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愛され人形使い!  作者: 天眼鏡
最終章

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内側で観てたから

 望子の中から意識を乗っ取る形で現れていた、舞園勇人。


 当時の望子では手に負えない程の危機に直面した場合にのみ望子の肉体を借りて現れ、先代勇者として、そして父親として魔術とも武技アーツとも恩恵ギフトとも違う力で危機を退けてきた。


 しかしその時、望子の意識は完全に閉ざされていた訳ではなく、大きな液晶スクリーン以外は何もない真っ白な空間でテレビ中継を観る様な感覚で、自分の肉体を動かしているのが誰なのかも分からない状態で全てを観続けていたのだと言う。


 つまり、望子は既に全てを知って──否、識っていた。


 父親の力である〝魔法〟を使えば或いは──というヒントを母親からもらえた以上、内側から観ていた全ての魔法の中から今、必要な力を選んで発動すれば必ず突破し得ると。


 そして望子なりに熟考した結果、最初に発動すべき魔法は奇しくも、勇人が最初に発動した魔法でもあって──。


『まずは、おそうじしなきゃ……! 【すいーぷ】っ!』


 かつて、魔王軍三幹部が一角の側近たる上級魔族を一瞬で消し去ってみせた純白の光が、飛散する鱗と牙を包み込む。


 本来、【掃除スイープ】と呼ばれるその魔法に込められた力は〝術者が塵芥だと判断した物体、或いは生物の強制的な消滅〟だった筈だが、どういう訳か鱗や牙は消滅などしておらず。


 さも()()()()()()()()()かの様に、【四位一体】や望子本人から強制的に距離を置かれた鱗や牙が壁や床に散乱する。


 それもその筈、望子が行使した【掃除スイープ】には風を司る邪神ストラの力で強化された超級魔術である【風化エアロナイズ】によって全てを外側へと弾き飛ばす程の暴風が纏わされており、〝消滅〟より〝排斥〟に重きを置く様に変化を遂げていたのだ。


 何しろ、この鱗や牙は制御が困難とはいえ必要な力。


 消滅させてしまっては意味がないのだから。


 しかし、こうして弾き飛ばしたまではいいとしても放置したままでは何の得にもならず、さりとて下手に触れようものなら再び望子や【四位一体】を害しようとしてくる筈。


『じゃまされないように、ぬいつける! 【そーいんぐ】!』


 ゆえに、それら全てを天井や壁や床に縫い付ける。


 人形使い(パペットマスター)の代名詞とも言うべき、針と糸によって。


 また、【裁縫ソーイング】の針についても先程の【掃除スイープ】と同様に望子が元々持っていた力の一つ、【龍化ドラゴナイズ】にて肉体に現れる鋭い牙と爪を精錬したものに取り換える事で確実に固定。


 そして、縫い付けたのは〝座標〟を固定する為。


『【ぴっくあっぷ】で、いっかしょにあつめて……!』


 全ての鱗や牙の座標を指定した後、目の前に転移。


 一ヶ所に集める事で一気呵成に取り込みやすくするとともに、決して飛散せぬ様にと【送迎ピックアップ】にはない〝結合〟の能力を【腐化モルドナイズ】によるカビにて実現し、ぎゅっと固めた後。


『くちにいれてもいいくらいきれいに! 【でぃじゃむ】!』


 カビの有毒性を取り除く意味でも、そして叛逆の意思を出来るだけ抑え込む意味でも【殺菌ディジャム】に加えてリエナ由来の蒼炎が特徴的な【火化フレアナイズ】にて〝熱消毒〟をも実行した結果。


 硬く鋭く尖った鱗や牙を無理やり一纏めにしたのだから当然と言えば当然だが、ゴツゴツし過ぎていたが為に球体とは呼び難かったそれは今、〝真球〟と呼んで差し支えないものとまで精錬されており、こうなってしまえば最早──。


『あとは、すいこむだけ! 【すとれーじ】っ!』


 何もかも吸い込んで取り込む魔法、【収納ストレージ】の出番。


 人族ヒューマン──もとい人間と比較した場合、全ての面において優れていると言っても過言ではない魔族の力と姿を得る超級魔術、【悪化イビルナイズ】の力で吸引力と許容量を格段に向上させた事により、その真球はあっさりと望子の体内へ吸収され。


『……っ!? すごい……さっきまでと、ぜんぜん……!』


 還元の速度・効率・容量までもが向上していた為か、ほぼ全ての魔力と神力を吸収し切った事で、この瞬間だけではあれど今の望子は先代勇者にも匹敵する至高の存在へ昇華し。


「魔力と、神力は充分……そのまま……未来さき、へ……ッ」

『〜〜……っ、うん!!』


 それを肌で感じ取っていたらしいローアの途切れ途切れの弱々しい声にも約束通り振り向かず、ただ呼応した望子は。


『こんどこそ……っ!! 【よんみいったい】!!』


 明らかに先程のものとは比較にする事さえ馬鹿馬鹿しく思える程の威力と速度を誇る、【四位一体】を放出した。


 制御も上手くいっており、結界への手応えも感じる。


 ……ただ、それでもまだ破壊には至らない。


(わかってる、これじゃまだたりない……! だから!!)


 それは望子も分かっていた様で、【四位一体】を放出しながらも新たに、そして最後の一手となる魔法を発動すべく。


『ぜんぶまきこんで、ふっとばす! 【らんどりー】っ!!』


 勇人が全なる邪神討伐戦のトドメとして使用した、正しく切り札の一つである魔法、【洗濯ランドリー】を水の邪神ヒドラの力で更に威力と回転力を強化した直線状の渦潮として放つ。


 先の【殺菌ディジャム】が〝術者にとって害のある物質を自動的に殺す〟力であるのに対し、【洗濯ランドリー】は〝術者が穢れだと認識した生物、或いは物質を洗い流して浄化する〟力であり。


 そんな切り札に秘められた力を今、望子は──。


 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()、という事象そのものを〝穢れ〟と認識する事で洗い流しそうとしていた。


 そんな突拍子もない発想は、きっと勇人には出来ない。


 心身ともに成熟し切っていた、かの精悍な英傑には。


 ……勇人は全てを知った上で託したのかもしれない。


 封印ではなく、討伐まで持っていけるのは。


 きっと、望子だけだったのだと──。


『い……っ、けえぇええええええええええええええっ!!』


 









 ──……パキッ。


『え──』

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