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レイクシアのダンジョン4

 突然現れたアウレリアにさらわれたアイビス。


 チャールズ王子は狼狽えつつ、これからどうするかをウィリアム王子に相談する。


「アイビスがさらわれたけど、どうするんだよ?」


「やることは決まっている!」


 まずは騎士への指示だ。


 ウィリアム王子は簡潔に騎士へ指示を出した。


「お前たち! 一旦地上へ戻り、屋敷に残っている騎士を引き連れて再度戻ってこい!」


「はい!」


「その際は物資の搬送も忘れずにな……。少なくとも10層分の攻略物資を用意して来い」


「はい!」


「それと一人は本国への連絡要員として残し、50人の部隊を引き連れて来い! 以上だ!」


「わかりました」


 今度はチャールズ王子たちに指示を出す。


「俺たちは引き続きダンジョンを攻略する」


「物資が無いんだけど、騎士の持ってくる物資を待たないのか?」


「騎士を待っていたら手遅れになる。この階層迄持って来た物資を持てるだけ持ったら出発だ」


「わかった。じゃあ、兄貴は司令塔兼控えでフランシスカは回復役、俺とアイは攻撃役で……あれ? アイがいないんだけど、どこに行った?」


「そういえば……。さっきアイが部屋の奥に駆けて行ったわね……」


 アイが向かった先を調べると階下へ向かう階段が見つかった。


 アイは単独でダンジョンの奥底へとアイビスの救出に向かったようだ。


「あいつ、アイビスのことが心配だからって一人で救出に向かったのかよ……。アイはアイビスのことだと無茶するぜ」


 少しあきれているチャールズ王子だった。


 *


 わたしは突然背後から何者かに襲われてさらわれ、突然地中に引き込まれた。


「放して! 今すぐ放してよ!」


 わたしは必死に抵抗するけど、誘拐犯は落ち着いている。


「暴れるな。こんなとこで放したら死ぬよ!」


「し、死ぬって?」


「今は私のフィールドの中で地中を進んでいるから安全だけど、暴れたり逃げたりしてフィールドから離れたら即地面の中に埋もれて生き埋めになるわ」


 生き埋めって……、それを聞いてわたしは大人しくした。


 今まで生きていていて地中に引き込まれるなんて経験は無かったけど、すごく気持ち悪いものね。


 立っていたはずの固い地面から瞬時に抵抗が消えうせて水の中に落ちるような感覚。


 あえて例えるなら延々と続く底なしの落とし穴に落ちた感覚に近いわね。


 しかも私たちの周りに張られている狭いフィールド以外は全部土の壁で、視界が全て土で埋もれて狭苦しくて息が詰まる。


 誘拐犯に小脇に抱えられ、液体の様に抵抗のなくなった地中を進むと数十秒でダンジョンの奥底の部屋に辿り着いた。


 すぐに誘拐犯はわたしを解放し、ゴーストだと思った誘拐犯は本体の身体へと納まった。


 驚いたことに誘拐犯はわたしに頭を下げる。


「いきなりさらった感じになって悪かったわね」


 かなりフレンドリーに接してくる誘拐犯。


 おまけに紅茶まで出してきて勧めてくる。


 どうやら、誘拐犯はわたしに危害を加える気はないらしい。


 危害を加える気が無いなら、わたしもくつろげるわ。


 喉が渇いていたので紅茶を飲むととても美味しく疲れがとれる。


 よく見れば誘拐犯はわたしと同い年ぐらいのかわいい女の子だったわ。


「あなたは?」


「わたしはこのダンジョンの管理人、ダンジョンマスターの『アウレリア』よ」


 そう言ってお辞儀をする少女。


 そういえばフランシスカと一緒にこのダンジョンで友だちとはぐれて死んだって聞いていたけど確か名前はそんな感じだった。


 生きていたのね。


 彼女がわたしを何の目的でさらわれたのかわからないので探りを入れてみた。


「ここはどこよ?」


「ここはダンジョンの奥底の私の部屋。まあ、ラスボス部屋と思って貰えばいいわ」


 部屋はダンジョンマスターのおどろおどろしい部屋って感じじゃなく、お洒落なカフェみたいな感じだった。


 こんなかわいい子がダンジョンの奥底に住んでいてラスボスをやっているのが信じられない。


「断りも無くこんなとこまで連れてきて悪かったわね」


 再び頭を下げて謝罪するアウレリア。


 わたしはアウレリアがわたしをどうしたいのか聞いてみた。


「わたしをどうするつもりなの?」


「なにもしないわよ」


 誘拐した時点で何もしてないってことは無いんだけどね……。


「私の話を聞いて欲しいの」


「どういうこと?」


「用事があるのはあなたじゃなくて治癒魔法使いの方なのよ」


「フランシスカか!」


「しってるの?」


「知ってるもなにも、わたしの家庭教師よ。今までなんにも教えて貰ったこと無いけどね」


「フランシスカらしいわね……」


 あきれた表情からどうやらフランシスカと知り合いというのは嘘ではない感じ。


「私の話をフランシスカに伝言して欲しいのよね」


 アウレリアは今度はお菓子を薦めてくる。


「本当はフランシスカに直に話をしたかったんだけど、あの部屋には超強力な結界が張ってあったせいで分離した霊体だけであっても弾かれて2~3秒しかあの部屋に居られなかったのよね」


 アウレリアは紅茶を少し飲むと話を続けた。


「簡単に要件を言うと、ダンジョンのリッチのボス部屋に超強力な結界が掛けられててこのダンジョンを出られないのよ……。そこで結界を解いて欲しいとフランシスカに伝えてほしいの」


 そういえばフランシスカがダンジョンの入り口を閉じたって言ってたような。


 アウレリアをダンジョンに閉じ込めた犯人はフランシスカじゃない。


 なぜにアウレリアがダンジョンに閉じ込められたのかは知らないけれど、アウレリアがこのダンジョンに閉じ込められた原因はフランシスカなのは間違いないわね。


 フランシスカって疫病神レベルのキャラじゃない。


 ゲームのリルティアに登場してたら絶対にわたし(アイビス)と不人気キャラランキングでトップを争ってたわね。

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