表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/36

娯楽

 朝食、丙三級まで階級があがると選べるメニューが増える。おいしくもなければ、まずくもない、微妙な3色ペーストはもうテーブルの上には並ばない。


 お菓子の分のカロリーも計算に入れて、それなりのメニュー、かつての平成日本とかわらない。ご飯に味噌汁、目玉焼きにハム、サラダ。ウキネは朝はお粥と決めているみたい。


 食料も材料は合成で工場で作られる。肉や魚はクローン技術の応用で作れるし、野菜も地下の合成工場で作られる。和国再生後の食料の生産実験も兼ねているとか。


「ウキネと同じ遺伝子標の子は、となりのクラスだけど、上手くやっているみたいだよ」

「そうか」

「興味無いの?」

「元の遺伝子が同じでも私とは別人だ。それに、私の遺伝子標のテスト体の人生を覗いても、さして面白いものでも無い」

「ふうん」


 ウキネに頼んで食後は訓練に付き合ってもらう。

 身体動作の訓練。これをやっておくと、人型戦闘機でも応用がきくということで、この訓練をするようにしている。


 私は格闘技とかやったことが無い。神経接続すれば戦闘機を自分の身体のように動かせる。だけど、私は自分の身体で戦闘をしたことが無い。

 とっさの反応を良くして、回避能力を上げるには、私自身の戦闘経験が必要。


 ウキネが両手にミットを着ける。ウキネの指示に従って、ミットにパンチしたりキックしたり。ウキネが振り回すミットをしゃがんで避けたり。


 馴れというのは怖いもので、私はウキネの服装も、見慣れてしまった。

 肘から先と膝から先が人工のツヤ消しの黒色で、着ているのは膝上まである無地のTシャツ1枚。緊急時にすぐ戦闘機に乗れるように、靴も履かないし、下着も着けない。


 そんな格好で回し蹴りとかすると、いろいろ見えてしまう。最初は、うわー、とか思ってたものだけど、この施設には人間は私達2人だけ。私が馴れてしまえば、問題無い。


 私はTシャツにスパッツ。注意する人がいないのであれば、服を着るのがめんどくさいというのがわかってきた。ここでは全裸で過ごしても、たぶん問題無いんだろう。私には、ウキネの視線とか、ボゥイとシロの視線が気になって、まだそこまでの境地には届いていないけど。


 パンパンパンとミットを殴る。上手く当てると、いい音がする。疲れるまで身体を動かすのも、少しスッキリしていい。これは訓練シミュレーターでは味わえない感覚。


 休憩を挟みながら3時間ほど。水分補給して終了。

「それなりに、反応は良くなってきたな」

「ウキネが教えるのが、上手いんじゃないの?」

「私は指導者としては、不出来だ。ここでは比べる人物もいないからな」

「これまでも、何人も下士官の相手をしてたからじゃないの?」

「私しか上官がいなければ、仕方が無い」


 ウキネが私をジロジロと見てる。

「何?」

「これまでの下士官は、上官の私にケンカをふっかけてきたりとか、逆に、やたらと私に甘えてきたりとかしてたものだが、シズネは違うようだな」

「ん、私も、どうすればいいのかわからない。だけど、ウキネに嫌われるようなことにはなりたくない」

「それで、お菓子つくって取り入ろうと?」

「そういうことなのかなぁ。ウキネが嫌だったらやめるけど」

「シズネの作るものは、嫌いではないな」

「だったら、またつくるから」


 訓練終了。ボゥイに頼んでおいたものが完成したので、自室でテストする。


 情報室で娯楽を調べてみた。スポーツは相手がいないとできない。ゲームもオセロやチェスといった対戦型は、相手がいない。


 ウキネの邪魔にならないような、ひとり用の娯楽、過去のコンピューターゲーム機の再現機。ソフトもいくつか用意して、自室で遊んでみることにする。


 過去の平和な時代では、ゲームで戦争、戦闘をして、ストレス解消にしてたらしい。

 やってはみたものの、戦争も戦闘もこれは私の今の仕事で、わざわざゲームでやっても、おもしろくはなかった。


 街や国を作るゲームもあったが、人が国や街を作ったあとの全部無くなった灰色の景色を見たあとでは、街とか国とか、作る意味がわからない。扱うデータも多くてめんどくさい、おもしろいところがわからない。


 疑似恋愛のゲーム。出だしはそこそこ楽しめたけれど、見た目のいい男なら、ボゥイがいる。タイプの違うのが欲しければ、ボゥイの外見改造をすればいい。まだやったことないけれど。

 ゲームの中の会話は、今の私の世界とはあまりにもかけ離れていて、途中から感情移入ができなくなった。


 ホラー、幽霊や、ゾンビに追われるものも、それほど怖く感じない。トカゲとナメクジを殺すのが仕事だから、異形に見慣れているのかも。追い詰められてゲームオーバー。セーブポイントからリスタート。あぁ、私も1回死んでやり直したなぁ。ここだけちょっと笑えた。


 エッチなゲームのほうが、少しは楽しめるかも。戦闘が終わったあとは、無性に誰かに抱きつきたいような気分になったりする。それでも、卵巣が無くなって、妊娠しない身体になったからなのか、昔より性欲は無いような気がする。ボゥイ相手にセックスするのも考えてはみたものの、実行する気分にはならない。


 どうも、コンピューターゲームは私の娯楽にはならないみたいだ。わざわざ再現してみたものの、無駄だったみたい。

 またなにか違う娯楽を探してみようか。それとも、過去の映画を探して見てみようかな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ