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311・はじめての ないせん2

|д゜)冷蔵庫に続いて洗濯機も買い替え。

臨時出費が痛い。


「状況は?」


「近接している内陸国のほとんどは

 陥落(かんらく)しました。


 海沿いの国々―――

 ザハン国を始め、数ヶ国が頑強(がんきょう)に抵抗を

 示しておりますが、


 まあ時間の問題でしょう」


メナスミフ自由商圏同盟・モトリプカ……


その首都・エムビーアにおいて―――

アラフィフの、やや青みがかった短髪に白髪が

混じる初老の男と、


20代半ばの、赤い短髪の青年がどこかの

建物の廊下を歩きながら、語り合っていた。


「どういうつもりだ!?」


そこへ、貴族風の衣装ながらも屈強な

体格をした、アラフォーの男が駆けつける。


「……?

 どういう、とは?」


「ふざけるな!!


 モトリプカ一国だけで自由商圏同盟諸国に、

 戦争を吹っかけるとは―――

 何を考えている、ドルミン!!」


名指しされたアラフィフの男は首を傾げ、


「何を、だと?


 前から辺境大陸との関係について、

 意見が割れていたのは知っていたのでは?


 いずれ衝突するのであれば、最も勝ち目のある

 時期を選んだまで」


「ワシは何も聞いておらんぞ!!」


感情的な男とは対照的に、彼は涼し気な

表情で部下であろう青年に目をやると、


「プラクス。

 俺は、主要な人員にはこの事を告げるよう

 言っておいたはずだな?」


「はい。

 『主要な人員』には、と……


 そのように動きました」


従者である彼がうやうやしく頭を下げる。


「なっ、な……っ」


その答えにガタイのいい男は、外見とは裏腹に

戸惑う仕草を見せ、


「あなたが何も知らされていない、という事は、

 『何も聞こえぬ席』に座っていただけ。


 今後は我々でこの国―――

 いえ、メナスミフ自由商圏同盟を主導して

 いくので、ご安心を」


それを聞いた男は口をパクパクさせていたが、


「貴様!!


 わかっているのか!?

 穏健派や慎重派が非難の声を上げて

 いるのだぞ!!」


「構わんよ。

 どうせ連中はわめく事しか出来ん。


 文句があるのであれば……

 我々にはよい決着方法があるだろう?


 何なら今、受けてやってもいいぞ?」


モトリプカでは、どちらも引く事が出来なく

なったくらいの争いにおいて―――

『奴隷同士の戦い』で決着をつける伝統があり、


そのドルミンの提案に、男は思わず体を

硬直させる。


すると今度は、彼の背後からプラクスが、


「それにその情報は少々お古いですね。


 慎重派だの融和(ゆうわ)派だの言う連中は……

 我先にと国外逃亡を始めていますよ。


 ザハン国や沿岸国の国々から、

 クアートル大陸へ脱出を図るつもりじゃ

 ないですかね?」


彼の言葉に男は顔色を失う。


「ほう、そんな事になっていたのか。

 思ったより足が早いな。


 まあそんな連中でも―――

 いつまでも立場を明確に出来ない無能よりは

 マシだ」


青年の主たる男は、体格のいい年下の彼に

振り向いて、


「もし逃げるつもりならこちらは追わんよ。

 決断は早めにな」


そう言い残すと2人は、長い廊下の奥に消え、

後には駆けてきた男だけが残された。




「な・ん・で・す……っ、

 てえぇえええーーーっ!!」


その頃、リーゼントのような髪型をした

ザハン国の官僚は、


補給のため立ち寄ったランドルフ帝国にて、

メナスミフ自由商圏同盟が内戦に突入したという

話を聞かされ、混乱していた。


「落ち着いてください、タクドル殿」


パープルの長髪を眉毛の上で揃えた、

痩身(そうしん)の女性は、彼にお茶を

勧めながら席に着く。


「し、しかし―――

 この情報は事実なんですの!?


 こことフラーゴル大陸までは、船で

 どうやっても5日は……

 となるとわたくしが出航してからすぐ

 内戦状態になったって事!?


 あ、でもティエラ様ならおかしくは」


暴風姫ウインドストーム・プリンセス』と呼ばれる

ティエラは、その魔法で帆船を猛スピードで

運べる事から、


それで通常では考えられない速度で情報を

得たと、彼は推測したのだが、


「こちらの調べでは、自由商圏同盟は

 3日前にモトリプカが周辺諸国に対し

 突如攻め込み、


 今ではあなたの祖国ザハン国を始め、

 沿岸国だけが何とか攻勢を食い止めて

 いるとの事。


 まだフラーゴル大陸全土が、モトリプカの

 支配下になったわけではありません」


「でもそれって要するに3日前の情報という

 事ですわよねぇ!?


 最悪、もう祖国が落ちている可能性もっ!?」


まさかほぼリアルタイムで情報を入手して

いるとは思わず、彼はクルクルと回り出すが、


「とにかく」


「席に着いてください」


近くで見ていたアラフィフの赤髪の男と、

アラフォーのブラウンのボサボサ髪の男性、

カバーンとセオレムがタクドルの両肩を

つかんで、着席させる。


そこでやっと彼は、出されたお茶に

口を付け―――


「はー……


 しかしちょっと急過ぎますわねぇ。

 モトリプカ一国だけでバクチ過ぎるで

 しょうに」


「そこのところをお伺いしたく。


 そもそも、その一国だけで―――

 メナスミフ自由商圏同盟が敗北するもので

 しょうか?」


ティエラ王女は本題に切り込むと、


「ですから言いました通り、そんなの

 バクチ過ぎますわよぉ。


 影響下にある周辺諸国も動かしては

 いるでしょうけど……

 それでも、ねぇ」


「新魔導塔計画、というのを聞いた事は?」


それを聞いたタクドルは目を見開き、


「!!

 どうしてそれをご存知で?


 わたくしですら、ザハン国を出航する直前まで

 知らされてなかったのに」


まさか『ゲート』で、ほぼリアルタイムで

情報収集されているとは思わない彼は、

その諜報能力に愕然(がくぜん)とする。


「とにかく―――

 タクドル殿は保護するようにと。

 これはランドルフ帝国の方針でもあります。


 強制は出来ませんが、すでにザハン国は

 戦火に巻き込まれておりますゆえ」


正確には……

ウィンベル王国より『見えない部隊』に

彼を保護するよう指示が出ており、


またクアートル大陸の同盟諸国にも、

もし補給で立ち寄った場合は同様に保護して

欲しいと、打診があったからなのだが。


「はぁああぁ~。

 しかしまさかこんなに急に事が動くなんて。


 何とかして本国に戻りたいのですが―――

 状況が落ち着かないとダメですよねぇ……」


「気が焦るのはわかりますが、

 今は耐えてくださいませ。


 後で外務大臣や、関係各所の人間と

 会って頂く事になるでしょうが、

 それまではどうかここで待機を」


こうしてタクドルは、ランドルフ帝国帝都

グランドールで足止めをされる事となった。




「それじゃ行きますか」


私は公都『ヤマト』の『ゲート』前に立ち、

つぶやくように話す。


「フェンリルのルクルセントと―――

 魔族も向かう、との事だ。


 またあちらの浮遊島ではワイバーンたちが

 交代で偵察任務と、いざという時は奇襲攻撃に

 入る。

 レイドの相棒、ハヤテも浮遊島に先行して

 行っている。


 まずは『見えない部隊』と合流し……

 情報収集、そして防衛に徹してくれとの事だ」


アラフィフの、筋肉質のギルド長が私のそばで

確認のように語り、


「まー、私たちも行くし」


「新魔導塔の位置とやらが判明すれば、

 我らも攻撃に加わるのだな?」


どちらも黒髪の―――

童顔と欧米モデルふうの顔立ちの妻2人が

私の両隣りに立ち、


「ぶーぶー。

 何でボクは留守番なのー?」


黒髪ショートに燃えるような瞳の娘が、

不満を隠そうともせず文句を言う。


「文句を言うな。

 俺だって行きたいけどガマンして

 いるんだからよ」


ジャンさんがラッチにそう話しかけると、


「子供と張り合わないでくださいッス、

 ギルド長」


「そもそもギルド長が出撃するのって、

 よほど切羽詰(せっぱつ)まった時しか考えられませんよ」


褐色肌に長身の次期ギルド長の青年と、

その妻である丸眼鏡にタヌキ顔の女性が、

息子・娘が父をたしなめるように語る。


「いいよねー2人は行けて」


娘がレイド君とミリアさんにそう返す。

そう、今回はこの2人も参加する。


範囲索敵(サーチ)』・『隠密(ステルス)』という

特殊なスキルを持つレイド君は、相棒の

ワイバーン『ノワキ』さんと組めば、完璧な

偵察を行う事が出来、


またミリアさんは妻として支援するための、

作戦参加となった。


「まぁ、遊びじゃねぇんだ。


 それに2人に行ってもらうのは……

 正式な軍属じゃないって事もある。


 国家として絡む証拠は極力(きょくりょく)残せねぇ。

 今回の戦争の帰結(きけつ)がどうあれ、次の開戦の

 口実になっちまうかも知れないからな」


そしてギルド長の言う通り―――

ウィンベル王国が、直々に介入している事は

気付かれてはならないのだ。


「??

 何でこっちってバレちゃいけないのー?」


ラッチが聞き返してくるので、


「水上戦力において、辺境大陸はまだまだ

 他大陸の国々に後れを取っているし、


 あとクアートル大陸の四大国も、本格的に

 参戦するとは限らないんだよ」


「あれ?

 でもおとーさん、支援戦力が到着するまで

 ザハン国を守るためって話じゃ?」


娘が首を傾げるので、続けてジャンさんが、


「そもそも介入する理由がねぇんだ。

 あちらさんの内戦だしな。


 現地にいる自国民を救出するためとか、

 契約した商品や商船の保護のためとか、

 商売上関わっていたところを、これまでの

 義理で助けるためとか……

 多分そんな理由で向かうとは思う」


さすがに組織のトップだからか、うかつに

参戦する事の危険性をギルド長は説明してくれ、


「というわけだからラッチちゃん、

 ミレーヌのお世話もよろくお願いするッス!」


「うん。ラッチちゃんっていうお姉さんがいて

 くれたら、安心してアタシたちも行けるから」


次期ギルド長夫婦からもそう言われて、


「ま、まーね?

 お姉さんとしてはちゃんと弟妹(ていまい)の面倒を

 見ないとねっ」


そう言って胸を張るラッチやジャンさんに

見送られ、私たちはザハン国へと向かう事に

なった。




「そんなに状況は酷いのですか?」


『ゲート』でザハン国商業都市・スタットに

到着した私たちは、すぐに『見えない部隊』と

合流したのだが、


そのまま有力者の屋敷に来て欲しいと、

赤毛の、恰幅(かっぷく)のいい女性―――

ブロウさんから言われ、そちらへ向かっていた。


「まったく。

 またすぐここに来るとは思わなかったのう、

 ティーダ」


「僕も同じ気持ちです、ルクレセント様。

 まさかこんな事になるなんて……」


銀髪のロングヘアーに、切れ長の目をした

女性が、


黒髪で、犬のような耳と巻き毛のシッポに

肌が褐色な少年を伴いながら語り、


「グラキノスで懲りたかと思いましたのに」


「モトリプカっていうのは内陸国で……

 彼と直接戦ったわけでもありませんから、

 仕方ないのかも知れません」


やや外ハネしたミディアムボブの、パープルの

髪をした女性と、


ロングの白髪(はくはつ)と、対照的な褐色よりも

黒い肌を持つ女性―――

魔族のイスティールさんとオルディラさんが

早歩きでやり取りして、


「まあ俺たちゃ、シン殿の指示に従えと

 魔王・マギア様より仰せつかっているからな」


「どのような命令にも従いますゆえ。

 よろしくお願いしますよ、シン殿」


短い茶髪で、細マッチョという感じの青年と、

さらに彼より細身の青色の短髪の男性が、

この世界では珍しい横に細い眼鏡をクイと

直しながら話す。


この2人はノイクリフさんとグラキノスさんだ。


「魔族のこの4人を寄越すって……

 マギア様は大丈夫ッスか?」


「確か今、マギア様は人間の子供と同じくらいの

 力しか無いんですよね?」


レイド君とミリアさんが彼らにたずねると、


「フィリシュタが留守を預かってくれています」


「何だかんだ言って実力はありますからね」


2人の魔族女性がそれに答え、


「そういえば他の『見えない部隊』の方々は?」


「どこへ行ったのだ?」


メルとアルテリーゼが迎えに来ていた

ブロウさんに問うと、


「各地に情報収集に行ったり―――

 浮遊島で待機したりしている。


 それよりまずは、ロックウェル家まで

 行くよ!!」


街中も人々が慌ただしく行き交う中―――

全員が自然と駆け足になった。




「残念だが……

 どうも沿岸にある一国が落ちたようだ。


 これまでのようじゃな」


ザハン国の都市部の中でも、富裕層地区と

思われる区域のお屋敷で、


真っ白い眉毛とヒゲを持つ、人の良さそうな

老人が……


の背後に屈強なボディーガードと思しき

男性2人を立たせたまま、


お互いに自己紹介もろくにしない内に、

静かにそう語る。


「もうかい!?

 あんた、そんな情報をどこで―――」


元マフィアの女ボスが驚きながらも

聞き返すと、


「こちらに逃げ込んで来た者がいるからのう。


 それにその者の話では……

 我先にとクアートル大陸へ向けて逃げ出し

 始めておるようでな」


まるで他人事のように語る老人に私は、


「こんな状況ですのに、よく落ち着いて

 いますね?」


「まあ、そこは年の(こう)と言おうか。


 このベルマイヤ、今回ばかりは完全に売り時と

 買い時を読み間違えたようで。

 まさかモトリプカが、こんな大博打(おおばくち)

 打って出るとは」


世間話をするようなその老人の態度に、

こちらのメンバーは顔を見合わせ、


「もう諦めている、という事ッスか?」


レイド君がそうたずねると、ベルマイヤさんは

微笑むような表情で返す。


「沿岸国の一つが落ちた、という事は―――

 そこから戦力を出航させられるという事。


 下手をすれば、陸と海からの挟み撃ちに

 なりますなあ」


「それがわかっていながら……

 どうして?」


ミリアさんが身を乗り出す。

『どうして逃げないのか』と続けたかったの

だろうが、それに対して老人は、


「あなたたちが来たから、ですな。


 いや正直、もう身内全員引き連れて……

 クアートル大陸まで逃げる準備は出来て

 おりましたよ。


 逆にお聞きしますが、どうしてこのような

 状況下で来られたのですかな?」


そこでブロウさんが息を吐いて、


「相変わらず食えないねえ、あんた」


「そこはまあ、お互い様という事で。


 巻き返す算段があるからこそ―――

 あなたたちはやって来た。


 違いますかな?」


ベルマイヤさんの問いに私はうなずき、


「非公式ながら、ザハン国だけは守るようにと

 言われておりますので、私たちは来ました。


 ですがどう転ぶかわかりませんよ?

 せめて女子供だけでもクアートル大陸へ

 逃がしておいては……」


そう提案すると、彼は(フトコロ)から折り紙を取り出す。

あの手裏剣だ。


「このベルマイヤ、これまで商機を逃した事は

 ありませんでなあ。


 このような細工を作る国や組織が―――

 技術レベルが低いはずもない。


 ましてやそんな少人数で来たからには、

 勝機あっての事とお見受けします。


 ワシはあなた方に全て賭けますぞ!!」


あくまでも商人の経験、それに裏打ちされた

勘に全て賭ける、と老人は言い切った。


「何と言いますか」


「そういうスキルでもお持ちなのですか?」


イスティールさんとオルディラさんが

呆れつつ問い質すと、


「ここまできたら、あなたたちには話しても

 よかろうかのう」


ベルマイヤさんが片手を挙げると、

それを合図に後ろのボディガードであろう

2人の男が退室する。


つまり、よほどの機密だという事か。


そして彼は改めてこちらに向き直ると、


「ワシの魔法スキルは、『商機の天秤リーブラ・メルカンディ』。


 乗って良い話とそうではないものは……

 この魔法で見通してきたのでな。


 それでわかる。


 あなたたちは『負けない』と―――」


「なんとまあ」


「変わった魔法もあるものだな。

 魔族である自分たちが言えた事ではないが」


ノイクリフさんとグラキノスさんが、

感心したように声を出す。


「ほう、魔族……


 という事はこの中に、あの船団を

 海面を凍らせて止めた人が」


かつて、ザハン国から出航しようとした

大船団を止めた事があったが、

(■292話

はじめての ひょうけつせんじゅつ参照)


その当事者である魔族はゆっくりと、

ベルマイヤさんに一礼して、


「魔王軍幹部の1人―――

 『永氷(フローズナー)』のグラキノスです。


 どうぞよろしく」


そう彼が自己紹介したのを皮切りに、


「同じく魔王軍幹部の1人、

 『対鏡(オーバーカウンター)』のノイクリフだ」


「『腐敗(クラプション)』のオルディラ」


「『(フォグ)』のイスティールです。

 お見知り置きを」


魔族がそれぞれ名を明かすと、ベルマイヤさんは

立ち上がり、


「本で読んだ記憶があるぞ!


 かつて人間と魔族の戦争が別大陸で

 あったと……


 おとぎ話だと思っていたが、

 実在したのか!!」


興奮気味に話す彼に今度は、


「フェンリルのルクレセントや!!」


「ドラゴンのアルテリーゼじゃ!!」


と、次の人外たちがその大きな胸を張り、


「じゅ、獣人族のティーダと申します」


その後、おずおずと少年が名乗り、


「えっと、レイド―――」

 人間ッス」


「妻のミリアです。

 人間です、一応」


次期ギルド長夫婦も片手を挙げながら

自分の名前を語る。

ていうか何でチラチラこっちを見るのかな?


「人間のメルでっす♪」


「に、人間のシンと言います」


と、私が最も地味な自己紹介をした後……


「そうですか。


 しかし―――

 今回、どのように動くのですかな?


 作戦の指揮を執るのは、ええと……

 ルクレセント様ですか?

 それともドラゴンの―――

 いや、魔族の方々ですか?


 こちらも全面的にご協力しますが、

 誰にまず話を通せばいいのか、

 確認しておきたいので」


老人の問いにまずイスティールさんが、


「私どもは魔王様より、シン殿の指示に

 従えと言われておりますれば」


次いでルクレさんが、


「あーそうなの?

 ならウチもシンに従っておくわー」


そしてドラゴンのアルテリーゼも、


「我は自分の夫に従うまでぞ?」


と、リーダーとしての立場にいつの間にか

祭り上げられ、


「に、人間の方、ですよね?


 それにフェンリルやドラゴン、

 魔族が従うと仰るのか?」


当然の疑問をベルマイヤさんは口にする。


「まあ、信じられないだろうけどさ。


 この御仁(ごじん)正真正銘(しょうしんしょうめい)、『最強』の戦力さね」


ブロウさんの説明に、彼は目を丸くしていた。




「では、まず最優先任務から。


 新魔導塔の詳細な位置が確認出来次第、

 そちらを叩きます」


「それは間もなく『見えない部隊』の連中が

 情報を持ってくると思う。


 まさか1基だけじゃなかったなんてね。

 完全にこちらの調査不足さ」


改めて今回の計画や作戦目的を、味方である

ベルマイヤさんの前で共有する。


「それまで時間稼ぎが必要となります。


 ベルマイヤさん、すでに陥落したと言っていた

 沿岸国の港は?」


私の質問に彼は地図を広げ、


「このザハン国の隣りだな。


 海岸沿いに行けばいくつか点在している

 はずだ」


そこで私はグラキノスさんの方を向いて、


「では、この港を氷で封鎖してきてください。


 一応、逃げる人もいるかも知れませんから、

 少しはそのための間隔を。


 大軍さえ出動させる事を妨害出来れば、

 それで構いません」


「承知した」


次いでまた老人に私は向き直り、


「ザハン国にはどれくらい侵攻されて

 いますか?」


「今のところここじゃな。

 この辺りで食い止めておるようだが」


今度はイスティールさんの方を向いて、


「ここに出向いて霧を発生させる事は

 可能ですか?


 出来る限り広い範囲で……」


「この街全体くらいなら出来ますよ」


「ではそれで、交戦状態のところを(おお)って

 きてください。


 さすがにそれで混乱するでしょうから」


「了解です」


今度はノイクリフさんの方を向いて、


「ノイクリフさんは、イスティールさんと一緒に

 撤退を支援してあげてくれませんか?


 濃霧をうまく使ってザハン国の戦力を

 誘導し、その間彼らを防御してください」


「心得た」


そこまで話すとルクレさんが、


「ウチには何か無いー?」


「そうですね。

 戦場となっている場所―――


 そのあちこちに姿を見せてきてくれませんか?


 そしてベルマイヤさんは人を使って、

 敵味方に『フェンリル様が出現した』という

 噂を流してください」


「ふむ。


 確かフェンリル様の怒りに触れると、

 魔法が封じられるとか。


 なるほど。

 それならただお姿を見せるだけで、

 恐れを抱かせる事が出来よう」


こちらの意図をすぐに組んで、老人は

うなずく。


「アルテリーゼは、今現在ロックウェル家で

 こちらが待機している事を浮遊島に伝えて

 欲しい。


 他の人たちは今のところ待機で……」


「あ、それならわたくし、納豆作っていても

 いいですか?」


「なっとう?」


オルディラさんの提案に老人は首を傾げるが、


「ま、まあほどほどに」


私が苦笑しながらと彼女に答えると、

それがみんなに伝染し―――

そこで指示は一段落した。



( ・ω・)最後まで読んでくださり

ありがとうございます!

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…最後の最後で脱力しました。 昨年の夏くらいまで三~四年程連続でエアコンが壊れました。ええ、毎年。正月休みにエアコンが壊れてお店に在庫があった一番高いヤツを買うハメになった年も。 おまけで一昨年は給…
(*ゝω・*)つ★★★★★  オルディラ女史、ブレませんねぇww
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