高校生カップルの正しい過ごし方(休日編)⑤
今回で7章終わる予定だったのですが、もう1話分続きます…
8章はりこが湊人を好きになった過去の出来事についてのお話になる予定です
帰宅後。
さっそくサーキュレーターを箱から取り出すと、二人で相談して置き場所を決めた。
「よし。これで問題なく動くはず。スイッチ入れてみるよ」
「ふふ! ワクワクするね!」
電源ボタンを押すと、風が吹き出した。
勢いのわりに音はめちゃくちゃ控めだ。
説明書を見てみると様々な機能の中に、静音というものも付いているらしい。
「わぁ! 動いたぁ」
りこが子供のようにはしゃいで パチパチと手を叩く。
はぁー、もう……。
可愛いが渋帯起こしてるよ……。
こういう些細なことでも心から喜べるところすごくいいなって思う。
それにりこの無邪気な笑顔を見ていると、こっちまで幸せな気持ちになれるのだ。
「湊人くん?」
「あ、ごめん! なんでもない!」
無意識にりこのことを見つめてしまっていたらしい。
俺は慌ててサーキュレーターのほうへ視線を動かした。
リビングの中を風が巡っていく。
部屋干しの洗濯物が優しく揺れ、柔軟剤の匂いがふわっと香る。
この空気には梅雨時特有の嫌な感じがない。
サーキュレーターには空気清浄機の機能も付いているから、その効果もあるのだろう。
「りこ、サーキュレー夕ーのこと本当にありがとう」
今日、何度もお礼を伝えてきたけれど、まだまだ言い足りない。
「私のほうこそありがとうだよぉ。一緒にお出掛けしてくれて本当にうれしかったの」
りこはえへへと笑ってから、少し照れくさそうに付け加えた。
「商店街のときは触れることができなかったから、今日は初めて恋人っぽいデートができたね」
りこがうれしそうに目を細める。
「えっ。デート……?」
ま、待って……。
今日のあれってデートだったのか……?
だとしたら……りこと俺の初デートだったってこと……!?
半ばパニックになりながらりこを見る。
俺の様子がおかしいことに気づいたのか、りこの笑顔がぎこちなく消えていく。
俺はますます慌てた。
もし、今日のあれを初デートと考えるなら、その行き先が電気屋、昼飯はいつも行ってるハンバーガー屋って……。
どう考えても初デートの目的地には相応しくない。
恋愛経験のない俺にだってそのくらいはわかった。
以前SNSで、デートで彼女を牛丼屋に連れていった男性が糺弾されているのを見たことがあるが、俺もまったく同じことをやらかしてしまったわけだ。
血の気が引いていく。
せっかく俺と出掛けることをりこがデートだと思ってくれていたのに。
俺が台無しにしてしまったのだ。
と、とにかくりこに謝まらないと……。
「ごめん、りこ……。俺、今日のこと単なる買い物だと思ってて……。だけど、もしあれがそのデ、デートだったとしたら、本当にごめん……!」
膝に手を当て、頭を下げる。
黙って俺の言葉を聞いていたりこが、微かに息を呑む気配がした。
「……なんで謝るの……?」
「だって、飯だってもっとちゃんとした場所に連れていくべきだったのに。失敗した。普段行き慣れているハンバーガー屋で済ませるなんて、ありえなかったよ」
「どうして……? 私、あのお店に行けてすごくうれしかったよ?」
「だけど、初デートで家電量販店やハンバーガー屋に連れていかれたら、女の子はがっかりするもんだろ? 普通のデートはそんなところに行かないだろうし」
「そんなことないよ。それに、家電量販店に行きたがったのは私だよ」
「そうだとしても……」
俺がもっとちゃんとしていたら、サーキュレーターを買った後、いくらでもデートらしい場所に連れていくことだってできたはずだ。
「湊人くん」
りこから呼びかけられても、俺は自分がやらかしてしまったことへの後悔が止まらず、顔を上げられなかった。
そのとき、握りしめていた俺の手に、りこがそっと触れてきた。
驚いて、ぎゅっと瞑っていた目を開く。
「私ね、今日一日、とっても楽しかったの。手を繋いで一緒にお店を見て回ったり……。ハンバーガーをおいしいねって言いながら食べたり……。どれも私にとってはすごく特別な時間だったよ。……失敗したって湊人くんが思っているのは、今日つまらなかったから……?」
「まさか!!」
心配そうに問いかけられ、被せ気味に否定する。
つまらなかったなんてことは断じてない。
「俺だってめちゃくちゃ楽しかったから!!」
「ほんと?」
「うん!!」
「ふふっ、よかったぁ。それなら何も問題ないんじゃないかな。湊人くんも私も楽しかったなら、それが一番大事だと思うから」
りこが俺の手を握ったまま、微笑みかけてくれる。
「……でも、湊人くんは今日のことデートだと思ってなかったんだよね。私ったら、勘違いしちゃって恥ずかしい……」
「あ、あの、りこが今日の買い物をデートだと言ってくれるなら、俺もそう思うようにするよ……?」
「もう湊人くんってば。お出かけしている間にデートだと思ってくれることに意味があるのです!」
ちょっと頬を膨らませて怒るりこがかわいいすぎて、一瞬何もかもを忘れて見惚れてしまう。
いけない。いまそんな場合じゃないのに。
……って、待てよ。
りこが言うとおり、二人ともデートだと思ってなかったという理由で、今回が買い物がカウントされないのだとしたら……。
まだ挽回するチャンスがあるのではないだろうか。
俺はゴクリと喉を鳴らした。
もう一度、ちゃんとしたデートをさせてほしい。
そう提案してみようか。
りこが承諾してくれるかはわからない。
女の子をデートに誘ったことなんてないせいで、そう思った瞬間、変な汗が滲んできた。
でもここでひよっていたら、いつもの俺のままで何も変われない。
りこから好きになってもらえるよう、がんばるって決めたんだろう。
だったら、勇気を出せ。
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