二人の夜⑤
「ムラムラさせたかったの」
息の仕方を忘れたまま、りこのことを見つめる。
……なんで?
ムラムラした男がその次に何を求めるのか。
いくらなんでもりこだってわかってるよな……?
……いや、でもやっぱり確信は持てない。
俺の中でのりこのイメージは、純粋無垢な女の子という感じだったし、そもそも「ムラムラさせたかった」なんて言う子だとは思ってなかったのだ。
でも、俺が思ってたイメージ通りじゃなくて、実はエッチな子だったとしても、それはそれで……さ、最高です。
だって、好きな子がちょっとエッチとか、男の理想じゃないか!?
それに俺は『りこ』という存在を好きになってしまっているので、彼女がどんな意外性を見せようと、全部かわいく思えるのだ。
「……湊人くん? ……もしかして引いちゃったり――」
「いや、引いてない!」
勢いあまって被せ気味に即答してしまった。
「引いてないけど、その、なんでって……思った」
「うっ、そ、そうだよね……。あ、あのね……?」
「うん」
「……ムラムラしたら、触れたくなったりするかなって」
それはなるよ。
なるに決まってる。
今も俺は瀕死の理性を励まして、なんとか持ちこたえてるくらいだし。
でも、なんだこれ。
持ちこたえる必要ないんじゃないか?
俺はギュッと目を瞑って、絞り出すような声で尋ねた。
「あの……さ、ムラムラして欲しいっていったよな?」
「うん」
「それってつまり、触れたくなってよかったってこと?」
俺にできる精一杯の勇気を出して尋ねたら、信じられないことにりこが真っ赤な顔で頷いた。
だめだ。
もう。
思考が停止した。
このまま手を伸ばして――。
「だって私、どうしても湊人くんと手を繋いで寝たかったから……!」
「……!!!!」
り、りこおおおおおおおおおおおおおおおっっっ。
りこの両肩を掴もうとしていた腕を直前でひっこめたせいで、俺はバランスを崩して布団の上にぽふっと倒れこんだ。
「湊人くん……!?」
「……………………………………りこさん、それはないです……」
「えっ」
やっぱり、りこは俺の思っていたとおり純粋無垢な子だったのだ。
ムラムラして触れたくなった男が、手を繋ぐだけで止まれるわけないのに。
多分、手を繋ぎたいという発想も、雷が怖いから誰かと触れて安心感を得たいぐらいのものなのだろう。
そういえば雷、全然鳴ってないな。
今はそれどころじゃないが。
ただ、さすがにりこ相手でも今回のことは注意しておいたほうがいいだろう。
俺が毎回踏みとどまれるとは限らないし、俺以外の相手にこんなことしたら一発でアウトだ。
ここは心を鬼にして……。
「あのね、りこ。男をムラムラさせたいなんて思ったらだめだ。男はちょっと触って満足する生き物じゃないから」
「そ、そうなの?」
「そうだよ。りこだって、俺に押し倒されたりしたくないだろ。あ! や、やらないから、そんなこと。でも、そういうふうになることだってありえるっていう――」
「湊人くん、私を押し倒したいの?」
「……っ」
りこおおおおおおおおおおおおおおおっっっっっ!!!!!!
きょとんとしたかわいい顔で、そういうことを聞いてくるんじゃない……!!!!
もうやだこの子。
無意識に俺を振り回しまくって、ぼろぼろにするつもりか……!!!
こわいよ……!!!
「だからそういうの。押し倒したいって言われたら困るのに聞いたらだめだって」
このまま布団の上で向かい合ってしゃべっていると真面目にやばい。
そう思って、俺が立ち上がろうとしたら――。
「ま、待って……! 私、困らないから……っ。だからいかないで……っ」
俺の腕を掴んで引き止めながら、りこが必死に訴えかけてきた。
「もし今、湊人くんがムラムラしてくれていて……そ、その責任を私が取れるなら……私は大丈夫なの……」
中腰で俺を引き留めているりこを茫然と見下ろす。
据え膳の硬直状態は続く……
ふたりのじれじれなやりとりを書くのが楽しくて、話が伸びてしまいました
毎日または1日おきぐらいにちょっとずつ更新するのと、2~3日おきになっても区切りのいいところまで更新するの、どっちがいいでしょうか??ʕ•̫͡•ʔ
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