表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/88

クレア先生

 アイが魔法を使えるのはかなりイレギュラーだと思う。


 クレア先生が言っていた「剣技に秀でる人は大抵魔法が使えない」という話、思いっきり心当たりがあるのよ。


 これってゲームのリルティアのキャラメイクの仕様なのよね。


 リルティアのゲーム開始時に100ポイントのステータスを主人公キャラのマリエルに割り振ってキャラメイクするの。


 全部のステータスに平均的にポイントを割り振ってしまうと剣がいまいちで魔法もいまいちなボンクラキャラになってしまって面白味のないビーリーくんルートに行くしかないので、目指す攻略キャラルートによって剣技、魔力、知力のどれかのパラメーターを突出した感じで振るのが普通のキャラメイクなのよね。


 ウィリアム王子ルートに行くなら学力が高くなるように知力を高めにして、チャールズ王子ルートに進むのならば剣の扱いが上手くなる様に剣技を高めにステータスを振るのがコツだわ。


 まあ、100ポイントでは振れるステータスポイントはたかが知れているから、その後の努力での(レベル)(アップ)も重要だわね。


 そんな感じでステータスを極端に振るとクレア先生の言っていた「剣技に秀でる人は大抵魔法が使えない」って感じになるのよ。


 ただ、これはあくまでも主人公のマリエルのキャラメイクの話なので、アイビス(わたし)やアイみたいな非攻略キャラのNPCの場合は事情が違うのかもしれない。


 鍛錬の準備が出来たらしくクレア先生が声を掛けてくる。


「アイビス様、アイ様、今日も攻撃魔法の訓練をしましょう」


「今日もまた攻撃魔法の訓練?」


 毎日攻撃魔法の訓練ばかりで飽きて来たわたしはつい愚痴ってしまう。


 たまには訓練をお休みにしてスイーツを食べるだけの日にしたい。


 ダイエットで言うチートデー、ゲームのリルティアで言う休日。


 少し休みを挟んでスタミナゲージを回復させてストレスを発散させる。


 身体と心が油断したところでまた猛特訓を再開した方が成長を期待できるのよ。


 でもクレア先生はわたしに休みを与える気はないみたい。


「受験では順位の付けやすい魔力量の測定と攻撃魔法しか試験項目にありませんから、攻撃魔法の練習が嫌ならば魔力量の鍛錬になりますね」


 魔力量の鍛錬て魔力を無駄に消費する壊れた杖を使って倒れるまで魔力を消費させてあとは寝てるだけの訓練でしょ……。


 確かに魔力量は上がるけど魔法の威力は上がらないので、あれをやるぐらいなら普通に魔法の訓練をして魔力を使い切るわ。


「それではいつも通り、攻撃魔法の訓練を始めましょう。練習を始める前に今の実力を見せて下さい」


 クレア先生と魔法の訓練を始めて早半年、最初はピンポン玉サイズの火球を飛ばすのにも苦労したけど今では運動会の大玉転がしの大玉サイズの火球を飛ばす事ができるようになったわ。


「では、アイ様から」


「はい」


 アイが魔法の標的の前に立ち手のひらを掲げる。


 標的まで100メートルぐらいの距離があるので、この距離で標的に魔法を当てるのは方向微調整の魔力操作を覚える前だと火球の方向が定まらなくて難しかったけど今なら楽勝だ。


(ファイア)(ボール)!」


 アイが炎球の魔法を詠唱すると、手のひらに巨大な火球が現れたのち魔力を溜めて発動、猛烈な速度で火球が突進し、標的に着弾すると同時に爆散、辺り一面を吹き飛ばした。


 それを見てクレア先生が評する。


「威力は素晴らしく入学試験突破には十分なレベルですが、実戦で使える発動速度のレベルには達してませんね。発動までに時間が掛かっているのが気になります。発動時に魔力を貯めるのをもう少し押さえてでも、発動までの時間を短くした方がいいですし、試験官の度肝を抜けるでしょう」


「わかった」


 今日のアイは魔法発動までの速度改善が課題となった。


「では次はアイビス様、お願いします」


「はい」


 わたしは標的の前に立つと手を掲げる。


炸裂(バースト)!」


 するとわたしの手のひらに魔力が集まったと同時に標的が爆ぜた。


 炸裂は火球と違って標的上での直接発動なので、百発百中な上に標的まで飛ぶ動作が無いのでわたしは好きだ。


 わたしの炸裂を見たクレア先生は魔法の威力に少し驚いていた。


「わお!」


「どうです? わたしの炸裂は!」


「この前炸裂を教えたばかりなのに、もうここまで習得してるとは……。アイビスお嬢様の魔法の素質は凄まじいです」


 ここまで褒められるとなんか背中がむず痒い。


 乙女ゲームのリルティアで各魔法の最終形態を見ているので魔法のイメージをしやすいのが魔法の習得が早い要因だろう。


 クレア先生に言わせると魔法師団の師団長クラスの威力で、水晶学園の主席クラスの学生と比べても素晴らしく魔法の習得がやたら早いと言うことだった。


 でも、練習するのが標的相手の攻撃魔法ばかりで少し飽きてきたのよね。


 モンスター相手に魔法を唱えてみたいとクレア先生に頼んだらとんでもないと断られた。


「ルードリッヒ様から屋敷を出て特訓をするのは危ないから禁止だと厳しく言われています」


 ちなみにルードリッヒっていうのはお父様のことね。


 お母様を失くしてからはお父様に箱入り娘の様に扱われて、お父様は(ムス)コンプレックス(コン)になっちゃって……。


 こんなことで学園に送り出せるのかしら……。


「確かにこの半年間は受験対策で攻撃魔法ばかりでしたね。アイ様も攻撃魔法を満足出来るレベルで習得したことですし、明日からは息抜きで治癒魔法を覚えましょう」


「やったー!」


 言ってみるものね。


「大聖堂から助っ人を呼んでおきますね」


 そして、翌日助っ人として現れたのは……。


 う、うそ!


 なんでここに?


 それは私の知っている人物、治癒魔法の助っ人として現れたのはリルティアの攻略キャラのクリスくんでした。

読んでくれてありがとうございます。

面白いと思いましたらぜひとも高評価をお願いします。

作者のやる気に繋がります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ