271・はじめての ぼうえいきょてん(ふゆうとう)
GWは特に予定ないけど、
日中昼間の家だと寝てしまう(ダメ人間)
「『鉄道』計画はどうなっておる?」
「ハッ!
現状、滞りなく進んでおります」
大ライラック国、首都・マルサル―――
中世の軍服に身を包んだ面々が、長テーブルを
囲って、議題に臨む。
ドラセナ連邦、モンステラ聖皇国に倣い……
魔力溜まり浄化装置の契約に赴いた際、
ランドルフ帝国で建設中の『鉄道』―――
さらには環状鉄道を目撃し、
大ライラック国でも即座に導入を決定したので
あった。
今回の主な議題はその進捗であり、
「ぐるりと円を描くように首都を超速度で
結ぶ構想……
これがあれば、人や物の物流が劇的に
変わりましょう」
「動力は獣人族の脚力頼りという事なので、
我が国の支配下にある獣人の国々に、
協力を呼び掛けています。
すでに前向きな回答もいくつか」
次々と上がる意見は、どれも計画が順調で
ある事を示すもので―――
「しかし、最大の収穫は円周率でしょうな。
我が国の数学者が、『この100年で最大の
発見だ!!』と称賛しておりましたよ」
正確な円の外周を求める事は、車輪から
歯車などの部品、デザインでも重要であり、
特に環状鉄道においては、必要な資材の
計算などに必須の数式といえた。
「これも海の向こうから得たものか。
辺境大陸などと呼んでいるが、
底知れぬものよ」
軍王ガスパードの言葉に、同席している
全員がうなずき、
「魔力溜まり浄化装置の使用については、
どうなっておる?」
「すでに国の近辺で3ヶ所ほど候補が
上がっておりまして……
その中の2ヶ所はもう浄化が完了したとの事」
「他、『元』義勇軍から料理や娯楽関係を
ぜひとも導入した方が良いとの報告が―――」
会議が進行していく中……
その空気を一変させるように、一人の兵士が
飛び込んで来た。
「ご、ご報告申し上げます!」
突然現れた彼に全員の視線が集まるが、
「会議中だぞ」
「何事だ、いったい」
上層部や重鎮である幹部たちは、
訝し気に問い質す。
「緊急報告です!!
ラ、ランドルフ帝国にて、ザハン国の
使者が―――
辺境大陸にある同盟諸国に対し、
属国化を匂わせに来たとの事」
その情報に彼らは顔を見合わせ、
「どういう事だ?」
「メナスミフ自由商圏同盟に
目を付けられたのか?」
「あの合同軍事演習を知らぬわけでは
あるまいに」
口々に意見が飛び交う中、
「静まれ」
軍王の言葉で、議場は一瞬で静まり返る。
「それで、ランドルフ帝国は?」
「と、特に反論や抗議はしなかったとの事。
ザハン国の使者も、軍事行動ではなく
圧力をかけての『説得』を行うとの事で、
そうなるとザハン国と辺境大陸の交渉と
なりますから」
それを聞いたガスパードは一息ついて、
「……帝国も一度、船団を引き連れて
辺境大陸近海で『訓練』をした事が
あったからな。
それを考えると口を出しにくいか」
(■172話 はじめての かいせん参照)
「確かに―――
そうなると微妙な立場ですな」
「それにあちらは商人の国です。
うかつに言質を取られるような言葉は
使いますまい」
国のトップの説明に、他の上層部も同調する。
「ザハン国は、どのように『交渉』すると
言ったのだ?」
幹部の一人が報告者に質問を向けると、
「『一千隻の船でも持っていけば』、
と述べたそうです。
またこれは、その使者の一存であるとも」
『バカな』『そんな言い分が通るか』と、
あちこちから反発が上がる。
「いったい、あちらの狙いは何だ?」
「確かにあの辺境大陸の交易品は、
目を見張るものがあるが」
「だがあちらの文明も、クアートル大陸を
上回っているのは確実だろう。
それで四大国との関係をおかしくしても、
手に入れたいものがあるのか?」
そこで軍王が片手を挙げ、全員がそちらへ
注目する。
「そもそもお前たちは少し考えがずれておる。
一番重要なのは、ザハン国、延いては
メナスミフ自由商圏同盟が……
辺境大陸に勝てるかどうかだ。
所見を申してみよ」
ガスパードの指摘に、上層部はハッとした
表情になり、
「対策は練るでしょうが、簡単に勝てる
相手ではないかと」
「さらにランドルフ帝国とドラセナ連邦が
加われば―――
一度や二度の侵攻は防げましょう」
「特にあちらは、魔族・魔界の支援が
望めますからな。
防衛に徹すれば長期化する可能性も」
そこで報告しに来た兵士が『あ』と
声を上げ、
「どうした?」
「は、はい。
詳しくは後に詳細な報告者が届く事に
なっておりますが、
魔族や魔界についても、その事について
ランドルフ帝国から言及があったそうです。
ですが使者はそれをおとぎ話と一蹴……
もし本当だったとしても、
自由商圏同盟が全力であたれば何とか
なるだろう、と言ったそうで」
それを聞いた彼らはざわめくと共に、
交互に顔を見合わせる。
「それほどの戦力を有しているのか」
「確かに交易規模を考えれば、四大国以上の
軍事力があってもおかしくはないが」
「『本当だったとしても』―――
この度合いというか本気度がカギだな。
合同軍事演習の事も知っているだろうし、
当然、その対策もしていると考えると」
彼らはいろいろな意見と見解を出し合うが、
「よし」
軍王ガスパードの一言で、議場は一瞬で
静まり返る。
そして幹部たちが固唾を飲んで、次の言葉を
待っていると、
「今回のザハン国はちょうどよい実験となる。
ランドルフ帝国の訓練も、200隻からなる
船団がほぼ無力化されたとの事。
今回の一千隻も同様に無力化されれば、
もう辺境大陸の実力は疑いようが無い。
今後、一千隻が一万、十万でも同じ事が
起きるであろう」
トップの説明に、周囲は無言で同意の
意思表示を取り、
「もし今回も同様に決着した場合、
我が国は全力で辺境大陸を支援、
そして同盟を要請する。
さよう心得よ」
軍王の一言で方針はまとまり、全員が
立ち上がって最敬礼の姿勢を取った。
「は~いこっち、飲み物追加ー!」
「天国や……!
天国はここにあったんや!」
ウィンベル王国・公都『ヤマト』、そこにある
複数の児童預かり所の一つで―――
人外・亜人の子供たちを侍らせながら、
腰まで伸びたブロンドを持つ童顔の女性と、
黒髪ミドルショートに眼鏡をかけた同性が、
満面の笑顔で料理を楽しんでいた。
「サシャさん、ジェレミエルさん……
一週間に一度の開催予定日をどうやって
知ったんですか?
サプライズと混乱を避けるために、直前まで
非公開というのに」
ここは公都内の児童預かり所が持ち回りで
開催している、各種族による子供カフェで―――
いつかは来るだろうと思っていた二人を前に、
私は困惑と疑問で首を傾げる。
「そりゃこんな私どものためにあるような、
お店を開かれましたら」
「気合い・根性・本能その他もろもろで、
何が何でも察知して馳せ参じますって!
光の速さで『鉄道』に飛び乗って来ました!」
答えになっていない答えを返されたが、
それで納得する自分がいた。
「あ、そういえばちょうどいいです」
「シンさんに用事があって来たので」
私に? とも思ったけど、まさか彼女たちも
私用で『鉄道』を利用して来たわけでは
ないだろう。
しかしここで大丈夫だろうかと、周囲を
見渡すと、
「あ、詳細はすでにここのギルド支部に
通達済みですから」
「そのあたりは心得ておりますので」
その言葉にホッと胸を撫でおろし、
「結論から言いますと、ランドルフ帝国での
訓練結果を見て……
あの依頼はシンさんに正式に要請するとの
事です」
「そのための支援は惜しまない、との
事でした」
ランドルフ帝国にて、一千隻の船団が来た時に
備え―――
一定範囲内の魔法・魔力無効化を行ったのだが、
訓練はそれなりの成果を上げ、もしザハン国の
侵攻があった場合……
ワイバーンを軸に人魚族やラミア族など、
水中戦力の協力を得て対応する事が決まった。
どちらかというと問題は、無力化した後の船団の
後始末にあり、
一千隻もの船の収容など、こちらの大陸の国々
全ての港を合計しても無理な話で、
なので船の曳航や接収などは―――
ランドルフ帝国やドラセナ連邦にもお願い
しており、
こちらの大陸の沿岸国である、ライシェ国や
アイゼン王国でも急ピッチで港の整備を
してもらっている。
「それは良かった。
しかし、子供が産まれたばかりだと
いうのに、ちょっといろいろ起き過ぎて
困惑していますよ」
私も向かいで何か飲み物を頼もうかと
思っていると、
「そういえばシンさん、奥様方は?」
「あー、こちらには連れて来ていません。
ホラ、赤ちゃんがいますから……
特に私たちが食べていると、何でも
欲しがるでしょう?
まだ食べさせられないものもあるので、
中央地区の児童預かり所で待機して
います」
ここは旧スラム地区に作られた児童預かり所で、
家族は連れて来ていない。
ただ子供たちがメインで働いているので、
それとなく様子を見に、私やジャンさん、
レイド君が交代で見回っていたのだが、
そこで彼女たちに出くわした、というわけだ。
「あー、今お子さんがおりますものね」
「そういえばあちらに行った時、
ティエラお―――
ティエラさんに面倒を見てもらったとか」
そう。
結局ランドルフ帝国には三週間ほど滞在
したのだが、
その間、ティエラ王女様が自ら、シンイチや
リュウイチをお世話してくれたのだ。
「そうですね。
それでライさんに、『これでいつ子供が
産まれても大丈夫です!!』って宣言して
いましたよ」
私が苦笑しながらそう話すと、
「そーなんですよねー。
さっさと作っちゃえばいいのに」
「ちゃんとそれで跡継ぎが出来れば、
私たちも愛人としての立場が安定しますので、
なる早でお願いしたいんですけど」
「えーと。
子供たちがメインのお店なので、そういう
生々しい話も止めて欲しいのですが」
サシャさんとジェレミエルさんに苦言を呈し、
それからしばらくは雑談に興じた。
「よろしいのですか、タクドル様。
そんな事を独断で……」
クアートル大陸から北東の位置にある、
フラーゴル大陸―――
その一国、ザハン国のとある公的な施設で、
部下らしき青年が上司と思われる、リーゼントの
ような髪型の男にたずねていた。
「たかが人口300万にも満たない、
弱小国家連合相手に、いちいち上に話を
通す必要もないですわよぉ♪
ま、一応交渉はしてみますけどねぇ」
クルクルと踊るように、その男……
タクドルは話を続ける。
「しかし聞いたところによりますと、
その辺境大陸がランドルフ帝国で行った
合同軍事演習は、未知のものであったとか」
「ですが、航空戦力は今やランドルフ帝国にも
ありますし、我がザハン国にもファルコン部隊が
おります」
「ファルコンは個々の戦力では、ワイバーンや
ドラゴンには勝てないでしょうが―――
その分、数で押せますからね。
問題は水中戦力ですか……」
部下の一人から不安視する声が上がると、
彼は片足を軸にくるりと回転して、
「ア・ナ・タは知らないみたいですけどぉ、
すでに水中の魔力を探知する魔導具が
出来上がっているんですわぁ♪
そして水中で爆発する魔導爆弾も
実戦配備済み♪
一千隻に装備されれば、今すぐにでも
出航出来ますわよぉ~♪」
満面の笑みで踊り続ける高級官僚を、
彼らは困惑しながら見守り、
「そういえば―――
その辺境大陸ですか。
最近、クアートル大陸経由で入って来る
料理や調味料、娯楽がそこで作られている、
というのは本当なのでしょうか」
「それは事実らしいぞ。
何でも、基本的に非公開はしないという
方針で……
魔物鳥プルランや貝、海草の加工品?
重曹と言ったか―――
それらの技術もどんどんザハンに入って
来ている」
「リバーシや麻雀もそうだな。
ウチの家族も、あれに夢中になっているよ」
と、彼らは口々に辺境大陸産のものを賞賛する。
「ま、それでわたくしに目を付けられたのは、
運が良いのか悪いのか。
しかもランドルフ帝国が一度、属国化に
失敗してくれていますからねぇ。
こんなオイシイ獲物、飛びつかない方が
ウソですわぁ♪」
タクドルの発言を聞いて、部下たちは
複雑な表情を作り、
「豊か過ぎるのが命取りになるとは。
気の毒とは思いますが」
「まあ公開しまくっている時点で、
ちょっと危機意識が無さ過ぎるけどな」
「ザハンが動かなくても、いずれどこかの
列強に吸収されていたでしょう」
すでに彼らは勝った気でいて、負けるなど
微塵も感じておらず、むしろ相手に同情する
ような気遣いさえ見せる。
「そう!
それならいっそ、ザハン国、延いては
メナスミフ自由商圏同盟国の傘下に入れば、
もっともっと発展出来るというものですわよ!
特にあの料理や娯楽を作った技術者であれば、
我がザハン国民と同等の地位を与えてあげても
いいわねぇ♪
そしてみんなが幸せになれる……
あぁ、こんな事を考える事の出来るわたくしの
才覚が怖いわぁ♪」
ミュージカルのようにポーズを決めたり
回転したりする上司に対し、部下たちは、
「(この人、優秀なはずなんだよなあ)」
「(これさえなければ、上司として申し分
無いんだけどさ)」
「(ランドルフ帝国で謁見して来たって
言ってたけど―――
そこにいた人たち、疲れただろうなあ)」
そう生暖かい目で見つめていた。
「お~……」
「あ~……」
アジアンチックな妻と西洋モデルのような妻、
二人が疲れた声を出し、
「大丈夫か?
メル、アルテリーゼ」
「ボクも疲れたー。
もー、シンイチもリュウイチも元気
過ぎるよー」
次いで、黒髪ショートに真っ赤な瞳の娘、
ラッチもソファーの上で寝転がる。
二人の息子が産まれてから四ヶ月が経過
しようとしていたが、
三時間おきの授乳、そしてぐずりや
下の世話は、体力はともかく二人の
精神的疲労を蓄積させており、
「こんなに大変だとは思わなかったよー」
「ラッチの時は卵からだったから、
あまり手間もかからなかったしのう」
私が用意した飲み物に口を付けながら、
妻たちはグチるように話す。
「ホント、婦人会の人たちってスゴいよね。
慣れているってゆーか」
ラッチもそう言いながら飲み物を持つ。
「ウン。すごく助かってるー」
「こう言っては何だが、婦人会と仲良く
しておいて良かったと、心の底から
思っておる」
メルとアルテリーゼの口から、実感のこもった
言葉が出て来る。
公都『ヤマト』婦人会メンバーは、
ベビーシッターとして持ち回りでウチに
来てくれて、シンイチ・リュウイチの
お世話をしてくれるのだが、
やはりというか経験者としての手腕は
確かで、息子たちだけではなく、今では
妻たちの良い相談相手として―――
支えになってくれていた。
「しかし、それを考えると……
ティエラ王女様はよく、シンイチと
リュウイチの面倒を見てくれていたな。
大使館の人たちとだから、1人でやった
わけじゃないけど」
「大きくなったらこの子たちに、
お前は王女様にオシメを代えて
もらったんだよーって言ってやろ」
「ある意味、自慢出来るかも知れぬのう」
それぞれ、自分の息子を抱きながら、
妻たちが軽口を叩き、
「そういえばおとーさん、サシャさんと
ジェレミエルさん、来てたよね?
児童預かり所で会ったけど。
シンイチとリュウイチを堪能して
いったよー」
「ああ。
例のメナスミフ自由商圏同盟国、
ザハン国の件で来ていたらしい。
先にギルド支部へ寄って、その後
私とあの各種族による子供カフェで
会って―――
その後、児童預かり所に行ったのか」
カフェの後、私は一応ギルド長に会いに
行ったんだけど、
同時に彼女たちは妻たちのいる児童預かり所へ
寄ったらしい。
「その2人はその後は?
もう帰ったのか?」
「さすがに一泊してから帰るって、
またカフェに向かったよ」
「多分、そっちが主目的であったであろうしな。
いくら『鉄道』があるとはいえ……
見上げた根性というか」
あの二人、鉄道で来たんだよな。
私用ではないから、ワイバーン便か
『ゲート』を使っても構わないはずなんだが。
変なところで生真面目というか。
「んでシンは?
しばらくは動かなくてもいいんでしょ?」
「ザハン国とやらが攻めて来るのも、
ずっと後であろうし」
メルとアルテリーゼの言葉に、私は少し
申し訳ない顔になって、
「それなんだけど―――
今、東の沿岸上空に、浮遊島をいくつか
配置する計画があるらしいんだ。
ザハン国の侵攻に対する備えとして、
白翼族と協力して、急いで建造している
最中なんだって。
その設置に、護衛として参加して欲しいと」
今までにも極秘任務に投入された事のある
浮遊島だけど、
今回、本格的に防衛拠点として……
空中基地として使用する事になったのだ。
私がそう説明すると、『あ~』『そうくるか』
と、妻たちがやや疲れた声を出し―――
「状況が状況だしすまない。
ま、まあ、『ゲート』も使える事だし、
なるべく日帰りか、遅くても一泊で
帰ってくるよ」
子供が産まれたばかりの妻をほったらかしに
して、仕事ばかりしているダメ亭主になって
いるなあ、と反省しつつ、彼女たちに謝る。
「そこは仕方が無いと思うけどさあ」
「この件が一段落したら、最上級の
『さーびす』を要求するぞ」
息子たちを抱きながら、メルとアルテリーゼは
妖艶な笑顔を作ると、
「あー、夜の『さーびす』?」
ラッチの一言で、夫婦揃って固まる。
「あ、あのー、ラッチさん?
君はどこでそういう事を覚えてくるのかな?」
なるべく平静を装いながら聞くと、
「??
だっておとーさんもおかーさんたちも、
別に隠していなかったじゃない。
ボクずっと見ていたけど?」
そこで私と妻たちは顔を見合わせる。
そういえばまだ人間に変身出来なかった頃の
ラッチはずっと……
私たちの寝室で一緒に寝ていたはず。
あの頃はずっと赤ちゃんだと思っていて、
気に留めていなかったんだけど、
それはつまり、あの行為は全部見られて
いたという事でもあり―――
「あ」
「お」
「えあっ!?」
理解した順に声を上げ……
そして緊急で家族会議が始まった。
「本日は浮遊島設置の護衛として来て頂き、
ありがとうございます。
その、ずいぶんとお疲れのようですが―――
大丈夫ですか?」
「ははは、いや……
家庭の教育方針の事でいろいろと」
二日後、新設された浮遊島基地をまず、
ウィンベル王国の東沿岸沖合いに設置する
事となり、
そちらへの上陸を案内された私は、
ワイバーンによるコンテナ箱で
運ばれていた。
「しかし、いくら上空とはいえ
大丈夫なのでしょうか。
『範囲索敵』は元より、目視される
可能性も」
同乗している兵士らしき人が、不安そうに
聞いて来る。
恐らく新人で、浮遊島に乗るのは初めて
なのだろうが……
「雲より高いところに上がりますから、
目視される可能性はほとんど無いと
思いますよ?
それに『範囲索敵』も反応はするでしょうが、
恐らくすごく小さな点くらいにしか、感知
出来ないと思われます。
それなら鳥か何かと判断するでしょう」
実際、我々が普段目にしている雲なら、
上空二千メートルのところに出来る。
その中に紛れてしまえば、地上からそれを
識別するのは困難なはず。
また、『範囲索敵』や魔力探知機に反応した
ところで、空を見上げても雲以外なければ、
飛翔する何らかの動物がいるだけ、と
思うに違いない。
よしんば見つかって何らかの攻撃をされたと
しても、上空二千メートル。
回避には十分な時間がある。
そしてしばらく飛ぶと、着陸地点である
浮遊島が見えて来て、
「お待たせしました、そろそろ到着します。
―――? あれは?」
「どうかしましたか?」
目的地に着いた事を告げた彼が、何かに
気付いたように疑問の声を上げる。
私がその視線の先、外へ目をやると、
「何かがこちらに近付いて来ます!
あれは……
『弾丸ツバメ』の群れ!?」
見ると、高速で移動する群れのような一団が、
私たちの乗るコンテナ箱後方から向かって
来ていて、
「弾丸ツバメ、ですか?」
「はい!
速度だけはあるので、よく高山などで
衝突事故を起こす魔物です!
何だってこんな時に―――」
慌てふためく彼に他の同乗者が、
「避ければいいんじゃないのか?」
「向こうの方が速過ぎます!
それに避けたとしても……!!」
「あっ」
そう、後方から迫っているという事は、
避けたところで、その先は目的地である
浮遊島があるのだ。
仕方ないか―――
私はコンテナ箱の後ろまで移動し、
「すいません!
いったん停止をお願いしまーす!!」
中の伝声管を通じて、ワイバーンライダーに
向かって大声で叫ぶ。
すると指示通りに速度を落としてくれて、
「魔力によって高速で飛行し、
さらに群れで飛ぶ……
そんな鳥類など、
・・・・・
あり得ない」
下手をすると、今乗っているワイバーンまで
巻き込む可能性があるので、鳥類に範囲指定し、
無効化を宣言する。
するとこちらの手前二十メートルほどで、
彼らはカクン、と角度を下方に変更して
それていき、
浮遊島からも遠ざかっていくのを確認した後、
「魔力によって高速で飛行する鳥類は、
この世界では当たり前だ」
私がまたそうつぶやくと、彼らはまた
いくぶんか高度を取り戻し、
そのまま遠くへ消えていくのを見送った。
( ・ω・)最後まで読んでくださり
ありがとうございます!
本作品は毎週日曜日の16時更新です。
休日のお供にどうぞ。
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(;・∀・)カクヨムでも書いています。
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【指】【完結】
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【かみつかれた】【完結】
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