290・はじめての さいようきゅう
|д゜)最近、スティック緑茶の美味しさに驚く。
「……はい?」
リーゼントのような髪型をした青年―――
ザハン国の上級官僚の一員であるタクドルは、
その報告に疑問形で返す。
「だから、賢人会議で決まったのだよ。
今一度、属国化をあの辺境大陸に提示する。
今度はメナスミフ自由商圏同盟として、だ」
彼の上司らしき初老の男性は、事務的にその
疑問に答える。
ここはザハン国のとある政治機関の施設の
一室……
そこでタクドルは部下という立場で、
上司からの命令と説明を受けていた。
「いやわたくし、きちんと説明してきた
つもりですけどねえ?」
「だからこそ、もう一回だけ脅してみよう、
という事なのだろう。
今度はザハン一国だけではなく、正式に
メナスミフ自由商圏同盟が……
属国化を提唱するのだよ」
それを聞いた彼は頭を抱え、
「どうせアレでしょー?
いったん脅してから優しくするっていう、
コテコテのテンプレのような方法。
で、それが不調に終わったら改めて同盟の
参加を打診、ってところですか?」
「まあそう言うな。
何せザハン国どころか、前回はお前という
一官僚の暴走だったからな。
ここで自分たちの存在感を誇示しておこう、
という腹積もりもあるんだろうよ」
その言葉に、フィギュアスケートの選手のように
タクドルはその場でスピンをしながら、
「だーかーら!?
わたくし、ハッキリ言ったつもりだったん
ですけどねえ!?
次そんな事やったら絶対許されないって!
『せっかくうまく事が収まるようにして
やったのに、そういう事するんだふーん』
って!!
それをやろうってんですかー!?」
(■284話 はじめての けいび参照)
回転を止めた彼が、ゼェゼェと息を
切らしているところ、
「とは言え、賢人会議の決定だからなあ。
敵対するにしろ和解するにしろ、
『このまま、舐められたままで
たまるか』
というのもあったんじゃないか?」
「それでわたくしを使者に指名するのも、
どうかと思いますわよぉ~……
それにもし敵対を選ぶのであれば、
亡命も辞さないって、言ってあった
はずなんですけどねー」
呆れながら、今回の決定と選択に
タクドルはため息をつく。
「まあ、そこも含めてだろうな。
お前なら向こうの実力も知っているし、
その上でメナスミフ自由商圏同盟の実情も
わかっている。
だから交渉次第では、内々に自由商圏同盟に
加える用意がある、と水面下で漏らして、
あちらの出方を窺うのもアリだと」
要はこちらの実情も多少バラしつつ、
相手を怒らせず、かつメンツも保ったまま
有利になるよう交渉しろと暗に上司は伝える。
「そんな小手先の交渉に引っ掛かる相手じゃ
ないと思いますわぁー……
下手をすればメナスミフ自由商圏同盟消滅の
引き金を、わたくしの手で引いてしまう事に
なる可能性が―――」
「まあ、恨むなら有能な評価をこれまで
欲しいままにして来た、若手の中でも
出世頭の自分自身を恨むんだな。
それにまさか、命まで取るとは言われまい。
お前に何らかの要求もしてくるだろう。
そこからどう動くか……
それを見て判断したいと思っているんじゃ
ないか?」
さらに上司はフー、と一息つくと、
顔を彼に近付けて小声で、
「(実はな、ここだけの話―――
軍の跳ねっかえりどもが、きな臭い動きを
見せているんだ。
一千隻程度だから舐められたんだ、って……
万単位で辺境大陸を脅そうという企みが
あるらしい)」
「(あー、わたくしの失敗から何も学んで
ないって事ですかー)」
「(連中はこっちで何とか説得する。
今回の任務は、そのための時間稼ぎでも
あると思ってくれ)」
そして二人はアイコンタクトをしたと思うと、
それまでのくだけた雰囲気から一変、真剣な
表情となり、
「拝命!!
これより、ザハン国及び―――
メナスミフ自由商圏同盟の使者として、
辺境大陸・ウィンベル王国に当方の意向を
伝えてまいります!!」
「健闘を祈る!!」
官僚というよりは軍人のようなやり取りを
した後、部下の方は退室するために扉へと
足を向けたが、
「あーちょっと」
「?? 何でしょうか?」
上司に呼び止められた彼が振り向くと、
「お土産は酒がいいかな。
あまり大きいのじゃなくて、種類を多く
揃える感じで」
「……善処しておきますわ」
そしてタクドルは部屋を後にした。
「これがアタイが望んだ『力』だと
いうのか―――」
「いやー、違うと思うよ?」
下半身は蜘蛛で……
髪は赤茶色、気の強そうな目と太い眉をした
二十代の女性が、
黒髪ロングの和風美人と一緒に、それぞれ
衣装を持って会話を交わしていた。
赤茶色の髪の人はアラクネのラウラさん、
そして和風の方は土蜘蛛のつっちーさんだ。
「何かラウラさんの方はフツー?
だけど」
「つっちーの方は、鬼人族や天人族が着る
感じじゃのう」
童顔でアジアンチックな顔立ちのメルと、
欧米モデルのようなアルテリーゼ―――
二人の妻が、彼女たちが持っている衣装に
ついて感想を述べる。
「スゴイねー。
いつの間に出来るようになったの?」
黒髪ショートに燃えるような紅い瞳を持つ娘、
ラッチが不思議そうにたずねると、
「それがアタイにも何が何だか」
「ワタシも気付いたら、出来るように
なったっていうか」
『ガッコウ』の応接室の中で……
人外二人組はそれぞれ、自分の作った衣装を
手に持ちながら首を傾げる。
ラウラさんが持っているのはちょっと豪華な
洋服というか、いかにもこの世界の衣装、
という感じで―――
つっちーさんが持っているのは、和服・
着物といった日本的な衣装だ。
「でもどうやって作ったんですか?」
私の質問に彼女たちは顔を見合わせ、
「アタイは何となく、かなあ。
紡いでいた糸をいじくっていたら、
自然と……」
「ワタシもそんな感じー。
裁縫自体はやった事あるけどさ。
でも着物まるまる仕立て上げたのって、
初めてだと思う」
ふむふむ、と私がうなずくと、
「ねーねー、普通の糸でも出来るの?」
「ん? 多分出来るんじゃないかな?」
メルの質問にラウラさんが、
「鬼人族や天人族の衣装は人気があるからのう。
ここでも作る事が出来るとなると助かるのでは
ないか?」
「でも向こうだって大事な輸出品でしょ?
あまりこっちで勝手に作ってしまうのも、
申し訳ないような」
アルテリーゼの質問につっちーさんが答える。
「それは―――
一言あった方がいいかもしれないですね。
しかしどうしていきなりこんな能力が」
と、当人たちも含めて疑問に思っていると、
「……納豆?」
と、ラッチがつぶやくと―――
全員の視線が彼女に集中した。
「あ~、そう言えば何か公都で言われていたね。
発酵食品? ってのを食べると新たな力が
身につくって」
「ワタシもこっちに来てから初めて食べたけど、
アレにそんな力があったなんて」
アラクネと土蜘蛛の女性二人が、どこか納得が
いったかのように話し、
「んん?
でもつっちーって鬼人族の里にいたんでしょ?
納豆食べた事無かったの?」
「友好関係になったのはつい最近だしさあ、
ちゃんとした食べ物を食べる機会と言ったら、
お弁当を失敬するくらいで……」
メルの疑問につっちーさんが答える。
そういえば彼女、鬼人族の鉱山にいたんだっけ。
(■194話
はじめての わふうけんちく参照)
そしてアラクネのラウラさんの方は、納豆なんて
見る機会すらなかっただろう。
「しかし何て言えばいいんだろコレ。
【裁縫能力獲得】とか?」
「嬉しくない事もないけど、微妙に地味」
それを聞いて私と家族も、どんな顔をしたら
いいのかわからなくなる。
「うーん、ただ―――
どうも元から強い種族ほど、あんまり
恩恵が無いって話だからねー」
「そうなのじゃ。
我のようなドラゴンやワイバーンにも、
何か特別な力に目覚めたという者は
いないようなのだ」
ドラゴンのアルテリーゼに、『元々強い種族』と
言われた二人は、まんざらではない表情で、
「ま、まあ確かに現状……
これ以上何か強化されても、ねえ」
「ワタシは生産系でコツコツやっている方が
性に合ってたみたいだし、これでいいのかも」
そこでラッチが手を挙げて、
「取り敢えず、パックさんとシャンタルさんの
ところに行って来たらー?
今そーゆーの調べている最中だから」
娘の提案に、『そうだね』『そーするか』と
アラクネと土蜘蛛の二人は同意し、パック夫妻の
屋敷兼研究施設兼病院へ向かう事となった。
「というわけでしてねー。
何とか、『暴風姫』の船で、
辺境大陸まで乗せて行って頂けませんで
しょうか?
それに、ランドルフ帝国の皇族と一緒なら、
敵対意思は無いと向こうにも示せますし」
クアートル大陸・ランドルフ帝国―――
その帝都グランドールの王宮の一室で、
タクドルは極秘に、ティエラ王女との面会を
取り付けていた。
「確かに我が帝国は辺境大陸とも同盟を組んで
おりますが……
そちらはその同盟諸国に対し―――
友好的な態度ではなかったとも聞き及んで
おります。
むしろこちらまで敵対意思を持っていると、
向こうに勘違いされたら困るのですが」
パープルの長髪に、その前髪を眉の上で
切り揃えた王女は……
冷ややかな視線をザハン国の官僚に送る。
「ま、まあその節は―――
それに今回、わたくしはまた属国化を勧めに
行くんですけれど、
水面下でザハン国やメナスミフ自由商圏同盟の
本音や実情も説明しに行くんですのよ。
なので、協力して頂きたいと」
「聞くだけは聞いておきますけど、
本音と実情とは?」
「要するにですねー、対等な立場での
自由商圏同盟への参加を認めてもいい、
というのが本音ですわぁ。
ただ実情として、このままではメンツが
立たない、と考える一派もおりまして」
そこでティエラはふぅ、とため息のように
軽く息を吐いて、
「でもそれはあなた方の都合でしょう?
それにメンツというのであれば、向こう……
ウィンベル王国は最大限、あなた方のメンツを
考慮したと思いますよ?
属国化要求は無かった事にして、
また1人の死傷者も出さず、動力を失った船を
クアートル大陸の同盟各国に引き渡した。
これ以上まだ何かあるのか?
というのが、あちらの感情でしょう」
ぐうの音も出ない正論を突き付けられ、
タクドルは身を縮めるも、
「いえ、ですがそれはランドルフ帝国も
経験がおありでしょう?
それにこのままだと―――
ホントーに暴走しかねない連中がいるん
ですのよぉ」
「……こちらでもその情報は入手して
おります。
ザハン国で、数万単位の規模での、
軍船の出動準備をしていると。
確かにフラーゴル大陸と辺境大陸との間で、
緊張が高まるのはよろしくありませんが、
ですがあなたはただの一官僚で使者。
そのために帝国は動けないのですよ」
同盟諸国に対する明確な敵対行為であれば、
ランドルフ帝国としても手の打ちようはあるが、
今回のタクドルはただの官僚であり、その
使命が再び属国化を迫ろうがケンカを売りに
行こうが―――
実体は単なるメッセンジャー。
そのために本格的な介入は帝国といえども……
むしろ帝国であるからこそ、身動きが取れずに
いたのである。
「宣戦布告でもしに行くのでしたら、
帝国としてマームード陛下も動きようが
あるのですが」
「だからそうならないようにお願いしているん
ですのよぉ!!」
彼は悲痛な叫び声を上げるが、
「そもそも、あなたの軽率な行動が原因
でしょうに―――」
「そうですよ!!
あの時のわたくしをブン殴ってやりたい
ですわぁ!!」
もはや逆切れと言っていいくらいの状態に
彼がなった時、
「……仕方ありませんわね。
帝国の人間としては協力出来ませんが、
個人的になら大丈夫でしょう。
3時間後に出港します。
わたくしも後で向かいますので、港に
行ってください」
「!!
ありがとうございまーす!!」
そう言うが早いか、タクドルは荷物をつかむと
そのまま退室し、
「一足先に―――
ライオネル様に報告しておきましょうか。
皇族専用の『ゲート』を使うと後々面倒だし、
大使館のものを使わせてもらいましょう」
ティエラはそのまま、帝国内になる
ウィンベル王国大使館へと足を向けた。
『……つーわけでな。
ザハン国のタクドルがティエラ―――
様と一緒に、またウィンベル王国まで
来るらしい』
公都『ヤマト』の冒険者ギルド支部から
呼び出しがあった私は、その支部長室で
ライさんから魔力通信機ごしに話を聞いていた。
『しかも内容はまた、属国化の要求で……
その実はメンツを保つための交渉だとよ。
ティエラ様は一通り情報を伝えると、また
『ゲート』で帰って行ったから―――』
何でも、ザハン国のタクドルがまた属国化要求に
来るらしいのだが、
実際は対等の立場での同盟参加や、また
反対派もいて……
さらに彼の本国では、軍の跳ねっかえりが
数万規模の軍船を準備中など、かなり踏み込んだ
内容をぶっちゃけたらしく、
情報共有と今後の方針について、私に連絡
して来た。
「まあ、やっぱそうすんなり、まとまる事は
無いと思ったが」
「予想済みだったッスか?」
アラフィフの筋肉質のギルド長・ジャンさんに、
次期ギルド長の褐色肌の青年・レイド君が
聞き返す。
『ランドルフ帝国でさえあんなに揉めたからな。
ましてや大所帯の同盟で、意見がまとまる
事なんてないだろうよ。
開戦で意見統一されても、それはそれで
面倒だが』
向こうからライさんが、ため息混じりに語る。
「ただ今回は、属国化要求は表面上の事で、
本音は同盟参加の打診と、お互いにどう
メンツを保つかの―――
相談みたいなものなんですよね?」
『そうだな。ただ……
この前の、緊急回避用として奴隷の子供たちを
魔物のエサにするような、ああいう制度は
こちら側では容認出来ない。
人外や亜人に対する差別もそうだ。
向こうでどれだけの事が行われているか
どうか知らんが、こちらだってそうおいそれと
首を縦には振れん』
そう。ライさんの言う通り、こちらだって
戦争を回避したいし、友好を結ぶつもりはある。
だが、譲れない一線というものもあり―――
ライオネル様が提示して来たのはまさしく
それで、
「クアートル大陸の四大国のように、
属国にして来た国々の自治権拡大や、
亜人・人外に対する寛容策を共有するのは
当然だろうな」
「そうッスね。
むしろそれが出来ないと、今までの
こちら側の政策の全否定になるッス。
仲良くして来た亜人や人外からの、
信用も無くしてしまうッスよ」
現ギルド長と次期ギルド長がシンクロするように
うなずく。
「相互に内政不干渉にして……
交易だけに留めるのならまあ、という感じ
ですけど」
そしてその間に影響を及ぼし、政策や方針を
こちら寄りにする、というのがこれまでの
セオリーだったけど、
『そいつぁ無理だろうなぁー。
一国で数万規模の軍船を出せる国の集まりと、
どうあがいても合計して2・3千がせいぜいの
辺境大陸。
交易自体、絶対不平等なものになるぞ』
そうなんだよなぁ。
日本が開国した時も、ほとんどの国と
不平等条約を結ばされたし。
よしんば、もし万が一それを―――
メナスミフ自由商圏同盟が辺境大陸に認めて
しまったら、今まで属国化してきた国との
矛盾が鮮明になってしまう。
まあそれだけ今のこちらが異常な状態なの
だろうが……
「じゃあ、まあ―――
例の手を使うしかないんじゃねぇか?」
「あー、『見えない部隊』が仕込んだ
やつッスね」
(■286話
はじめての ほかのけいがいのたみ(かこ)
参照)
ジャンさんとレイド君が例の件を思い出し、
『一応、今回のタクドルは正式な使者
だからな。
アイツが戻って、その確認と情報整理を
するまでは、ザハン国も多分動かないだろう。
ま、警戒はしておくけどよ』
そしてしばらく、近況の共有や雑談に興じ、
王都・フォルロワからの魔力通信は閉じられた。
「久しぶりだな、タクドル殿。
よく参られた。
冬の海を越えてくるのは大変だったであろう」
アラサーのブロンドの短髪を持つ男性が
友好的にあいさつし、
「お、お久しぶりにございます、陛下」
ザハン国の官僚は彼の前で跪く。
ティエラ王女から連絡があった二日後……
ウィンベル王国の王都フォルロワ、
その王宮のウィンベル王国国王の部屋で、
ラーシュ陛下を前に、タクドルは再び
書面を携えていた。
国王はそれを受け取り、読み進めて行くが、
「これは―――
前回持って来た、書き間違いの要求と
何が違うのだ?」
「はは、はい!
今回はメナスミフ自由商圏同盟の上層部の
正式な意向を受けております!
わたくしはそれについて、交渉と事情を
説明しに来たわけで」
「ふむ?」
ラーシュ陛下は、ある程度すでにその事情は
聞いていたが、さも初めて聞くかのように
それを促す。
そしてタクドルの必死の弁明というか、
釈明が始まった……
「なるほど―――
書面上では強硬な姿勢を示しているが、
一方で対等な同盟参加も検討されている、と。
まあそちらも一枚岩ではないのだろう。
正式な書面ではこうなっているが……
という事か」
「ご、ご賢察の通りでございます。
我が国や同盟上層部にも、頑固といいますか
妥協出来ない者も多く、難儀しているので
ございますよ」
陛下はいったん書面を置くと、
「そういえば、人の姿になったファルコンたちは
元気かね?」
不意に別の話題が飛び出し、タクドル他数名の
部下たちも戸惑うが、
「ええ、元気だと思います」
「中にはファルコン部隊のパートナーと、
恋仲になる者も」
「意思疎通が出来るようになった事で、
より複雑な行動が可能になったとも
聞いております」
緊張して置物に徹していた部下たちは、ここぞと
ばかりに話に加わる。
「我が国でも、人間との間にドラゴンハーフが
産まれたばかりでな。
その前に魔狼ハーフが産まれて
いるが―――
いずれ人と亜人や人外との子供は、当たり前に
なっていくであろう。
いやはや、我々は……
すごい時代に生まれたものだ。
そうは思わないか?」
タクドル以下部下たちはその言葉の意図が
わからず、『ははあ』『そうですねえ』と
愛想笑いで返すが、
「そちらに事情があるのは理解したが、
我々も今の流れを断ち切るつもりは無い。
ザハン国も、メナスミフ自由商圏同盟も、
良き理解者である事を望む」
暗に、亜人・人外に対する寛容策は止める事は
無いと釘を差され―――
ゴクリ、とザハン国の官僚たちがつばを飲み込む
音が室内に響き、
「取り敢えず一度本国に戻り、今の余の言葉を
伝えてくれ。
そういえばティエラ王女の船に同乗して
来たとか……
彼女にもよろしく言っておいて欲しい」
そこでようやくメッセンジャーの役目を
果たしたと思った彼らは、安堵した表情に
なるが、
「しかし、反発する者もいるという話だったな。
そこではこれを渡しておこう―――」
陛下はそう言うと、タクドルに一通の書面を
渡す。
「ここで拝見してもよろしいでしょうか?」
「ああ、構わない」
彼はその場で書面に目を通すと、
「……?
ザハン国、総司令官のイスの座面の裏側?
武器庫の天井裏?
他、主要施設や有力者の邸宅の細かい
ところまで書かれているようですが―――
これはいったい?」
不審そうに彼が聞き返すと、
「なに、不満がある者がいたら、それを
見せてやって欲しいんだ。
その上でよく考えるように、とね」
「わ、わかりましたわ?」
意図が読めず、とにかくタクドルはその書面を
フトコロに仕舞う。
「今回は滞在せずもう帰るのかね?」
「ええと、それが―――
お土産を頼まれておりましてね。
特にお酒を、と」
「おお、それはちょうど良かった。
公都『ヤマト』で、新たなお酒を造っている
らしいぞ。
何でも、動物の乳から出来たものだと聞いた」
雑談に移行したと思った部下たちは、
「それはそれは……」
「珍しいものですね」
「購入は可能なのでしょうか」
「あなたたち!!
遊びに来たんじゃないんですわよ!!」
最後のタクドルの一喝で、部下たちは黙り込み、
そして陛下はそれを見て苦笑し、謁見は和やかな
雰囲気で幕を閉じた。
( ・ω・)最後まで読んでくださり
ありがとうございます!
本作品は毎週日曜日の16時更新です。
休日のお供にどうぞ。
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お待ちしております。
それが何よりのモチベーションアップとなります。
(;・∀・)カクヨムでも書いています。
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