】尽くしたがりなうちの嫁についてデレてもいいか?  作者: 斧名田マニマニ
9章 リベンジ、初デート!

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通じ合う想い

「ど、どどどうしよう……。りこ、ごめん、えっと、どうしたら泣き止んでくれる……!?」


 りこの涙にオロオロしまくって、半歩踏み出す。


「ううっ、急に泣き出したりしてごめんなさい……。でも、うれしすぎて……。だって、え、夢じゃないよね……? 湊人くん、私のこと好き……?」


 涙をたっぷり浮かべた瞳で不安げに尋ねられ、慌てて首を縦に振りまくる。

 ところが、それを見たりこの目からますます涙が溢れ出す。


「うえーん、やっぱりだめーっ……。こんなの感動しちゃうよお……」


 な、なんで……!?

 俺はりこを泣き止ませたいのに、まさかの逆効果とか……!!


「あのね、私ね、ひっく……」

「うん」

「湊人くんのことほんとにほんとに大好きなの……ひっく……」

「……っ。で、でも……その……りこには他に好きな人がいるんじゃ……」

「え? 他って?」


 うさぎのように真っ赤な目をしたりこが、心底不思議そうに首を傾げる。


「七夕の日に言ってたよね……。好きだった相手とは、中学時代に再会したって……。俺とりこは、その頃会ったことないよね……?」

「あっ」


 突然、驚きの声を上げたりこが、信じられないくらい慌てふためきはじめた。


「そ、それはその……あの……っ」


 その反応を見て、ひとつの推理が俺の脳裏に自然と浮かんできた。


 りこの好きな人はごくごく最近まで、例のA男だった。

 でも、どこかのタイミングで奇跡的に俺に気持ちを移してくれた。

 七夕の時点でもまだA男を好きだったはずだから、昨日、今日俺に心変わりをしてくれたのか、もしくはA男に片思いをしながらも、俺に少しずつ気持ちを移してきてくれているところだったか。


 でも、そんなのはどうだっていいんだ。

 ほんのわずかでも俺をす、好きだと思ってくれているのなら……!!


 そのこと自体が俺にとってはありえない奇跡なのだから。


「ごめん、言いづらいこと聞いて。最近、俺のこといいなって思ってくれるようになったってことだよね……?」


 自分で口にすると現実味がなさすぎて不安になってくる。

 だって、りこが俺を好きって……。

 そんなこと……。


 りこは申し訳なさそうに眉を下げて、小さな声で「そ、そういうことに……しておいてください……」と呟いた。


 うん、全然いい。

 りこが望むのなら、全然そういうことにしておく。


 俺にとって大事なのはこれからなんだ。


 ……あれ、俺たち……両想いってことは……これは……つまり……?


「俺、りこと付き合えるの……?」

「私、湊人くんの彼女になれるの……?」

「……! なってくれますか……俺の彼女に……」

「は、はいっ! もちろんです……!!」


 もうすでに結婚しているのに、これから恋人になるなんておかしな話だけれど。

 そんな矛盾なんて気にならないぐらいの喜びで気絶しそうだ。


 と、そのとき、突然、背後から拍手と歓声が聞こえてきた。


「え!?」

「わあ!?」


 りことふたり、驚いて振り返ると、テラスの軒下で雨宿りする観光客の皆さんが、微笑みを浮かべて手を叩いている。


 うわっ……。今のやりとり全部聞かれてたのか!?


 自分たちのことで頭が一杯すぎてまったく気づかなかった。


「よっ、カップル誕生おめでとう!」

「若いっていいなあ!」

「彼氏くん、かわいい彼女をあんまり泣かせないようにな!」


 そんな声を方々から掛けられた俺とりこは、真っ赤になってお互いの顔を見合わせた。


 ただでさえ注目されていることになれていない俺は、穴があったら入りたいぐらい恥ずかしかった。

 それでも照れくささより心を満たす幸せが圧倒的なのは、隣で照れているりこがくすぐったそうに笑いかけてくれるから。


「りこ、今日から改めてよろしく」

「こちらこそ……! 不束者ですが末永くよろしくお願いします。――って、これを言うの二回目だね」


 懐かしそうにりこが目を細めた時、気まぐれな夏の通り雨は、降りはじめた時と同じように唐突な終わりを迎えた。


「あ! 見て、湊人くん! 虹だよ!」


 りこが指さすほうに視線を向けると、澄んだ空の彼方に虹がかかっている。

 俺たちの言葉につられて、観光客に皆さんもそちらに視線を向け、大喜びで写真を撮りはじめた。

 おかげで俺たちに注目する人はいなくなったので、密かに安心する。


「ふたりともすっかり濡れちゃったね。りこに風邪ひかせないか心配だ」

「ふふっ、ありがとう。でも、おそろいなのがうれしいな」


 弾んだ声でそう言ったりこが、そっと俺の手を取る。

 心が繋がり合ったからか、今まで以上にりこの体温を特別に感じた。

 ずっとバクバク騒ぎ続けている心臓が、ますますうるさくなる。

 それもすべて、りこへの気持ちの証だと思うと、嫌ではなかった。


「ねえ、湊人くん。この虹も、今日の奇跡も、私一生忘れないよ」


 俺だって。

 心に刻みつけて、一生の宝物にするよ。


 言葉にはできない想いを込めて、りこの手を握り返すと、当たり前のように優しい温もりがきゅっと想いを返してくれた――。

これにて9章終了です。

ここまでスローペースで進んだり戻ったりしていた二人の両片思いに転機が……という章でした!


スクロールバーを下げていった先にある広告下の☆☆☆☆☆を、

『★★★★★』に変えて応援してくれるとうれしいです……!


感想欄は楽しい気持ちで利用してほしいので、

見る人や私が悲しくなるような書き込みはご遠慮ください( *´꒳`*)੭⁾⁾


新章開始まではまたちょっとお時間をいただければと思います。

それでは10章でまたお会いしましょう~!

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