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【書籍化】尽くしたがりなうちの嫁についてデレてもいいか?  作者: 斧名田マニマニ
5章 俺が何かするたび、嫁が可愛くもだもだするんだけど

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嫁が罰ゲームと引き換えにしてでも手に入れたいもの(前編)

 ある日の夕食後、りこがうれしそうにオセロの箱を取り出してきた。


「湊人くん、お願いがあるの」

「うん、いいよ」

「えっ。ま、まだ内容言ってないよ……?」

「……! そ、そうだね。間違えた」

「あはは、湊人くんってば面白い」


 りこのお願いってだけで断る理由がなかったんだけど、さすがに先走り過ぎた。


「それでお願いって?」

「うん、もしよかったらなんだけど……罰ゲームを賭けて、私とオセロで勝負してくれませんか?」

「罰ゲーム?」

「もし私が勝ったら、そのぉ……湊人くんに五つの質問をする権利をください」


 俺への質問……?


「オセロはいいけど、……でも、なんで俺のことなんて知りたいの?」


 俺なんて面白みのない人間なのに。


 単純に疑問で尋ねたら、急にりこがそわそわしはじめた。


「あっ、そ、それはえっと……そう! 湊人くんのこと知ってるほうが、普段の家事もやり易くって……」

「そういうものなの?」

「うん、そういうもの! 湊人くんの好物とか、湊人くんの好きな映画とか、湊人くんの好きな教科とか、湊人くんの好きなゲームとか、湊人くんの好きなアニメとか、湊人くんの好きなお店とか、湊人くんの好きな国とか、湊人くんの好きな俳優さんとかは知ってるけれど、それだけじゃ全然足りなくて……」

「え、りこ、そんなに俺について知ってるの……!?」


 思わずそう聞き返すと、りこはどこか誇らしげに「えへへ」と笑った。


 ……家事をやり易くするために、そこまで俺について調べてくれたってことか?

 いや、でもどうやって……。

 日々の生活の中で、わかるものなのかな。

 まあ、最近りことはちゃんと雑談もできるようになってきたし、何気ない会話の端々に俺の趣味趣向が滲んでいたのかもしれない。


「それだけわかってくれてるなら、もう出がらしみたいな情報しか出てこないと思うけど……」


 俺が苦笑すると、りこの頬がほんの少し色づいた。


「湊人くんのそういう表情ほんとす……わぁ!? もう、私信じられない……。つい興奮して感情が溢れちゃった……。……さすがにこういう発言はだめだよね、うんうん」

「……?」


 頬に両手を当てて、りこが一人で納得している。

 よくわからないけれど、かわいいなあと思いながら見守っていると、彼女は咳払いをしてから、俺のほうに向き直った。


「そういうわけで、私と湊人くんの新情報を賭けたオセロをしてくれますか? 湊人くんが勝った時は、なんでも言うこと聞きます!」

「……っ」


 何でも言うことを聞くって……!!


 俺のクソどうでもいい情報と、りこがくれる報酬の価値がまったく見合ってないけれど、辞退するには惜しすぎる……。


 りこをゲームで負かせるのは可哀そうだが、これは本気出して頑張るしかない……!


 というわけでオセロをはじめる。

 いつもどおりソファーに並んで座り、二人の間にオセロの盤を置く。


 りこが白、俺が黒。

 じゃんけんで勝ったりこが先攻だ。


「やった! それじゃあ、ま、ず、はっ……ここ!」


 子供のようにはしゃいでいるりこが愛しすぎる。


「オセロなんて何年ぶりだろう……」

「俺もずっとやってなかったな。すごい懐かしいよ」

「ほんと? 買ってきてよかったなあ」


 俺はうんうんと首を縦に振った。


 ……って、あれ?

 りことの会話に気を取られてるうちに、盤上が白い石だらけになっている。

 まさか、りこ、序盤に自分の石だらけにすると不利だってことを知らないのか……?


「りこ、あの……白い石だらけだけど……」

「うん、そうなの!」


 うれしそうに全力で頷くりこはたまらなく可愛いけれど、これ絶対わかってないやつだ……!


 って、ああっ。

 そんな外側に攻めてくの!?


 できるだけ内側に置いたほうがいいのに……。


「りこ、その場所は……」

「ふふ! ちょっと攻めてみました!」


 ああっ、もうっ。

 得意げなのがかわいいけれど、りこそれはポンコツな攻め方だ……っ。


 そして決め手は――。


「よーし、次はここ……かな!」

「……!!!」


 パチンと音を立てて、桜色した爪が角の隣に白い石を置いた。


 たしかに俺は角を取られないよう動いていたけれど、その作戦にまんまとハマってしまうなんて……。

 素直すぎるりこに頭がくらくらしてきた。


 ……ピュアな妖精を、醜い人間がだましてるようなシチュエーションじゃないかこれ。


「ごめん、りこ……」

「え? どうしたの、急に?」


 とにかくこのままじゃりこがぼろ負けしてしまう。

 もちろんりことの賭けには勝ちたいけれど、やっぱり俺にりこを負かすことなんてできない。


 しかもりこは、自分のよわよわっぷりにまったく気づいていなさそうだし……。


 ……よし。

 こうなったら、りこにバレないように手を抜いて、りこを勝たせるぞ。

 インチキだってなんだった関係ない。


 勝ったりこが喜んでる姿を想像したら、もうそれだけで俺は幸せだから。


 当初の目的を振り捨てて、俺はそれから必死に負けようとした。

 のだけれど――。


 俺がどれだけ奮闘しても叶わないほど、りこはオセロが弱すぎた。

もし「りこすき!」「りこがんばれ!」と思ってくださいましたら、

スクロールバーを下げていった先にある広告下の☆で、

『★5』をつけて応援してくれるとうれしいです


感想欄は楽しい気持ちで利用してほしいので、

見る人や私が悲しくなるような書き込みはご遠慮ください( *´꒳`*)੭⁾⁾

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