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265・はじめての けいかくのうらがわ

|д゜)人間ドック再検査2終了。

泌尿器科も無事(まだまだ検査が続きそう

だったけど、いったん経過観察に)



「……という事で、細かい部分は後に詰めると

 思われますが、


 大筋で釈明を受け入れる方向で、帝国と

 ドラセナ連邦は動くでしょう」


「四大国は百万を超える軍を保有している。

 さすがにそれでお互いドンパチやったら、

 どうなるかくらいはわかるだろう。


 ひとまず大規模な戦争になる事は、

 避けられたと思う」


ウィンベル王国にてティエラ王女は、

ラーシュ陛下代理にして婚約者である

ライオネルと共に、魔力通信機による

多国間会談に(のぞ)んでいた。


「我が国もフェンリル様を派遣し、無関係では

 ないからな。


 そちらの戦火はこちらの同盟諸国にも

 影響が及ぶ。

 情勢が安定してもらう事に越した事は無い」


「まさに」


「海の向こうだからと―――

 静観(せいかん)出来る事態でもなかったゆえ」


チエゴ国の国王の言葉に、各国の王家も

同調の声を上げる。


「だが、問題はこれからであろうよ」


「和平に賛成する者ばかりではあるまい。

 一度火がついたものは、くすぶり続ける

 ものだ……」


ライシェ国の王の後に、クワイ国の王も

楽観的な態度は取らず、


「まさにそこが問題なのです。


 それを考え、我がランドルフ帝国・

 そしてドラセナ連邦も―――

 厳しい和解条件は出さないという事で、

 内々(ないない)に同意しておりますが」


「被害そのものは少なかったと聞いて

 おりますし、それがよろしいでしょう。


 あまり追い詰め過ぎると爆発する

 可能性もありますからな」


ユラン国のアドベグ陛下が、ティエラ王女に

同調する。


「戦争は、終わらせ方が一番難しい……


 退却する敵を止めようとしてはならない、

 包囲した敵には必ず逃げ道を与え、

 追い詰められた敵は追い詰め過ぎないこと。

 これ用兵の原則である、と―――」


帰師(きし)には(あつ)むること(なか)れ、

囲師(いし)には必ず()き、

窮寇(きゅうこう)には迫ること(なか)れ。

()れ用兵の法なり。


アイゼン王国の国王が、孫氏の兵法を

当てはめて語る。


「となれば、今後の接し方が問題となって

 くるであろうな。


 かつてシン殿が示したように……

 貿易拡大や留学など、人的交流を盛んに

 する事などが求められるであろう」


魔王・マギアが過去の成功策として、

シンの方法を引っ張りだす。


「今のところ、それが一番無難かと。


 ただ問題は、商人たちがそれに乗っかるか

 どうかってところです。

 何せ一戦交えてしまったわけで―――」


「うむ……」


「それは確かに」


ライオネルの懸念(けねん)に、各国の王も同感の

言葉を返す。


何せ武力衝突にまで至った相手なのだ。

これまでも緊張が高まるような事があったと

しても、実際に一線を越えてしまったような

状況は無かった。


さらに今は、こちらの同盟諸国からの交易で

景気が良いという事情もある。

チャンスと思う商人もいるかも知れないが、

たいていはリスクを重視するだろう。


「こちらの大陸との交易拡大で―――

 あちらは好景気に()いていると聞く。


 ランドルフ帝国やドラセナ連邦の商人に、

 わざわざ危険を(おか)そうとする者がいるか

 どうか」


新生アノーミア連邦宗主国、マルズ国王・

トニトルスが現実を説明する。


「大ライラック国やモンステラ聖皇国の

 商人であれば……

 危険を承知で動く事があるかも知れないが」


「こちらでやっていた最恵国待遇(さいけいこくたいぐう)はどうだ?」


「それは難しかろう。

 合同軍事演習後、すぐに協調路線に入った

 ドラセナ連邦を抜かして―――

 敵対した大ライラック国やモンステラ聖皇国と

 組む理由が無い。


 下手をすれば裏があると勘繰(かんぐ)られよう」


「ふむ。

 となると他に何か手を考えねば」


「しかしすぐに実行可能な方法となると

 限られるぞ」


各国の王族がそれぞれ意見を出そうとするが、


「お待ちください」


ランドルフ帝国の王女の一言で、

魔力通話機に入っていた会話は一瞬止み、


「実は我がランドルフ帝国において……

 四大国共同で、大陸中央の未開拓地を

 開発する計画案が出ておりまして」


ティエラ王女の話すプロジェクトに、

各国のトップが耳を傾け、


「それは面白そうだな」


「そのような土地があるのか」


「何かに対し、国力を使わせるという点では

 良いかも知れん」


と、同盟諸国は彼女の案に賛同していき―――

方針が固まった。




「おー、ヒミコ様が?」


『ああ。

 例の戦後の方針について、魔力通信機で

 多国間会談を行ったんだが、


 意見がまとまった後、各国で何か

 情報共有する事はないかと話が

 振られた際、新生『アノーミア』連邦代表

 マルズ国から、


 第九王子エンレイン様と、ワイバーンの女王

 ヒミコ様との結婚が正式に決まったとの

 報告があった』


公都『ヤマト』の冒険者ギルド支部に

呼ばれた私は、


王都フォルロワで会談が終わったばかりの

ライさんから直接、情報共有を受けていた。


「そういや、ヒミコ様もエンレイン王子様と

 くっついてから長かったもんなあ」


同じギルド支部長室にいる部屋の主で、

筋肉質のアラフィフのジャンさんが、

両腕を組んでしみじみと語り、


「いろいろあったので、自分の事を後回しに

 していたって聞いたッスけど……


 やっと結婚出来るんスねえ」


褐色肌の次期ギルド長の青年―――

レイド君もウンウンとうなずく。


「そういえば以前、エンレイン王子様が

 ヒミコ様の元へ婿入(むこい)りするような形になるって

 聞いたんですけど」


私が通信先のライさんにたずねると、


『ああ。

 そもそも王位継承順位は低いし、

 王子様もそっちの方がいいという話だ。


 ただ結婚式は一週間後に行われる

 予定でな』


「えっ!?

 それはまたずいぶんと急ですね」


私が驚いて思わず聞き返すと、


『ヒミコ様の要望らしい。


 そして結婚式は簡素にやって欲しいと』


その言葉に、同じ室内にいる男三人は

顔を見合わせ、


「いや、第九王子といえど……

 新生『アノーミア』連邦の宗主国の

 王子様だぞ?


 確かにあの女王様、あまり派手な事は好まない

 ようだが」


ギルド支部長が疑問を口にすると、


『今のクアートル大陸が安定していないのは、

 彼女たちもわかっているようでな。


 そんな国家危急(ききゅう)の時に―――

 同盟諸国の手を(わずら)わせる事は無い、

 というのが理由だそうだ。


 だからいろいろと準備をさせたりする事の

 無いよう、一週間後に迫った期日での発表に

 したようだな』


うーむ、こういう時まで組織のトップとしての

立場を優先させるか……


『まあだから、各国共に使者と豪華な贈り物を

 用意する、という形でいくらしい。


 シンも何か考えてくれ』


「そうですね、そういう事なら。


 あと、ティエラ王女様は?

 もう帝国にお帰りになられました?」


こちらの大陸に『ゲート』で寄った際は、

たいてい何か買い物をして帰って行くので、

それとなく聞いてみると、


『あー、さすがに緊張したためか今は

 横になっている。


 休んだ後はすぐ、クアートル大陸まで

 戻るそうだ』


ふむふむ、と私はうなずき、


「わかりました。


 えーと、何かお土産を見繕(みつくろ)って、

 後で『ゲート』で届けます」


『おう、そりゃ助かる。頼むわ』


そこで魔力通信は終了し―――

男性陣で少し雑談に興じた後、私は

自宅の屋敷へと戻っていった。




「シン殿!」


「申し訳ございません!

 まさかシン殿自らが料理を作って

 くださるとは……!」


淡い紫色の短髪を持つ、二十歳前後に見える

青年と―――

真っ赤な長髪を持つ、外国人モデルのような

大きな胸とお尻の女性、


エンレイン王子様とヒミコ様が、私に向かって

頭を下げ、


「いや、よしてください。

 お二人は今日、祝われる立場でしょう?」


私も両手の手の平を二人に向けて振る。


あれから一週間後―――


私はヒミコ様率いるワイバーンの群れ、

その本拠地に来ていた。


元はワイバーンの巣があった場所だが、

彼らの世話をする人間が共同生活をするため、

普通の暮らしが出来るようインフラが整えられ、


今ではちょっとした村というか、町のような

規模となっていた。


「余計な負担をかけないよう、一週間と

 期限を切ったのに……

 あの素晴らしい演出を行う一団まで

 連れて来て頂けたとは」


「いえ、あれはドーン伯爵様が抱える

 結婚式や式典の演出を専門とする、

 組織のおかげですから。


 地理的に近かった事も幸いでした」


王子様の言葉に、私は頭を下げながら答える。


「あれは記憶に一生残るであろう。


 水の球体と花びらが舞い、荘厳(そうごん)な楽曲の中

 皆に祝われ―――

 天にも(のぼ)る心地とはこのようなものかと」


続けて、ヒミコ様も演出を手放しで()めて

くれる。


式典や結婚式の演出も、かなり機械化……

というより魔導具化されており、


シャボン玉や花びらを風で飛ばしたり、

録音した音楽を再生したりと―――

今では自動化されて出来るようになっていた。


特に花びらは、季節的に桜のものを大量に

用意出来ていたので……

文字通り桜吹雪を再現し、来客も言葉を

失うほどであった。


「キレイだったよー、ヒミコお姉ちゃん!!」


と、厨房の中までラッチが、黒いショートの髪を

揺らしながら入って来て、


「あー、待って待って!」


「大人しくしているようにと言ったで

 あろうが!」


次いで、それぞれ赤ちゃんを抱いた―――

アジアンチックな童顔の妻と、欧米風の

目鼻立ちの妻たちが追いかけて来た。


「メルさん、アルテリーゼさん」


「おお、シンイチにリュウイチも」


エンレイン夫妻が、彼女たちが抱いた

赤ん坊を見て……

特にヒミコ様は二人を見て満面の笑顔となる。


「うらやましいのう。

 私もいつ(さず)かるであろうか」


「あーもー、そんなのすぐだよすぐ」


「だが覚悟しておけ。

 産まれてからは大変ぞ?

 毎日が嵐のようじゃ」


「もーホント忙しいよー。

 これで動き回るようになったらと思うと」


と、女性陣のトークが始まったので、

私は私で王子様に向かい、


「そういえばエンレイン様。

 こちらに婿入りの形となると聞いたの

 ですが―――」


「ええ、そうです。

 元よりマルズの王位継承には、ほとんど

 関係ありませんでしたし……


 ただマルズ、というより―――

 新生『アノーミア』連邦から、外交特別顧問

 という役職を与えられました。


 まあいざという時、連邦とワイバーンの

 橋渡しをお願いしたい、という意図が

 あるのでしょう」


「なるほど」


こちらはこちらで男同士のトークに興じる。


「あと何というか……

 ワイバーンの数が増えていませんか?


 今は各国にワイバーン騎士隊として出ている

 事も考えると、多いような気がして」


すると、女子トークの方にいたヒミコ様が、


「ああ、シン殿。

 それはの、私が配下に命じてこの大陸の

 ワイバーンたちを探して来てもらって

 いるのだ。


 人間に我々の見分けは難しいであろうし、

 この機会に同胞にはここに集まってもらおうと

 思ってのう」


シンイチ・リュウイチをあやしていた彼女は、

真顔になってこちらに手を振る。


「子供に食事が必要なのは、人間もワイバーンも

 違いがありませんからね。


 子育ての環境などを考えて、こちら側に入る

 選択をしてくれているようです」


妻に続いて、夫も状況を説明してくれる。


「じゃあ、もうこの大陸のワイバーンの

 ほとんどはここへ?」


「多分そうだと思います。


 傘下(さんか)に入ったワイバーンたちからも、

 自分たちが出会った事のあるワイバーンに、

 さらに呼びかける事もやってもらって

 いますから―――」


王子様の話にうなずいて返す。


確かに同じワイバーンなら、その移動可能範囲も

広いだろうし……

目撃した事があるのなら、彼らに引っ張って

来てもらった方が確実だ。


「お、そうだ。


 シン殿、少し頼みを聞いてもらえまいか」


不意にヒミコ様が神妙な顔つきになって、


「構いませんよ。

 そもそも、お祝いに来たのですから―――

 たいていの事は」


「ああ、いや。

 そういう事ではなく」


何やら複雑そうな表情の彼女に、とにかく

話を聞いてみる事にした。




「あ~……

 なるほど、新顔の中に、そういうのが

 いるんですね」


場所を変え、エンレイン夫妻に詳細を聞いて

みたところ―――


『どうして人間と共存しているのか』

『弱いのだから、支配して従わせれば

いいではないか』


という意見を持つ者もおり……

今のところはヒミコ様率いる群れの方が

多数派で、それを抑えているが、


なるべく穏便に収める方法は無いかと苦心して

いたところ、私が来たのだという。


「追放しても、そやつらが別のところで

 人間に迷惑をかけるかも知れません。


 私が力づくで黙らせてもいいのですが」


「ただ、出来る事なら説得したいのです。


 女王自ら動いて言う事を聞かせたとも

 なると、いろいろ影響が大き過ぎて」


ふむふむ、と家族ともどもうなずく。


確かに女王の立場としてはうかつに動くと、

『我らよりも人間の肩を持つのか』と反発される

可能性もある。


権限が大きい、それもトップともなれば、

逆に動けなくなる場合も多いのだ。


「何か、ここに初めて来た時の事を

 思い出すねー」


「あの時もシンが跳ねっ返りどもを大人しく

 させたのう」

(■71話

はじめての はなしあい(わいばーん)参照)


と、妻たちが回想しながらしみじみと語る。

そういえばあの時、ラッチは留守番だったっけ

なあ―――

そう私も思い出にひたり、


「なつかしいですね。


 思えばあの頃から、人間との交流は

 始まったのですが」


「しかし、すでに似たようなケースを解決して

 頂いた事があるとは心強い。


 やはりここは、ぜひともシン殿にお願い

 したい」


ヒミコ様に続いてエンレイン様もその方向で

話が進み、


「ちなみに、その跳ねっ返りはどのくらい

 いるんでしょうか?」


そう私がたずねると、


「30体ほどかと思われます」


「あれから200体ほどのワイバーンが

 増えたのですが、どうしても若い世代は

 血の気が多いと言いますか」


う~む。

前回は『ハヤテ』さん、『ノワキ』さん、

『レップウ』さんの三体だったけど……

今回はその十倍か。


群れではなく、単独行動していた

野良猫よろしく―――

警戒心が強く好戦的なのかも知れないな。


「ちょっと多いねー」


「まあシンが相手では、10倍だろうか

 100倍だろうが、変わらぬだろうがの」


「とゆーわけでおとーさん!

 やっちゃって!」


家族の言葉に私は苦笑し、


「じゃあ、その30体を集めて頂けますか?」


そうして私は……

跳ねっ返りのワイバーンたちを『()らしめる』

事となった。




「どうじゃ?

 人間の中にはこのような者もおるのだ。


 狭い世界で生きてきたのだから仕方が無いが、

 少しは価値観を見直して反省するがよい」


三十分後―――


三十体はいるであろうワイバーンたちが、

翼や尻尾を引きずりながら、ヒミコ様に

説教されていた。


以前、『ハヤテ』さん、『ノワキ』さん、

『レップウ』さんを相手にした時と同じく、


『その筋肉と骨格で空を飛び―――

               ・・・・・

 さらに地上で体を支える事などあり得ない』


              ・・・・・

『燃焼物を生成、吐き出すなどあり得ない』


そう言ってワイバーンの飛行能力と身体能力、

攻撃手段を封じ、


全員の降伏を以て『懲らしめ』は終了。


その後彼らは母親に叱られる子供のように、

ヒミコ様に叱責(しっせき)を受け、


羽をたたみ尻尾を丸め……

見た目にもしょんぼりとしているのがわかり、


「まーまー、めでたい日なんだしそのへんで」


「わかればいいのであろう、わかれば」


メルとアルテリーゼの進言で、


「まあ、客人が言われるのであれば―――

 お前たちも、これに懲りたら大人しく

 するがよい」


そうワイバーンの女王は(さと)し……

私たちはそこで一泊した後、公都『ヤマト』へ

帰還したのであった。




「陛下、参上いたしました」


同じ頃、クアートル大陸のランドルフ帝国―――

その帝都グランドールにて、


ティエラ王女が王宮の一室で、父親であり

帝国の頂点でもある……

皇帝マームードに呼ばれていた。


「ここは誰もおらぬ。

 堅苦しい態度は取らんでいい」


「それで、父上―――

 方針はまとまりましたでしょうか?」


六十代くらいの老人に肉親として彼女は接し、


「うむ。

 側近や帝国武力省将軍、ロッソ・アルヘン、

 魔戦団総司令、メリッサ・ロンバートとも

 話し合ったのだが」


『大陸中央の森共同開拓計画』……


ティエラの提案という事で持ち帰ったのだが、

一存、独断で提示した感は(ぬぐ)えず、


ただ四大国が今後どのような関係で、

どう付き合っていくかは重大な関心を

持たれており、


そのプロジェクトを軸に、アプローチや

進め方、規模などが討論されていた。


「計画そのものは、大筋はお前が提案した通りに

 なるだろう」


「いえ、これは―――

 以前も申し上げました通り、シン殿の」


そう彼女が言いかけたところ、マームードは

首を左右に振り、


「その事なのだがこれに関しては、

 シン殿やお前が発足した、という事実は

 隠されるであろう」


「?? どういう事でしょうか」


すると皇帝は娘にイスを指して、


「まあ座るがよい。


 この計画……

 こちらが主導してはならぬ、という事だ」


「と言いますと?」


ティエラは座って、話の先を促す。


「まずこのクアートル大陸の四大国は今、

 微妙な立場、関係になってしまった。


 何と言ってもモンステラ聖皇国は、

 今回の問題の元凶として最も発言力を

 落としたであろう。


 大ライラック国もまた―――

 その余波を受け、影響は計り知れん」


娘はそのまま黙って聞き続け、


「今回の計画は、我が国やドラセナ連邦が

 主導する形は取れん。


 それは戦勝国としての立場を誇示(こじ)する

 事になる。


 そうなれば、聖皇国も大ライラック国も、

 遺恨(いこん)を残す事になろう」


今は大人しく同調、同意するかも知れないが、

それは立場上仕方なく従っただけで……

恨みの種となる、とマームードは語り、


「だから今回のこの計画は、大ライラック国が

 発案するという形に誘導する。


 新たな平和の時代の幕開けとして、この計画を

 発足した国ともなれば―――

 彼らの面子は保たれるであろう」


「そう上手くいきましょうか」


ティエラが思わず聞き返すと、

ハッとなって片手で口を(おお)う。


「その懸念(けねん)は当然だ。


 だから大ライラック国に情報を流して

 やるのだ。


 お前がこのような提案をしたが、過去、

 ランドルフ帝国が計画したものの中に、

 検討したが実現しなかった……

 同じような巨大な開拓計画があった事に

 してな。


 どの国にも、計画や検討だけで終わった

 ものは、いくらでもあろう。


 そしてお前の提案は『却下』され―――

 その計画を大ライラック国が提唱する。


 それに他の三ヶ国が乗っかれば、

 大ライラック国も少しは威信を取り戻す事が

 出来るだろう」


王女は『そこまで考えて』と、口をポカンと

開けていたが、


「だからお前やシン殿の手柄を横取りする

 形となってしまうが、そこは(こら)えてくれ。


 我らは名より実を取る。


 言い出しっぺの大ライラック国には、

 最も多くの予算を出してもらおう」


老人が意地悪そうにニッ、と笑うと……

つられて彼女も笑顔になる。


「それで、モンステラ聖皇国の方は

 どうなるのでしょう?」


娘の問いに父親は姿勢を正し、


「中央の森の開拓―――

 そこで聖皇国の出番じゃ。


 以前シン殿が、あの国の亜人・人外の

 兵器化施設を解放するために、向かった

 事があるだろう?」

(■243話 はじめての こうりん2参照)


「は、はい。

 あの時も敵味方双方に被害無く、

 解決したと聞いております」


そこで皇帝は飲み物に口をつけ、


「その時、シン殿たちは大精霊様一行に(ふん)し、

 大陸中央の森から兵器化施設を目指したと

 聞いておる。


 つまり大精霊様は……

 その森からやって来た、とも言えるのだ」


「あ―――」


何かに気付いたように、ティエラは

口を開け、


「わかるか?


 つまりあの森は大精霊様の住処(すみか)

 無断での開拓など、モンステラ聖皇国に

 取っては、とんでもない事のはずだ。


 そこで彼らの出番となる。


 大精霊様のお許しを得てからにして

 頂きたい、何とか我々が大精霊様から

 許可を得て来ます、と……


 そうなれば聖皇国の立場、発言力も

 少しは回復するであろう。


 ちょうどメルビナ大教皇も我が国におられる

 事だし、その事についてもすでに話を通して

 ある」


そこで彼女は、手にしていた飲み物のカップを

テーブルに置いて、


「しかし、我が国やドラセナ連邦はともかく、

 大ライラック国がそれに同調しましょうか?


 あの国にも宗教はあるでしょうが、そこまで

 神を信仰しているとはとても―――」


娘の言葉に、父親はフォッフォッと笑い、


「その心配はあるまい。


 何せこれまで……

 シン殿がどれだけ活躍したと思う?


 フェンリルのルクレセント様の仕業という

 事になっているようだが―――

 シン殿の無効化は、聖皇国も大ライラック国も

 文字通り『身を(もっ)て』知っていよう。


 これ以上神様を怒らせてはマズいと、

 骨身に染みて理解していはずだ」


そこでティエラ王女は、長く息を吐いて、


「結局は、シン殿のおかげですが……」


「そうだな。

 あの御仁の力と実績によるところが大きい。


 彼に出会えた事こそ、神のお(みちび)きよ」


マームードの言葉に、彼女はうなずいて

肯定(こうてい)する。


「そういえばお前とシン殿の出会いは確か、

 クラーケンを食べさせてもらったんだっけ?」

(■148話 はじめての いかりょうり参照)


「へあっ!?

 あ、いえだってあんなのわからないじゃ

 ないですか!

 まさか『これも何かの縁』って自然に

 出された料理がクラーケンなんて……!」


「ライオネル君から聞いておるぞ?

 完食した後、正体を明かされて気絶したとか」


「何でバラすのライ様ー!?」


そう父にからかわれ娘は絶叫し……

しばらく、父娘(おやこ)水入らずの会話は続いた。





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(*ゝω・*)つ★★★★★  本日の夕飯はイカフライの気分w
「戦争は、終わらせ方が一番難しい」 現実的ではないですけど相手を根絶やしにすればね。文句を言ってくる人は生き残ってないので誰もいません。ですが効率的ではないですね。 今風に言えばコストパフォーマンスが…
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