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287・はじめての とくてん1

|д゜)公式の気温は百葉箱基準なので、

実際はもっと暑(爆)



「ドラゴン様、ありがとうございます。

 怪物サイチョウゲシュペン・ホットビル、倒してくれて」


チエゴ国から北方を地域を狩猟しながら

遊牧する一団……

その長に深々と頭を下げられる。


母乳の代わりとなる山羊(やぎ)の乳を求め、

私たちはここまで来たのだが、


飛行中、怪物サイチョウとやらに出くわし、

やむを得ずこれを撃破。


その後、彼らに会ったのだが―――

感謝される事しきりで、


「でも、いったいどうしたの?」


「前来た時は、あのような魔物は

 おらんかったと記憶しているが」


対照的な顔立ちの、東洋風な妻と西欧風な妻が

長老に話を聞くと……


そもそもあの怪物サイチョウは、ずっと

北の方に出る魔物であり―――

こんなところまで出没した事は無いという。


「北に何かあるのかな?

 でも地理的に、ここより北っていうと」




                     |

    ■魔族領             |

                     |

                     |

    ■ユラン国            |

                     |

     チエゴ国            |

  ■    ■             |

 クワイ国                |海

                     |岸

                     |線

       ■             |

     ウィンベル王国         |

                     |

                     |

                     |

       ■       ライシェ国 |

  新生『アノーミア』連邦    ■   |

                     |

                     |

               アイゼン国 |

                 ■   |

                     |




と、このように大雑把(おおざっぱ)な位置関係でいうと、

北方にユラン国と魔族領がある。


とはいえ国と国との間には、広大な未開拓地が

広がっているわけだけど―――


実際、この遊牧民のような団体はチエゴ国と

ユラン国の間の未開拓地にいるわけだし。


「後でこの事はユラン国、魔族領に連絡を

 入れておくか」


「それでドラゴン様とお身内の方々。

 ここに来た理由、何です?」


そこで長老から話を元に戻され、


「あ、そうだ。

 ええと……」


と言いかけたところでどう説明したものか迷う。


今こちらはベビーラッシュで、それで母乳が

出ない女性のために―――

と頭の中で整理していると、


「今こっちの公都でねー、人口が増えて

 大変な事になっているんだよ」


「赤ちゃんもどんどん産まれているけど、

 おっぱいが出ない女性もいてのう。


 それで、おっぱい代わりになるヤギの乳を

 求めてここまで来たのじゃ」


女性である妻たちがそう説明してくれて、


「というわけですので……

 あの怪物サイチョウはそちらで好きに

 していいですから。


 その代わり、山羊を何頭か頂けませんか?」


すると、長老や周囲の一団の人たちは

目を丸くして、


「願ってもない事。

 またドラゴン様から下賜(かし)されたもの、増える。


 山羊、お渡しする。

 10頭でも20頭でも」


「あっ、あまり頂いても運べませんから―――」


「だが、それではこちら、気が済まない。


 では、これを土産に」


そう言って皮袋を長老は差し出し、


「ん? 何コレ?」


「何やら酒のような匂いがするが」


確かこれは、遊牧民が作るお酒……


「もしかして馬乳酒(ばにゅうしゅ)ですか?」


「よくご存知で。


 他に羊・山羊の乳で作ったもの、ある。

 献上、します」


すると次々と皮袋が持って来られ、


「あっ、あの!

 お願いがあるのですが」


「ドラゴン様の夫、お願い、何でも聞く。

 何でしょうか?」


長老が聞き返し、私は改めて、


「良ければですけど、こういったものを

 作っている人を―――

 派遣してもらう事は可能でしょうか」


私の言葉を聞いて長老は両目を閉じ、


「……本来なら、この地から離れる、ない。

 しかし他ならぬドラゴン様の夫、頼み。


 断る、ありません」


そう言って長老は周囲に視線を配ると、

一人の青年がやって来て、


「こやつ、酒や料理、作るのうまい。

 しかし戦う、下手。


 こやつで良ければ、同行させます」


私たちの前に出て来たのは、まだ十代後半

くらいと思われる、ダークブラウンの短髪をした

青年で、


「ええと、お名前は」


「カプレいいます。

 よろしくお願いします」


こうして私たちは、十数頭の山羊と一人の

人間と共に、再び空へと飛び立った。




「あの、カプレさん。

 あっさり同行するのを認めてくれましたけど、

 いいんでしょうか。


 その、家族と離れる事になるのですが」


『乗客箱』の中で、ケアも兼ねて私が彼に

たずねると、


「俺、家族いません。

 幼い頃、流行り病、みんな死にました。


 それに、戦う下手。

 強い魔法も無い。

 料理くらいしか役、立ちません。


 むしろドラゴン様の従僕(じゅうぼく)となる、

 これ以上ない名誉、です」


自然環境が厳しいところだしなあ。

話を聞いてメルも微妙な表情になる。


そこで外部から伝声管を通してアルテリーゼが、


『のう、ここからお主が行くところは、

 奴隷がいないところじゃ。


 そこでは各々―――

 きちんと役割が分担されておる。


 お主のその腕はきっと役に立つ。

 我が夫が見込んだ男だからのう』


奴隷がいない、という事を聞いて彼は

目をパチクリとさせるが、


「お酒とか他のものもいろいろ作れるん

 でしょー?

 絶対重宝されるって!


 それに戦力はドラゴンのアルちゃんや、

 ワイバーンとか他たくさんいるところだから。

 戦う必要は無いよー」


「向こうに着いたら、まず労働契約を

 交わしますからね。


 あなたは奴隷ではなく1人の人間です。

 仲間として頑張ってもらいますよ」


「は、はあ」


空返事をする彼を乗せて……

『乗客箱』は文字通り、新天地へと

向かっていった。




「ふむ。これが馬乳酒か。

 独特の風味があるな」


「山羊や羊の乳で出来たお酒も、

 なかなかいけるッスよ」


それから数日後―――

宿屋『クラン』で、各動物の乳から出来た

お酒の試飲会が開催された。


そこで筋肉質のアラフィフのギルド長、

それに褐色肌に黒髪の次期ギルド長の青年、

ジャンさんとレイド君がまず感想を述べ、


「新しいお酒と聞いちゃ……

 黙っちゃいられねえ!」


「久しぶりのお酒だよね、ミリ(ねえ)


ライトグリーンのショートボブに丸眼鏡の、

タヌキ顔の女性と、

亜麻色の髪を後ろで三つ編みにした、童顔の

女性が姉妹のように酒を()み交わす。


彼女たちはミリアさんにルーチェさんで、

二人ともまだ赤ちゃんが授乳期間という事で、

お酒を控えていたのだが、


今回、母乳代わりとなる山羊乳を出す山羊を

補充したのと―――

アルコールは二日あれば体内から完全に

抜け切るので、


念のため翌日・翌々日は山羊乳を赤ちゃんに

飲ませるという事で、彼女たちに飲酒の許可が

降りたのである。


「これは珍しい味だな」


「だがウマイ!

 動物の乳まで酒になるなんてなぁ」


向こうの方では、ブラウンの短髪と

こげ茶のボサボサ頭の二人……


この『ヤマト』の公都部隊長である、

ロンさんとマイルさんが、飲みながら

しげしげと酒を見つめていた。


「いやー、しっかりお酒だよコレ」


「不思議なものじゃのう。

 そういえば馬、山羊、羊の酒だという

 事じゃが、


 牛はどうなのだ、シン?」


同じように乳児を抱える私の妻二人、

メルとアルテリーゼも私と一緒に飲みながら

語る。

(お酒の試飲会なので、さすがにラッチは

児童預かり所待機)


「牛? 牛乳の事か?


 どうなんでしょう、カプレさん」


私がこれらのお酒を造った本人に話を

振ってみると、


「俺の一族、作っている、見た事ない。

 自分も試した、なぜか牛乳だけ、出来ない」


それを聞いた酒飲みたちは、がっかりした

表情となるが、


「ただ一度だけ、ヨーグルトになった物、

 お酒のような匂いした事、ある。


 今、いろいろ作らせてもらっている。

 いつか出来る、しれない」


すると今度は『おおー』『そうなのか』と

歓声が上がる。


発酵に関わるという事で、彼は今―――

パック夫妻の研究所に務めている。


魔力通信機でオルディラさんにも連絡が

行っているので、発酵食品がさらに上の

ステージに向かうのは間違いなく。


「これはまた、新しいメニューを考えねば

 ならんのう」


「……そうですね……

 それに発酵したものは保存性が高い……


 ……遊牧民族も……

 それらを踏まえて、旅をするために

 作っていると考えられます……


 ……つまり、長期依頼を受ける冒険者には

 ピッタリでしょう……」


スキンヘッドの、今では大きくお腹を成長させた

ロック前男爵と―――

対照的に体格を維持し、後ろで髪をまとめた従者の

男性、フレッドさんが語り合う。


そういえばバーサル・デイザン伯爵と

ホムト・ジャーバ伯爵、両伯爵監修で

出されている、この二人が作ったレシピ本、

『ロック・フレッドの主従レシピ』は、

(■161話

はじめての ししゃ2(らんどるふていこく)

参照)


今では何冊も続編が出され、海の向こうの

クアートル大陸でまで出版されているん

だっけ。


「いやあ、最初は匂いに驚いたが」


「しばらく飲んでいるとクセになるな」


少し離れた席では、『神前戦闘(プロレス)』の選手である

赤毛の髪に猫耳・シッポを持つゼンガーさんと、

ライバルである虎模様のイルザークさん、

他数名の獣人族の選手たちが宴会のように騒ぎ、


「ミリア、ルーチェもほどほどにするッスよ」


「まあまあ、久しぶりのお酒ですから」


妻や妹分をたしなめようとするレイド君を、

彼と同じくらいの高身長の焦げ茶の弟分、

ギル君がなだめ、


「そーだぞ!

 というかギルも飲め飲めー!」


「あなたもさっきから、お酒が進んで

 いないじゃないの~!」


「いやっ!?

 自分はお前が酔いつぶれたら運ばないと」


と、姉貴分と妻に彼は絡まれ……

段々と試飲会は宴会のようになっていった。




そんな宿屋『クラン』の上空で、

下を見下ろす二つの人影があり―――


「どうじゃ?

 もうそろそろいいのではないか?」


「そうですね……


 獣人族たちや奴隷の事がずっと気がかり

 でしたが、いい方向に進んでいるようで、

 何よりです」


輪郭(りんかく)がぼやけ、かろうじて人型とわかる何かが、

青年の声ですっかり髪の無くなった老人に返す。


「気にするな、と言っても聞き入れまいが、

 そもそも責任はお主をこの世界に移転させた、

 ワシにあるのじゃからな。


 後はもうお主の魂を、元の世界へ送り返す

 だけじゃ―――」


「はい。ここまで待って頂いて感謝しています」


会話からするに、一方はシンをこの世界へと

転移させた神様であるようで、


「お主ももう70年以上苦しんだのだ。

 これ以上気に病む事はない。


 ではもう、思い残す事は無くなったな?

 これからお主を元の世界へ転生させるが……


 その前に()びと言っては何だが、1つ特典を

 つけてやろう」


「?? と言われますと?」


神の問いに青年が聞き返すと、


「何、スキルやチート能力のようなものじゃよ。

 こちらの世界へ来た時も渡したが。


 まあ魔法とかは渡せないがのう。

 あちらの世界で好むものを言ってみるがよい。


 天才的な頭脳とか、美男子に生まれ変わるとか、

 スポーツ抜群の体になるとか―――

 何でも言ってみよ」


それを聞いた彼は少し考え、


「……いえ、僕が獣人族や奴隷たちにした事を

 考えれば―――

 そんな事は許されないと思うのです」


「じゃからさっきも言ったであろう。

 もともとはこちらの手違いから始まった

 事じゃ。


 お主が受け取ってくれねば、こちらの

 気が済まぬ」


そこで彼はまた考え込み、


「そうですね―――

 ここに来て、気がかりな事を1つ

 思い出しました」


「む? まだ何かあったのか?」


「はい。


 あのシンさんという人にお礼を言えずに、

 この世界を去るのはしのびなく……


 それで特典という事でしたが、

 こういう事は可能でしょうか?」


そこで一人と神様は、誰にも見えず気付かれない

夜空で話し込み―――

夜は更けていった。




「ん……?」


試飲会が終わり、自宅の屋敷に戻ってから

就寝していた私は、何かの気配に目を覚ます。


「こんばんは、シンさん。

 初めまして」


ベッドから上半身を起こすと、窓のそばに

月明かりに照らされた何者かがいた。


しかしその全体はぼやけ、男か女かも

わからない。

刺客かも知れないと思い、


「メル! アルテリーゼ!!」


両隣りで寝ていた妻二人に声をかけるが、


「ああ、ええと―――

 今の状況は夢のようなものだと思って

 ください。


 あなたのご家族は起きませんし、別に

 危害を加えようとして来たのでは

 ありませんから」


その言葉に室内を見渡すと、確かに枕元の近くに

置いているベビーベッドのシンイチと

リュウイチ……

そして私たちと同じベッドの足元で寝相の悪い

ラッチが寝ていたが、起きる気配はなく、


「では、何の目的でここへ?」


「一言、あなたにお礼を言いたかったのです。

 あちらへ戻る前に―――」


私が意図を測りかね、首を傾げると、


「同じ『境外の民(けいがいのたみ)』として、

 どうしてもあなたには会っておきたかった。


 僕はかつてのマルズ帝国にいた参謀です」


彼の言葉に私は、思わず息を飲んだ。




「はあ、なるほど……

 結果として獣人族や奴隷たちがああなって

 しまったので、死ぬに死にきれなかったと」


「僕としては、せっかく戦える力を

 もらったので―――

 それで彼らを救いたかったのです。


 間違いに気付いたのはずっと後でしたが」


聞くと、彼はまだ十代半ばでこちらの世界へ

転移させられたようで、


こればかりは人生経験というか、深く物事を

考えるには若過ぎたのだろう。


「僕はすでに30年以上前に、失意のうちに

 この世を去りました。


 その時、僕をこちらの世界に転移させた

 神様から、魂は元の世界へ戻してやると

 言われたのですが……


 どうしても僕は、獣人族や奴隷たちの事が

 気になって、こちらの世界に留まったのです。


 何の意味も無い事でしたが―――

 そのままにして去る事は出来なかった……」


こうして聞くに、責任感や正義感はあったん

だろうな、この人物は。


しかしする事が正しいからと言って、うまく

いくかどうかはまた別問題。


根が善人っぽくあるだけに、何とも

救いようのない話だが。


「しかしシンさんが来てから、獣人族や奴隷の

 待遇は一変しました。


 この公都のように亜人や人外の差別なく、

 共存して暮らしている状況が、いずれは

 世界中に広がっていくでしょう」


「そ、そうですか―――


 いえ、実際私はあまりこの世界のシステムや

 制度を、大きく変えるべきではないと思って

 いただけなんですけど」


私が頭をかきながら答えると、


「そうですね。

 それに比べて僕は性急(せいきゅう)過ぎました……


 ですがこれで、思い残す事もなくなりました。

 そこでシンさんに最後―――

 会ってお礼を言いたくてこちらに」


「ああ、元の世界に戻られるのですね?


 という事はあちらに転生するのですか」


彼はコクリとうなずくと、続けて、


「はい。

 そしてその時にこれまでのお詫びとして、

 神様から何か特典を頂ける事になったのです。


 しかし僕がしてきた事を考えると、それを

 受ける事はどうしても出来なくて……


 それで神様と相談したところ、この特典を

 シンさんに(たく)しても良い、という事に

 なりました」


「ん?」


何か話がおかしな方向に飛んだような?


「あちらに生まれ変わるのであれば、

 強力な魔法などはもちろんもらえませんが、


 ですがこちらの世界で託すのであれば、

 たいていの事は受け入れられるでしょう。


 今、シンさんが欲しい力は何でしょうか」


「はい!?

 い、いえ突然そんな事を言われましても。


 それに私は、なるべく自分の力を極力

 使わないように心がけているんです。

 緊急事態でも無い限りは」


「ええ。みだりに力を使う事無く自重して

 おられるのはわかっています。

 これまでも見て来ましたから―――


 そんなシンさんだからこそ、力を託す

 事にしたのです」


そこまで褒められると気恥しいのだが……

しかし、今の能力のままでも十分チートなのに、

これ以上何かもらうわけにも。


それに直近(ちょっきん)懸念事項(けねんじこう)はフラーゴル大陸、

メナスミフ自由商圏同盟の事があるけど、


「いや、あの―――

 自分がみだりに力を使わないというのは、

 自重以外に別の理由もありまして。


 自分が死んだ後、この世界からいなくなった

 後……

 自分しか出来ない方法は残しておくべきでは

 ない、というのもあるんですよ。


 自分の死後、同じ状況になった時誰も対処

 出来ない、では困りますからね」


今この問題を新しい力で何とかしたとしても、

自分以外がこの問題に対応出来なければ、

後々どうしようもなくなるからなあ。


「なるほど。

 そこまで考えておられたのですか。


 そうなると永続性、もしくは誰でも再現可能な

 方法で残しておいた方がいいという事ですね」


そこで彼が再び考え込むのを見て、


「えーと、私自身の力になる以外ではダメなの

 でしょうか?」


「と言いますと?」


「技術とか、『こうすればこうなる』的な

 法則とか―――


 例えば何かを食べたら体質が改善する、

 みたいな」


「う~ん……

 それがシンさんのリクエストであるのなら、

 神様に言えば通りそうな気もしますけど。


 ですが体質改善とはどういったもので?」


そこで私は吸血鬼(ヴァンパイア)一族の事を思い出し、


「そうですね。

 ちょうど最近、この公都に吸血鬼の方々が

 やって来られたのですが。


 日光に弱いという弱点がありまして―――

 それで難儀(なんぎ)されているようなんですよね。


 そういう体質改善というか、能力強化?

 みたいな事が出来たらと」


「ふむ。

 それなら、シンさんがこの世界で新しく

 作った、もしくは持ち込んだものの方が

 いいと思います。


 長い歴史の中で、いきなり改善されたと

 いうのも変ですし……」


「ああ、では発酵食品はどうでしょうか?

 味噌とか納豆とか漬物とか。

 あれならつい最近のもののはず」


私の提案に彼はうなずいて、


「そうですね。

 ではそのように神様に伝えておきます。


 出来れば、その吸血鬼だけではなく、

 人間や亜人・人外についても何らかの

 能力強化や改善が起こるよう、お願いして

 おきましょう。


 せめてもの罪滅ぼしとして―――」


彼はそれで安心したのか、ぼんやりとしていた

姿がさらに薄くなっていって、


「あっ!

 そ、そういえばお名前を」


私が思わず呼び止めると、


「……今さら、この世界に名前を残そうとは

 思いません。

 忘れ去られる事こそ、僕の願いです。


 ではシンさん。

 獣人族や亜人や人外、奴隷たちを―――

 引き続きよろしくお願いいたします」


そう言いながら彼の姿は薄くなり続け……

最後に頭を下げたかと思うと、完全に月光に

溶けるようにして無くなった。




「……?」


朝、ベッドで目が覚めると―――

普通に両隣りにメルとアルテリーゼ、

足元にはラッチが寝ていて、


「おはよう、シン」


「もう朝か……」


妻たちが身を起こすと、


「お~……?

 もう朝?」


ラッチが身をよじってベッドに腰掛けると、

シンイチとリュウイチが泣き始め、


「あー、ごはんねごはん」


「まずはおっぱいじゃなあ。

 あ、でもお酒飲んだから今日と明日は

 山羊乳で」


母親二人は我が子に駆け寄り―――


「んじゃラッチ、朝食の準備をしようか」


「おっけー!」


黒髪ショートの娘は目をこすると、私と一緒に

寝室を後にした。




( ・ω・)最後まで読んでくださり

ありがとうございます!

本作品は毎週日曜日の16時更新です。

休日のお供にどうぞ。


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(;・∀・)カクヨムでも書いています。

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【女性冒険者パーティーの愛玩少年記】【完結】

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― 新着の感想 ―
(*ゝω・*)つ★★★★★ 主人公氏が転移された理由が遂に…!?  現在、1話から読み直しております。  
昔々に何かで読んだのですけど「馬乳酒は凄い匂いで鼻を摘んで飲んだ」とありました。 もちろん地元の人々にとってはなんて事ないんでしょうけど。 要するに「発酵食品の匂いは地元民以外には耐えられない」ってこ…
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