敵に捧げる酷寒猛暑
「──……ぶ、ぶろぶ? これの名前か?」
二人が揃って同じ言葉を小さく呟く一方で、いまいち要領を得ていないウルが目の前のブヨブヨとした謎の薄紫の液体──の様な何かを指差して問いかける。
「私の眼には、そう視えてるわ。 合ってる、のよね」
「えぇ、間違いなく──……こんな事があるなんて」
すると、ハピが少しずつ──そう、本当に少しずつジワジワこちらに近づいているそれを翠緑の瞳で射抜きつつ確認すると、ウェバリエは嫌そうな表情を微塵も隠さず、それでいて目の前の現象に驚いてもいた。
そんな風に、ウェバリエがやたら目の前のそれを警戒しているから、ハピも迂闊に近寄るまいと適切な距離を保っているが──ウルには、どうも分からない。
ある程度の強さがあるのなら彼女はそれを超人的な嗅覚で感じ取る事が出来るものの、『ぶろゔ』だか何だか知らないが、その液体には──匂いがないから。
ここら一体から嫌という程、魔族──或いは魔族の影響を受けた何かが放つ気味の悪い匂いはするのに。
「……とにかく一発殴って様子見でも──」
だからこそウルは、『埒が明かねぇ』と言わんばかりに右腕をグルグルと回しながら、その腕を段々と赤熱させる様に真紅の魔力を充填し始めていたものの。
「っ!? 駄目よ! 近づいては駄目!」
「は──ぅぐぇっ!?」
何の突拍子もなくスタスタ近寄っていくウルに驚いたウェバリエが、どうにか制止させようとして爪の先から糸を放ったのだが、あまりに咄嗟だったからかウェバリエの糸はウルの首に巻きつき、そのせいでウルは蛙が潰れた様な声とともに仰向けに倒れてしまう。
それを見ていたハピが、『うわぁ……』と鈍い痛みで地面に転がるウルに憐れみの視線を向けていた中。
「ぐぅ……! なっ、何すんだぁ! ふざけてる場合かよ! 元はぬいぐるみでも痛ぇもんは痛ぇんだぞ!!」
思い切り後頭部を地面にぶつけたウルが、ほんの少しとはいえ真紅の瞳に涙を浮かべつつ苦言を呈すも。
「ご、ごめんなさい! でも駄目なのよ接近戦は!」
「はぁ……!?」
その事については謝罪するが、『貴女を止めた事は間違いじゃない』とばかりに主張してきた為、理解が及ばないウルはより一層イラッとして青筋を立てた。
ただ、ウェバリエの主張は本当に間違いではない。
何でも、この粘液生物と呼ばれる目の前のブヨブヨした液体には、その粘ついた身体に触れた全ての動植物を余す事なく溶かして吸収する性質があり、おまけに不定形の身体を持ってあらゆる物理攻撃や、とある属性を除いた魔術をも受け流してしまうらしく──。
──つまりは。
「貴女が強いのは身を以て分かっているけれど、ウルは近接戦闘が主流なんでしょう!? 相性が悪いの!」
「じゃあ最初に言っといてくれりゃあ──」
そう、『爪による斬撃を飛ばす』以外に遠距離攻撃の手段を持たないと聞いていたからこそ、ウルでは相性が悪すぎるのだと踏んで制止したのだが、だったら粘液生物と分かった時点で言ってくれれば──とウルが牙を剥き出して反論を試みようとした、その瞬間。
「──んぐっ!?」
「!? な、何!?」
突如、言葉が途中で止まっただけでなく何故か口が開きっぱなしになってしまったウルに、ウェバリエが何事かと驚く一方、後ろから歩み寄ってきたハピが。
「……貴女が話も聞かずに手を出そうとしたからよ」
「ん"〜っ!?」
(あぁ、この娘が原因なのね……)
粘液生物の危険性についてを語られる前に突っ込んでいこうとしたのが悪いという正論をぶつけるも、どうやら口の中に風で形成された球体を無理やり詰め込まれたらしいウルは喋る事も出来ず、ただ唸るだけ。
そのやりとりを見ていたウェバリエは、まず間違いなくハピが風の魔術か何かを行使したのだろうと分かっても、これといって話に割って入ったりはしない。
薮を突いて蛇を──もとい梟を出す趣味はないし。
「──……で? あれの対策は?」
「えっ? あ、え、えぇと……」
それから、『あれは放っておきましょう』とでも言わんばかりにハピがウルから視線を外しつつ、ウェバリエに対策の有無を問いかけたものの、それを受けた彼女は明らかに整った表情を曇らせながら口を開き。
「……あるにはあるのだけれど……私じゃあ──うぅん、きっと貴女たちでもその対策を実行出来ないわ」
「……どういう事?」
対策はない──とでも口にするのではと邪推していたハピの予想に反し、あるにはあるが自分たちでは不可能だと彼女が呟いた事で、ハピは思わず聞き返す。
「……弱点は熱気か冷気なの、溶かすか凍らせるかして活動を停止させるしかないのよ。 私たちじゃ──」
すると、ウェバリエは粘液生物の活動を停止させるには熱気で溶かすか冷気で凍らせるか──つまりは火か氷の属性を持つ魔術などでしか対策不可能と語り。
糸と毒を出す以外に出来る事はなく、もっと言えば力を借りるにあたって二人の得意としている事もあらかじめ聞いていた為、諦めた様な表情を見せていた。
一応、望子たち四人は王都の冒険者ギルドにて新米冒険者に向けて安価で販売される初心者キットなる物の中の簡易的な松明──そして、それに着火する為に必要な『魔石』と呼ばれる魔物や魔獣、魔蟲の心臓が死後に魔力を遺したまま形骸化した石を持っており。
そこには火属性の魔石もあったのだが、ウェバリエは首を横に振って『火力不足』だとハッキリ告げる。
事実、粘液生物の活動を完全に停止させるのならば山火事程度の熱気量では足らず、また極寒の猛吹雪レベルの冷気でなければ凍りつく事さえしないという。
確かに、もう打つ手なしにも思えはしたが──。
「──……その娘を連れて少し下がっててくれる?」
「……え?」
ウェバリエの口から溢れていた諦念の感情がこもった溜息とは異なる、どうにも強い決意や覚悟を感じさせる長い息を吐いたハピは、その真剣味を帯びた表情と声音を以て暗に『私に任せてほしい』と口にして。
「……え、えぇ分かったわ。 ほら、ウル」
「んー!? ぐぅ〜!」
一方のウェバリエは彼女の鬼気迫る表情に違和感を覚えながらも、ジワジワと近寄ってくる粘液生物を改めて見遣り、『考えてる時間もなさそうね』と首を横に振ってから苦しそうに呻くウルを引きずっていく。
それから、ハピは粘液生物の真上まで飛び上がり。
(──……単純な膂力じゃあウルには勝てない、かといって魔術はフィンに圧倒的に劣る……現状、三人の中では私が最も弱くて……何より、中途半端なのよね)
ある種、自虐的とも取れる呟きを脳内で独り言ち始めており、そんな彼女の表情は決して明るくはない。
彼女自身、認めたくはないのかその事実を口にしたりはしないものの、これといって高い訳でもない身体能力にも、だからといって飛び抜けて優れている訳でもない魔術にも、いい加減嫌気が差していたらしく。
(この前の幹部との戦いでも真っ先に倒れて──……こんな私に、あの子を守る資格なんてあるのかしら……)
ほんの一週間前、王都セニルニアにて繰り広げられた魔族との戦い──そして何より魔王軍幹部が一体のラスガルドとの戦闘では、ぬいぐるみたちの中で最も早く敗北を喫したのが自分だったと自覚していた事も災いし、ハッキリ言って彼女は自信をなくしていた。
(……今は、あれを何とかしないとね──)
しかし、それはそれとして気を取り直す為にと首を横に振ったハピは、その両腕の手首から肘の辺りにまで生えた栗色の翼を中心に翠緑の魔力を込めてから。
「──……ふっ!!」
粘液生物に向けていた右脚の鋭い爪の先に翠緑の魔方陣が展開されるとともに、その両翼を大きく振りかぶった瞬間、半透明な淡い翠緑の光を伴う暴風を、ハピの真下にいる粘液生物を散らすでもなく貫くでもなく吹き飛ばすでもなく、ただ押し潰す為に放出する。
欠片も残さず潰せれば──と考えた結果であった。
「……っ、何て風圧……!! でも──」
凶暴──と表現しても差し支えない程の超風圧によって、バキバキと薙ぎ倒され吹き飛んでいく木々を見ていたウェバリエは、ハピの魔術に素直に感心した。
──が、しかし。
(やっぱり風じゃ無理みたい、何とか別の手段を──)
最早、天空から降り注ぐ風の柱とも呼べる暴風により陥没した地面から、ハピの思惑通りに押し潰されながらも少しずつ這い出るばかりか風を吸収し肥大化している様にさえ思える粘液生物を見ながらも、この森を守る為にはとウェバリエは思考を広げており──。
もう止めた方が──と判断して声をかけんとした。
──その時。
「──……っ、な、何? 寒、い……?」
確かに、このサーカ大森林は大して陽も射さず四季が存在しないこの世界においても涼しげな場所である事は疑いようのない事実だが──それを差し引いても不自然な程の寒気を感じた彼女が身を震わせる一方。
「ぅ、ぐはぁっ! はー、はー……っ、あんの鳥め、よくもやって──……ん? 何か冷えてきた、か……?」
ハピが粘液生物に魔力を割いているからか、いつの間にか風の口枷が外れていたらしいウルは口を開けっぱなしにしていたせいで痛む顎を摩って、ハピへの苦言を呈さんとするも、その瞬間には既に彼女の周囲は極寒とは言えないまでも相当な冷気に包まれており。
「……これ、もしかして……あいつが、ハピが何かやって──お、おい! ハピ!!」
この周辺で起きている明らかな異常を、その超人的な嗅覚だけでなく全感覚で感じ取ったウルが、『ウェバリエでも、ましてやあたしでもねぇんだったら』と未だ暴風を放出し続けているハピを見上げたところ。
「違う……ちがう……! もっと、ちからを……! わたしが、あのこを──みこを、まもらないと……!」
「……!?」
当のハピは段々と拙くなっている様にも感じる口調を以て、ぶつぶつと望子に対する強い庇護の想いを呟いているだけでは飽き足らず、その鋭い爪を中心として展開された巨大な翠緑の魔方陣から放出され続けている風と魔力を、どういう訳かハピ自身が纏い始め。
そこに、どうしてか『空色』の魔力が混じりかけている事には、ウルもウェバリエも気づいていないが。
その口調や現象が──あの時、ラスガルドと戦った際のフィンとよく似ているとウルは独り思っていた。
「──な、あ……!? 森が……っ、凍って……!!」
その一方、何も知らないウェバリエは『侵蝕する様な冷気』という前触れこそあれ、サーカ大森林に植生する木々や草花、或いは地面や空気、果ては魔獣や魔蟲ごとパキパキと音を立てて凍りついていく光景を見て、そんな驚愕と困惑のこもった叫びを上げている。
(まさか、こいつも──いや、とにかく止めねぇと!)
また、ウルはウルでハピまでもがフィンの様に暴走してしまうのではと考えた結果、多少の怪我は覚悟のうえで暴風に突っ込んででも止めようと試みた──。
──次の瞬間。
『ぁ、ああああ──……ッ!! キュアァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!』
「「──っ!?」」
突如、奇妙かつ甲高い咆哮を森中に響かせたかと思えば、ハピの姿は翠緑と空色の混じった半透明な魔力に覆い隠されてしまい、その魔力は次第に形を変え。
太古の空を、その大翼で制した怪物──翼竜を象る魔力を纏ったハピが嘴を大きく開いた瞬間、先程までとは比べ物にならない超酷寒の吹雪嵐が襲いかかる。
粘液生物にも、そして亜人族たちにも──。
「──やっ、べぇ!! ウェバリエ、逃げるぞ!!」
「間に合わないわ! 私の後ろへ!」
「はっ!? おい──」
最早、近寄って制止するどころの話ではないと踏んだウルがウェバリエに声をかけつつ一時撤退を提案するも、その提案をバッサリと切り捨てるばかりか自分の後ろにと叫んだ彼女の意図が掴めず混乱する中で。
「『細糸集合』──と! 『蜘蛛巣壁』!!」
そんなウルをよそに、ウェバリエは蚕食紡糸によって森に張り巡らせていた全ての蜘蛛糸を集めたかと思うと、それらを一瞬にして自分たちの前に蜘蛛の巣の様に張り、されど一切の隙間はない厚い防護壁を作り出して吹雪嵐を何とか防ごうとしていたものの──。
「くぅっ……! 保ってよ……!!」
ウェバリエが、これまでの長い生涯で張り巡らせ続けていた無数の蜘蛛の糸と、この瞬間に持つ全魔力を持って作り上げた壁は、ハピが放っている超低温の下降気流──地球で言うところのマイクロバーストの様な冷気の余波で段々と凍りつき、そして崩れていく。
(早く止めねぇと……! あたしらだけじゃねぇ、もしかしたらミコたちにも──あいつ自身だって……っ!)
「!? ちょ、ちょっと何を──」
最早、一刻の猶予もないと判断したウルがハピを止める為に蜘蛛巣壁の前に躍り出た瞬間、吹きつける冷気で即座に凍りつく身体を何とか動かして、ほんの少しずつとはいえ翼竜の真下──完全に凍りついて動けなくなってしまっているらしい粘液生物へと近寄り。
ウェバリエの制止の声も虚しく、ウルは翼竜の身体の中心に当たる部分に浮かんでいるハピを見上げて。
「……ミコを護りたい、その為の力を──ってか?」
『キュアアアア──……アァ……ッ?』
その強靭な脚力を以て跳躍してから、ハピが浮かばせられている翼竜の様な魔力の中心部を真紅の爪で掴むと、それに反応した翼竜の形をした魔力だけでなくハピまでもが反応を見せつつ無感情な顔を向け──。
粘液生物の脅威は去りかけているというのに邪魔が入った事で甲高い咆哮を止め、どうにも憎らしげにウルを見下ろす翼竜──の中心に浮かぶハピが流した涙が凍り、そしてカツッと音を立てて地面に落ちたのを見たウルはギリッと歯噛みしてから大きく息を吸い。
「この馬鹿野郎が……! それでお前が傷ついて! ミコが哀しむ事になるって何で気づかねぇんだよ!!」
『──……っ!!』
たとえ、ハピが誰よりも確実に望子を護れるくらいに強くなったとしても、そんな彼女が満身創痍な状態にあったとしたら、きっと望子は涙を流して哀しむ。
自分たちを、とても大切に想っているからこそ。
あの時──王城で繰り広げられたラスガルドとの戦闘の最終局面において望子の中から現れた《それ》が粛々と伝え、ウル自身も尤もだと思った言葉だった。
瞬間、翼竜の形をした魔力がハピの感情の揺れに伴ってブレ始めると同時に、ウルが爪に纏わせていた真紅の魔力までもが過剰な程の輝きを放ち始めており。
そして、ウルとハピを中心に──大爆発が起こる。
「な、あ──きゃあぁああああああああああっ!?」
ウェバリエを護っていた糸の壁が一瞬で崩れ去ってしまう程の超強力な魔力の爆発によって、ウェバリエ自身もまた森の奥へと大きく吹き飛ばされてしまう。
周りの木々や草花も次から次へと凍ったかと思えば燃えて、また燃えたかと思えば凍ってを繰り返しており、そんな植物の入り混じった土砂と、およそ森の中では自然に発生し得ない筈の真紅の火焔が躍る中、少しずつ──本当に少しずつだが爆発の勢いは弱まり。
「っあ、熱っ……! いや冷たっ! な、何が、起こって……あ、あの二人は!? まさか今の爆発で──」
蜘蛛糸の壁を張っていたお陰もあってギリギリ軽傷で済んでいたウェバリエは、ズキズキと痛む身体を押して八本の脚を動かし爆発が起きた現場へと向かう。
爆発の影響で未だ轟々と土と火の煙が上がる場所へ歩み寄ったウェバリエは、『無事でいて』と願いつつ粘液生物が蠢いていた辺りまで辿り着いたはいいものの、そこにウルやハピの姿は何処にも見当たらない。
無論、事の発端である粘液生物自体も跡形もなく吹き飛んでしまっていたが、そんな事はどうでもいい。
(そん、な……せっかく粘液生物を倒せても二人が無事でないなら何の意味も──あの子たちに何て言えば)
薙ぎ倒された木々や焼け焦げた地面とはまた対照的に、この森が普段は樹葉に遮られていた事もあり、これまで見えていなかった綺麗な夕焼けといった光景が広がる中で、その何処にも二人の姿が見えない事に。
「ぅ、うぅ……っ、ごめん、なさ──……っ!?」
ウェバリエが拭いきれぬ失意に暮れて長い脚を折り曲げてしゃがみ込んだ泣きそうになっていた時、彼女の耳に森の奥から何某かが歩いてくる音が届く──。
(……ま、まさか──)
その音に、もしやと思い顔を上げた先には。
「──……疲れたぁ……もう動きたくねぇ……」
「あ、あぁ……っ!」
苦々しい表情で愚痴を吐きながら、どうやら意識を失っているらしいハピに肩を貸したウルが、ほんの少しだけ晴れてきた土煙の向こうから歩いてきていた。
「ウル! ハピも……良かった! 無事だったのね!」
「ぅぐっ! ちょ、ちょっと待て! 息、出来ね──」
そんなウルたちの姿にウェバリエは思わず感極まって抱きついたのだが、ウェバリエの豊満な胸に顔を圧迫されていしまったウルは苦しげに彼女の腕を叩く。
嫌な感触という訳でもないのが悔しげでもある。
「そ、そうよね、ごめんなさい……でも本当に良かった……! 一体、何があったの? あの爆発は……?」
一方で、『よくよく考えれば怪我だってしているかもしれないのに』と思い返したウェバリエが、ウルやハピの無事を喜びつつも彼女を気遣う様子を見せてから改まり、この場で何が起こったのかと問いかけた。
「ん……? あぁ──ほら、これ見てみろよ」
「……っ、それって……!」
すると、ウルがハピを担いでいない空いた方の手を前に掲げ、そこへ真紅の魔力を集中させた瞬間、『ボゥッ!』という音とともに彼女の爪から真紅の炎が立ち昇り、あっという間に彼女の左手が炎に包まれる。
「あぁ、あたしの自由に扱える。 あたしの熱とハピの冷気がぶつかって爆発したんじゃねぇかってとこか」
「そう、なの──……あっ、そうだわ!」
「ん?」
そう、粘液生物を討伐する為の力、延いては望子を護る事に直結する力を欲したハピが氷の属性を会得したのと同じ様に、ウルも火の属性を手に入れていた。
ちなみに彼女の推測には何の根拠もありはしなかったが、あの爆発は熱気と冷気が混ざり合って空気が高圧縮された事によるものであった為、正解ではあり。
これで、やっとぬいぐるみたち全員が魔術による属性を付与した攻撃を可能とする様になったのである。
「私、あの子たちを呼んでくる! ここで待ってて!」
「……あぁ、そうだな。 頼むわ」
それから、ある程度の納得をしたウェバリエは『今の音であの二人も気づいたでしょうし』と彼女たちが歩いてきた道を新たに糸を張りながら戻っていった。
そして気絶しているハピとともに残されたウルは。
担いでいたハピを焼け焦げた地面に優しく置きつつ自分も『よいしょ』と座り込んでから──舌を打ち。
(……ミコを護りてぇのはお前だけじゃねぇのによ)
先程の彼女の勝手な行動に呆れつつも、どこか誇らしげな様子で微笑み──その栗色の髪を撫でていた。
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