二人の夜③
「あれっ……なんか……ご馳走?」
ダイニングテーブルの上に乗った料理を見て、思わずそう呟く。
りこの料理はいつも品数が多くて、手が込んでいるけれど、今日は輪をかけて豪勢だ。
「たまにはこういうのもいいかなって思ったの……! ほんと! それだけだから……! 湊人くん、座って座って!」
「う、うん」
でも料理のラインナップも、普段と全然違うような……。
米が見えないほど岩牡蠣が入った炊き込みご飯、ステーキ、ビーツのスープ、まぐろの山芋かけ、アボカドと卵のサラダ、ナッツやヒマワリの種なんかの穀物がまぶされたヨーグルト――。
量……! どう考えても多いよな……!?
それにりこはいつも和食の時は和食でまとめるタイプなのに、今日はバラバラだ。
しかも、いつも食事の時はほうじ茶が出てくるのに、なぜか真っ赤なジュースが置かれている。
鼻を近づけて匂いを嗅いでみると、ザクロジュースだった。
……ちょっと待った。
牡蠣にアボカドにザクロ……。
俺は以前、ちょっとスケベなギャグマンガで出てきたセリフを思い出した。
『牡蠣とアボカドを食べてきたし、ザクロは毎朝必ず飲んでる! 俺の精力は常に限界を超えている!』
俺はそのセリフを読んで、結構真面目に「もし俺が困ったら牡蠣とアボカドとザクロに頼ろう……」と思ったものだ。
……偶然だよな……?
でも、き、気になる……。
俺はりこがエプロンを脱いでいる隙に、急いでスマホを取り出し、検索をかけてみた。
【牡蠣、アボカド、ザクロ、精力増量】と――。
すると、検索候補のトップに『性欲アップに効果的な食べ物リスト』というのが出てきてしまった。
急いでタップし、ページの中身を確認する。
牡蠣、アボカド、ザクロだけじゃない。
ステーキ、ビーツ、卵、マグロ、穀物と、テーブルの上に並んでいる料理は全部、精力を増量させる食品が使われていた。
りっ、りこおおおおおおお……!?!?!?!?!?
これどういうことだよ……!!!!!!!
ここまで一致していて、偶然ということはないだろう。
頭にカアアッと血が上り、くらっとなる。
その直後、鼻の奥がツンとして――。
「あれ」
「きゃあっ、湊人くん、鼻血が……!」
たったこれだけのことで興奮しすぎて鼻血を出すような十八歳に、精力増量の料理を食べさせたらまずいだろう。
◇◇◇
それから十五分。
鼻にティッシュを詰めて、ソファーの上に横になる俺を、床に座ったりこが心配そうに覗き込んでいる。
「大丈夫? 病院行く?」
「心配しすぎだよ。でも、ありがとう。もう血も止まったし大丈夫だよ」
「よかった……。どうして急に鼻血が……」
「ははは……」
俺が興奮したことはいいとして、りこはなんであんな行動に出たのか。
「りこ、今日の料理って、どうしてあのメニューにしたの?」
「……っ。そ、それは……そのぉ」
話題を振った途端、目に見えて動揺しはじめたりこを見て、いよいよ確信を持つ。
やっぱり偶然じゃない。
ここはもう一歩踏み込んで追求しないと……!
「その何?」
「秘密っ」
りこが照れくさそうにプイッとそっぽを向いてしまう。
くっ……。破壊的にかわいい……っ。
ってそうじゃなくて!
とりあえず、りこが確信的にあの食材を選んだことはわかった。
……てことは、りこは俺に、せ、精力増量する料理を食べさせたかってことだよな……?
女の子が男の精力を増量させたくなる理由って……ひとつじゃないか……?
つ、つつつまり……。
いやいやいや!!
ありえないって……!?
りこが俺と……とかありえないって……!!
結婚してるって言っても、俺たちは恋人同士なわけじゃないし。
別に好きな人がいる子だし。
しかも相手は俺だし。
それにりこだよ!?
美少女でめちゃくちゃモテるけれど、普段の様子を見ていればわかる。
彼女は絶対そういうことに慣れていない。
そんな子が、ここまで思い切った行動を起こすわけがない。
でも、だったらなんで俺の精力をパワーアップさせたがってるんだ……!?
やばい、また鼻血が噴出しそう。
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