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命色ノ贄  作者: 卯ノ花 腐(くたし)
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第十九話 生徒会室にて

「と、言うわけで新顔の一年二人だ。先に説明してたからな、知らん奴はいないだろう」


「一年の阿南対馬っす、よろしくお願いします!」

「同じく一年の八夜千草です。よろしくお願いします」


 放課後、生徒会が普段使用しているという教室に俺と阿南は連れられた。


 乱雑に置かれた椅子に少し埃っぽい床。部屋の所々に蜘蛛の巣が見受けられる。まだ夕暮れには早い時間ではあるが、陽を取り入れる窓に遮光カーテンがかけられ、室内を薄暗く演出していた。


「改めて、ようこそ生徒会へ。色々と複雑なところだけれど、仲間になれて嬉しいことには変わりないわ」


 昨日の夜以来顔を会せなかった巴会長が、椅子から立ち上がりそう話す。この退廃的な教室に、日本人形風の美人である巴会長が妙に映える。



「いやぁーなんだか色々大変だったみたいだけど無事でよかったよ。可愛い後輩クンも含めね」

「あれ、そういえば副会長。あなたあの時現場に行っていたのでは......?」

「観月クン観月クン!!静かにしようか!」


 先日巴会長と共に教室へやってきた副会長の周防先輩と、黒ゴーグルをかけた見知らぬ先輩がやり取りをする。


「僕も一応自己紹介をしていたほうがいいのかな?知ってるとは思うけれど、副会長の周防連(すお れん)。マスクをしてるけれど、別に風邪を引いてるわけでもないし気にしないでね」


「では、私も。二年 観月時郎みづきときろうだ。この生徒会では会計を務めている。よろしく」


 黒ゴーグル先輩は、自身を観月と名乗った。黒ゴーグルもそうだが、右手にいくつも巻いている腕時計が滅茶苦茶気になる。しかも服の上からかよ。



「んで、俺はお前らと同じく一年の白間慶仁しろまけいじんだ。まぁ知ってることだろうが一応な」

「おまえ慶仁っていうのか」

「やっぱり八夜って薄情だよな」

 また少し落ち込む白間。


「後は二年に辰巳たつみ君と紫吹しぶきさん、一年に大御門おおみかど君がいるのだけれど、今は別の仕事が与えられていて集まれなかったの。また追々顔を会せることがあると思うからその時にでも」


「今この教室にいる俺を除く六名と別件で動いている三人。合わせて九名がこの尸高校生徒会だ。んで俺がその生徒会顧問。ここまでで質問は?」

 椅子に浅く腰かけて煙草を燻らせそう言う伊織先生。


「あの、役職っていうかそういうのはあるんですか?」

「まぁこの学校は特殊だからな。この生徒会も然りだ。役職を宛がっちゃいるがあんまり意味はない。上から求められるのは丕業による死蟲の討伐。それだけだ」

「っす」



「他には?ないなら本題に入るがいいか」

「ええ。先生、説明お願いします」



「お前らはもう全員知っているだろうが、昨日の事件。何者かがこの校内に侵入し当日警備をしていた茂瀬を殺害した。その後この学校に何らかの方法で死蟲をおびき寄せた。幸い、ここにいる巴と白間、んで八夜。こいつらがその処理に当たり何とか撃退に成功。だがその時には既に茂瀬を殺害した犯人はおらず、未だその尻尾すらつかめちゃいない。この事を重く見た上から、丕業持ちの生徒の強化をしろとのお達しが来た」


 丕業持ちの強化......それは暗に生徒会の強化。勿論生徒会以外にも丕業持ちはいるであろうが表立ってその力を使えるのは生徒会だけなのだ。


「で、ここの校長が姉妹校である京都の学校長と話し合い、結果うちと交流会を行うことになった」


「交流会......ですか」


「あぁ。なにするかまだ一つも決まっちゃいない。何なら校長は未だ京都だ」


「え!?今京都行ってんすか!」


「今朝出かけて行ったぞ。朝の職員会議で死蟲が潜んでてな。そいつ曰く姉妹校にも侵入者がいるっぽいってんで、挨拶がてら向かった」


「なぁ千草。今サラッと死蟲がまた侵入したとか言わなかったかこの人」

「言うな」


 すると、巴会長が話をまとめ、俺らに分かりやすく要点を伝えてくれる。


「つまり、これから行われる京都校との交流。その前に八夜君達に一通り生徒会の仕事を覚えてもらう。ということでいいですか先生」


「おうそんなところだ。残念ながら俺は茂瀬殺しの奴を見つけなくちゃならんから、ずっとはついてられん。そこでお前らがこの二人の面倒を見てやってくれ」

 残念ながら、と口から出た割には面倒ごとが少なくなってどこか嬉しそうだ。


「あの、いいですか」

 けれど、その前に俺は聞かなければならないことがある。


「なんだ」


「俺が入ったら、その、生徒会の人たちに迷惑が掛かりませんか。俺この目と髪で......浮いてるというか腫物みたいな感じなんで。今までもそうでした小学校も中学校も。生徒会の人たちは俺をそういう目で見てないってのは分かります。けれど外部が見たらそうじゃないかもしれない。特に姉妹校とか、他の先生とか」



「いつもそうなんです。過去にも気にして声をかけてくれる人はいたんです。けど、俺といるとその人まで怪訝な目で見られてしまう。それで傷つけてしまった人もいたんです。一度その目で見られたら、もう二度と前には戻らない。取り返しはつかないんです。だから」


「なぁ八夜」


「......はい」


「綺麗なだけの言葉は好きか?」


「嫌いです」


「そうか、奇遇だな。俺もだ」


 それだけ言うと、伊織先生は微笑みながら俺の頭をぐしゃぐしゃに掻き撫でながらすれ違い、教室を出て行った。



「......ふふ」

「巴会長?」


「ごめんなさい、あの人あんな感じなのよ。だからあんな粗暴で煙草臭いけれど皆に慕われてるの」

 巴会長はそういうとぐしゃぐしゃになった俺の髪を直し、教室を出て行った。


「えっ!?えっ!?皆そんな感じにもう仲良くなってるの!?僕も後輩クンと仲良くなりたいのに!」

 それだけ言うと周防先輩は泣きながら教室を出て行った。




「ちなみに、伊織先生は自分の行為に羞恥心が爆発して、その辺で死んでいる筈だ。きっと会長はそれを宥めに行ったんだろう。副会長はまぁ.....揶揄からかいに行ったと思う。八夜一年、私と君は初対面と言ってもいいだろう。君の苦心もつらい経験も何も知らない。けれどそれはお互いさまだろう。私はこんな身なりだ、それなりに苦労はしてきた。


そんな私と君は一緒に居たくはないか?」



「いえ......」


「なら、一先ずはそれでいいんじゃないか。他人の過去は他人だ。ここには、君を色眼鏡で見るものはいない、保証しよう。とはいっても初対面の私ではあるが」


「はい......ありがとうございます」


「ちなみに会長はこれまでで一度も異性と交際したことはないはずだ。保証しよう」

 言いたい事を言うと、観月先輩もまたこの場から立ち去る。



「......最後のあれ、いるか」

「面白い先輩たちだな八夜」


 取り残された一年生の二人、白間と阿南が巴先輩によって整えられた俺の髪をぐしゃぐしゃにしながらそう呟いた。

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