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293・はじめての かんちがい

|д゜)現在、テラーノベル様にも同作品を

投稿しています。


「フェンリル……様、と?」


「た、確かタクドルが一千隻の船団で辺境大陸へ

 向かった際―――


 突然、巨大な狼が旗艦に飛び乗って来て、

 オルロフ艦長と交渉を行ったと」


ザハン国の大艦隊、その旗艦の一室で……

突然乱入し、フェンリルと名乗った女性と

その伴侶という少年に、軍人たちは戸惑いの

声を上げる。


「そうやな。

 あの時は、幼子(おさなご)の奴隷が鎖につながれ、

 たくさん船に乗せられておってなあ。

 アレだけでも十分不快(ふかい)だったんやけど。


 それが万が一、魔物に襲われた時用のエサだと

 聞いて、ずいぶんと不愉快になったものよ」


そして周囲を見渡しジロリと一人一人をにらむ。


そこでやや日焼けしたような褐色肌(かっしょくはだ)の、犬耳・

アーモンドアイをした黒髪の少年が、


「その不快なものと同様の匂いを、この船団から

 フェンリル様は()ぎ取ったとの事です。


 いったいこの大船団は……

 どのような目的で、どこへ向かおうというので

 しょうか?」


獣人の少年から問われ、全員が言いよどむ。


「くっ、だ、だいたいだな!

 誰がこの者たちをここまで通したのだ!?


 いかな身分とはいえ、不審者に変わりは

 ないではないか!」


最高責任者だる初老の男性が、『取り押さえろ』

と言わんばかりに2人を指差すが、


「あー、それについてはウチをここまで案内して

 くれた者を、責めないでやってや。


 何せもう、魔法も魔導具も使えなくなって

 いるはずやからな」


銀髪のロングヘアーに、切れ長の目をした

長身の女性は涼し気に答える。


「なんだと?」


艦隊総司令、ゼレクトは胡散臭(うさんくさ)そうに

聞き返すと―――


「あの、フェンリル様は無意識に、自分や自分に

 関連するものに悪意を向けられると……

 魔法を封じてしまうんです。


 今のあなた方が、魔法も魔導具も使えなく

 なっているとすれば―――

 それは明確に敵対行為をした結果かと」


そう言われて彼らは身体強化(ブースト)など、

いろいろな魔法を実行してみるものの、


「な……!?

 ま、魔法が使えない!?」


「魔力はある、あるのだが―――」


「まさか、艦隊が静かになったのは」


そこでようやく彼らは、自分の置かれた状況を

正確に把握する。


「で、今一度聞きたいんやけど。


 ティーダの質問……

 この大船団は、『どのような目的で、

 どこへ向かおうと』したのだ?」


ルクレセントの威圧感に、さしもの

ザハン国の幹部軍人たちは(ひる)むが、


「―――演習だ。


 もし本格的に攻め込むつもりであれば、

 我が国だけで10倍の船団は用意出来る」


艦隊総司令の口から、敗北宣言にも等しい

釈明が述べられ、


「ふむ。

 という事はウチの勘違いというワケか?


 それはすまなかったのう」


彼女はそう言うと、くるりと向きを変えて

部屋から出て行こうとするが、


「ま、待てっ!

 あのグラキノスと名乗った魔族は

 何なのだ!?


 そちらこそ、魔族と連携して攻めて来て

 いるのではないのか!?」


ゼレクトの問いにはティーダが振り向き、


「魔族の方がいらっしゃるのですか?

 確かに、辺境大陸各国は魔族領及び魔界と、

 同盟を結んではおりますが……


 それについてフェンリル様は預かり知らぬ

 事だと思います。

 ご希望であれば、こちらで交渉しても

 構いませんけれど」


「まあまあ、ティーダ。

 それよりここの連中の魔法を元に戻す事が

 先決や。


 何せウチの『勘違い』だったようやからな」


そしてルクレセントが部屋を出ると、誰からとも

言う事なく―――

室内の総司令や幹部たちがぞろぞろと彼女に

ついて行き、


やがて船の甲板に出ると、


「て、提督!!

 ま、魔法が使えません!」


「全ての魔導兵器が故障!!

 他の船からも同様の報告が」


「み、未知の攻撃を受けているとしか……!」


そこは魔法が使えなくなった世界で、

混乱が加速しており、


「静まれ!!


 どうもフェンリル様の誤解により、

 我々は魔法を封じられたようだ。


 その誤解は解けた。

 今から直して頂く」


ゼレクト総司令の言葉に、多少のざわつきは

あれど、喧噪(けんそう)は静まり、


「んじゃ、やるで。

 そのヘンちょっと離れてや」


そうルクレセントが言うと、その姿は

銀色の毛並みを持つ巨大な狼―――

フェンリルの姿へと変わる。


「ああっ!!」


「あ、あれだ!!

 さっき船に飛び乗って来た……!」


「これがフェンリル様―――」


周囲のざわつきをよそに、彼女は空を

見上げるように視線を上げ、


「オオォオオオオーーー!!」


遠吠えをすると、それを見た船上の

兵士たちは押し黙り、事の成り行きを

見守った。




「聞こえました!

 ルクレセント様の声です!!」


一方上空では、浮遊島で待機していた

『見えない部隊』メンバーの1人である

獣人の青年が、彼女の声をキャッチし、


「わかりました。

 無効化を解除します」


それを聞いた私は足元……

浮遊島の地面に、無効化した時と同じように

目をやって、


「この世界―――


 魔法や、魔法・魔力によって動く

        ・・・・・

 道具があるのは当たり前だ」


そう、浮遊島の真下にいるであろう、

艦隊に向かってつぶやいた。




「ふむ、これで良かろう」


そして下の艦隊・旗艦の甲板上では、

フェンリルが人の姿に戻っており、


「お疲れ様でした、ルクレセント様」


恋人である獣人の少年が、従者のように

彼女を(いたわ)る。


「ど……どうなったのだ?」


おずおずと艦隊総司令が問うと、


「使ってみれば良いではないか?

 もう魔法は使えるはずやで」


すると、ゼレクトの指先から小さな竜巻のような

風が巻き起こり、


「つ、使えるぞ!

 ワシの風魔法が!!」


「やった!

 身体強化が使える!!」


「こっちでも魔法が戻ったぞー!!」


という歓声があちこちで上がり、やがてそれは

艦隊全体に広がって行って、


「ゼレクト様、一度艦隊を港へ戻して

 頂けないでしょうか?


 どうも双方に勘違いがあったようですので、

 一度話し合った方がよろしいかと」


「そ、そうだな。

 それにまだ、被害らしい被害も出ておらぬ

 ようだし―――」


総司令の言葉に、周囲も同調するように

ウンウンとうなずき、


「あー、あとグラキノスが来てるんやろ?


 ちょっとウチが行って呼んでくるわ。

 何でここにいるのか聞かなければならんし。


 で、どこにおるん?」


「そ、そうですか。

 あの魔族は艦隊前方に……」


こうしてザハン国船団の混乱は、徐々に

収まっていった。




「攻撃再開、ありません。

 事態は収束したようです」


艦隊上空で、『見えない部隊』メンバー、

獣人の青年からの報告を受け、私はホッと

一息つく。


今回の作戦内容はこういうものだった。


まず私とグラクノスさん、ルクレセントさん、

ティーダ君が―――

予めザハン国内に設置した『ゲート』で潜入。


そして夜間に乗じて、上空待機させていた

浮遊島にワイバーンで乗り込み、合流。


この時、ある程度まで上昇してから魔力封じの

腕輪で魔力遮断→滑空→魔力復活させて飛ぶ→

ある程度飛んだら魔力遮断して滑空……

というのを繰り返し、魔力感知の対策をしながら

浮遊島へ。


そして合流後、まずグラキノスさんが

沖合いに凍った足場を作って待機。


ザハン国の艦隊が出撃後、海面を凍らせて

足止めし、これで艦隊の目を完全に彼に

集中させた。


グラキノスさんが防御に徹すれば、それを

打ち破るのは至難(しなん)(わざ)だ。


その攻撃が行われている最中に私が、

魔法と魔導具の無効化を宣言。


上空からワイバーンを使って、ティーダ君を

おんぶした人間の姿のルクレセントさんを降下。


この時点で魔力感知・探知は無効化されて

いるのと―――

おそらく艦隊は前方のグラキノスさんに

気をとられているため、発見は不可能。


旗艦と思われる船に2人を投下した後、

ワイバーンは上昇して浮遊島へと戻る。


ルクレセントさんは落下中にフェンリルの姿へ。

そのまま旗艦へと着地。


そして交渉へ―――

という流れだ。


「後は交渉かい?」


「まあフェンリル様が相手だ。

 うかつな事は言わねえだろうけどよ」


赤毛の、恰幅(かっぷく)のいい女性と、

いかにもなチンピラ風の細身の男―――


未来予知魔法(プレディクト)を使う元マフィアの女ボス、

ブロウさんと、


その組織に属していた、誘眠魔法(インバイトスリープ)の使い手、

ジャーヴさんが飲み物を持って来てくれ、


「しかし、クアートル大陸に関わったと

 思ったら、今度は別の大陸……


 裏家業の我々が、こうも世界を相手に

 渡り歩くとは思ってもみませんでした」


頬骨(ほおぼね)が目立つほど()せた顔の、ユールさんも

やって来て語る。


この人はレイド君、ニコル様と同じで、

範囲索敵(サーチ)が使える貴重な人材だ。


「歴史の表に出る事はありませんけどね。


 その事については本当に感謝すると同時に

 申し訳なく思っています」


私が彼らに頭を下げると、


「よしておくれよ。

 『境外(けいがい)(たみ)』のシンさんに

 そう言われちゃ、ワタシらの立つ瀬が無いさ」


「それに誘拐や破壊工作をやれって言われて

 いるワケでもねぇし、気が楽ってモンよ」


元マフィアの女ボスと部下がそう返し、


「むしろやっている事は……

 どれだけ被害を最小限に抑えられるか、

 争いを未然に防ぐか、ですからね……


 我々は誇りをもって『見えない部隊』に

 従事しておりますれば……」


元裏社会の人間である彼もそう言ってくれて、

いくぶん気が楽になる。


「とにかくお疲れ様でした。


 しかし、気が抜けたのか少し小腹が

 空いてきましたね―――

 何か軽く作りましょう」


そう私が言うと、


「待ってました!」

「シンさんの手料理だー!!」

「このためにこの仕事やってるぅ!!」


そう周囲から歓声が沸いて……

私と3人は思わず苦笑した。




「さてと、改めまして―――

 ウチがフェンリルのルクレセントや。

 この子はウチの夫(予定)のティーダ」


「魔族の……

 『永氷(えいひょう)』―――

 『永氷(フローズナー)』のグラキノスです」


長身の女性と少年のカップルの後に、

横に長いタイプの眼鏡をかけた青色の短髪の

男性が名乗りを上げる。


「今回の『演習』の総司令―――

 ゼレクトだ」


「タクドルでぇす♪

 お久しぶりですわねぇ、ルクレセント様」


艦長の隣には、例のザハン国の官僚、

リーゼントのような髪型をしたタクドルの

姿があり、


他には、彼らが着席しているテーブルを

ぐるりと取り囲むように軍人たちが直立

していて、


ここ、ザハン国商業都市・スタットにおいて、

今回の件についての話し合いが行われようと

していた。


「まず、ザハン国から……

 我々が沖合いでの演習を行おうとしていた

 ところ、そちらのグラキノスとやらに

 (はば)まれた。


 我が国の立場からして、当然それを妨害・

 脅威(きょうい)見做(みな)し―――

 その排除に当たっていたところ、


 今度はフェンリルのルクセント様が我が

 旗艦に襲来、魔法の使用を封印された。


 この事についてそちらの責任と見解を

 お願いしたい」


ゼレクト総司令の言葉を、隣りに座るタクドルは

後頭部をガシガシとかきながら聞いていて、


「まずですねえ、グラキノスさん?

 あなたはなぜザハン国沖合いに現れたので

 しょうか?」


まずはやんわりと彼が事情をたずねる。


「この前、こちらの大陸にイキのいい者が

 来たという情報を得ましてねぇ。


 あちらの大陸にある国は、ほぼ魔王様が

 認める友好国・同盟国なので……


 それでちょっと様子を見に来ましたら、

 以前よりも多い大船団が、物騒な物を

 積み込んで出撃しようとしているのが

 見えたので、


 少し頭を冷やしてもらおうかと思った

 だけです」


魔族の青年の言葉に、総司令は表情を変えず、


「何か誤解があったようだが―――

 あれは演習を行うつもりだったに過ぎん。


 もし本格的にそちらの大陸へ攻め込む

 つもりであれば、あんな少数での出撃は

 行わない。

 本気であれば、あの10倍は我が国だけで

 用意出来るのだぞ」


実際は、例の折り紙作戦で同調者が減った

だけなのだが、それすらも取引材料に使って、

さらに軍事的な実力を誇示してみせる。


「ふむ。確かにそちらに取っては『少数』

 だったみたいですが、


 ですがこちらの大陸にしてみれば、

 前回の一千隻の船団すら、大陸全体を

 上回る数なのですよ。


 そして今回、さらに10倍の戦力が

 出撃しようとしているのを見て、

 必要以上に警戒してしまった事はご理解

 頂きたく」


グラキノスの方も一歩も引かず、彼は続けて、


「それにもし本気でこちらと事を構える意思が

 魔王様にあれば、自分一人だけで向かわせる

 ような事はしません。


 『(フォグ)』のイスティール……

 『腐敗(クラプション)』のオルディラ、

 『対鏡(オーバーカウンター)』のノイクリフ、


 少なくともこの3人は、自分と共に

 派遣されると思いますので」


グラキノスたった1人だけで1万の艦隊が

足止めされていた事を考えると―――

さらに同じくらいの実力者であろう3人が

追加されたら、と想定してさすがにゼレクトは

顔色を変える。


「まあまあ、お2人とも熱くなっちゃイヤン♪


 我がザハン国もですねえ、国の規模が違うのか

 そういうところの感覚がちょーっとズレて

 しまっているんですよねぇ。


 そもそも今わたくしたちは、そういう誤解や

 すれ違いをすり合わせるために……

 お話をしているんでぇ♪」


その話し方に毒気を抜かれ、2人とも苦笑する。


「それでですねぇ?

 そこのたいっへんお可愛らしい美少年!

 の夫を連れたルクレセント様?


 あなたはどうして我が国へ?

 というか、突然空から降ってきたとも聞いて

 おりますけどぉ?」


そこでティーダは妻(予定)にもっと密着し、

彼女は呆れるように息を吐いて、


「ウチは人間じゃないからなあ。

 いつでも好きなところへ飛ぶでー。


 それにお前、前回一千隻の船団でこっちの

 大陸へ来たろ?

 なんちゅーかなあ、アレ以来(えん)っちゅーの?

 繋がりのようなモンが出来たみたいなんだわ。


 ほんでな、何かまーた嫌な感じ?

 がしたんで来ただけや」


「嫌な感じとは?」


そこで総司令が聞き返すと、


「前はなあ、幼子(おさなご)を理不尽に扱っているのを

 感じて、飛んで行ったんよ。


 それで今回も何つーか―――

 敵意とか悪意?

 みたいな物を感じてなぁ。


 こっちの大陸の子供たちを、みんなああいう

 ふうにしてやろう? みたいな?」


侵略意図が明確にあったゼレクト総司令は、

内心驚きながらもそれを受け流し、


「そちらを敵とした認識は無いが、

 気が高ぶっておったかも知れん。


 こちらにいる官僚が、迷惑をかけたとも

 聞いておるし……

 それに軍人というのは因果なもので、

 想定上では常に全方位を警戒せざるを

 得ない事もある。


 それが敵意と取られてはどうしようも

 ないが―――」


フェンリルのルクレセントや、

魔族のグラキノスとの戦力差は圧倒的で、

それは総司令である彼も否定出来ないでいた。


そこでザハン国から何も請求出来なくとも、

向こうから要求されるような事はあっては

ならないと、何としても痛み分けに持って

いくため、ゼレクトは頭をフル回転させる。


「まあ、それはしゃーないな。

 それに相手がどう思っているかなんて、

 わからんし強制も出来んからなー。


 ただなぁ」


そう言って彼女は恋人である少年に視線を送る。


「ですが当初……

 こちらでは皆さんの魔法や、魔導具が

 使用不可になったと聞いています。


 これはルクレセント様の能力らしいのですが、

 任意で発動出来るものではありません」


「はあ!?」


それを聞いた艦長であり総司令は、

思わず大きな声で驚く。


「わたくしも後で調べましたけどぉ、

 どうも本当っぽいんですよぉ。


 無効化されたら、フェンリル様がそれを

 解く事は出来るみたいなんですけど、

 どうも発動自体はルクレセント様の意志に

 関係ないみたいなんです」


タクドルが補足するように語る。

そして同席していた、周囲の軍人たちも

ざわつき始める。


「せやから、ウチもこの能力については

 あんまりわかっていないんや。


 ランドルフ帝国では、何か密かに調べに来た

 者たちが、魔法を封じられたらしいし。

 でもそんな事、ウチは知らなかったしなあ。


 ただまあウチの力で元に戻せたって事は、

 『そういう事』だったと違うか?」


カラカラと笑う女性を前に、ゼレクトの背中に

冷や汗が伝う。


言ってみれば、『敵意を持った者に自動的に

発動する』能力―――

しかも後で彼女が解除したとなれば、敵対は

本当だったと証明されてしまうのだ。


「ですが、こちらと友好関係を結ぶなり

 同盟を締結するなりすれば……

 そういった事はなくなると思われます。


 そうでなければ、今頃どの同盟諸国も

 訓練なんて出来なくなっていますよ」


ティーダの声で彼は我に返り、


「確かにそうだな。

 敵意を持っただけで魔法を無効化されては、

 どの国も訓練どころではあるまい」


「そうそう♪

 ですからゼレクト総司令、ここはいい機会

 ですので、一つ辺境大陸との友好もしくは

 交易を上層部に進言してみては?


 そうすれば今、友好や同盟に消極的な

 方々の考えも変わるでしょうし、

 フェンリル様もきっと喜びますわぁ♪」


追い打ちをかけるようにタクドルが、

この席上で提案して、


「戦力はこの目で確認した―――

 対等な関係を結ぶというのであれば、

 やぶさかではない。


 ここはワシも協力しよう。


 また演習を邪魔されても困るしな」


苦笑しながら、事実上の敗北宣言を告げる。


「ありがとうやでー!!

 ゼレクト総司令か?

 ウチ、アンタの事は向こうでもちゃんと

 伝えておくわ!

 話のわかる人間もおるでーって!


 あとタクドルもスマンなー。

 そうや!

 何か欲しい物とかあるか?」


ルクレセントの言葉に2人は顔を見合わせ、


「いいんですの!?


 あ、じゃあわたくしはあの『神前戦闘(プロレス)』!

 あれを記録した最新の映像魔導具が

 欲しいですわ!!


 ゼレクト様はどうします?」


「う、うむ? ワシか?


 それはやはり軍事関係の物の方が」


そこで獣人族の少年が首を左右に振って、


「それはさすがに正式に国交を結んでからで

 ないと……」


「あー、そやなぁ。


 そういえばアンタ、子供や孫はおらんの?」


いきなり身内の話を振られ、ゼレクトは

首を傾げるが、


「んん?

 いや、孫ならすでに8人ほどおるが。

 あとまた娘にもうすぐ―――」


「おーそうか!

 ほな、こっちで流行っている衣装とか

 送ってもらうわ。

 今、ちょうどこの時期は『はろうぃん』

 っていうお祭りやっててなぁ。

 いろんな種族の子供たちが仮装して、

 町を練り歩くんや。


 あとなぁ、もうすぐ赤ちゃん産まれるん?

 それならドルラン紙で出来たオムツが

 えらい人気でなー。

 手配しておくでー」


そこでルクレセントが立ち上がり、続けて

ティーダも席を立って、


「ほな、またなー」


と手を振って別れの挨拶を告げると、


「では……」


と、もう1人の代表であった魔族の青年も

立ち上がる。


そして一瞬グラキノスは困惑した顔をして、


「あとですね、自分からは―――


 一部の魔族から印象が上がる事を教えて

 おきましょうか」


その申し出に総司令と官僚は目を丸くする。


そして魔族は先にカップル組が退室した事を

確認すると、


「我が魔族領では発酵食品を扱って

 いるのですが。


 それらが好物だと言えば……

 かなり好意的にとらえる層がおります。


 特に『納豆』とか―――

 魔族との交渉の時にこれを伝えれば、

 話し合いがスムーズに行く事もあるかと」


「あー、納豆ですか。

 わたくしも公都で食べてみましたけど、

 好き嫌いが分かれるでしょうね、アレ」


「ああ、もう食べた事があるのですか。

 やはりダメでしたか?」


聞かれたタクドルは首を横に振って、


「いいえぇ?

 『お肌や美容に良い』と聞いてからは、

 毎日食べておりますわぁ♪

 慣れればなかなかイケますし」


「ふうむ、そういうものなのか?」


「まあそのままでは厳しい人はいるでしょうね。

 ですが、ひきわり汁とか麺類に入れるのなら、

 好きという方は結構おりますよ」


「うむ、なるほど。

 貴重な情報、感謝する」


そしてグラキノスも退室し……

ザハン国との話し合いは一段落した。



( ・ω・)最後まで読んでくださり

ありがとうございます!

本作品は毎週日曜日の16時更新です。

休日のお供にどうぞ。


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それが何よりのモチベーションアップとなります。


(;・∀・)カクヨムでも書いています。

こちらもよろしくお願いします。


【女性冒険者パーティーの愛玩少年記】【完結】

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(*ゝω・*)つ★★★★★  …納豆オチだったww
「納豆はどうにもダメだ。匂いを身体が受け付けない」でも良いと思います。 最近になって納豆ってのを知ったから試してはみたんだけど、と言えば日本人なら問題なし。作中でも大丈夫かなと。 私は「ご飯に掛けて食…
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