292・はじめての ひょうけつせんじゅつ
|д゜)今月、祝日がそこそこあるなあ。
(会社に行かないとブーストがかからない
社畜体質)
「武器庫最奥の天井に、例の物を
発見しました!」
「総司令のイスの座面の裏に―――
あの精巧な紙細工が」
「軍幹部の寝室からも……!」
ザハン国商業都市・スタット―――
そこで国防を司る施設では、軍の上層部と
思しき身なりの連中が、次々と上がる報告に
頭を痛めていた。
「これは何なのだ?」
長テーブルの上に置かれたそれは、
折り紙でいうところの手裏剣で、
この世界では馴染みのない、もちろん
ザハン国では初見のそれを見て、彼らは
答えを求め疑問を頭に巡らせる。
「外交部長から言われた場所を調べてみたが……
まさか、こんな事が」
「辺境大陸から戻って来たタクドルの、
報告書について来たという話ですが」
「問題はこれが―――
いつの間に置かれたのか、全くわからないと
いう事だ。
警備用の魔力感知機にも、何の反応も異常も
無かったと言われている。
それなのにどうして……!?」
魔力前提のこの世界では、どんな生物にも
魔力があるというのは当然の事であり、
ウィンベル王国の『見えない部隊』―――
自ら魔力を封じて活動する存在など、彼らに
してみれば想像の範囲外であった。
「とにかく、これの正体を突き止めなければ」
「ですがどうやって?」
「今、専門家を呼び出している。
ロックウェル家の会長を……」
と、幹部の一人が言いかけたところで、
ノックの音が室内に響き、
「入るぞ」
初老の男性が二人の屈強そうな従者を連れ、
ゆっくりと姿を現した。
「これか?」
「そうです。
これについて何か情報はありますか?」
軍人にしては、老人とはいえ腰が低い対応の
ように感じるが、これはザハン国―――
ひいてはメナスミフ自由商圏同盟の性質が
関係している。
自由商圏同盟と言われるように、同盟諸国は
複数の商人が武力を持って大きくなった勢力が
前身であり、
彼らは活動と価値観の中心を利益と定め、
最も稼ぐ者が権限と権力を握っていた。
そのため、彼のような会長や重役は、
それなりの権威を有していたのである。
その老人は手裏剣の折り紙を手に持つと、
隅々まで鑑定するように眺めながら、
「見た事は無い……」
その答えに軍人たちは失望した表情になるが、
「が、似たような物は見た事がある。
クアートル大陸で、辺境大陸から輸入した
商品の中に同じような紙細工があった。
1枚の紙から折りたたむだけで作られて
おってな」
「く、詳しくお願いします!」
幹部の一人が身を乗り出す。
「慌てるな。
まあ、ワシもこれを見た時は驚いたものだが。
何でもあちらは幾何学という―――
図形学ともいうべきものが発達していてな。
それだけではない。
数学技術や他学術も、極めて高い水準にあると
推測出来る」
軍人たちは揃って老人の話に聞き入り、
「ちなみにこれは子供のオモチャだ」
「何ですと!?」
幹部の一人が思わず大きな声を上げる。
「正確には遊び、じゃな。
貴重な紙を用いて、このような遊びを
させる事を通じ―――
高度な学問を学ばせておるのじゃろう」
そこで軍人たちは顔を見合わせ、
「では、これは子供が?」
「確かに子供であれば、警戒されずに
重要施設の奥まで行けそうなものだが」
「しかしそれでは、魔力感知機が作動しなかった
理由が……」
そう口々に意見を交わすも、
「老いぼれとはいえ、一般人の前で
そういった事を話すのは感心せんな」
会長と言われた老人がそうたしなめると、
「! し、失礼いたしました!」
幹部たちが恐縮して姿勢を正す。
「まあ、国の上層部や自由商圏同盟が、
どう動いているか情報は入って来ておるがの。
商いが成立するかどうか、よく考える事だ。
あの辺境大陸は、これまで属国にしてきた
国とは異なる匂いがする―――」
その言葉には誰も答えず沈黙し、そして老人は
手にしていた紙細工を解くようにいじると、
「ほっ。
これは2枚の紙を組み合わせて作って
おるのか!
いいのう、実に面白い!
金の匂いがプンプンするわい!!」
無邪気に二枚の紙を持っておどけるように笑う。
そしてさらに続けて、
「紙細工1つでこうなのだ。
果たして魔導具や兵器は、いったいどれほどの
技術になるやら……」
それを聞いた幹部連中の顔は、冷水を
浴びせられたように青ざめる。
「じゃあ、ワシはそろそろ失礼させて
もらおうかのう」
「ハッ!
お疲れ様でした!」
全員が立ち上がり敬意を示すと、老人は
従者を連れて退室した。
そして残された軍人たちは―――
「今一度、問題を洗い直すぞ。
これは辺境大陸からの『贈り物』だ。
それは間違い無い。
そしてそれが、いつの間にか主要施設や
重要人物の部屋に置かれていた、という
事だ……」
「内通者がいる?」
「だがそれでも、魔力感知機に何の反応も
残さないというのは妙だ」
「その魔力感知機の管理者も抱き込んだという
事は?」
「全ての施設でか?」
疑問と肯定、否定が入り乱れる中、
「だが、これはある意味朗報かも知れん」
「と言いますと?」
最も身分が高そうな男が発した言葉に、
一人が聞き返す。
「我が軍の中にいただろうが。
イキのいい暴発しそうな連中が。
さすがにこの情報を聞けば……
少しは戸惑うだろうな」
「まあ、それは確かに」
「これを聞けば、すぐには動きますまい」
ようやくそこで幹部たちは、落ち着きを
取り戻したようで、
「それと、ファルコン部隊を軍から引き離せ。
一時的にでもいい。
強硬派も、航空支援無しとわかれば
無理に計画を進めないだろう」
「そこは、人間化した事への調査とか、
人間生活の適合、戦力としての新たな
可能性の模索―――
としておけばいい」
「ファルコンライダーとの仲は良好だと聞いて
います。
彼らに身柄を預ける形で……」
そして上層部らしく冷静に考えをまとめていき、
「とにかく、警備体制の見直しからだ。
魔力感知機は分解して調べろ。
そして最新型のものに切り替えるんだ。
重要人物の邸宅には、魔力感知機の設置を
2倍に―――」
トップがテキパキと指示を出し、行動方針は
固まって行った。
「……は?」
『だから、今言った通りだ。
『見えない部隊』からの報告によると、
連中、出撃準備を開始したらしい』
異世界に来てから、四回目のハロウィンを
実施し、盛り上がっている晩にそれは来た。
ライさんから魔力通信機で、ザハン国にいる
『見えない部隊』メンバーより、
例の跳ねっかえりたちが、辺境大陸への
侵攻のため、軍船を出航させようと動いて
いるとの情報が入ったのだ。
「『見えない部隊』が仕込んだヤツ―――
脅しは通用しなかったのか?」
アラフィフの、筋肉質のギルド長が
魔力通信機に向かって問うと、
『一応は効いた、ってところだな』
「一応……ッスか?」
今度は次期ギルド長である、褐色肌の青年が
聞き返す。
『ああ。さすがに例の脅し―――
要所要所に知らない間に折り紙を仕込んで
来た事で、
「自分たちはマズい相手と敵対しようと
しているのではないか?」
「これはいつでもお前たちなんぞどうにでも
出来るという警告では?」
そう受け取るヤツもいて、そいつらは慎重に
なったという話なんだが』
「そう受け取らないヤツがいたと……」
私がそう言うと、魔力通信機の向こうから
大きなため息が聞こえ、
『そういう事だ。
「こんな事が出来る勢力は危険だ!!」
「放置出来ない!!」
「これ以上舐められてたまるか!!」
という感じになっちまったらしくてよ』
彼の言葉に、今度はこちらの三人が同時に
ため息をつく。
「なんでそうなるかなあ」
「危機感はわかるッスけど、こっちがわざわざ
警告してあげているでしょうに」
ジャンさんとレイド君が呆れるように語り、
「で、でも―――
数は減ったんですよね?」
『おう。
当初は強硬派が3万隻くらいの出撃を
考えていたようだが、
今回、出航準備をしているのは1万隻
ほどらしい』
なるほど。
これは『見えない部隊』の功績だろう。
「それで、魔族領とチエゴ国への連絡は?」
『グラキノス殿とルクレセント殿へは、
すでに通達済みだ。
そしてシン。
悪いがお前さんも準備を頼む』
私の言葉に本部長は即答し、
続けて指示が飛ぶ。
「まあ、ザハン国にはすでに『ゲート』を
繋げてあるからいいんですけど……
しかし冬真っ只中で出撃を決意するとは」
『よっぽど頭に来たんだろうなあ。
でもま、バカばっかりじゃ無かったのは
救いだ。
1/3まで減らす事が出来たし』
「でもその選りすぐった筋金入りのバカを
相手にしなければならないんですよねー」
私の言葉にギルド長と次期ギルド長が苦笑し、
「シン、お前も言うようになったなぁ」
「でもそこまで言うって珍しいッスね」
そこで私は眉間にシワを寄せて、
「シンイチとリュウイチが初めて参加した、
せっかくのお祭りの最中にこれですからねえ。
そりゃ言いたくもなるってもんですよ」
「ああ、そりゃわかるッス。
俺もミリアとミレーヌ置いて来たッス
からねえ」
私とレイド君で父親同士、シンパシーを感じ、
『まあ、恐らく出撃準備はあと数日かかると
見ている。
その間に待機させていた浮遊島も、
配置に就けるだろう。
それまでは家族と一緒に過ごしてくれ』
「わかりました。それでは―――」
そして魔力通信機は閉じられ、私は家族に
近くザハン国へ行く事の説明をしに、
自宅兼屋敷に戻った。
「あちゃー。
結局あちらさん、また来るんだ」
「困ったものよのう」
リビングで、それぞれ自分の息子を抱きながら、
黒髪セミロングの妻と黒髪ロングの妻が
呆れるように話す。
「でも今回は『出撃させない』んだっけ?」
黒髪ショートに真っ赤な瞳を持つ娘が
聞いて来て、
「うん。
少なくともこちらまで来させるつもりは無い。
そのためのグラキノスさんだしね」
ラッチの頭をなでながら、私は答える。
「ルクレセントのヤツも出るのか?」
「今のところ、魔力・魔法無効化はルクレさんの
仕業って事にしているからね。
悪いとは思うけど……
今回も出てもらうしかない」
アルテリーゼの言葉に私は答え、
「んでも、大規模な出撃はこっちじゃ
しないんだよね?
話を聞いていると、グラキノスさんと
ルクレさんだけで何とかしているように
思えるんだけど」
「出撃を封じるだけなら、むしろ彼のみで
十分だろうね。
ただ、回りくどいけど―――
『こっちに手を出すのは割に合わない』
そう思い知らせなきゃいけないから」
続けてのメルの質問にも返すと、
「んー、じゃあまた連絡が来たら、
そのザハン国に行く感じー?」
「そうだね。『ゲート』があるからそんなに
時間はかからないと思う。
……後始末の方が大変そうだ」
ラッチの問いに苦笑で答えると、出撃の日を
待つ事となった。
「出撃準備はいいか!?」
「全船、いつでも出航出来ます!!」
3日後―――
ザハン国商都・スタットの港では、万を超える
軍船が舳先を湾の外へと向けていた。
「各所からの報告は?」
「先日未明、ザハン国内で海に向かって移動する
魔力反応を検知したとの事。
ただ反応が表示されたり消えたりして、
魔力探知機の故障か、海鳥でも観測したのでは
ないかと」
「感度を上げると、鳥まで感知してしまう
からな。
それは気にしなくてもいいだろう。
どちらにしろ、大規模な軍勢でもない限り
これは止められん」
艦内では慌ただしく報告と確認、分析が
交わされ、
「しかし、ファルコン部隊無しで大丈夫で
しょうか。
航空支援が望めない状況では……」
部下である、上級士官らしき男が異を唱えると、
いかにも艦長といった体の初老の男性が、
「だからこその対空魔導兵器だ。
辺境大陸の軍の規模はこちらとは
比較にならぬ。
さらに航空戦力は数百程度。
数で十分押せる」
「ですが、水中戦力なる存在もいると」
「フン。
それも、亜人を中心に構成されている、
少数部隊だと聞いておる。
1万の軍船全てを沈められるほどの戦力では
あるまい。
大国の意地を、弱小国連合に見せつけて
やるのだ!!」
そして艦長を乗せた旗艦は、他の艦隊を
従えるようにして―――
荒れた海へと出航していった。
「……?
先導させた船が進んでいないようだが」
「何かあったのでしょうか?」
出航して間もなく、ザハン国の大船団は―――
案内役である数十の小さな船団が、視界の先で
速度を大幅に落としている事に気付く。
「何か、ではない。
確認に向かわせろ」
「ハッ!!
連絡用の高速艇を向かわせます!」
そしてボートのような小さな船が、猛スピードで
前方の船に接近する。
彼らの言う高速艇とは、船の後方に風魔法を使う
人間を配置していて、
その人間が使う風魔法を推進力として、高速を
実現していた。
「おーい!!
何かあったのか!?」
そして小型船から軍船に呼びかけが行われると、
「氷で進めません!!
前進不可能です!!」
その答えに、ボートに乗っていた連絡役の
士官が首を傾げ、
「はぁ?
今は冬だ、氷くらいあるだろう!
それなら氷の無いルートを進めばいいだけ
だろうが!
何のための先導役だ!?」
思わず彼が声を荒げると、
「辺り一面が凍ってしまっているんだよ!!
どこへ進めっていうんだ!?」
「……何だって?」
そう返されると、高速艇は軍船の横を
すり抜けるようにして前へ出る。
「な、何だ、こりゃあ―――」
その様子を見た小型船の人間は、報告のため
慌てて引き返した。
「何だと?
前方の海面が全て凍っていて、
前に進む事が出来ないだと?」
報告を受けた艦長以下、幹部たちは、
さすがに信じられないという表情になる。
「し、しかしこの目で確認しました!」
「流氷ではないのか?
もっと北の地域では、海面そのものが
凍るというのは聞いた事があるが」
「あれはそういうものではありません!
沖合までは凍っていないようでしたが、
かなりの距離に渡って凍結しています!」
連絡役の人間の報告に、艦隊上層部は顔を
見合わせる。
「攻撃魔法か魔導兵器で溶かすかして、
破壊は出来ないか?」
「確か、対水中戦力用の爆雷があったはず」
「氷を破壊し、いくつかの道を確保して
そこを進ませるしかあるまい」
そこで彼らは進軍ルートを確保するため、
一面に凍った海上を攻略する事となった。
「どのくらい魔導爆弾を仕掛けりゃいいんだ?」
「ていうか足りるのかよ」
「見渡す限り凍っていやがる……
今までこんな事なんてあったか?」
氷を破壊するために、凍った海上に降り立った
ザハン国の兵士たちは―――
まずその規模に目を見張らせる。
「んっ?」
そこで彼らの一人が、遠くの凍った海上に
人影を発見し、
「あれ、何しているんだろう」
「俺たち以外に、まだこの海上に来たヤツは
いないはずだが」
「おーい、あんた!
ここにいると危ないぞ!!」
そう兵士たちが人影に向かって注意を
呼びかけると、
その人影はゆっくりと近付くのと同時に、
宙に浮き始め、
「!? 亜人か?
それとも人間化したファルコン……!?」
「いや、人間化したファルコンに羽は
無かったはず―――」
「じゃあ、あの黒い翼は!?」
ザハン国の兵士たちに近付くにつれ、その
姿形がハッキリとしてくる。
青色の短髪に、横に長いタイプの眼鏡をかけた
細マッチョの男性が、背中にカラスのような
黒い羽を羽ばたかせ……
「初めまして、ザハン国のみなさん。
自分は魔族のグラキノスと申します。
あなた方が辺境大陸と称すところでは、
『永氷』―――
『永氷』のグラキノスと呼ばれておりますが。
残念ですが、ここから先は通行止めとさせて
頂きます」
そして彼が指先を、彼らが運搬して来た
魔導爆弾やその他の物に向けると、
一瞬でそれらは凍り付き……
「ひっ!?」
「こ、これは―――
もしかしてこの海もヤツの仕業か!?」
「敵襲!! 敵襲ー!!
ここは撤退するぞ!!」
彼らはよく訓練された動きで、海上から
走り去った。
「『永氷』のグラキノス、だと?」
「おとぎ話のような存在ではないか!」
「まさか、実在したのか!?」
撤退した兵士たちからの報告を受けた
艦隊上層部は、突然の魔族の登場に
戸惑う声を上げるが、
「静まれ」
艦長の一言で、室内は静まり返る。
「そいつは1人か?」
「えっ?
は、はい!
その、グラキノスと名乗る男、
1名だけでした!」
すると彼は、魔導拡声器の端末に手をかけると、
『先導している船団に告ぐ!!
いったん、行動可能範囲まで船を下げろ!!
そして全艦!!
グラキノスという魔族とやらが、たった1人で
我が艦隊に仕掛けて来た!!
目標を発見次第、あらゆる攻撃を
叩きこんでやれ!!』
そして……
グラキノスVSザハン国艦隊という、
1対1万の船団の戦いが始まった。
「何だあの半円上の氷の塊は!」
「目標命中!!」
「飛翔魔導兵器命中!!
他、火と風の攻撃魔法も命中しています!
で、ですが―――」
ザハン国の艦隊は一列に並んで、海上にいる
グラキノスに攻撃を仕掛けるが……
彼はドーム状の氷を形成。
その中で防御に徹していた。
さらに氷のドームはどれだけ攻撃を
受けようとも、直ちに修復されてしまい、
ザハン国はいたずらに、魔力と物資を
消費させられるような状態に陥っていた。
「くくっ!!
ザハン国が誇る艦隊が、なんてザマだ!!」
初老の艦長は怒りを露わにし、
「後方の船は何をしておる!!
どうして攻撃しない!?」
「ぜ、前方にいる船が邪魔で視認が
取れないのです!!
そもそも1つの目標に攻撃を仕掛けるには、
艦隊では多過ぎて―――」
部下の言う通りで、どれだけの船がいくら
揃っていたところで……
物理的に並ぶには限界がある。
まして数ヶ所を攻撃するのならともかく、
たった一ヶ所だけを攻撃するには、1万の艦隊は
多過ぎた。
「こ、この―――
我がザハン国が誇る艦隊が、魔族とはいえ
たった1人の敵に止められてしまうのか!?」
「い、いえ!
我が艦隊は決して負けてはおりません!」
艦長を慰めるように部下の1人が進言するも、
「負け戦も同然だっ!!
こんなものはっ!!
1万の艦隊が1人の敵を前に進軍出来ない!
こんな戦があってたまるかぁああっ!!」
艦長は八つ当たりとも取れる絶叫をして、
その声は艦内に響き渡った。
「そろそろ頃合いですかね。
今頃下では、グラキノスさんが氷結戦術で
相手を足止めしているでしょう」
同じ頃、ザハン国の艦隊の上空では……
ウィンベル王国所属の浮遊島の上で、
『見えない部隊』が待機していた。
そこにはフェンリルのルクレセントさん、
そして獣人の少年、ティーダ君もいて、
「ほなぼちぼち行きますかぁ。
シンさん、お願い」
銀髪のロングヘアーに、切れ長の目をした
女性が、伸びをするように片腕を挙げ、
「お、お願いしますっ」
黒髪の、犬のような耳に巻き毛のシッポを持った
獣人の少年が、彼女に続く。
「緊急時用の―――
魔物のエサとする奴隷の子供の姿は
見当たりません」
「それだけは前回の警告を考慮したみたい
ですね」
『見えない部隊』メンバーからも報告が上がる。
「ファルコン部隊も、事前情報で出撃しない
という話が入っていましたからね。
こうまで情報が入っていると、すごく
やりやすいので有難いですよ」
彼らに感謝を伝えると、私は足元……
浮遊島の地面に目をやり、
「魔族と海洋生物を除き―――
この浮遊島から下の海域で、
魔法、もしくは魔法により動く道具など
・・・・・
あり得ない」
そう私が宣言すると、
「ほな行ってくるでー」
「行きましょう、ルクレセント様!」
1組の男女が、ワイバーンの背中に飛び乗った。
「まだかっ!!
まだグラキノスとやらを倒せんのかっ!!」
「攻撃はし続けています!
命中もしています!
いかに魔族といえども、こうして攻撃を
継続していれば……!!」
一方海上では、ザハン国の旗艦で―――
大声で怒鳴り続ける艦長を、部下がなだめ
続けるという状況が続いていたが、
「……?」
「??
静かに……なりましたね……」
突然、魔導兵器や魔法攻撃の音が止み、
「やったか!?」
「お、恐らくは?」
「しかし、それならなぜ報告に来ないのだ?」
艦長以下上層部は、静かになった船内で
戸惑いの声を上げる。
そしてしばらくの沈黙の後―――
『ドンッ!!』
という衝撃音が旗艦全体に響き渡り、
「な、何だ!?」
「攻撃か!?」
彼らは身構えるものの、
「……攻撃にしては追撃が無いな」
「グラキノスの仕業か?」
「被害確認!!
報告を急がせろ!!」
さすがにエリート軍人でもある彼らは、
受けた衝撃に対し即座に対応する。
するとすぐにバタバタと足音がして、
「ほ、報告します!」
「どうした?
何があった?」
「そそ、それが―――」
戸惑う兵士の後に、身長の高い女性と
獣人の少年が現れて、
「? 誰だ?」
「ここは関係者しか入れない部屋だぞ!
すぐ出て行きたまえ!」
「どうして女子供がここに……」
場違いな男女の出現に、彼らもまた
戸惑いの表情を見せる。
するとそれに構わず女性が足を進めて、
「あー、この艦隊のトップって誰や?」
「ワシがこの艦隊の総司令、ゼレクトだが―――
君は?」
初老の男は、身分を明かして聞き返す。
「聞いた事があるかどうかわからんけど、
ウチ、フェンリルのルクレセントって者や。
そしてここにいるのがウチの伴侶、
ティーダな」
彼女の説明に、室内の空気と時間が固まった。
( ・ω・)最後まで読んでくださり
ありがとうございます!
本作品は毎週日曜日の16時更新です。
休日のお供にどうぞ。
みなさまのブックマーク・評価・感想を
お待ちしております。
それが何よりのモチベーションアップとなります。
(;・∀・)カクヨムでも書いています。
こちらもよろしくお願いします。
【女性冒険者パーティーの愛玩少年記】【完結】
https://kakuyomu.jp/works/16818093088339442288
ネオページ【バク無双】【完結】
https://m.neopage.com/book/31172730325901900
【ゲーセンダンジョン繁盛記】【完結】
https://kakuyomu.jp/works/16817330649291247894
【指】【完結】
https://kakuyomu.jp/works/16817330662111746914
【かみつかれた】【完結】
https://kakuyomu.jp/works/16818093073692218686
【ロートルの妖怪同伴世渡り記】【完結】
https://kakuyomu.jp/works/16817330666162544958





