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275・はじめての あどばいす

|д゜)急に暑くない?

(今から夏に怯える)



「ランドルフ帝国とドラセナ連邦が

 動いただと?」


大ライラック国、首都・マルサル―――


その王宮の一室で、いかにも軍服、という衣装に

身を包んだ男たちが……

長テーブルに座り会議を進行していた。


「大船団を編成したとの事。

 行先は、辺境大陸です。


 ウィンベル王国始め、同盟諸国である国々の

 要請を受けてとのものだそうです」


報告者である青年が、書面を片手に述べる。


「まさか、メナスミフ自由商圏同盟を敵に回す

 覚悟が出来たというのか?」


「軍王ガスパード様!

 これでは、クアートル大陸も巻き込まれる

 事に」


ざわざわと不安な声が議場を行き交うが、


「落ち着け」


トップの一言で、一瞬で場は静まり返り、


「その要請内容は?」


続けて出た軍王の言葉に、報告者の青年は

身を硬直させるも、


「は、はっ!


 ザハン国の船団が辺境大陸沖合いにて、

 動けなくなった、との事で―――


 一時的に沿岸に寄せたものの、それだけの

 船を停泊させる港はなく、


 そこでランドルフ帝国とドラセナ連邦に、

 クアートル大陸までえい航してもらえないかと

 打診して来たそうです」


するとまた再びさわめきが戻って来て、


「動けなくなった、だと?」


「以前、ランドルフ帝国の船団も全船拿捕(だほ)された

 ようだが」


「しかし今回は規模が違うはず……」


口々に意見が飛び交うが、


「軍事的に何か動きは無いのか?

 遠征や、もしくはザハン国と組んで

 辺境大陸を侵攻しようという腹かも

 知れんぞ」


幹部の一人が報告者に問うと、


「そ、その可能性も考えられましたが、

 今のところ目立った軍事行動は見られない

 ようでして。


 準備している船団も軍民双方のもので、

 さらにえい航して来た船を停留させるための

 港の確保に奔走(ほんそう)しているとの事。


 これらの事から考えるに、ただ純粋に

 辺境大陸の要請に応じるためだけかと」


そこでガスパードは『ふむ』と声を上げると、

その一言に全員が振り向き、


「ランドルフ帝国とドラセナ連邦に、

 使者を出せ。


 『もし港が緊急に必要なのであれば、

 大ライラック国も協力を惜しまない』


 とな」


すると重鎮(じゅうちん)たちがガタガタと立ち上がり、


「そ、それでは!」


「両国と協調路線を取るのですか?」


臣下の言葉に軍王は続けて、


「辺境大陸ともな。


 あらゆる側面から見て―――

 ザハン国ご自慢の船団すら、相手に

 ならなかったという事だ。


 これ以上後手後手に回っていては、

 国益と安全保障を失うばかり。


 そして今まで以上に、辺境大陸の技術を

 吸収するぞ」


「「「ハハッ!!」」」


ガスパードに対し全員が最敬礼の姿勢を取り、

大ライラック国の方針は固まった。




「あっ、タクドル様それは!」


「今は静かにしてちょうだい!

 いいところなのよ!


 アムール選手対ジャワ選手の、チャンピオンを

 賭けた1対1・60分一本勝負なの!!」


ウィンベル王国王都・フォルロワ……

その王宮の一室で、


魔法を封じられたザハン国の使節一行は、

そこに押し留められていたのだが、


リーゼントのような髪型をした、一行の

最高責任者が見ていたのは―――

いわゆる『神前戦闘(プロレス)』を録画した

映像魔導具で、


専用のモニターにプロジェクターで映した、

その映像に見入っていた。


「この音楽を聞かせてくれる魔導具もいい……

 船旅にこれがあればいい気晴らしになる」


「おーい、誰がリバーシの対戦をしないか?」


「この魔導具もすごいな。

 現物もあるが、自分でひっくり返す手間が

 (はぶ)ける」


さらに、実際の演奏を録音した魔導具や、

画面を升目(ますめ)で囲い、そこに〇●を表示させる

リバーシの電子ゲーム機のような魔導具も

王都では開発されており、


彼らはそれを思い思いに楽しんでいた。


「あぁん、どうしてよぉ!?

 今のはちゃんと3つ入ったでしょお!?

 わたくしのジャワちゃんがー!!」


立ち上がって頭を両手で抱える上司を横目に、

部下たちは、


「あっちも面白いですけど、俺は女子の方の

 『神前戦闘』が好きかな」


「俺はあの劇にハマっている。

 まるで自分も舞台の中にいるようでさ」


「購入も自由に、って言ってたし―――

 とにかく、持ち帰れるだけ買おう」


大船団による威嚇(いかく)砲艦(ほうかん)外交が失敗した

ザハン国一行は、今ではすっかり新大陸の娯楽に

ハマっており、


彼らの頭の中は、いかにして本国にそれらを

持ち帰るか、それだけになっていた。


すると突然タクドルが飛び上がって、


「やったわぁああ!!

 これで新チャンピオンよおぉおお!!」


「見えません、タクドル様!」


「座ってください!!」


と、同じ映像を見ていた部下たちから注意を

受けた。




「今日のもなかなかだったわねえ」


映像が終わり、一段落した後……

ザハン国一行はくつろいだ様子で、


「しかし、悔しいですね。

 この程度の魔導具なら、ザハン国、

 ひいてはメナスミフ自由商圏同盟でも

 作る事が出来たはず」


「発想が自由なのだろう。


 そして、これだけの物を作れると

 いう事は―――

 兵器思想もまた……」


そこまで言って彼は口をつぐむ。


「正直、()めていたなんてものじゃないわ。

 完全な計算違いよ。


 ここを敵に回すくらいなら―――

 まだクアートル大陸の四大国と戦争した方が

 勝ち目があるわ」


上司の言葉に、部下たちは沈黙で同意を伝える。


「大船団の方はどうなっているん

 でしたっけ?」


続けて出たタクドルの言葉に、


「いったん浜辺へ上陸させて、そこで

 待機してもらうようです」


「以前も似たような事があったらしく、

 魔族の1人を呼んで、氷の半球状の天井を

 作ってもらったとか」


「ファルコン部隊も一緒に上陸させて、

 そこにいるとの事です。

 なので健康状態は差し支えないとの事」


「対空兵器を中心に、ファルコン部隊の数は

 減らしていましたし……

 人数的にギリギリだったが、全員氷の

 天井の中へ収容出来たそうです」


大船団の乗員に関しては、ランドルフ帝国の

船団乗員を『保護』した時の浜辺があり、

当時と同様、『永氷(フローズナー)』のグラキノスが

氷のドームを作成していた。

(■173話 はじめての しゅうよう参照)


それを聞いた彼はふっ、と苦笑し、


「生き物は維持費がかかるのよねえ。

 それに、どうせ本格的な戦闘には

 ならないと思って―――

 最低限にしたんだけど。


 世の中、何が幸いするかわからない

 ものだわぁ」


「し、しかし……

 我々はこれからどうなるのでしょうか」


「?? どうって?

 書面は返してくれたし、今さらこっちに

 何かする事も無いでしょ?」


不安そうな部下の言葉に上司は答えるが、


「い、いえ。そうではなく」


「本国に戻ったら、我々の立場はどうなるか」


彼らは互いに目配せしてうなずき合う。


「あら、そんな事心配してたの?」


事もなげにタクドルが話すと、彼らは目を

丸くして驚くが、


「いい?

 わたくしたちは、辺境大陸について

 最も重要な『情報源』になったの。


 一千隻の大船団が、フェンリル様の怒りを

 買って無力化された―――

 これは(まぎ)れも無い事実よ。


 しかも証人は乗員全員。

 信じるも信じないも無いわ」


そこで彼はいったん一息つき、


「あとわたくしたちは多分……

 いったんクアートル大陸へ運ばれるでしょ。


 そこで情報収集よ。

 ラーシュ陛下の(おっしゃ)りようだと、同様の事が

 何度も起こっているみたいだし。


 それが一千隻の大船団にも適用されるのだと

 証明されたら―――」


「さ、されたら?」


部下の一人が聞き返すと、


「ザハン国一国ではどうにもならないって事。


 それだけの相手を前に、敵対する事無く

 戻ったら、わたくしたちの価値はむしろ一気に

 上がるわ。


 そして今後の交渉も任されるはず」


半ば楽観的な意見ではあるが、現実味のある

話でもあり、部下たちはうなずく。


「それに、この魔導具の数々を持ち帰る

 事が出来れば、それだけでひと財産よぉ♪


 献上するところによっては、今まで以上の

 地位だって望めるに違いないわぁ」


これまで、失態をどうやって取り(つくろ)うか

考えていた部下たちの顔は、それでパアッと

明るくなり、


「さてさてぇ♪


 ちょうどお腹も空いてきたところですし、

 今日はどこに行きましょうかねぇ♪」


「ガッツリ、ラーメンにしましょうか」


「いや、生魚を食べられるようにした

 料理もなかなかで」


と、そこへノックの音がして、


「あらぁん? どちら様ぁ?」


そして入って来た使者が書面を片手に、


「あ、これからお出かけでしたか?


 ラーシュ陛下からお話があるそうです。

 食事時ですので、それが終わってからで

 構わないそうですが」


その言葉に彼らは、互いの顔を見合わせた。




「……というわけで、ザハン国の使者一行が

 ここ、公都『ヤマト』に来るそうだ」


「えーと、それはいかなる理由で?


 確かに彼らは、ランドルフ帝国や

 ドラセナ連邦に引き取ってもらう前に、

 元に戻す事になっていますけど」


アラフィフの筋肉質のギルド長の言葉に、

私が聞き返すと、


「まあ、毒気(どっけ)を抜いてくれって事じゃ

 ないッスかね」


褐色肌の、黒髪黒目の次期ギルド長の青年が、

苦笑交じりに答える。


ここは公都『ヤマト』冒険者ギルド支部で、


呼び出しを受けた私は支部長室で、その報告を

受けていた。


「う~ん。

 それで私は何をすれば」


「別に何もしなくていいんじゃねぇか?


 ただ何だかんだ言って、一番文化や技術が

 発達しているのはココだからな。


 一応、お前さんには伝えておくって

 事だろう」


「それにこの公都を見れば、考えが変わるかも

 知れないッスからねえ。


 とどめというか、念入りに心を折っておくと

 いうか」


ジャンさんとレイド君の答えに、私は複雑な

心境になるが、


「まあザハン国やメナスミフ自由商圏同盟との

 交易も出来るようになれば―――

 料理の幅も広がるかも知れないですからね」


その言葉に二人は笑い出し、


「まーだ新しい料理があるのかよ」


「どれだけ引き出し多いんスか、シンさん」


その言葉に私は両腕を組んで、


「実際、今ある料理の組み合わせでも、

 新作は出せますよ?


 ただいずれ誰かが考えつくだろうなーと

 思って、作りませんでしたが」


すると現ギルド長と次期ギルド長は

食いついて来て、


「すぐ作れるのか!?」


「え? ええ、まあ……」


「じゃあお願いするッス!!」


そこで私は少し考え、


「じゃあ、久しぶりに新作料理の試食会と

 いきましょうか。


 ロンさんやマイルさんも呼んで―――」


そして急遽(きゅうきょ)、イベントが決定したのであった。




「いやぁ、ナマの『神前戦闘』がこの目で

 見られるとは思わなかったわ!」


「本当、すごい迫力でしたね!」


「獣人族と鬼人族の女性選手と、握手まで

 しちゃいましたよ、自分は」


数日後……

公都『ヤマト』へ移送されたザハン国の

使者一行は、


タクドル以下、公都『ヤマト』での生活を

満喫していた。


「しかし、夏真っ盛りだというのに、

 あちこちに設置された氷柱―――

 そして風を起こす魔導具……


 悔しいけど、本当に文化や技術は

 フラーゴル大陸より上だわ。


 ってあらぁ?

 何でしょうかねぇ、あれは」


彼の視線の先には、ずいぶんと(にぎ)わっている

お店があり、


「人だかりが出来ていますが。

 宿屋『クラン』でしたっけ?」


「あそこで食べた料理も確かに美味しかった

 ですけど―――

 今日は何かあるんでしょうか?」


そして彼らは誘われるようにして……

宿屋『クラン』へと入って行った。




「ンまい!!

 この組み合わせは思いつかなかった!!」


「油物の衣がさらに油を吸って……

 それがえも言われぬ味わいとなっております」


『クラン』の中では、すでにその新作料理の

試食会が始まっており、


すっかり()えた体形の、スキンヘッドの

ロック前男爵様と、

その従者である髪を後ろで束ねた執事風の男、

フレッドさんが麺をすすりながら語る。


「あぁあ、この油の暴力―――」


「今は店内も涼しくなっているとはいえ、

 汗が止まらぬ!

 でもうまい!!」


「これは反則だよ、おとーさん!」


私の妻である、童顔と西欧風の顔立ちの

女性二人、そして娘が汗だくになりながら、

料理を口に運んでいき、


「こりゃ確かに『すぐ作れる』ものだけどよ」


「まさかこんな組み合わせがあるッスとは」


「体に染みるうぅう……!」


隣りのテーブルで、いつものギルドメンバー、

ジャンさんにレイド君、そしてタヌキ顔の

丸眼鏡の女性、ミリアさんが一心不乱に

食いつく。


「うまっ!

 カツうまっ!!」


「いや、ゆっくり食べろって」


少し離れた席には、亜麻色の髪を後ろで

三つ編みにしたルーチェさんと、

その夫で細身で長身のギル君が夫婦そろって

食べていて、

(ちなみに赤ちゃん組は児童預かり所預かり)


「いやー、ガッツリくるわコレ!!」


「今回は当たりだな!」


その横では―――

ブラウンの短髪とこげ茶のボサボサ頭の

二人組……

公都部隊長であるロンさんとマイルさんが

舌鼓(したつづみ)を打っていた。


今回、私が用意したのは―――

カツをラーメンの具とした、いわゆる

パイコーメン。


カツにしたのはチキンやボーア、バイパーなど。

さらにフライや天ぷらなども入れてみたところ、

なかなかイケたのでそれも使っている。


「カツやフライは、コメと一緒に食ってこそ

 一番美味いと思っていたが」


「そのどれもが汁を吸って……

 た、たまらん!」


「王都では無かった新作料理だ!

 まさかまた新たな味に出会えるとは!」


一番後に入って来たお客さん―――

十人くらいの一行が、(むさぼ)るように料理を

食べていて、


「見ない顔だねえ。

 まあ、最近は外国からのお客さんも多いから

 珍しくは無いけど。


 でもアンタたち運がいいね。

 『万能冒険者』の新作料理を食べられる

 なんてさ。

 最近は無かった事だからねえ」


女将さんである赤髪を後ろで束ねた

40代くらいの女性、クレアージュさんが、

彼らに近付いて接客すると、


「『万能冒険者』?

 そういえば、王都でもよくそれを

 耳にしたわねぇ」


「何でも、新しい娯楽や料理は1人の冒険者が

 考えて広めた、とか」


「そういえばラーシュ陛下が……

 もし『今の状態』をどうにかしたいので

 あれば、『万能冒険者』と会ってみろ、

 と言っていたような」


耳に入って来る情報を分析するに、

もしかしてこの人たちって、


「あの、もしかしてザハン国の方ですか?」


私の声に彼らは一斉にこちらを見て、


「ん? シンさん、知り合いかい?」


「いや、まあ」


女将さんが聞いて来るが、さすがにこの場で

同盟諸国を支配しようとやってきた連中―――

とは言えず、


「あっ!

 シンってもしかしてあの時の」


「あはは、まあ……

 浜辺でお会いしましたね。


 今はとにかく食べてください。

 何か用件があれば後で聞きますので」


その言葉に一同はホッとしたようで、

再び食事タイムが始まった。




「やはり、あなたがあの時―――

 フェンリル様と行動を共にしていた」


「ウィンベル王国所属、平民でシルバークラス

 冒険者のシンといいます」


後日、私は公都『ヤマト』の王族専用施設で、

家族と共にザハン国一行と面会していた。

(赤ちゃんは児童預かり所預かり)


一応彼らは『不測の事態』により、

船が動かなくなった事で一時保護されている、

他国の使者、という事になっているのだが、


実質は捕虜も同然であり、さらに……


「シ、シン殿に頼めばフェンリル様の怒りを

 解く事が出来るかも知れない―――

 と伺いました!」


「このままでは本国に帰る事が出来ません!

 なにとぞ、フェンリル様に繋ぎを……!」


と、彼らは私の能力により魔法を封じられて

いるため、


ただ囚われている以上に状況は深刻であり、

その願いは切実(せつじつ)であった。


「心中お察しします。

 ですが、まあ―――


 今回の事は、時期が悪かったのもあったかと」


「時期、ですか?」


タクドルさんが頭を下げたまま、こちらを

見上げるようにして聞き返す。


「もともとフェンリルのルクレセント様は、

 私の妻であるドラゴンのアルテリーゼの

 友人なのですよ。


 そして今年ちょうど、妻たちに子供が

 産まれて……

 彼女も我が事のように喜んでくれたの

 ですが」


そこでメルとアルテリーゼ、ラッチが

ウンウンとうなずき、


「事情は聞いたけどさー。

 幼い子を魔物のエサ用に船に乗せて

 いたんだって?」


「人間とは、何と恐ろしい事を考えつく

 ものだと思ったわ」


「それはルクレお姉ちゃんも怒るよー」


女性陣からの指摘に、さすがに彼らは

身を縮めるようにして、


「ルクレセント様にまだ子供はおりませんが、

 すでに婚約者もおりますからね。


 そして友人に子供が産まれ―――

 自分もいつかは、と思っている時にあなた方が

 やって来た。


 彼女は人間同士の争いに首を突っ込むような

 事はありませんが、あのような非道な仕打ちを

 見せられると、容赦なく怒ります」


私の後に家族も次々と、


「まあ普段であっても、女として

 あんなものを見せつけられたらね」


「特に近頃は、我が子らを抱いて喜んで

 おったからのう」


「皆殺しにしなかったのは、子供たちの救出を

 優先しただけだと思うし」


そこで彼らは汗をぬぐいながら、


「ああ、あれは儀式といいますか。

 航海安全の祈願のようなものでして」


「む、昔はそういう用途に使った事もあったで

 しょうが、今では形式的な物に過ぎません」


「現に、そう『使われた』子供たちは、

 1人もいなかったかと」


と、連中は何とか釈明を試み、


「どの道、今のわたくしたちには何も

 出来ませんわ。

 従う他無いんですのよ。


 どのような要求も受け入れるので……

 おっしゃってくださりませんか?」


そして使節一行のトップが、懇願するように

頭を下げて来て、


「一応、話は通してみます。

 アルテリーゼを通せば、会う事自体は

 断られないでしょう。


 ですが問題は、どのようにルクレセント様に

 詫びを入れるかです。


 近くランドルフ帝国とドラセナ連邦から、

 迎えの船が来ると思いますので―――

 その時まで考えておいた方がいいかと」


「で、ですから……

 どのような事をすればいいのか、

 聞いているんですのよ!


 本国に帰ったら、お金でも何でも

 用意しますから!」


何でこの人は女言葉なんだろう?

というツッコミは置いておいて、


「ルクレセント様は、そういうものに

 興味は無いと思いますよ。


 怒ったのはあくまでも、幼い子供たちを

 非道に扱ったからであって、


 過去、2・3回ほど謝罪の場に立ち会った

 事はありますが―――

 心からの謝罪、それしか無いと思います」


「そ、そこを何とか!」


見ると、他の使節一行も(すが)りつくようにして

身を乗り出し、


「でもまあ、この公都とか見ていれば

 わかるんじゃない?」


「王都でも説明を受けたのではないか?


 奴隷制はあるが、犯罪奴隷を除いては

 期限制になっておるし、女子供を奴隷に

 する者もほとんどおらぬ」


「確かクアートル大陸でもそういう流れに

 なっているんでしょ?


 本国に戻ったら、1つそういう方向で動く、

 って言ってみたら?

 それならルクレお姉ちゃんも喜ぶんじゃ

 ないかなー」


メルとアルテリーゼ、ラッチが提案する。


実は王都と連絡を取って……

『出会ってしまったのなら仕方が無い。

 話がうまく進むよう調整して欲しいのだが』

と、ラーシュ陛下直々のお願いというか命令が

下り、


家族とも打ち合わせた上で、ザハン国での

人権改善に動く事になったのだ。


「ど、奴隷制の改革をしろっていうの?


 でもわたくしは一官僚に過ぎないのよ。

 とてもそんな約束は出来ないわ」


まあ当然の反応だ。

それにそんな要求をしたら内政干渉。

下手をしたら、それこそ開戦の引き金を

引いてしまうかもしれない。


そこで俺は首を左右に振って、


「別にそこまで大げさに考える必要は

 無いと思います。


 先ほども言いましたが、ルクレセント様は

 人間同士の争いには介入しません。


 要はルクレセント様に反省した事、そして

 自分たちは今後一切このような事はしません、

 国にも伝えておきます、と誓えば」


そして私の後に家族が、


「まー後は、誠心誠意(せいしんせいい)謝るしかないでしょー」


「一応、我からもあやつに話はしておこう」


「後は自分たちで頑張ってねー」


その言葉に、タクドル以下一行はペコペコと

頭を下げ、そこで私たちは彼らと別れた。




( ・ω・)最後まで読んでくださり

ありがとうございます!

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・「でもわたくしは一官僚に過ぎないのよ。とてもそんな約束は出来ないわ」 おぅ、とうとう本音が漏れたか。 ・ほう、パーコー麺ですか。岡山市内では概ねトンカツラーメンと呼んでいるように思います。店によっ…
(*ゝω・*)つ★★★★★  パーコー麺と言えば、肉の万世秋葉原本店ビル閉店1週間位前に 万世橋酒場(万世秋葉原本店ビル1階)寄ったら、ラーメンオンリーの 営業だったので、仕方なくパーコー麺ダブル味…
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