隣
気がついたら日が暮れていた。時計は午後六時を指している。隣の席を見ると黒崎がいた。
「いつまで寝てるの。そろそろ宮本さんの家に行くよ。」
「寝ていたのではなくて目を瞑って考え事をしていただけだ。それよりも門限はどうなった。」
「大丈夫。今日は二宮の家に泊まると言ったから。」
それでよかったのかと思った。彼女は幼馴染だから彼女の両親とは面識がある。もしも私の家に泊まるという事が嘘であるということが判明すれば・・
いいや。これでよかった。彼女の両親と宮本さんには面識がないはずだ。どこの馬の骨だか分からない大人の家に泊まると言えば、心配するに違いない。それならすることは一つだけ。
「ところでなぜ隣の席に座っている。」
彼女は顔を赤くする。
「私は隣のクラスに在籍しているから絶対二宮の隣の席には座ることはない。」
「それは答えになっていないような。」
彼女は甘えるように私の右手を掴む。
「いいじゃない。放課後くらい隣の席に座らせてよ。それでね。漢文で分からないことがあるから教えて。」
私は顔を赤くする。このアプローチはうれしかった。私は時計を再び見た。
「速くしなければ約束の時間に遅刻する。」
「そうだよね。」
事実を言ってしまった。本音はもう少しこのラブコメを楽しみたかった。少しだけ反省しよう。




