湊人の過去
三年前から、俺が調子に乗ったりするたび、必ず現れる夢がある。
釘を刺して、現実を突きつける恐ろしい夢。
それは中三の秋にあった出来事のリバイバル上映。
『――え。まさか勘違いしてないよね? ちょっと話したくらいで、意識するなんてありえなすぎでしょ。しかも相手の子の顔も知らないんでしょ? いいも悪いもわかるわけないじゃん。なのに錯覚するなんて、いかにも恋愛脳って感じだし、バカっぽい。湊人がそんなヤツだったなんて、ほんとがっかり』
彼女が思ってるようなことなんてない。
でも並べられた言葉があまりに辛くて、この時の俺は一切言い返すことができなくなってしまった。
『昔の映画を同じ日に見ながら、メッセージやりとりするのとか楽しかったじゃん。なんで、それじゃだめなの? わけわかんない。それにさ……なんか気持ち悪いよ』
浅い息を繰り返しながら、絞り出すように「ごめん」とだけ伝える。
『私たちまだ中三だよ。湊人に教えといてあげる。そうやってすぐ自分が好かれてるって勘違いする男って、だいぶキツイから。どんだけ自信過剰なのって話だよ。なんの根拠があって自分が好かれてるとか都合よく思い込めるのかなあ。笑える』
トントントン――。
これはさっきから乱れまくっている心臓の音だろうか。
俺はどん底に突き落とされてるというのに、やけに軽快で弾んだ音をしている。
『あと言っておくけど、私は湊人のこと友達だと思ったことなんて一度もないから』
どの言葉よりそれが一番ショックだった。
俺は彼女を友達だと思っていたから。
でも全否定されてしまった。
彼女の言うとおり、とんだ勘違い野郎だったわけだ。
トントントン――。
◇◇◇
汗だくでハッと目を覚ますと、扉をノックする音のあとに、どこか楽しそうなりこの声が聞こえてきた。
「おーい、お寝坊さーん。君が起こしてって言ってた時間になりましたよー」
今見たばかりの悪い夢に引きずられて落ち込む前に、りこの言葉が引き上げてくれる。
絵に描いたかのような幸せな休日のはじまり。
それを夢のせいで台無しにしたくはない。
「ごめん、起きた……!」
「したくしてすぐ行くよ」
「はーい! 朝ごはんできてるから、一緒に食べよー。今日はホットサンドです」
「うん、ありがと!」
まだ滲んだ汗は引いてはいないけれど、俺はちゃんと笑えている。
りこの存在は、誇張でもなんでもなく、俺にとって救いだった。
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