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274・はじめての ようきゅう

|д゜)今年の夏は涼しくなりそう?

(心から懇願)



「陛下はこの先におられます。

 どうぞ」


王宮の中、案内役の男に導かれ―――

タクドルと二人の部下が付き添いながら、

ウィンベル王国国王・ラーシュ陛下の部屋の

扉を開ける。


そして部屋に入った三人は、うやうやしく

大げさに(ひざまず)いて、


「これはこれはラーシュ・ウィンベル陛下。


 本日は謁見(えっけん)の機会を与えて頂き、

 まことに……!?」


そこで彼らが改めて室内を見渡すと、


「(な、何なんですかこの空間は……)」


「(無い。何も……無い!)」


「(これが―――

 今話題に上がっている辺境大陸、

 その中心国である国家のトップがいる

 部屋だというのか……!?)」


彼らが認識出来るものは、ノーマルな壁に天井、

部屋の中央にはシンプルな丸テーブル―――

その上に、これといった特徴のない、控え目な

花を飾った花瓶が置かれていて、


それを当たり前のように受け入れている

国王陛下に、彼らは困惑していた。


「(どういう意味……かしら?


 通常、こういう場合は精一杯の見栄を張って、

 ()められないようにするもんじゃないの?


 それがこんな―――

 見るからに何も無い部屋って)」


タクドルはリーゼントのような髪型の

前髪を揺らし、アラサーのブロンドの短髪の

国王を仰ぎ見るが、


「さてと、遠路はるばるやって来た

 用件を聞こう……


 どうかしたのかね?」


涼し気な表情で語る陛下を前に、彼は

思考をフル回転させる。


「(何も無い部屋にしたか、あえて

 この光景を見せたのだとしたら―――


 考えられる事は2つね。


 1つは、この国には持ち出すほどの

 ものも無い、無価値な国で……

 つまり攻め込むだけの意味は無いと、

 遠回しに伝えてきている―――


 もう1つは、『お前らごときにやるものなど、

 この部屋のように何も無い』という事なのか。


 お手並み拝見、とイキましょうか♪)」


そしてタクドルは近付くと、丁寧(ていねい)な仕草で

一通の手紙をテーブルの上に置く。


「読ませてもらおう。

 あ、どうぞ席についてくれ」


その言葉に、ザハン国の使者たちはそれぞれ

着席し、そしてラーシュ陛下はその書面に

目を通した。




「ふぅむ。

 一応、念のため聞いておくが」


「あらぁ?

 それは確かにわたくしの一存ではあります

 けどぉ、


 わたくし1人だけでも、それなりの『力』は

 あって要求しているんですのよぉ?」


『本国の許可は得ていないが、この辺境大陸

 相手なら、自分1人だけでも十分』

と、まず時間稼ぎでくるであろう、独断専行で

来ているのではないか?

という質問を潰す。


しかし、その答えにラーシュ陛下は首を傾げ、


「いや、そうではない。


 この要求、他の同盟諸国にはまだ伝えて

 いないな?」


「あら?


 え、えぇ……

 まずはこちらに、と思ったものですから」


その返しにタクドルはきょとんとした

表情になると、


「それは良かった―――


 もしこんな要求を魔王や魔界王、

 そしてグリフォン殿やワイバーンの女王に

 見られたら、()でも止める事は出来なく

 なっていたであろうからな」


そう言って心底安心した様子を見せる陛下に、


「(……今、魔王って言ったか?)」


「(確か魔界とも繋がりがある、という話

 だったが―――


 それがもし事実だとしたら……!?)」


ザハン国の使者二人は、トップの両隣りで

彼を挟んで顔面蒼白(がんめんそうはく)となる。


「アッハッハ!

 まさかこの()に及んで、こちらの事を

 心配してくださるのですか?


 さすが、こちらの辺境大陸は長閑(のどか)というか、

 寛容なお方が多いようで」


タクドルがそう笑うと、


「まあ、知らないという事は怖い事だと

 思い知っているよ。


 『辺境大陸各国の利権の引き渡し』

 『これまでの技術・権利は全て

 ザハン国に帰属(きぞく)

 『今後の新技術もザハン国所有に』

 『国家・個人問わず金融資産は

 ザハン国へ移管(いかん)


 他にもいろいろあるようだが―――

 どれか、ではなくどれ1つとして飲めない

 要求を突き付けてこようとは」


フゥ、と軽くため息をつく彼に、


「もちろぉん、議論の余地はありましてよ?


 有能な方なら、ザハン国臣民と同等の

 権利を差し上げても構いませんしぃ?

 あ、あと一応王族や貴族階級は地位は

 そのままでもよろしいですわよぉ?


 ザハン国の属国となるのであれば、ですけど」


「……そして、貴殿1人だけでこれらを飲ませる

 『力』を持っていると?


 是非ともその『力』―――

 見せてもらおうではないか」


この時点で、すでにラーシュ陛下はザハン国の

一千隻の船団が『無力化』された報せを受けて

おり、


しかしその事をおくびにも出さず、

ポーカーフェイスで対応する。


「じゃあ、見たら納得して頂けますぅ?」


「そうだな。

 それほど言うそちらの『力』、

 期待しているよ」


そのやり取りに、他の二名の部下は沈黙し、


「では、あのワイバーンを使わせて

 くださいませんかねぇ?


 こちらの指定する浜まで行って

 頂ければ、素晴らしい『ショー』を

 ご覧になれますよぉ♪」


自信満々にタクドルは語るが……

彼が頼みとする大船団は、すでに制圧されている

事を知る由もなく―――

ワイバーンで使者たちが指定する浜まで

飛び立つ運びとなった。




「ここかね?」


謁見から数時間後……

タクドルたちの指定する浜辺に降り立った

ラーシュ陛下は、少数の護衛と共に周囲を

見渡す。


「まあまあ、そう焦らないで♪


 何事も自分の目で見なければ信じない、

 人間ってそういうものですからねぇ。


 ささ、疑り深い陛下にあの小さな船団を

 見せて差し上げなさい」


同行して来た使節の部下たちが、地面に

筒のような魔導具を立てて何事か準備し始め、


それは打ち上げ花火のように―――

大きな音と共に、空高く舞い上がっていった。


「さぁて、陛下。

 とてもささやかな『ショー』ですが、

 お楽しみくださいませ♪


 何せこのタクドル1人の権限で動かせる

 船など、たかが知れてますのでねぇ♪

 ご期待に沿えますかどうか……」


そして彼は、海上を埋め尽くす一千隻の大船団の

到着を待つ事になったのだが、




―――三十分後―――




「時間がかかっているようだが」


「え?

 あ、ちょ、ちょーっと遅れているよう

 ですねえ―――


 も、もう少しお待ちになって……♪」


ウィンベル王国国王の問いに、彼は困惑しながら

返すものの、




―――さらに三十分後―――




「その船団とやらは、結構遠くに停泊

 させたのかね?」


「は、はい!

 でで、ですからもうちょっとお待ちを―――」




―――さらに三十分後―――




「……お前たちはわざわざ体を張って

 笑いを取りに来たとでもいうのかね?


 こんな遠いところまでよくもまあ」


「違うわよこんなの!!

 沖合に一千隻の大船団が来ている

 はずなのー!!


 何がいったいどうなっているのよこれぇ!!」


もはやラーシュ陛下の表情には哀れみすら見え、


「あっ、タクドル様!!」


「来ました! 来ましたよ!!」


部下たちの指摘に彼が海上を見ると、うっすらと

船の影が見え、


「来た来た!!

 来ましたわー!!」


まるで救助の船を見つけた遭難者のごとく、

タクドルは飛び上がって喜び、


「さあ、見なさい!!

 アレがわたくしだけで動かせる大船団……


 ってあら?」


確かに船はやって来たが―――

その数は十数隻に過ぎず、


「少なくないですか?」


「合図をしたら、一気に押し寄せるようにと

 取り決めてあったはずなのに」


彼らが疑問の中にいる間にも、その複数の船は

どんどん浜辺に近付いて来て……


「な、何よアレは?」


「亀です!

 先頭に巨大な亀がいて、どうも船を

 引っ張っているみたいで」


「し、しかしあの船は我がザハン国の

 もので―――」


そして今度は人魚族たちが、浜辺近くで

乗員をどんどんゴムボートに乗せていき、


「あれは魔物回避用に乗せていた……」


「何で子供だけを?」


「いや、若干(じゃっかん)大人の船員も混ざっている

 ようだが」


使節の人間たちはわけがわからず、事の推移を

見守っていたが、


「ルクレセント殿。

 いったいこれは?」


真っ先に上陸した、長いシルバーヘアーの

切れ長の目をした長身の女性に、旧知の間柄の

ようにラーシュ陛下がたずね、


「ちと不快なものを見せつけられたんでなぁ。


 魔物から逃げる時に、オトリとして

 海に捨てるという目的で、子供を

 乗せていると言うもんだから。


 その子たちもらってきたわ」


そして彼女が陛下と対応している間、

私は黒髪黒目に褐色肌の、獣人族の少年と

子供たちを取りまとめていて、


「シン殿。

 この子たちは今後どうするのですか?」


パープルの長いウェービーヘアーをした、

身長190cmくらいの背の高い女性―――

人間の姿に戻ったロック・タートルの

オトヒメさんが、子供たちにまとわりつかれ

ながら聞いて来て、


「そうですね。

 出来れば王都で一時引き取って頂いて……」


そこで私もラーシュ陛下に近付き、


「シン殿か。

 これはいったいどういう事だ?」


「いえ、フェンリルのルクレセント様が、

 非常に不快な集団がこの大陸に近付いて

 いるという事で、その付き添いを。


 このように子供たちを保護しましたので、

 出来れば王都で預かって頂けないでしょうか」


「ふむ、それはいったいいかなる事情で……」


そう話し合っていると、リーゼントのような

前髪を揺らしながら、ザハン国の使者であろう

男が割って入って来て、


「な、何ですかあなた方はー!?

 わたくしの大船団に、いったい何を

 したの!?」


あ、コイツが例のタクドルとかいうヤツか。


私は陛下に目配せすると、陛下はそれとなく

護衛を動かし、彼とザハン国の使節一行との

距離を取り、


「私の前方15メートルにおいて……


 魔法、もしくは魔法により動く道具など

 ・・・・・

 あり得ない」


そうつぶやいた後、ルクレさんに

バトンタッチし、


「おお、お主があの不快な船団の責任者か?」


「ハ?


 ちょ、ちょっと待ってください!

 あの大船団をどうしたんですの!?

 ていうかアンタ何者!?」


タクドルに対しルクレさんは軽く一礼して、


「自己紹介が遅れたのう。


 我はフェンリルのルクレセントという者。


 で、あの船団はお主のものという事で

 いいのだな?」


「フェンリルですって?


 あのねぇ、そういうのは子供のうちに

 終わらせておくものですよぉ?


 いい歳して何がフェンリルだか―――」


すると、そこへ旗艦の艦長である初老の男性が

慌ててやって来て、


「タ、タクドル様!


 その方の言っている事は本当です!

 神獣・フェンリル様が人の姿になった

 ものであって……


 我々は彼女によって―――」


「オルロフ艦長?


 あのねぇ、あなたまで何を言って」


そう彼が言っている最中に、ティーダ君も

やって来て、


「その方の言っている事は本当ですよ。


 フェンリル様はありとあらゆる獣の庇護者(ひごしゃ)

 ありますが、同時に種族問わず幼い命を(いつく)しむ

 方です。


 それがあんな子供たちを見せられたら」


「あらぁ?

 なかなか可愛いコがいるじゃないの~♪


 もう少し成長したら、わたくしの好みの

 ど真ん中、か・も♪」


タクドルの言葉にルクレさんは、フェンリルの

姿へと『戻り』……

空を見上げるようにして大きな遠吠えを発する。


「フェ、フェンリル!?

 まさか本当に―――」


それを威嚇と見た使節一行は、それぞれが

攻撃態勢を取り、


「!?」


「……えっ!?」


「ま、魔法が!?」


そしてすぐに、魔法が封じられている事に

気付く。


「わわ、わたくしの『垂氷嵐(アイシクル・ストーム)』が―――

 いったい何が起こっているのよ!?」


彼は自分の両手を見つめ、信じられないという

表情になるが、


「で、ですから我々はあらゆる魔法、そして

 魔導具さえも無力化されたのです。


 フェンリル様の怒りを買って……!!」


オルロフの言葉に、彼らは呆然と立ち尽くした。




「じゃ、じゃあ持って来た一千隻の大船団は?」


「残念ながら、沖合いに浮かんでいるだけです。


 人的被害はありませんが、もはや我々の手で

 動かす事は出来ません。


 ファルコン部隊もなぜか飛べなくなった

 ようで。


 もはや、ただの浮かぶ標的です」


タクドルや使節一行が艦長から、絶望的な状況を

聞いている間、


「今ヒミコ殿に連絡を付けている。

 ワイバーン部隊を総動員して、子供たちは全員

 王都に運ぼう。

 白翼族(はくよくぞく)も来てくれるという話だし」


「沖合いに出ているザハン国の船団は、とにかく

 海岸近くまで引っ張ってきてもらいましょう。


 しかし港がどう考えても足りませんので」


「ライシェ国とアイゼン国―――

 ランドルフ帝国とドラセナ連邦にも協力を

 仰ごう

 単に収容するだけなら、断られる事は無いと

 思う」


こちらはこちらで、ラーシュ陛下と一緒に

なって、今後の処理に追われる。


「乗員はどうする?」


「艦長や主要クラスの人員は、やはり一度

 王都で預かりましょう。


 ただそれ以外の方々となると……

 クアートル大陸まで連絡を付けて、来て

 頂くまでどう考えても10日はかかります。

 なので、その間は鉄道を使っての各地へ輸送、

 となるでしょうか」


他の担当者とも話し合いながら、方針を

決めて行き、


「今列車って、一度に乗れる人員は90人

 くらいまでだっけ?」


「だいたい一隻に30人前後乗っているから、

 3万―――

 一日で王都までだいたい、450人輸送すると

 計算して……」


「ワイバーン、白翼族たちも協力するって

 話だから、空輸で各国へ運べる人数は

 一日あたり―――」


「ファルコン部隊は50体ほどか。

 純粋に偵察用だったのだろうが、

 少なくて良かった」


事務担当であろう人たちが、パチパチと

ソロバンで計算していく。


「どれくらいかかりそうですか?

 ざっくりでいいので」


私が質問すると、一人が顔を上げて、


「どう考えても3・4日はかかるでしょうか。


 それより心配なのはこの暑さです。

 いったん浜辺で待機してもらうにしろ、

 体調が心配で」


「わかりました。


 以前、ランドルフ帝国の『遭難者』たちを

 『保護』した事があるのですが、あの時も

 夏日でした。


 なので、彼を呼べば対応は出来ます。


 とにかく子供たち、そして主要人物は

 王都へ行ってもらいましょう」


そうして後は人魚族やオトヒメさん、

担当の方々に任せて、


私たちはいったん王都へ戻る事になった。




「お帰りー」


「で、どうなった?」


童顔の少女のような妻と、抜群の

プロポーションを持つ二人の妻が、

児童預かり所で私を出迎える。


王都・フォルロワへ戻った私は、

ライさんに作戦成功と状況を報告し、


『ゲート』を通じて、公都『ヤマト』へと

帰還していた。


「まあ、事前に打ち合わせしてありました

 からね。

 ですから当初の予定通り、動いてもらって

 います。


 グラキノスさんを呼んで、あの浜辺に

 氷のドームを作ってもらう事になって

 いますし、乗組員たちも数日なら大丈夫

 でしょう」


実際、各所との交渉はすでに終わっていて、


船団は、可能な限りウィンベル王国と

ライシェ国、アイゼン王国に預かって

もらい、


その後、ランドルフ帝国とドラセナ連邦に

引き取ってもらう事……


タクドル以下使節団、主要メンバーの処遇は

こちらの同盟諸国で決める事、


ただザハン国、及びメナスミフ自由商圏同盟とは

敵対せず協調路線を探るため、彼らはひとまず

丁重に送り返す事などは決まっていた。


「そういえば子供たちが大勢来たそうですが」


「その子たちはどうするんですか?」


同室にいた、ミリアさんとルーチェさんが

心配そうに聞いて来て、


「それが、どうもドラセナ連邦が引き取って

 くれるそうなんです。


 足踏み踊りの子供たちが不足しているって、

 私に相談したかったそうで―――

 まあ、ザハン国の一件があったので、

 言いそびれたみたいですが。


 ザハン国の船団をえい航してお持ち帰り

 する際、子供たちもそれに乗せて国に

 連れて行くと」

(■269話 はじめての かふぇ参照)


ふむふむ、と彼女たちはうなずく。


「それで、ドラセナ連邦が750人、

 ランドルフ帝国が150人ほど引き取る

 手筈(てはず)になっています」


私がそう説明すると、


「あり?」


「その計算だと100人ほど余らぬか?」


メルとアルテリーゼが聞き返して来て、


「あー……

 人魚族と白翼族が欲しがったみたいで」


「??」


「そこでどうしてその種族が?」


タヌキ顔の丸眼鏡の女性と、亜麻色の髪を後ろで

三つ編みにした同性の二人が疑問の声を上げる。


「えーと、男性が少ない種族は、いわゆる

 盗賊とか犯罪集団を取り締まって―――

 その代わり、そこの男を好きにしていいって

 事で、男性を補充していたようなんですが」


そこで私は一息ついて、


「そもそも人魚族は、ラミア族のように

 水陸両用では無いから、近くに水場が無いと

 盗賊を追えないし」


女性陣から『あー』という声が上がり、


「あと人魚族はラミア族のエイミ(娘)さんが、

 人間のアーロン君を奴隷兼婚約者に

 していたのを見て、


 そして白翼族は、ヴィオラさんが盗賊に

 捕まっていた男の子を夫として迎え入れた

 事で……


 『相手を育てるのもアリか』となった人が

 多くいたみたいです」


すると女性陣は微妙な表情となり、


「まあ、あっちは元々強いしねー」


「そもそも戦闘能力というか基本能力が

 高いから、人間の男に守ってもらう

 必要がないからのう」


妻たちが目を線のようにして細め、


「それなら、自分好みに育てるかーって

 話になっちゃうか」


「そういえばハーピー族とかはどうなんです?

 あちらも女性が多い種族ですよね?」


ミリアさんの後に、ルーチェさんが疑問を

口にして、


「ハーピー族はもう男は十分らしい。

 というか盗賊狩りの主戦力が彼女たちだから。


 それに高い木の上が住処(すみか)だから、

 ある程度育っていないと怖いとかで」


そこは浮遊島(ふゆうとう)を持つ白翼族と違い、地上と

変わらない立地ではないからなあ。


「おとーさん、お帰りー!」


「ああ、ただいま」


そこへ黒髪ショートの、紅い目をした

娘が駆け込んで来て私に飛びつき、


「お仕事終わりー?」


「当分、私の出番は無いはずだよ。

 あとは国のお偉いさん同士でやってくれる

 はずだ」


残っているのは事後処理―――

少なくともあの大船団の連中を帰すまでは、

ザハン国やメナスミフ自由商圏同盟も大きくは

動かないだろう。


「公都では、何か変わった事は無かったか?」


「そういえば、カーマンさんが来てたよ」


「そろそろ『オチュウゲン』の季節だけど、

 今年は何を送ればいいかって」


一段落した事を実感しながら、私はしばらく

家族との雑談に興じた。




「これから、わたくしたちはどうなるの

 ですかね?」


王宮内に割り当てられた一室で、タクドルと

ラーシュ陛下が向かい合う。


「……?

 どう、とは?」


「覚悟は出来ているわよぉ。


 あんな大船団を持って来て―――

 かつ属国化しろとの要求を突き付けたん

 ですから」


他の使節一行のメンバーも神妙な面持ちで

成り行きを見守っていたが、


「とは言われても。


 大船団はいきなりフェンリル殿によって

 無力化され……

 『遭難』してしまった人員を『保護』した

 だけであるしな。


 規模は違うが、以前も似たような事が

 あったし」


それで罪に問う事は無い、と言わんばかりの

国王に対し、


「では、あの要求はどうするのかしら?


 ウィンベル王国はおろか、辺境大陸の

 同盟諸国を支配下に置こうとしたあの

 書面―――


 まさかこのまま見逃すってわけじゃ

 ないでしょう?」


彼がそう言うと、ラーシュ陛下はその文書を

フトコロから取り出し、


「ああ、そうそう。

 あの書面だが……


 いくつか『書き間違い』があったようだから、

 いったん持ち帰って直してきたまえ」


そのまま書類はタクドルに手渡され、


「ど、どういう事―――」


「どうするも何も、()は敵対は望んでおらぬ。

 服従もしないが」


口をポカンとして開ける彼に、王は続けて、


「それにフェンリル様の怒りを買い……

 魔法を封じられたのであろう?


 今までにも何度か似たような事はあったが、

 彼女の許しを得る事が出来れば、元に戻った

 とも聞いておる。


 どちらにしろこのままでは帰る事が出来ぬ。

 そうではないのか?」


ラーシュ陛下の言葉に一行はそれぞれ、

互いに顔を見合わせる。


何せ魔法が使えなくなっているのだ。

失態を演じた上、このまま本国に帰ったら

どういう事になるか―――


「ランドルフ帝国とドラセナ連邦に、

 船をえい航する要請を出しておるゆえ、

 それまではゆっくりするとよい。


 あと、魔法が使えなくなったから、

 すぐ空腹になると思うが、こちらでは

 朝昼晩の3食が出るので安心されよ。


 時間があれば市井(しせい)を見て回るがよい」


それだけ言い残すと、国王は護衛の兵と

共に退室し……

後には呆然と立ち尽くすザハン国一行が

残された。





( ・ω・)最後まで読んでくださり

ありがとうございます!

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(*ゝω・*)つ★★★★★  魔法が無力化された船団、フナクイムシにボロボロにされちゃったりしてww
・『相手を育てるのもアリか』 タクドルと人魚族や白翼族は同族なのかいな(笑)? ・相手にならんから出直して来い、と。
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