Union_attack!
その頃、外部では──つまり、戦場では。
『どうした神樹人、いや【世界樹人】よ! 妾と同程度の図体まで手にしておきながら、この体たらくとは呆れるわ!!』
『ぐ、うぅぅ……ッ!!』
キューが、これでもかという程の猛攻を受けていた。
コアノル自身の闇の魔力や神力は勿論の事、二柱の邪神由来の火と土の神力を混合して放たれた魔術とも武技ともつかない〝力の塊〟は、コアノルが言う様に天を衝く程の巨躯を得たキューの肉体を、さも児戯であるかの如く抉っていき。
(やっぱり今のキューじゃ駄目だ……! 変異は出来てもこの巨体を操れない……このままじゃ自分の身体に振り回された挙句、殺されるより早く寿命を迎える事しか出来ない……!)
痛痒こそ〝芯〟とも呼べるキューの魂に届いてはいないものの、それ以前に弱りきった身体を用いての変異が祟ったが為に蝕む様に寿命が削られていく事に歯噛みせざるを得ず。
最早、下手に迎撃するより防御に徹した方が──防御と言うにはあまりに一方的だが──良いのではと思いつつも。
(まだなの、アドライト……! 早くしないとキューは……!)
それはそれとして、つい先程この肉体の内部に招いたばかりの上之森人が操縦しさえしてくれれば或いは、という希望的観測を捨て切る事も出来ぬまま、ただ耐え抜いていた時。
『──飽いた』
『!?』
突如として激しい攻撃が止んだかと思えば、口に相当する部位から『退屈だ』と告げられた事でキューは絶望する。
『間もなく、ミコの牙が妾の命に届く。 ミコの成長をこの身で実感し得る好機じゃが、妾とて死にとうない。この無意味な時間稼ぎなど放置してミコとの再会を優先させようぞ』
『ッ、そうはさせない……!』
何故ならそれはコアノル自身がつらつらと語った通り彼女の矛先がキューではなく望子に向けられてしまうという事に他ならず、命を賭してこの姿になった事を無価値にしない為にも、三幹部はおろか魔王の側近でさえ蜂の巣にしてしまえるだろう威力を持つ種子の散弾を各部位から生やした根や枝の銃口から発射せんとしたものの、コアノルは動じもせず。
『何度言えば分かる? 全て効かぬと──』
何しろ既に似た様な、或いは全く同じ種子を用いた銃撃や砲撃を、コアノルは受け止める事も躱す事もせず、ただその場に佇みながら受けるだけで無力化してみせており、その瞳に相当する部位からキューを外しかけるくらいには興味を失っていたが、それでも負けじと種子を発射せんとした時。
「──大丈夫だよ、キュー。 そのまま撃って」
『!』
『……? 今の声は──』
キューにとっては待ち望んだ、コアノルにとっては不可解な透き通った声が戦場に響いた事で互いに一瞬の隙が生まれつつも、先に気を取り直したキューは種子の散弾を放ち。
それに対し、僅かに遅れて気を取り直したコアノルは『無駄な事を』と言わんばかりに迫り来る散弾を無視、望子たちの対処に意識の大部分を割こうとした、その瞬間──。
『──!? う"、おぉッ!?』
「!! 通った……!?」
レプターの結界の中から戦況を見守っていたリエナも驚く程に歴然とした痛撃を散弾の一発一発が与えた事に、リエナたちは勿論、魔王自身も信じられなさそうな声を上げて呻く。
当然ながら、これだけで趨勢がこちら側へと傾くとはいかないが、それでも確かな手応えを感じた
「……ただ単に〝投げたり撃ったり飛ばしたりした物が標的に必ず命中する〟だけの恩恵だったのに、進化の影響か〝必ず急所に命中する〟恩恵に昇華したらしい。 その名も──』
時間にしてみれば約三分、ごく僅かな間とはいえ──。
「──【天命誅】。 ほんの数分、私と踊ってくれるかい?」




