表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愛され人形使い!  作者: 天眼鏡
最終章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

450/499

上之森人

 森人エルフという種は、かつて地下に国を造り上げる程の一大勢力であった亜人族、鉱人ドワーフと並ぶ最も数の多い亜人族デミである。


 森と呼べる程に樹木が密集している場所なら最低でも数人の森人エルフが住んでいるのは当たり前であったし、『森人エルフとは何か』と問われれば『森そのものだ』と答える者も居たとか。


 また、秀でていたのは何も個体数だけではない。


 教わるまでもなく物心ついた時には卓越している弓の腕。


 風、雷、樹──三種の属性を纏った魔術と武技アーツ


 あらゆる植物と心を交わし、言葉までもを交わす力。


 それらの能力は、森人エルフという種を亜人族デミのみならず人族ヒューマンも含めた殆どの生物を〝生存能力〟で上回っていたという。


 ……無論、龍人ドラゴニュート神樹人ドライアドを除けばの話だし。


 誇っていたその個体数も、千年前と百年前に勃発した魔族との戦争の中で随分と減り、今となっては〝最も数の少ない亜人族デミ〟の一種となっているのだが、それはさておき。


 ここまでの能力は全て、森人エルフという下位種が持つもの。


 この種が進化を遂げた暁には上述した能力の性能がそのまま向上するのは勿論の事、〝神〟と名のつく上位種にこそ及ばずとも充分な程に強力な新しい能力も獲得するのだとか。


 アドライトは長く銀等級シルバークラスの冒険者として燻っていると思われていたが、それも全ては〝金等級ゴールドクラス以上になると様々な特権を得る代償として王侯貴族からの受けたくもない依頼クエストを受けなければならない〟という不自由な柵に囚われぬ為。


 元々、金等級ゴールドクラス相当の器ではあったのだ。


 ……上位種への進化を可能とする程の器ではあったのだ。


 ちなみにリエナやスピナ、ファタリアなども下位種のままではあるが、こちらについても当然ながら上位種は存在するし、やはり上位種への進化は可能であるものの、それを果たしていないのは、この三人が()()()()()()()()()()である。


 本来なら〝上位種への進化〟という希望に満ち溢れた進路を選ぶ事も出来たのだろうが、時勢がそれを許さなかった。


 彼女たちは下位種のまま一般的な上位種でさえ獲得不可能な程の力を得た影響で、進化を選ぶ必要がなくなったのだ。


 火光リエナ瑞風スピナは、特に。


 しかし、アドライトは違う。


 彼女も割と長生きな方ではあるが、実のところ魔族との戦争には関与しておらず、かの戦場とは無関係な地で魔族と戦闘した経験はあるものの、良い意味で未成熟なままなのだ。


 そして何より、彼女は知っていた。


 森人エルフが上位種へと進化する為に必要な条件が、勇者一行の最終目的地たるこの魔大陸に図らずも揃っている事を。


 その条件とは、〝心を交わした植物の力を貰う〟事。


 借り受けるのではなく、全てを譲り受ける事。


 森人エルフに力を譲り渡した植物が死ぬ事を前提として。


 それも一つや二つではなく、膨大な数の植物の力を。


 つまり、アドライトは──。


『成る程、魔大陸に植生する原種を()()()()取り込む事で上位種への進化を遂げたか。 ()()()()()()()()、〝上之森人ハイエルフ〟』

「ッ! やっぱり……!」

「はッ、ここに来て進化たァあの子らしいね……」


 魔大陸に根を張る原種の植物の実に半数以上を心も言葉も交わす事なく、ただただ己の才気を誇示する事によって無理やり力を奪い取り、上位種への進化に必要な糧としたのだ。


 全ては、この戦いを終わらせる為の一助となる為に。











 ……ところで、コアノルはこう言っていた。


 見上げた覚悟よの、と。


 その謎めいた呟きの意味を理解しているからこそ──。


(()()()()()()()()()……さて、どれくらい保つかな)


 アドライトは、全てを悟った様に微笑んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ