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266・はじめての よんだいこくかいだん

|д゜)ユニーク数60万突破しました!!

応援ありがとうございます<(_ _)>


モンステラ聖皇国、その首都・イスト―――

そこで歴史的なイベントが行われていた。


聖皇国のトップで、クーデターによりその座を

追われていたメルビナ大教皇が返り咲き、


その彼と……

大ライラック国軍王ガスパード、

ドラセナ連邦女帝イヴレット、

そしてランドルフ帝国皇帝マームード。


この四人が一堂に会し、クアートル大陸初の

四大国首脳会談が開かれていたのである。


「この度、三ヶ国の支援により―――

 再びモンステラ聖皇国の大教皇の座に

 戻る事が出来ました。


 改めてお礼申し上げます」


首都の中心にある大聖堂、その一角において、

二十歳前後に見える……

傍目(はため)には女性にも見える中性的な顔立ちの

青年が、頭を下げる。


「今回、我が国は他三ヶ国に対し多大な

 被害と懸念をもたらしました。


 詳細なお()びと賠償は追って沙汰(さた)を―――」


「あー、そこまでそこまで。


 それが今回の会談の議題じゃないんでしょ?」


燃えるような真っ赤な長髪をした女性が、

手をひらひらさせて話の途中で止める。


(しか)り」


「我らが集まったのは……

 今後、このような事が起きぬよう、

 交流とその方針を決めるためだ」


答えたのは共に六十代に見える老人だが、

一方は貴族風の、もう一方は軍服を基調とした

衣装に身を包み―――

対照的な雰囲気を(かも)し出す。


「とはいえ、四大国はこれまであまり、

 文化的な交流を持った事はほとんど無かった。


 我がランドルフ帝国でもこれといった案は

 なく、交易と人的交流を深めていくしか

 無いと思われるが」


皇帝マームードは現実的なプランを提示し、


「アタシのところもそうだねぇ。


 特に海の向こうから帝国経由で来るメシや

 娯楽、生活用品は刺激的だ。


 当面はそれで問題ないんじゃないか?」


女帝イヴレットも、その意見に同調する。


「そうですね。


 私もランドルフ帝国に滞在しておりましたが、

 目を見張るものがありました。

 食事といい、生活に使う魔導具といい……


 特に辺境大陸では亜人・人外の区別なく

 それぞれの種族が食文化や技術を採用し合って

 いると聞きますので」


メルビナ大教皇も同意を示すが、


「しかし、それならば民間で事足りる。


 せっかく四大国の代表が顔を揃えたのだ。

 もう少し深い話をしようではないか」


軍王ガスパードの言葉に、他の三人が視線を

集中させ、


「何か案でもおありか?

 ガスパード殿」


ランドルフ帝国の皇帝が聞き返すと、


「四大国の共同計画―――


 史上初の大規模開拓計画を我が国は

 提案したい」


「大規模開拓計画ぅ?


 そりゃ、クアートル大陸にはまだまだ

 未開拓地が有り余っているけどさ」


ドラセナ連邦代表の女性がまず反応し、


「ですが、良き案かと。


 開拓には予算も労力も時間もかかりますが、

 それだけ高度な人的交流も期待出来ます」


モンステラ聖皇国の大教皇も賛成に回る。


「うむ……確かに。


 それに四大国が組めばたいていの事は

 成し遂げられよう。


 して、開拓地はどのあたりを?」


皇帝マームードは話の先を促すと、


「基本的に共同開拓となるのであれば、

 どの国からも一定距離、離れている必要が

 あると思われる。


 そこで、候補地として―――」


彼は立ち上がると、(ふところ)から地図を取り出し、


「この大陸中央の森が最も適していると、

 我が国では分析・判断した」


その地点を指差して語る。


「あの大森林かい!?

 確かに、地理的には理想的な条件だが……」


女帝が思わず声を上げ、


「その森の開拓計画は我が帝国でも、

 ティエラ王女の進言で上がった。


 しかし、いくら四大国の共同開拓でも、

 実現可能性が低いという事で見送られたのだ。


 まことにここを?」


皇帝は現実的ではないと疑問を(てい)する。


「民間もしくは国が支援しても、通常ならば

 難しいであろうな。


 それが四大国の共同開拓であっても、だ」


「ならばどうして―――」


大ライラック国代表の説明に、ランドルフ帝国の

代表がすかさず問い質すと、


「軍の一部を計画にあてる。


 これから友好路線を歩むにあたって……

 積極的な軍拡は無用のものになるであろう。


 であるならば、軍にあてていた人的資源および

 予算を、その計画に組み込むのだ。


 そしてそれは、四大国共通・共同である事が

 望ましい」


つまり、各国同時に軍縮を行い―――

その分を共同計画に含めよと言っているのだ。


「なーるほどねぇ。


 軍縮ともなれば人員は削られるわけだけど、

 その分、この計画にブチ込めばいいって事か」


「ずいぶんと率直に言ってくれるな。

 まあ本音をぶつけ合うのは良い事だ」


イヴレットの言葉に、ガスパードは

苦笑しつつ返す。


「自然環境の厳しい場所での長期計画で

 あれば、軍人が適しておろう。


 それにわざわざ雇う必要も、人員整理する

 必要も無くなるのだからな」


皇帝マームードも賛同の声を上げるも、


「お待ちください」


その流れをストップさせたのは……

メルビナ大教皇で、彼は続けて、


「中央の未開拓地の森を開発する、という

 事ですが―――


 以前、我が国では大精霊様が降臨なされた

 事があったのです。


 目撃した者たちの話によると、大精霊様は

 大陸中央の森方面からやって来たと」


その言葉に、他の三人は互いに顔を見合わせる。


「つ、つまり……

 その森は、大精霊様が暮らしておられると

 考えられます」


「だから共同計画は止めよと申すか?」


大ライラック国のトップが、大教皇を非難めいた

目で問うが、


「そうは言っておりません。


 ですが問答無用で事を進めるより、

 話し合いで何とかなるのであれば―――

 そうした方がよろしいかと。


 交渉出来れば、許可も大精霊様より頂いて

 来ますゆえ」


すると軍王ガスパードは大きく息を吐いて、


「信仰や宗教は自由だと思うが……

 大精霊様が実在するとでも?」


「実は我が国には、同じく大精霊様を信仰する

 エルフ様がおります。


 彼に同行してもらい、その真偽を確かめると

 同時に、もし意思疎通が可能であれば交渉も

 頼めるかと。


 それにこの度の騒動―――

 魔力を突然失ったり、魔導具が故障して

 しまったという情報が飛び交っております。


 計画を遂行(すいこう)するためにも、打てる手は

 いくらでも打っておいた方がよろしいのでは

 ないでしょうか」


メルビナ大教皇は宗教のトップとして、

必死に他の三ヶ国を説得する。


そして軍王も、原因不明の魔力消失や

魔導兵器のトラブルの報告を受けていたので、

強行に話を通す事にためらい、


「精霊様なら我が帝国でも世話になっておる。

 海の向こうの大陸から来て、農地を改善して

 くれた。


 ここは1つ、モンステラ聖皇国に骨を折って

 もらえばいいのではないか?」


「アタシもそれにさんせーい♪


 共同計画って言っても準備はこれからでしょ?

 それまでに大精霊様とやらに話が通るんなら、

 別にいいんじゃないかしら。


 それに下手に手を出してさー、

 (たた)られたらシャレにならないし」


皇帝マームードと女帝イヴレットが、

大教皇の案に賛成を示し、


「確かに計画は立ち上げたばかり―――

 各国とも、準備には時間がかかる。


 では、頼めますか?」


「恐らく一ヶ月もあれば……

 何としてでも、許可を頂いて参ります!」


軍王ガスパードも同意し、メルビナ大教皇も

期日を示した事で全ての国の賛同が得られ―――


初の四大国会談、そして共同計画発足は

四ヶ国の共同声明を以て成功に終わった。




「おお……!

 去年も来たが、これはまた違った

 美しさがあるな」


「まるで夢を見ているみたいです。


 夜中に見る桜が、こんなに綺麗なんて」


六十代くらいの老人と、パープルの前髪を

一直線に揃えた痩身(そうしん)の女性がつぶやく。


ランドルフ帝国皇帝、マームードと―――

その娘であり王女、ティエラ様だ。


「そういえば、夜桜は初めてでしたね」


私は二人、そして家族と一緒に魔導具で

ライトアップされた桜を見上げる。


「これはこれでスゴイねー」


「うむ。見事なものよのう」


シンイチを抱いたメルと、リュウイチを抱いた

アルテリーゼが隣り合ってうなずき、


「でも危なかったよー。

 もうちょっとで全部散っちゃうところ

 だったから」


ラッチが一本の桜に手をかけながら話す。


今年はすでに満開シーズンは過ぎ去り、

葉桜になった木もちらほら出始め、


『間に合った』というのが正直な感想だ。


「ま、いろいろあったからなあ」


「とにかくお疲れ」


そこへ、アラフォーに見えるギルド本部長と、

アラフィフの筋肉質のギルド支部長が姿を見せ、


「まあまあ、こうして今年も顔を合わせる事が

 出来たのですから……

 一杯やりましょう」


最後にクーロウ公都長代理があいさつに現れ、


「おお、そちらも達者で何より」


「ははは、お互いに」


老人同士が笑い合い、


「じぃじー」


ふと見ると、公都長代理の孫であろう

五、六歳くらいの女の子が彼の着物の端を

つかんでいて、


「おや、どうしたのだ。

 娘夫婦と一緒ではなかったのか?」


老人が孫にそう問うと、


「おじいちゃんについて来ちゃったんじゃ

 ないですか?」


ティエラ様が女の子をのぞき込みながら語り、


「お父さん、お母さんのところにいるようにと

 言ったじゃろうが」


「それは大変だ。

 心配して探しているかも知れんぞ」


クーロウさんの後に皇帝がそう言うと、


「申し訳ない。

 それでは、私はこれで―――」


彼は孫の手を引っ張って遠ざかり、

こちらだけでお花見を再開した。




「おお、ちっちゃい手じゃのう。

 ティエラが産まれた時の事を思い出すわい」


ランドルフ帝国皇帝……

もちろん身分は隠され、好々爺(こうこうや)にしか見えない

老人が、二人の赤ちゃんをあやし、


「へー、これお酒じゃないんですか?」


米麹(こめこうじ)? っていうので作られて

 いるから、お酒のような匂いがするけど

 違うんだって」


「だから子供や妊婦、赤ちゃんを産んだばかりの

 女性でも安全に飲めるのだそうだ」


ティエラ王女様の質問に―――

黒髪ロングの童顔の妻と、同じ黒髪の、欧米風の

顔立ちをしたもう一人の妻が答える。


「それにまだ少し肌寒いですからね。

 暖かい飲み物を飲んだ方がいいですよ」


私がそう答える横で、


「まーまージャンおじさん。

 飲んで飲んで」


「おー、ラッチも早いとこ大きくなって、

 一緒に酒飲めるようになろうなー」


黒髪ショートで、燃えるような赤い瞳を持つ

娘が、ギルド支部長にお(しゃく)していて、


和気あいあいと、花見は進んでいった。




「そういえばマームード……さん。

 ランドルフ帝国の皇族は、先祖にドラゴンの

 血が入っているという話ですが、


 過去にドラゴンの姿となった人間とか、

 そういうお話を聞いた事は?」


私とアルテリーゼの子、リュウイチに関して

気になった事を彼に聞いてみると、


「少なくともワシが知る限りではないのう。


 あの子―――

 孫のマールテンをシン殿に助けて頂いた後、

 あらゆる記録をひっくり返してみたの

 だが……」

(■180話

はじめての せんぞがえり参照)


「そうですね。

 わたくしも調べてみましたけど、

 特にそのような記述は見当たり

 ませんでした」


父と娘が申し訳なさそうに返し、


「そうでしたか。


 マールテンさ……ちゃんはその後

 お元気ですか?」


話の方向を変えようと、私は孫の名前を出し、


「それはもう」


「ご両親が、夢中になって可愛がって

 いますよ。


 シンイチちゃん、リュウイチちゃんと

 同じ男の子で―――」


ティエラ様がお団子を頬張りながら、

話していると、


「だから早う、お前も子を成してくれぬ

 かのう。


 前にも言ったが、お前の子供の面倒を

 見ながら、ここで隠居するのが夢なのだ。


 せっかく相手もすでにいるというのに」


話の矛先がライさんにも向かい、


「え、ええと」


「ははは……善処(ぜんしょ)します」


さすがに未来の義父だからか、ライオネル様も

気まずそうに答える。


「そ、そういえば―――

 四大国会談は無事終わったそうで」


話題を変えようとライさんが話を振ると、


「おお、そうだ。

 会談の後、ちょっとした話し合いに

 なってのう」


「と言うと?」


ジャンさんがマームードさんに聞き返すと、


「いや、雑談のようなものだ。

 別に深い意味は無い。


 ただモンステラ聖皇国が大精霊様に

 許可を頂くまで、時間が空いたのでな。

 それで、本国で何か問題は無いかという

 話になったのだ」


共同声明の前には当然、友好関係を結ぶという

事が前提で、


自国で解決出来ない事も、他国であれば

何とかなるかも知れない―――

という感じで各自語ってみる事になったのだが、


「何かありましたか?」


ティエラ様の問いに皇帝は首を左右に振って、


「まだ本格的な同盟関係ではないからな。

 致命的な弱点はさらけ出すまい。


 ただ大ライラック国もモンステラ聖皇国も、

 『魔力溜まり』には頭を痛めていたようでな。


 恐らくこれは各国共通と見て、出してきたの

 だろうが」


ふむふむ、と私は家族と一緒に聞き入り、


「そこで思い出したのだが……

 確かウィンベル王国は、『魔力溜まり』を

 浄化する装置を開発しておったな?


 もしかすると、それで話が行くかも知れん」


確かに、王家直属の研究機関でその開発は

行われ―――

多少のトラブルはあったものの、一定の

成功を収めたはず。

(■239話

はじめての まりょくだまりたいさく参照)


「そういえば、今はどうなっているんですか?」


私の問いにライさんが『ん』と咳払いして、


「各地の『魔力溜まり』で、それなりに成果を

 上げているようだ。


 あと、魔界から岩石資源を送ってもらって

 いるだろ?

 あれをいちいちシンに『無効化』して

 もらっている状況だが……

 今後はあの装置で代替(だいたい)出来ないか検討して

 いるんだ」


「そうなんですか?」


私が彼に聞き返すと、


「ああ。

 一度実験用に『無効化』されていない原石を、

 魔界から送って来てもらったんだが、


 ちゃんと浄化出来たと報告があった」


「おおー」


「あれでいちいちシンが駆り出されておった

 からのう。

 そうなると助かる」


メルとアルテリーゼが安堵(あんど)した声を上げる。


私も緊急事態であったとはいえ―――

いつまでも私に頼るようなシステムは、

残せないと思っていたし。

何とか解決策が出来たようでホッとする。


「では、あちらのクアートル大陸で貸し出しても

 問題は無さそうか?」


「そうですね。

 一緒に技術者を派遣する必要がありますが、

 それで大丈夫かと」


ランドルフ帝国皇帝に、ウィンベル王国の

前国王の兄が答え、


「ふふふ、いい土産話が出来たわい。


 しかしまず我が帝国で使わせてくれんか?

 婿殿(むこどの)


「じゃあ身内価格で……」


そうライさんが返すと、割って入るように

ティエラ様が彼の手の上に自分の手を置いて、


「ダメです!

 こういうのは身内だからこそ、きちんと

 しなければ。


 お父様も、そういう事で関係を持ち出さないで

 ください」


すると父と夫(予定)は(ひる)んで、


「う、うむ」


「す、すまなかった」


それを見ていたギルド支部長はカラカラと笑い、


「おー、こりゃ尻に敷かれるのは確定か?」


「こういうのは女性の方がシビアだからねー」


「しっかりした嫁ではないか、なあ」


続けてウチの妻たちもそれに加わり、


「もしかして娘さん、本当は強めの性格だったり

 します?」


「いや、こんなティエラは初めてだが―――

 もしかすると男が出来た事で覚醒したのかも」


そうライさんとマームードさんが小声で

やり取りし、その横でティエラ様は顔を

真っ赤にして恥じらうようにうつむく。


「そんな覚醒って」


「女は男次第で変わるよー、おとーさん」


「だからラッチ、そういう事どこで

 覚えてくるの!?」


と、今度は私と娘のやり取りにみんなが笑い、

夜桜の花見は楽しく時が流れていった。




「……で、どうして私が駆り出されたんで

 しょうか」


「仕方ねぇだろ。

 それが例の浄化装置を貸し出す『条件』

 だったんだしよ」


「あ、あはは……」


花見から一週間後、私とライさん、

ティエラ王女様は―――

ランドルフ帝国へとやって来ていた。


例の『魔力溜まり』ついて、まず帝国内の

浄化を正式に依頼され、


それを貸し出す事になったのだが……

ウィンベル王国が出した条件が、


『私も同行する事』であり―――

それで今、帝国内にある 『魔力溜まり』へと

あちらのワイバーンのコンテナ箱で運ばれている

最中だった。


「研究員も技術者も、お前さんを指名してな。

 それに上層部としても……

 シン以外に安心して最新技術のカタマリを

 任せられるヤツはいない」


「シン殿であればたいていの事は、

 解決出来ますからね」


夫婦予定の男女に褒められるように言われるが、

何だか複雑な気分になる。


「まあそんな顔をするな。


 事実上、お前さんは最終兵器のような

 ものだからな。

 その扱いは仕方あるまい」


ドラキュラのコスプレのような姿をした

七・八才くらいの子供が、大人びた態度で

語る。


「フェルギ様も来て頂いて―――

 ありがとうございます」


「ま、俺様も何だかんだ言って、あの公都には

 世話になっているからな。


 それに聞くところによると、あの大型の

 魔力動力源用の魔導具が必要なくらい、

 魔力を食う装置なのだろう?


 それなら俺様がいれば、魔力の補充は

 心配ないであろうしな」


そういえば以前、魔力動力源用の魔導具(バッテリー)

実験で、トラブルにあった際に彼に魔力を

充填(じゅうてん)してもらったんだっけ。

(■248話

はじめての まりょくぐらい参照)


「万が一の時はお願いします。

 何せ、私は魔力を消滅させる事しか

 出来ないので」


「そう言われると本当に厄介な能力であるな、

 貴様は……


 ま、さっさと終わらせて帰るぞ」


そのままワイバーンは飛び続け―――

現地へと到着したのは、三十分ほど後の

事だった。




「こちらですか?」


「はい。

 帝国領外ではありますが……


 中央の未開拓地の森への途中にありますので、

 物資輸送や今後の事を考えますと、何とか

 なるのであればして頂いた方がいいと」


ランドルフ帝国の担当者から話を聞き、目前の

草原というか林を見渡す。


「ここが『魔力溜まり』か?

 確かにやべぇな、ここ」


「ええ、遠目からでもひしひしと感じます」


ライさん、ティエラ様が感想を語り、

それでここが『本当にヤバい場所』なのだと

実感する。


「よし、浄化装置を組み立てるぞ。


 シン殿を始め他の方々は、周囲の警戒を

 お願いします」


そしてウィンベル王国から来た研究員・

技術者たちが、分解されていた装置を

組み直し始める。


余談だが、『魔力溜まり』浄化装置は―――

船で運ばれて来たという事になっているが、


実際は、船で来たのは人員のみであり、

装置もダミーを用意して船に乗せ、


分解された本物の浄化装置は『ゲート』によって

帝国まで運ばれた。


これは万が一、海上で紛失した場合どうにも

ならないのと……

また魔導具は精密機械なので、潮風などによる

損傷を考慮して―――

『ゲート』での運搬となったのである。


「動力源専用の魔導具、接続しました!!」


「各装置の数値、正常を確認!!」


「準備完了!!」


テキパキと浄化準備が進められ、


「『魔力溜まり』浄化装置、起動!」


「発射段階に入りました!

 安全のため、発射方向からは退避を!」


「指定方向に発動する!

 開始30秒前……!」


浄化装置の魔導具がうなりを上げ、

ウィンベル王国、ランドルフ帝国の関係者が

固唾(かたず)をのんで見守る。


「グオォオオオ……!!」


するとそこに、獣のような咆哮(ほうこう)が響き渡り、


「な、何だ!?」


「何か来るぞ!?」


「あ、あれは!?」


見ると、猛スピードで接近して来る

巨大な何かが見え、


「えーと、ダチョウ?」


「あー、ありゃ暴走鳥ラナモック・オストリッチだな」


「『魔力溜まり』にあてられて、

 狂暴化したのでしょうか」


「確かに異様な魔力を感じるぞ、あれは」


と、私とライさん、ティエラ王女様、

フェルギ様は冷静に受け流すが、


「ここ、こちらに向かって来ますよ!?」


「もう発射は止められないぞ!

 ど、どうする!?」


慌てふためく研究員・技術者たちに、


「もしかして、発射まで間に合いませんか?」


「え?

 い、いえ。あれが来る前には発射出来ると

 思いますが……」


すると浄化装置のすぐ後ろに、私と他三名が

スタンバイし、


「止まらなかったらやります。

 ただ勢いがついていると―――」


そう言って私が振り向くと、


「あー、その後は任せておけ」


「わ、わたくしも出ますから」


まず恋人同士の男女が応じ、


「ま、俺様もいるから安心しろ」


と、亜神(デミゴッド)の少年も片手を挙げる。


そうこうしているうちにカウントダウンは進み、


「3・2・1……発動!!」


その声と共に、一陣の風が前方へ吹き荒れ、


「うわっ!」


「くくっ!」


「きゃっ!!」


思わず閉じた目を開けたそこには、


「……?」


それまで迫って来ていたダチョウのような

魔物が五メートルほど先で―――

キョトンとして二本足で立っており、


その六メートルはあろうかという巨体で、

こちらを見下ろしていたが、


「キョエェエエエー!!」


と、再び咆哮し、


「まあそうなるわな」


「正気に戻ったところで、魔物ですし」


「俺様たちはオイシイ餌にしか見えないで

 あろうな」


と、三人は冷静に状況を分析して、


「じゃあ、やりますね」


私は彼らにそう言うと、浄化装置の前まで

移動して、


「その足のサイズで……

              ・・・・・

 その巨体を支え、走る事などあり得ない」


そうつぶやくように話すと、


「―――キョッ、キョオォオオーッ!?」


あっという間に彼の二本足は折れ、地面に

その身を横たわらせ、


「あ、そうだ。

 『魔力溜まり』はどうなりましたか?」


私が振り返って研究員・技術者に聞くと、


「はっ、はい!

 ええと……」


「ま、魔力は正常値を示しております!」


「『魔力溜まり』の正常化を確認しました!!」


そこで、『魔力溜まり』の浄化は無事に

終わりを告げた。




( ・ω・)最後まで読んでくださり

ありがとうございます!

本作品は毎週日曜日の16時更新です。

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【女性冒険者パーティーの愛玩少年記】

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【ロートルの妖怪同伴世渡り記】【完結】

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― 新着の感想 ―
(*ゝω・*)つ★★★★★  …やはり、ラッチ嬢は将来、魔性の女にw お父さんは心配ですね!
私の年代ですと宇宙戦艦ヤマトの「放射能除去装置 コスモクリーナーD」を思い出しますねぇ。 今になって思えば放射線の発生源を除去出来ても赤茶けた大地が青くなるとは思えませんけど。 まぁそういうイメージ映…
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