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285・はじめての けんせいさくせん

|д゜)台風は去ってくれたようだけど

(そしてめっちゃ暑くなってる)


「ああ……

 確かに俺様の信者というか部下だ。


 彼らが迷惑をかけてすまなかった」


青と白の中間色みたいな髪をした、

ドラキュラのコスプレのような格好をした

七・八才くらいの少年が頭を下げる。


「フェルギ様の知り合い―――

 という事は、いったい何百年くらい前の」


宿屋『クラン』で不審者を捕らえた私たちは、

その場で事情聴取したところ、


彼女は自分の事をオフェリアと名乗り、

亜神(デミゴッド)であるフェルギ様を(あるじ)(あが)めている事、


その彼の気配をたどり、この公都に

やって来た事、


他にも五人くらいの仲間がいて、

公都に潜んでいる事などを白状した。


そこでいったん、不審者として全員

地下牢預かりとなり……

その間に魔力通信機で王都の研究施設にいる

フェルギ様に連絡し、


彼が慌てて飛んで来た、というわけだ。


「でも、フェルギ様が封印されたのって、

 500年くらい前とか言ってなかったっけ?」


「となると、彼らはその子孫という

 ところかの?」


童顔の妻と、モデルのようなビジュアルの妻、

二人が首を傾げるも、


「いえ、我々は吸血鬼(ヴァンパイア)です」


紫の髪をワンレングスにして、片目を隠した

女性、オフェリアさんがまず語り、


「いつかはフェルギ様が復活されるのを信じ、

 眠りについていたのですが」


「しかし、よもやこのようなお姿になって

 おられようとは―――」


そう言って彼らは、幼い姿となったかつての

主人を見つめる。


そういえば、フェルギ様自身どうしてこんな

姿になってしまったのか、わからないって

言っていたものなあ。


「だが、どうして盗みなどしたのだ?

 ここは物価も安いし、俺様の部下だと事情を

 話せば、相談に乗ってもらえただろうに」


彼がそう言うと、オフェリアさん以下は

首を左右に振り、


「いえ、どう考えても私ら……

 討伐対象だと思って」


「血をもらおうにも、ここはドラゴンや

 ワイバーンが飛び交っていますし」


「そこで夜中にこっそり、食料を頂戴していた

 次第でして」


私はう~ん、と両腕を組んでうなり、


「そういえば―――

 やはり吸血鬼って人間と敵対している、

 危険な存在なのかな?」


この世界の住人である、メルとアルテリーゼに

質問してみると、


「そもそも、おとぎ話の(たぐい)の存在だよー」


「我も聞いた事はあるが、実物を見るのは

 これが初めてじゃ。


 まあこちらはドラゴンであるし……

 敵対などは考えた事もなかろうが」


そこで私は確認のために彼らに向かい、


「えーと、吸血鬼と言うと―――


 日光に弱く、人の血を吸い、霧や影など

 実体の無いものに変身したり、または

 コウモリに変化出来る……

 という認識で合っていますか?」


その問いにオフェリアさん以下は

うなずいて肯定し、


「まあそうだね。

 昔話の吸血鬼はそんな感じ」


「しかしよく見ると、みんなフェルギと同じ

 格好をしておるのう。

 それで気付くべきだったかも知れぬが」


すると亜神の彼は頬をポリポリとかいて、


「それは彼らが勝手に俺様の格好の真似を

 しただけだ。


 しかし500年もの間待っていてくれたと

 いうのは、律儀というか何というか。

 まあ嬉しくは思うぞ」


主の言葉に、彼らは(ひざまず)き頭を下げる。


「シンよ。

 彼らを公都『ヤマト』に住まわせてやる事は

 可能か?」


続けて出た言葉に、


「ここは亜人・人外をかなり受け入れて

 いますから、大丈夫だとは思いますけど。


 ただ血を飲むんですよね?

 その調達が難しいかなあ、って」


一番の懸念(けねん)材料を伝えると、


「ええと―――

 魔力さえあれば血は別に必須(ひっす)という

 わけではありませんので」


彼らの中からあっさりと答えが出される。

そうか、食料と同じで……

魔力で(まかな)える事が出来れば構わないのか。


「でもそれっぽいものがここには

 ありましたよね?


 ドロドロの真っ赤なジュースの他に、

 血と結構似通(にかよ)ったものが」


オフェリアさんの言葉に、私と妻たちは

顔を見合わせる。


「そんなもんあったっけ?」


「確かに公都はいろいろなものがあるが、

 血を使った食べ物や料理は無かった気が

 するけど」


と、二人も首を傾げる。


「それは白っぽい色をしていて、あとそれを

 固めたものや柔らかいものとかが―――」


彼女が必死に説明する。

確かに、本当に血と似たようなものが

あるのなら、吸血鬼に取っては望外の

食材だろう。


「う~ん……

 ではちょっと厨房まで付き合って頂けますか?


 その中にあったら教えてください」


そして私たちは取調室から場所を変え、

みんなで厨房へ向かう事となった。




「それで?

 血に似た食い物って何だったんだ?」


アラフィフの、筋肉質のギルド長が

聞き返して来る。


その後、私は報告のために―――

一人で冒険者ギルド支部を訪問していた。

(メルとアルテリーゼは、ラッチとシンイチ・

リュウイチの待つ児童預かり所へ)


「食感的にはトマトジュースが……

 そして牛乳やチーズ、クリームなどが

 彼らに取っては血の代わりになるものだと」


厨房で彼らに、血に似ているという食材や料理を

指定してもらったのだが、


彼らが選んだのはトマトジュースの他―――

牛乳やそれらを加工した乳製品であった。


「それが血の代わりになるッスか?」


黒髪に褐色肌の次期ギルド長である青年が、

私の答えに疑問を呈するが、


「いわゆる牛乳って、血の成分に近いんですよ。


 それに赤ちゃんに必要な栄養を全部(そろ)えて

 いますから、夜だけしか活動出来なくても、

 それで満たされていたんじゃないですかね」


『ほぉ』『へー』、とジャンさんとレイド君が

父子のようにうなずく。


「この公都に来ているのは、そのオフェリアと

 やらを合わせて5人と言っていたが、


 フェルギの部下ってそれだけなのか?」


「いえ、彼らは代表としてまずフェルギ様の

 居場所を突き止めようとしてやって来た

 だけのようですので。


 他、彼女たちも合わせて……

 一族が30名ほどいるそうです」


「吸血鬼がねぇ。

 多いんだか少ないんだか。


 で、やっぱり公都(ウチ)に来るッスか?」


「そうですね。

 やはり、昔のようにフェルギ様に仕えたいと

 いう事で―――」


こうしてしばらく、ギルドメンバーとしての

話し合いが行われ……


ひとまず受け入れに関しては問題は無いのでは、

という結論が出たところで、


「そういえばジャンさん。

 今、彼らは窃盗と不法侵入という事で、

 牢屋にいるんですけど」


今回の問題点としては、


・公都の住人に疑いをかけない

・公都の治安関係者の責任問題にしない


という『お願い』もあったので、それについて

聞いてみると、


「フェルギが王都に行っていたしな。

 それでかつての部下が来る、という連絡が

 入れ違いになってしまい、こういう状態に

 なってしまったという事にしておこう。


 不法侵入については夜しか動けない事もあり、

 許可が出ていると勘違いしていた、でいいか。


 被害額はたいした事は無いだろうし、

 賠償も含めてフェルギに払わせて―――」


さすがに組織のトップだからか、この手の

つじつま合わせは慣れている感じでギルド長が

続ける。


「じゃあロンさんとマイルさんに、一言

 言っておいた方がいいッスね」


次いで次期ギルド長が話を合わせ、


「おうわかって来たじゃねぇか。


 じゃあこれで……

 と言いたいところだが。


 シン、ちょっと聞きてぇ事がある」


「?? 何でしょうか?」


私がジャンさんに聞き返すと、


「その吸血鬼とやらは、何の役に立つんだ?


 お前さんの故郷(せかい)の知識じゃどうなっている?」


「う~ん。

 何かの仕事に就けるつもりですか?」


「そりゃ出来るならそうした方がいいだろう。


 ここにいる人外や亜人たちは、何らかの役に

 立っているんだし―――

 印象は大事だぜ」


まあ、確かにギルド長の言う通りだ。


金銭的にはフェルギ様がいるし、働かなくても

問題は無いだろうが……

共存共栄を目指すのであれば、何かに必要と

された方がいいに決まっている。


それに、ここの人外や亜人は何かしら働いて

いるというのに、彼らだけ遊ばせるわけにも

いかないだろう。


「しかし弱点が日光ですし―――

 まともなお仕事はちょっと難しそうかも。


 そこは彼らと相談してみましょう」


「おう、頼むわ」


そこで私はしばらく雑談した後……

冒険者ギルド支部を後にした。




「ふーん。

 それでお父さん、どうしたの?」


夜、自分の屋敷で家族と一緒に夕食をしながら、

みんなと情報を共有していると、黒髪ショートの

娘が聞いてきて、


「あの後、日が暮れた後にもう1度地下牢へ

 行ってさ。


 夜間警備がいいんじゃないかって話になって、

 フェルギ様にも了解を得て―――

 みんなが集まったらそうするって」


「しかし、夜間警備って見回りの事でしょ?」


「何というか地味な役職じゃのう」


メルとアルテリーゼが素直に感想を述べる。


「実際、そこは仕方が無いかなあ。


 戦闘においてはドラゴンやワイバーンが

 いるんだし、


 霧や影になったところで、基本は逃げる

 能力でしかないからね。


 かと言って生産性もなあ。

 アラクネのラウラさんや土蜘蛛のつっちーさん

 みたいな、特殊な生産物も無いし……」


ファンタジー世界であれば定番で、そこそこの

強さを誇る種族のはずだが、


人外や亜人だらけのこの場所だと、却って能力が

埋没(まいぼつ)してしまうのだ。


「魔法はどうなの?」


「氷魔法や雷魔法(サンダー)を使えるらしい。

 それもかなり強力なヤツ。


 他にも結構使えると言っていたけど、

 やっぱり夜間限定というのがネックに

 なってね」


メルの問いに私が答えると、


「そう考えると、ここに来て良かったのか

 悪かったのか―――


 亜神の側近だからそれなりに強かったの

 だろうが、ここでは取り立てて珍しい

 力では無いしのう」


「ちょっと気の毒だよねえ。

 ね、シンイチ、リュウイチ」


アルテリーゼの後に、ラッチが弟たちを

あやしながら語る。


「一応、上位クラスの魔法を使えるのと、

 当人たちに魔法が効きにくい、という

 特性はあるけど。


 でもそれくらいしか無いと言えば無いし、

 夜の見回りも、夜目や嗅覚の鋭い獣人族と

 比べてしまうとちょっと微妙……」


「まあ、夜間専門の警備・防衛戦力として見れば

 いーんでないかい?


 出来れば昼も働けたらいいんだけど、

 吸血鬼だもんねえ」


と、まあ仕方ないよねえという空気が形成され、

私たちは夕食の時間を過ごした。





「演習……ですか?」


「ああ。

 目標はザハン国だ」


数日後、魔力通信機で王都・フォルロワに

呼ばれた私は―――


冒険者ギルド本部で、白髪交じりのグレーの

短髪の、細マッチョな四十代の男と、


パープルの長髪に、その前髪を眉毛の上で

整えた女性が、二人して私と対峙して座る。


ちなみに今回は相談だけだという事で、

私一人で『ゲート』を通って王都に来ていた。


「ライさん、ティエラ王女様……


 ザハン国と事を構えるつもりですか?」


まさかこちらから攻め込むとは思わず、

私は顔色を変えて確認すると、


「まあ、落ち着いてくださいシン殿」


「今回はちょっと依頼内容が特殊でして」


金髪を腰まで伸ばした童顔の女性と、

眼鏡をかけた黒髪ショートの女性が、

飲み物を差し出してくる。


「サシャとジェレミエルの言う通り、

 今回はちょっと特殊なんだよ。


 正確に言えば、依頼内容が決まっていない。

 というかシンに任せたいものなんだ」


「??」


ライさんの答えに理解不能という顔をしたのか、

すかさずティエラ様が、


「これまでは、相手国が動いてから―――

 対応する動きをしてきました。


 ですが、ザハン国……

 及びメナスミフ自由商圏同盟を相手にして、

 後手後手に回っている余裕は無いと

 思われます。


 そこでシン殿に、もしあちらが戦争を決意、

 もしくは仕掛けようと考えているのなら、

 そのカウンターとなる作戦を考えて

 頂きたいのです」


「あるいは、相手の戦意を無くす―――

 戦争を吹っかけようなどと思わせなくする

 作戦だな」


示威(しい)というか威嚇(いかく)行動というわけか。


続けてライさんが補足する。


しかし一千隻の船団を無傷で返したのが、

ついこの前だからなあ。

それ以上にって事になるのかな。


かと言って本気にさせて全面戦争に

(おちい)るわけにもいかない……

そう私が悩んでいると、


「まあつまりですね。


 こちらの実力を見せつけつつ、

 それでいて衝突には至らず、

 しかし威圧(いあつ)するだけとは悟らせず、

 一方でこちらと戦う事の有利不利を植え付け、

 必要以上に怒らせたり恐怖させる事もない」


「という事をシンさんに考えて欲しいのです。

 ね、簡単でしょう?」


「今一気に難易度が跳ね上がった

 気がするんですけど!?」


サシャさんとジェレミエルさんの無茶ブリに、

思わず大きな声を上げる。


「まあなんだ。

 間もなく、『見えない部隊』も

 帰ってくる。


 その情報がわかれば、少しは作戦立案の

 手がかりになるだろう」


「えっ?

 『見えない部隊』の方々、どこかに行って

 いたんですか?」


私がライオネル様の言葉に問うと、


「正確に言えば、すでに帰って来ております。


 我がランドルフ帝国は、少しはザハン国との

 交易をしておりますからね。


 その交易船に潜んでもらって、フラーゴル大陸

 各地の調査をお願いしており―――

 すでに任務を終えてわたくしと共に王都へ

 帰還しています」


ティエラ王女様の話に、そこまで話が進んで

いるのかと感心する一方で……

かなり危機感を(つの)らせているのを理解する。


確かに、聞いたところあのタクドルとやらは

一官僚に過ぎず―――

それだけで一千隻の大船団を動かせるのだから、

総力戦になればどれだけの戦力を出せるのやら。


規模としてもクアートル大陸の四大国と、

同程度かそれ以上と見ていい。

それが戦争を開始するとなれば、どこも

影響は避けられないだろう。


「陛下への報告が先だからな。

 その情報共有が終わり次第、こちらへ来る

 はずだ。


 『見えない部隊』が到着してから、お前さんに

 連絡しても良かったんだが……

 状況が状況だけに前後しちまってすまねえ」


そう言ってライさんが頭を下げるので、慌てて

私は話を別の方向へと振る。


「い、いえそんな……!


 あ、そういえば前に帝国に送った、

 ドルラン紙とそれで作られた『紙オムツ』

 なんですけど」


そうティエラ様にたずねると、


「あー!

 あれ、すごい人気ですよ!


 ちょうど赤ちゃんが産まれた貴族や

 名家に下賜(かし)したんですけど、お世話役の

 メイドたちからとても感謝されました!


 もちろん、帝都の冒険者ギルドを通して、

 ビルドさんの故郷にも送付済です」


と、あちらでも人気なようでホッと胸を

なでおろすと、


「これでいつ子供が出来ても大丈夫ですね!

 さっさと仕込んでくださいよ」


サシャさんの言葉に、ギルド本部長はブッと

飲み物を吹く。


「お、お前ら言い方ってものがな」


顔を赤らめるティエラ王女様の隣りで、

ライさんが抗議するが、


「そうですよー。

 後がつかえておりますので。


 早く世継ぎを作って頂かなければ、

 安心して愛人枠を狙えないじゃないですか」


「がっ、がんばります?」


ジェレミエルさんに律儀にティエラ様は答え、

男性陣が頭を抱える状態は、『見えない部隊』が

到着するまで続いた。




「ふーむ―――


 しかしすごいですね。

 要人の住所から、軍の拠点まで……」


『見えない部隊』が入手した情報を見て、

私は感嘆の声を上げる。


「まあ、襲いに行ったわけじゃないからねえ」


「しかしホント、どこもかしこも魔力頼り

 だってのがよくわかるよ」


恰幅(かっぷく)のいい赤毛の女性と、()せ過ぎとも思える

チンピラギミック全開な男性―――

ブロウさんとジャーヴさんが答え、


「なかなか面白い仕事でしたけどねぇ♪


 しかし、ロンさんやマイルさんにも秘密とは。

 本当、心が痛むんですけど♪」


顔にピエロのような星マークを付けた、

細身の男性……

リコージさんが続く。


彼は公都『ヤマト』にスラムが出来た頃、

そこの裏社会の顔役として君臨(くんりん)していたが、

(■224話

はじめての かんゆうとうでだめし参照)


後に捕らえられ、服役後に公都の治安機関に

就職。

公都部隊長であるロンさん・マイルさんの

部下として働いていた。


だが後に『見えない部隊』に勧誘され、

今では表の仕事をしながら、裏では文字通り

世界中を飛び回る凄腕の諜報員として

活躍している。

(■249話 はじめての すかうと参照)


「裏の仕事をする人間は、表で固い仕事に

 就いて、信用を得るのが一番だ。


 初期の『見えない部隊』は極秘に設立

 出来たが、人員補充となるとそうも

 いかなくてな」


ライさんが説明するように事情を語り、


「あちらに拠点は?」


「いくつか出来ているよ。

 こういう時、裏社会の経験は役に立つ

 からねえ」


ブロウさんが事もなげに話す。


「それより、ちょっと面白い事になって

 いますよ。


 ほら、ファルコン部隊のファルコンが、

 人間の姿になれるようになったって

 話でしょ?」


「それがどうかしたんですか?」


ティエラ王女様が聞き返すと、


「メナスミフ自由商圏同盟ですかぁ♪

 あの国も何て言いますかぁ、亜人や人外に

 対する差別が酷いみたいなんですよぉ。


 ですが、人間の姿となったファルコンたちが、

 自分のパートナーにその待遇改善や是正を

 お願いしているらしくてねぇ♪


 特に女性だった場合はその頼みを断り切れず、

 ザハン国の中で問題になっているそうで♪」


リコージさんの言葉に、同席していた

獣人族の『見えない部隊』メンバーもうなずく。


「馬もそうですけど、ライダーって基本

 一蓮托生(いちれんたくしょう)ですからねえ」


「お互いに命預け合ってます―――

 というくらいの信頼関係でしょうから、

 相棒の言う事は無視出来ないでしょう」


確かにそれはあるだろう。

ライダーに取っては単なる乗り物ではなく、

かけがえの無いパートナーなのだ。


特にそれが、命の危険を(ともな)う軍という組織の

一員であれば……

より絆が強固なのは間違いなく。


「まあそれはいい変化だととらえておこう。


 だが今は、ザハン国及び自由商圏同盟への

 けん制・威嚇策を考えなけりゃならん。


 それでどうだシン?

 連中を思いとどまらせるような作戦は

 思いつきそうか?」


私は彼らが調べ上げた資料にざっと目を通すと、


「威嚇―――


 それでよければ何とかなりそうな

 気もします」


「本当ですか!?」


ティエラ様が身を乗り出して来て聞いて来る。


「そうですね、まずは……


 彼らが調べて来た重要拠点―――

 それと同じ大きさや高さの建物を借りて

 ください。


 それと……」


「それと?」


今度はライさんが私に顔を近付けて来るが、


「公都に連絡を―――


 相談だけだと聞いていたので、一応家族に

 連絡しておきたいのですが」


その答えに彼はガクッと肩を落とし……

そして笑い声が室内に広がった。




「悪いな、メル、アルテリーゼ。

 思ったより長引いてしまって」


「いいって事よー」


「旦那様に付き従うのは妻として当然の事ぞ?」


翌日の夜―――


『演習』場所となった王都郊外で、私と妻たちは

会話を交わしていた。

(ラッチはシンイチ・リュウイチのお世話のため

お留守番)


「この塔が一番条件に近いな」


「しかし、いくら魔力無しの行動に慣れている

 とはいえ……

 危険だと思われますが」


そこにはライさんとティエラ王女様もいて、


「結構高いな」


「魔法も魔力も使わないで、か」


「やるだけやってみますかい」


『見えない部隊』メンバーが、その塔を

見上げる。


「じゃあ、アルテリーゼ、メル。

 待機お願い。


 他の方々も、くれぐれも慎重にお願いします」


私があの後、出した作戦―――

それは、ザハン国にある各拠点を、魔力・魔法を

無効化した状態で攻略するというもの。


と言っても別に鎮圧や占拠という事ではない。

ただその建物の最奥まで行って……

戻って来られるかどうかというだけだ。


「しかしぃ♪

 『万能冒険者』が、『境外(けいがい)(たみ)』でした

 とはねぇ♪


 まだまだ驚く事ばかりですよぉ、

 この世界は♪」


『見えない部隊』に入った事で―――

リコージさんにも情報共有はされており、


「どうも申し訳ありません。

 こんなインチキみたいな能力で」


「でもでもぉ、この事はロンさんや

 マイルさんはご存知なんですかぁ?」


「いえ、さすがにそれは……」


「はぁ、ホント私、心が痛みますよぉ♪

 あのお二人に隠し事をしなければならないと

 なりますとぉ」


おどけるようにリコージさんが答える。

それはそうと、上司であるあの二人との

関係は良好そうで何より。


「じゃあそろそろ始めてくれ、シン」


「わかりました」


本部長の言葉で―――

私は『見えない部隊』メンバーに向き直り、


         ・・・・・

「魔法や魔力など、あり得ない」


と、彼らの魔法・魔力を無効化させる。


「では開始してください。


 事前説明の通り、各所には見張りもいます。

 彼らに見つからず、塔の屋上まで行き……

 決められた物を設置して戻って来てください。


 魔導具以外の道具なら、何を使っても

 構いません」


私の説明に各メンバーはうなうずく。


これは、『気付かれない内に、重要拠点の

奥深くまで忍び込む事が可能』だという事を、

相手に知らしめる作戦の一環で、


「では一番手は俺から」


一人が手を挙げ、『演習』は始まった。




( ・ω・)最後まで読んでくださり

ありがとうございます!

本作品は毎週日曜日の16時更新です。

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【女性冒険者パーティーの愛玩少年記】【完結】

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【ゲーセンダンジョン繁盛記】【完結】

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(*ゝω・*)つ★★★★★  吸血鬼の人達、隠密部隊の二軍と言うかオトリ&欺瞞工作要員に スカウトされるのかと思いました。
「命預けます」かぁ。 漫画「ムーンライト マイル」では登山のザイルパートナーについて書かれていましたけど 「登山中にザイルパートナーが滑落し、ザイル一本で繋がっているだけ」 の状態ではザイルパートナー…
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