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マリエル vs アイ

 ウィリアム王子に抱きかかえられているとアイがその仲を引き裂くように飛び込んで来てウィリアムを跳ねのける。


 あまりの勢いに王子はしりもちをついていたぐらいだ。


 こんなことを王子であるウィリアムにしたらまずいことになる。


 アイのしでかしたことをわたしはひたすら平謝りしまくった。


 アイの頭を無理やり下げさせて、わたしも深く頭を下げる。


「ごめんなさい、ごめんなさい! 勢い付けすぎて走って来たみたいで、ぶつかっちゃったみたいです」


 でもアイはわたしがアイの頭を無理やり下げたのが気に入らないのか、抵抗し無理やり頭を上げた。


 そしてウィリアム王子を睨みつけてこう言い放った。


「アイビス様になにをしたんですか?」


 いきなりアイに突き倒されたウィリアム王子は少しムッとしている。


 そのムカつきが刺々しい感情として言葉に出ていた。


「なにってアイビスを介抱していたんだよ」


 それを聞いてアイも同様に刺々しい口調を発する。


「そうじゃない、そういうことを聞いてない」


「じゃあなにを聞きたいんだ?」


「なんでアイビス様をケガさせたんですか?」


「試合だから……」


 言葉に詰まる王子。


 最愛の女性をケガさせたことはどうやっても弁解できない。


 王子は重い口を開いた。


「本気を出したのでケガをさせてしまったんだ」


 ウィリアム王子はアイビスをケガさせたことを反省しているようだったが、アイは依然怒っている。


「自分でケガをさせておいて介抱して恩を売る。そう言うことをなんて言うか知ってますか?」


 アイにいきなり問われてポカンとした表情をしている。


 アイは王子に指をビシッと突き付けた。


 まるで推理ドラマで名探偵が真犯人に犯人を告げるようにだ。


「そいうのは自作自演、マッチポンプ!」


 あまりのアイの勢いにウィリアム王子はたじろいでいる。


「俺はそんなつもりは……」


「なんでアイビス様にケガをさせる必要がある? ウィリアム王子ならアイビス様にケガをさせずに勝つことが出来た。アイビス様をケガさせるようなこんなバカげた試合はアイが今日一日で終わらせる」


「終わらせるって、どうやって?」


 わたしが聞くと、アイはアイはキリっとした表情をした。


「試合で全勝すればアイが優勝者に決まってこの試合はお終い」


 全勝って、勝てるの?


 全勝を宣言したアイはマリエルの試合へと向かう。


 次はアイとマリエルの試合の番だ。


 *


「始め!」


 試合が始まると同時に悲鳴があがった。


 アイは剣を振り被ったマリエルの懐に飛び込み、剣を弾き飛ばした。


 間髪を置かずに短剣を喉に突き付ける。


 勝負は一瞬でつく。


 マリエルは喉元に突き付けられたナイフのせいでつばも飲み込めない。


 夏休みが始まる前の時点でマリエルはブラッドフォードと互角に戦い、この広場を鳥のような速度で縦横無尽に走り回っていたのに。


 マリエルは強いはずなのに、アイには全く敵わないの?


 アイはどれほど強いのよ……。


 一呼吸して、アイの動きの速さに呆然としていたラインハルトが勝敗 恐怖ですくみあがり金縛りにあったように動けなくなっていたマリエルはその言葉と共に身動きが取れるようになった。


「試合が始まったと思ったらなにも出来ずに終わっちゃった……」


 アイは勝って当然と言った感じで次の試合を催促している。


 でもラインハルトは試合を続ける気は無いようだ。


「初めての試合でヒートアップしてる参加者がいるから、今日はここまでにして続きは来週にするぞ」


 でもアイはその提案を受け入れない。


「今日でアイがこのバカげた試合を終わらせる。元々今日一日は試合をする予定だった」


「そういわれてもなぁ。みんな予想以上の激戦をして疲れ果ててるだろ? このまま試合を続けたらケガ人が出るぞ」


 ラインハルトの問いに対する皆の答えを待たずに、アイは次の対戦相手を指名した。


「次はブラッドフォードとチャールズ王子。疲れているだろうから二人一緒にかかって来ていい」


 それを聞いてブラッドフォードもチャールズ王子も納得していない様子だ。


「疲れているのは確かにそうだけどさぁ」


「疲れているとはいえ、女一人に男二人で挑むなんて卑怯なことはしたくない」


 アイとの試合を拒否する二人にアイは必殺の言葉を投げかけた。


「勝てばアイがブラッドフォードに手料理を作ることを約束する。マリエルにもチャールズに手料理を作ることを頼む」


「マジか?」


「やるやる!」


 二人はテンション爆上がりで試合の継続を即断した。


 手料理を賭けた試合なら二人はラインハルトの試合の中止要請なんて聞く耳を持ちやしない。


 試合が始まると、展開は早かった。


 アイは試合開始と同時にブラッドフォードに襲い掛かる。


「ぶっ倒してやる!」


 大上段から大剣を渾身の力と共に振り降ろすブラッドフォード。


 だがブラッドフォードの剣撃が目の前に着弾するのを見定めたアイは凄まじい速度で(かわ)しブラッドフォードの背後を取った。


 そしてブラッドフォードの足を払う。


「えっ?」


 体勢を崩すブラッドフォード。


 転倒して地面に這いつくばったブラッドフォードにアイは馬乗りになり、首元にナイフを突きつけた。


「一人退治」


 あまりのアイの素早さにへたり込むブラッドフォード。


 アイは倒したブラッドフォードの大剣を撥ね上げると、更に大剣を蹴り込みチャールズ王子を襲う。


 あまりにも乱暴な攻撃。


 チャールズ王子はその乱暴すぎる攻撃を自分の大剣でいなしアイとの距離を詰め急襲を掛けようとするが……、いるのは横たわったブラッドフォードだけでアイはどこにも見当たらない。


 そして背後から声が聞こえた。


「チェックメイト」


 既にアイが後ろに回り首元にナイフを突き付けていたのだった。


「二人目退治」


 またもやアイの動きの速さに呆然としていたラインハルト。


 心の声が漏れ出る。


「速えぇ」


 少しの間を置いて勝敗を告げた。


「勝者アイ」


 あっという間に3人を倒してしまったアイ。


 アイの優勝まで、残るはウィリアム王子とアイビス(わたし)の試合だけだ。

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